例文を写した志望理由書は照合で見つかるか|出願書類の剽窃と照合ソフトの研究
「志望理由書は例文を参考にすると書きやすい」という助言を受けても、その文をどこまで使ってよいのか迷います。写した文が照合で見つかった応募書類の研究はあり、例文からは構成や観点を学び、文章は自分の経験から書くことが大切です。夜、下書きと例文を並べていて、よく整った一文だけを借りたくなる場面を考えると、問題は文章の長さだけには収まりません。その文に書かれた出来事や考えを、本人のものとして説明できるかも関わります。
- 募集要項で「本人が作成すること」と書かれている場合、問われるのは提出する文章を誰が作ったかです。
- Segalらが米国の大きな大学病院に出された研修医の応募文を調べると、5.2%に写しの疑いがありました。
- 照合ソフトの一致率は、比較した文章とどれほど似た部分があるかを数値で示したものです。
- Segalらは、照合に使う資料が不完全であることに加え、疑いありとする境目自体が検証されていないことを研究の弱さに挙げています。
「志望理由書は例文を参考にすると書きやすい」という助言を受けても、その文をどこまで使ってよいのか迷います。写した文が照合で見つかった応募書類の研究はあり、例文からは構成や観点を学び、文章は自分の経験から書くことが大切です。夜、下書きと例文を並べていて、よく整った一文だけを借りたくなる場面を考えると、問題は文章の長さだけには収まりません。その文に書かれた出来事や考えを、本人のものとして説明できるかも関わります。
剽窃とは、他人の文章や考えを自分のものとして示すことです。照合ソフトは文章を比べて似た部分を示しますが、表示された一致がどんな意味を持つかは、その前後や出所を読む必要があります。総合型選抜や学校推薦型選抜の準備では、募集要項の作成者に関する指示と、志望理由書で求められる内容を併せて読むことになります。写しが見つかった割合、ソフトの性能、人による判断を順に見ると、「見つからなければよい」という考え方では見落とす点が見えてきます。
「志望理由書 丸写し」が気になるときに読む欄
募集要項で「本人が作成すること」と書かれている場合、問われるのは提出する文章を誰が作ったかです。「記載内容に虚偽があった場合」という記述では、書いた出来事や経歴などが事実に沿うかが問題になります。さらに誓約の欄があれば、署名などによって何を約束するのかを読む必要があります。これらは照合ソフトの説明欄ではなく、志願者が守る作成・提出の条件を示す欄です。
研修医の応募書類を扱ったSegalらの研究では、志望エッセイをネット上の文章、出版物、過去の応募書類と照らしました。[1] 比較する相手には、現在目にしているウェブの例文だけでなく、すでに書かれた応募文も含まれています。[1] 本から借りた一文なら照合の対象にならない、と考える根拠にはならず、研究で何と比べたかを見ることが重要です。[1] 要項に照合の説明があるかという関心と併せて、本人が作成するという指示そのものを読む視点が必要になります。
| 要項・書類の欄 | 読む対象 | 作成時に結びつく論点 |
|---|---|---|
| 本人による作成の指示 | 作成者や記入者への条件 | 例文の文を本人の文章として使っていないか |
| 記載内容に関する注意 | 事実に反する記載の扱い | 他人の体験を自分の経験に置き換えていないか |
| 誓約の欄 | 誓約する内容と署名者 | 提出する記述に本人が責任を持てるか |
| 志望理由書の設問 | 経験・志望の理由・学ぶ目的など | 借りた文の見栄えより、設問に答える内容があるか |
応募書類でも写しは見つかっている
Segalらが米国の大きな大学病院に出された研修医の応募文を調べると、5.2%に写しの疑いがありました。[1] これは実際の応募文を対象とし、文章の一致を手掛かりに疑いのある書類を数えた結果です。[1] 「書いた本人に似た文を使った覚えがあるか」と尋ねただけの結果ではなく、比較する文章との対応が調べられています。[1] その意味で、出願のように本人の意欲や経験を書く書類でも、写した箇所が照合によって表面化する例はあります。[1]
Parksらは麻酔科の研修医への志望書類をソフトで調べ、引用やよくある言い回しを除いた後にも、連続する借り物の文を認めました。[2] 志望する分野が共通なら似た語が出る、という事情を考慮しても写しが残ったことになります。[2] 米国外の医学部の卒業者では13.6%、米国の医学部の卒業者では4.0%の志望書類に写した部分があり、対象の構成によって結果に差がありました。[2] この報告の割合を読む際は、分母がそれぞれの集団の志望書類であり、その中で写しが見つかった書類を数えた値として捉えます。[2]
Maruca-Sullivanらの研究では、精神科の研修への応募書類と推薦状を照合し、一致した部分を人が読んで判断しました。[3] 応募者本人の志望書類では2.6%、推薦状では4.1%に写しが認められました。[3] 本人が思いを書く書類と、別の人が応募者について書く書類の双方を扱っており、誰が書いた文章かも区分して結果を出しています。[3] 機械が似た部分を示す段階から、人がその部分を読んで写しと判断する段階へ進む手順が、この研究には組み込まれています。[3]
一致率は、そのまま不正の程度を示さない
照合ソフトの一致率は、比較した文章とどれほど似た部分があるかを数値で示したものです。Milovanovicは既存の文献と照合結果の例を使い、この率をそのまま写しの程度として扱う問題を論じています。[5] 定型的な言い回しが含まれることで、率が見かけ上高くなる例も整理されています。[5] 一致した箇所があるという表示を見たときには、その箇所に何が書かれ、どの文脈で使われているかが判断の材料になります。[5]
Foltýnekらは15種類の照合システムを試験用の文章で調べました。[4] 一部のシステムは写した内容の一部を見つけた一方、すべての写しを拾うことはなく、写していない文を問題のあるものとして示す場合もありました。[4] つまり、見逃す側の誤りと、問題のない箇所まで拾う側の誤りの両方が報告されています。[4] 著者らは、ソフトを剽窃の判定者として扱うのでなく、似た箇所を見つける補助として位置づけています。[4]
この性能試験を踏まえると、照合結果の色や数字だけを眺める読み方には不足があります。[4] 表示された箇所について元の文と提出文を対にして読む作業こそ、人が判断するためにソフトが渡している手掛かりです。[4][5] 一致率を下げることだけを目的に語を取り替える行為についても、Milovanovicは無益で危ういと論じています。[5] 志望理由書で検討すべき内容は、借りた文が別の形になったかだけでなく、その文が伝える経験や考えを誰のものとして示しているかです。
研究の割合を比べるときは判定の基準も見る
Segalらは、照合に使う資料が不完全であることに加え、疑いありとする境目自体が検証されていないことを研究の弱さに挙げています。[1] 同じ応募文でも、比べる資料が違えば見える一致が変わり、どこから疑いと数えるかによって集計も変わります。[1] さらに、文章が一致した事実から、本人がどのような意図で書いたかまでは読み取れない点も指摘されています。[1] 疑いが見つかったという報告を読む際には、対象となった文と、人の意図についての判断を混ぜずに捉える必要があります。
Pupovacのメタ分析、つまり複数の研究をまとめて計算し直す分析では、学術論文の18%に写しが見つかりました。[6] ただし研究ごとの結果のばらつきが大きく、小規模な研究や、判定の基準が多い研究ほど割合が高くなる傾向がありました。[6] 数字の違いは書き手の行動だけでなく、何を対象にし、どんな基準で拾ったかとも結びついています。[6] この分析でも、ソフトで得られた結果の信頼性は人の追加の確認に左右されると結論づけられています。[6]
応募文の研究と学術論文の分析を並べたときに使えるのは、割合の大小だけでなく確認方法の比較です。[1][3][6] Segalらは比較資料と線引きに弱さを認め、Maruca-Sullivanらは一致した部分を人が読む手順を取り、Pupovacは研究をまとめた上で人による確認の重要さを述べています。[1][3][6] このように対象、比較する文章、数える基準、確認の方法まで見ると、それぞれの結果が何を示しているかをたどれます。[1][3][6] これらは医師の研修への応募や学術論文を中心とする研究であり、日本の高校生の出願で見つかる割合や選考結果を示すものではありません。
例文から学ぶ内容と、自分が書く内容
一致率を下げるためだけの言い換えを問題にしたMilovanovicの論考は、例文の語尾や単語を直す作業に終始することを考え直す材料になります。[5] 例文で見たいのは、経験を挙げた後に何を考えたか説明している、といった内容の役割です。志望理由書の設問が「学びたいこと」を求めているなら、その説明にどのような材料が要るかを考えられます。他人の出来事やそこで得た結論まで引き継ぐと、文章は整っても本人の理由を記す欄として必要な情報が抜けてしまいます。
たとえば例文の「人と関わった経験から支援の大切さを学んだ」という筋を読んでも、自分に同じ経験があることにはなりません。本人の記録にあるのが資料を読み比べた活動なら、何を比べ、どの説明に疑問を持ち、それを大学でどう学びたいかが材料になります。経験が小さく見えるからと他人の役割を借りるより、設問に対応する自分の行動と考えをつなぐほうが、何を伝えようとしているかが明確になります。設問が求める経験と、例文の作者が選んだ経験を見比べると、借りる必要のない内容も見えてきます。
定型的な表現まで全て避けようとする使い方にも、照合の研究から考えるべき点があります。[4][5] よくある言い回しが一致率を高める例と、写していない文にも問題の表示が出る例があるため、表現の珍しさだけで判断を済ませると中身から離れます。[4][5] また、推薦状の写しを人が確認した研究があることは、他人が書く形式の文書なら同じ文を広く使ってよいという見方を考え直す材料にもなります。[3] 本人の志望理由書には本人の経験を、推薦する人が書く欄にはその人の立場からの記述を置くという、書類ごとの役割が大切です。
出願までにすること
人が一致部分を読んだMaruca-Sullivanらの研究では、機械の出力から内容の判断へ進む作業がありました。[3] また、学術論文をまとめたPupovacの分析も、文字の一致を手掛かりにした結果には人の確認が必要だとしています。[6] 書き手の側でも、照合の率を目標にするより、出願条件・下書きの出所・本人の説明を対応させる準備が役立ちます。提出前の作業は次の順で進められます。
- 募集要項と出願の注意から、本人による作成、虚偽の記載、誓約に関する箇所を抜き出します。該当する書類名と一緒に控え、同じ出願の中でも誰が作成する書類なのかを対応させます。判断に迷う指示には印を付け、文章を仕上げる前に大学の入試担当へ内容を具体的に尋ねます。
- 下書きの各段落に、もとになった自分の活動記録や考えのメモを対応させます。例文からそのまま移した文があれば、先にその文が担っていた役割を短く書き出し、例文を閉じて本人の材料から段落を作り直します。借りた語句を順に交換するのでなく、設問に必要な内容を自分の記録から組み立てる作業です。
- 面接を課す方式なら、書類に置いた経験について、何をしたかと何を考えたかを口頭で説明します。書いてある語の意味や出来事の経緯を自分で説明しにくい箇所は、記録に戻って確かめます。これは写しを見抜く試験の再現ではなく、書類と受け答えが同じ経験を指すかを点検する手順です。
よくある質問
提出した後で例文に似た文が残っていると気づいたらどうするか
提出後の修正は、募集要項の訂正・差し替えの扱いを読み、その手続きに沿って進めます。似ていると気づいた箇所と、いつの提出分かを整理した上で、大学が示す連絡先に修正の扱いを尋ねることになります。独自に新しい書類を送り足すと提出版が複数になるため、先に方法を確かめ、大学から受けた案内に対応する形で動くのが具体的な進め方です。
本の言葉が志望のきっかけなら、その言葉を書いてもよいか
本の言葉に触れたこと自体がきっかけなら、借りた言葉であることが読み手に伝わる形を考えます。引用に関する指示がある書式ではそれに従い、書名や著者名など、出所を示す情報の置き方も確かめます。中心に置くのはその言葉への本人の反応であり、どこに疑問を持ったのか、何をさらに知りたくなったのかという説明が、志望の理由を書く欄に結びつきます。
同じ活動をした友人と内容が似たら問題になるか
一緒の活動なら、行事名や共通の出来事について記述が重なる場面は考えられます。照合ソフトが問題を示しただけでは写しと決まらないことは、性能を調べた研究にも表れています。[4] 相談する場合は、共通している活動の事実と本人が実際に担当した役割を示すと、単に「似ています」と伝えるより、どの内容について迷っているかが相手に伝わります。
この記事の限界
対象となった書類は研修医の応募文や推薦状、学術論文であり、同じ言語や同じ出願制度の志望理由書を一律に検査した結果ではありません。[1][2][3][6] 照合ソフトの性能試験と一致率をめぐる論考も、現在の個々の大学が使う方法や判定の境目を示す資料ではなく、運用については出願年度の要項と大学の発表が優先します。[4][5] 読む側から見れば、一致した語を拾う作業の後に、その文が本人の経験として何を述べているかを読む仕事が残ります。[3][6] 書類に基づく面接がある場合には、本人の説明と文章を照らせるように、借りた体験ではなく自分の経験と考えがたどれる記述を用意することが、出願準備で重視する点です。
参考文献
- Segal ほか. Plagiarism in Residency Application Essays. Annals of Internal Medicine. 2010;153(2):112-120.
- Parks ほか. Plagiarism in Personal Statements of Anesthesiology Residency Applicants. A & A Case Reports. 2016;6(4):103-105.
- Maruca-Sullivan ほか. Plagiarised letters of recommendation submitted for the National Resident Matching Program. Medical Education. 2018;52(6):632-640.
- Foltýnek ほか. Testing of support tools for plagiarism detection. International Journal of Educational Technology in Higher Education. 2020;17(1).
- Milovanovic ほか. Exploring the Need to Use “Plagiarism” Detection Software Rationally. Publications. 2025;13(1):1.
- Pupovac. The frequency of plagiarism identified by text-matching software in scientific articles: a systematic review and meta-analysis. Scientometrics. 2021;126(11):8981-9003.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒の完全1対1で、総合型選抜は代表の宮川が専任で担当し、ほかの科目は大学教員や東京大学などの大学院生が教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
提出した後で例文に似た文が残っていると気づいたらどうするか
提出後の修正は、募集要項の訂正・差し替えの扱いを読み、その手続きに沿って進めます。似ていると気づいた箇所と、いつの提出分かを整理した上で、大学が示す連絡先に修正の扱いを尋ねることになります。独自に新しい書類を送り足すと提出版が複数になるため、先に方法を確かめ、大学から受けた案内に対応する形で動くのが具体的な進め方です。
本の言葉が志望のきっかけなら、その言葉を書いてもよいか
本の言葉に触れたこと自体がきっかけなら、借りた言葉であることが読み手に伝わる形を考えます。引用に関する指示がある書式ではそれに従い、書名や著者名など、出所を示す情報の置き方も確かめます。中心に置くのはその言葉への本人の反応であり、どこに疑問を持ったのか、何をさらに知りたくなったのかという説明が、志望の理由を書く欄に結びつきます。
同じ活動をした友人と内容が似たら問題になるか
一緒の活動なら、行事名や共通の出来事について記述が重なる場面は考えられます。照合ソフトが問題を示しただけでは写しと決まらないことは、性能を調べた研究にも表れています。[4] 相談する場合は、共通している活動の事実と本人が実際に担当した役割を示すと、単に「似ています」と伝えるより、どの内容について迷っているかが相手に伝わります。