総合型選抜で不合格だった後に一般選抜へ切り替えるとき|挫折からの立て直しの研究
「学業上の困難に効果的に対処する力を、生徒に育むことが重要である」と、Martinらは研究の結論で述べています(訳、文献1)。不合格を受けた後、一般選抜へ気持ちと勉強をどう切り替えればよいのかという悩みに、この言葉は手掛かりを与えます。気持ちを整理する時間を短く区切り、一般選抜の条件と残りの日数に合わせて、再開する学習を具体化することが立て直しの足場になります。
- Martinらがオーストラリアの中高生481人を追った研究では、日々の学業のつまずきから立ち直る力と、その後の困難との関係を調べています。
- Putwainらは、英国で義務教育の最終学年にいた705人について、学業の浮力、試験への不安、全国統一試験の点の関係を調べました。
- Hanらは、中国で大学院入試に不合格となった学生61人を、オンラインの講座を受ける31人と、受けない30人に無作為に分けました。
- Darnonらは、フランスの大学生を対象に、失敗や成功の後の自尊心と、学習から心理的に離れる傾向を調べました。
「学業上の困難に効果的に対処する力を、生徒に育むことが重要である」と、Martinらは研究の結論で述べています(訳、文献1)。不合格を受けた後、一般選抜へ気持ちと勉強をどう切り替えればよいのかという悩みに、この言葉は手掛かりを与えます。気持ちを整理する時間を短く区切り、一般選抜の条件と残りの日数に合わせて、再開する学習を具体化することが立て直しの足場になります。
たとえば冬の朝、結果の通知を思い出しながら問題集を開いても、同じ文章を読み返すばかりになることがあります。その場で必要なのは、悔しさを消したと宣言することより、今の状態でも取りかかれる課題を選ぶことです。総合型選抜のために整理した経験や考えは手元に残し、これから必要になる科目の学習へ時間を移していきます。
不合格をどう受け止めるかと、次の出願に間に合わせるために何をするかは、別々に考えられます。気持ちが落ち着くまで判断を待てることもあれば、書類の準備のように先に確認したいこともあります。研究が示す立て直しの特徴を押さえながら、募集要項を読み直し、残された準備を扱える大きさに分けていきましょう。
不合格の経験だけに立て直しを任せない
Martinらがオーストラリアの中高生481人を追った研究では、日々の学業のつまずきから立ち直る力と、その後の困難との関係を調べています。この力は「学業の浮力」と呼ばれ、悪い点や課題の遅れなどに対応して学習を続ける力を指します。日本の年内入試を調べた研究ではなく、ここで扱う英国、中国、フランス、米国の研究も対象と制度が異なるため、結果は切り替え方を考える材料として読みます。
調査では、立ち直る力が高い生徒ほど、その後の学業上の困難が少ないという関係がありました。一方、困難を経験したこと自体が、立ち直る力を高めるという結果は出ていません。経験を次に生かすには、その経験に対処する力や支えも考える必要があるという結論です(文献1)。
受験の場面でも、悔しさがそのまま勉強への意欲になると期待するより、勉強を再開する条件を用意する方が具体的です。結果を何度も見返してしまうなら、通知と出願時の書類をまとめて保管し、これから使う教材を手元に置くことから始められます。終えた選抜の記録を残す作業と、翌日の課題を決める作業を分けると、考える対象がはっきりします。
振り返る場合は、通知でわかる事実と、自分の推測を分けて書きます。面接で言葉に詰まった記憶があっても、それが判定理由だったと決めて、何度も答えを作り直す必要はありません。次の一般選抜で問われる内容を確認し、今から修正できる学習上の課題に振り返りを結びつけます。
心配を消すことと学習を再開することを分ける
Putwainらは、英国で義務教育の最終学年にいた705人について、学業の浮力、試験への不安、全国統一試験の点の関係を調べました。立ち直る力の高い生徒ほど試験への心配が少なく、点も高いという関係が報告されています。また、試験への心配は、その後の立ち直る力の低さとも結びついていました(文献2)。
この研究で注目したいのは、不安をひとまとめにせず、心配と緊張を区別した点です。試験について考え続ける心配と、体がこわばるような緊張では、立ち直る力との関係が同じではありませんでした。そこで自分の状態を記録するときも、単に不安が強いと書くより、何を考えて手が止まるのかを書いた方が、相談の内容を具体化できます。
たとえば、科目の準備が間に合わないという心配なら、必要な範囲と残りの日数を並べて検討できます。また失敗するという考えが繰り返し浮かぶなら、その考えがあることを認めつつ、今解いている問題の条件を読み直す作業に戻ります。勉強の開始条件を「不安がなくなったら」にすると、その条件を満たすまで着手を待ち続ける形になってしまいます。
気持ちを整理する時間には、始める時刻だけでなく、いったん終える時刻も自分で決めておきます。終了時点でも悔しさが残っていれば、その続きを後で考えるために短く書き残し、予定していた課題を開きます。これは感情に期限を付けるためではなく、振り返りと学習の両方に場所を作るための段取りです。
支援を受けることを切り替えの選択肢に入れる
Hanらは、中国で大学院入試に不合格となった学生61人を、オンラインの講座を受ける31人と、受けない30人に無作為に分けました。無作為化とは、本人の希望や担当者の判断で分けず、偶然に割り当てて条件を比べる方法です。講座を受けた群では、気分の落ち込みが減り、困難から立ち直る力が高まったと報告されています(文献3)。
講座は、つらい気持ちや考えを扱いながら、自分が大切にする方向へ行動することを重視した心理的支援に基づいています。この結果は、入試の後の落ち込みに対して、周囲の支援を組み込んで対応する道があることを示しています。一人で気持ちを切り替えることだけを課題にすると、支えてもらうために使える時間や人を見落としがちです。
高校で相談する際は、気分の落ち込みと学習上の困り事を、自分が話せる範囲で伝えます。たとえば、教材を開いても進められないのか、何から始めるか決められないのかによって、相談の焦点は変わります。担任や進路の担当者には出願と科目の整理を相談し、気持ちについて話す場が必要なら、学校で利用できる相談先を尋ねる形も取れます。
相談のために、失敗の理由を完全に説明する必要はありません。今困っている作業と、近づいている期限がわかれば、手伝ってほしい部分を伝えられます。説明する力が残っていない日は、要項の該当箇所や止まっている計画を見せることも、次のやり取りへの入口になります。
不合格の影響を決めつけず、今の学習を見直す
Darnonらは、フランスの大学生を対象に、失敗や成功の後の自尊心と、学習から心理的に離れる傾向を調べました。成績の結果を操作した研究は465人、実際の成績を使った研究は375人を対象としています。失敗した場合は成功した場合より、勉強から心が離れやすく、学校では実力に応じて評価されると強く信じる人ほど、その傾向が強くなっていました(文献4)。
結果を自分の能力全体への評価として受け止めると、次の課題に向かう意味まで失ったように感じることがあります。一般選抜の準備では、今必要な科目について、実際に解いた答案を材料にすると判断が具体的になります。不合格という結果から学力全体を推測する代わりに、設問ごとの読み違い、知識の抜け、時間の使い方を調べていきます。
別の角度を示すのが、米国カリフォルニア州の高校卒業資格試験を調べたReardonらの研究です。通過の境目に近い点で落ちた生徒と通った生徒を比べたところ、その後の成績、科目の履修、在学の継続、卒業に、はっきりした差は見られませんでした。不合格が次の成績を押し上げるとも押し下げるともいえない結果が、この条件では得られています(文献5)。
気持ちの変化を調べた研究と、成績や在学を調べた研究では、見ている結果が違います。切り替えの進み具合を判断するときも、気分と学習の進行を分けて記録すると役立ちます。気分は沈んでいても課題に着手できた日には、その行動を記録し、進まなかった日には課題の量や取りかかり方を調整します。
募集要項で一般選抜の入口を確かめる
学習計画を立てる前に、一般選抜の募集要項から、出願資格、必要な試験、科目、出願期間を取り出します。総合型選抜で提出したものが一般選抜でも使えるかは、出願書類と提出方法の欄で確かめます。同じ大学でも方式名をそろえて読まないと、別の選抜の科目や手続きを混ぜてしまいます。
特に、大学入学共通テストを使う方式か、大学独自の試験を使う方式かは、準備の出発点です。共通テストが必要な場合は、自分の申込状況と受験科目を照合し、出願条件を満たす経路を選びます。英語の資格などを使う方式についても、利用条件と提出する成績の種類を確認してから、学習時間の配分を考えます。
候補ごとの比較では、大学名だけを書き並べず、同じ項目を埋めていきます。未整理の欄を残しておけば、次に読む箇所と高校で相談する内容が見つけやすくなります。以下のように、要項の記述と自分の準備を対応させると、出願できるかの確認と学習の判断をつなげられます。
| 確認する欄 | 自分の状況と照合すること | 次の作業 |
|---|---|---|
| 出願資格・方式名 | 自分が対象となる方式か | 条件の該当箇所を控える |
| 利用する試験・科目 | 申込状況、受験科目、履修との対応 | 準備が必要な科目を確定する |
| 配点・出題範囲 | 現在の得点と未学習の範囲 | 科目別に課題の優先順位を付ける |
| 出願書類・提出方法 | 新たに用意するものと手元にあるもの | 高校への依頼と本人の作業を分ける |
| 出願期間・試験日 | 書類準備と他の受験予定との重なり | 手続きと学習の予定を並べる |
残りの日数を、再開できる課題に変える
受ける方式と必要科目が絞れたら、試験日までの日程に、学校の予定と出願の作業を先に入れます。そのうえで、学習に使える日と、まとまった時間を取りにくい日を見分けます。残された日数のすべてを同じ勉強量で埋めるより、実際に使える時間に課題を置く方が、計画を見直しやすくなります。
科目の現状は、直近の答案や出題範囲に合う問題を使って確かめます。点だけを見るのではなく、知識があれば解けた問題、解き方を選べなかった問題、時間が足りなかった問題に分けて読み直します。その結果を配点や出題範囲と照らし、復習する単元と、時間を測って練習する課題を決めます。
再開直後から、遅れを取り戻すために大量の教材を追加すると、どれを終えればよいのかが曖昧になります。手元の教材から、開くページと終える作業が明確な課題を選び、その日の予定に書きます。「英語を頑張る」より「読解問題を解き、誤答の根拠を本文で探す」と書くと、終了したかどうかを自分で確かめられます。
学習が進まなかったときは、計画の未達をそのまま翌日に積み上げず、課題の量と難しさを見直します。すでに学科の準備を続けていた人は、既存の予定を土台に配分を調整し、長く離れていた科目がある人は、基本事項を確かめる作業から戻します。本人だけでは優先順位を決めにくい場合は、要項と答案をそろえて高校で相談し、次に取り組む範囲を絞ります。
出願の作業と学習は、終わったことが見えるように別々に記録しておきます。書類の準備が進んだ日に学習が少なかった場合も、全体として何も進まなかったと扱わず、次に確保する学習時間を決めます。予定を見直す際には、未完了の項目だけでなく、すでに終えた作業も残しておくと、これから必要な負担を把握しやすくなります。
結果への悔しさが残る日も、予定を実行できたかどうかは別に確かめられます。気持ちの整理に使う時間を区切り、必要な手続きを進め、翌日に取りかかる課題を残しておきます。一般選抜への切り替えは、残りの日数に合う作業を選び直し、実行と見直しを続ける形で進めていきます。
よくある質問
気持ちが落ち着くまで勉強を休んでもよいですか
気持ちを整理する時間を取りつつ、次に予定を見直す時点を決めておくと、再開の相談がしやすくなります。休む間も、出願の期限や高校への書類依頼など、先に確認が要る作業は周囲と分担して確かめられます。再開するときは、長時間の学習をいきなり予定するより、今の状態で取りかかれる課題を具体的に選び、進み方に合わせて量を調整します。
不合格の理由を突き止めてから一般選抜へ移るべきですか
次の試験に必要な準備がわかれば、理由の分析を終える前でも学習に移れます。結果の通知や公表された評価から読み取れる事実を記録し、推測だけで面接や書類の反省を延々と続けないよう、振り返る範囲を決めます。一般選抜へ向けた修正点は、必要科目の答案と出題範囲をもとに選ぶと、その後の勉強の内容に直接つなげられます。
同じ大学の一般選抜なら以前の出願書類を使えますか
一般選抜の要項にある提出書類、提出方法、再提出の扱いを読んで判断します。以前出した書類の記憶だけで準備を省かず、今回の方式で何を出すかを一覧にし、調査書など高校が作る書類は依頼の手順も確かめます。要項の文言で判断しにくい部分は、該当箇所を控えて大学の入試窓口に照会し、その回答に沿って準備を進めます。
この記事の限界
適用範囲は、海外の中高生や大学生を対象にした学業上の困難と心理的支援の研究を、準備の見直しの材料として読むところまでで、日本の年内入試後の切り替えを直接調べた研究は含みません。立ち直る力と成績の関連には自己申告に基づく調査が含まれ、中国の支援の研究も少人数で追跡期間が短く、一般選抜への切り替え方による得点や結果の違いを示すものではありません。取り上げた研究は実施時期と教育制度が異なり、個々の受験生の状態や出願の可否は、本人の準備状況と利用する方式に沿って検討する必要があります。募集要項は年度ごとに変わるため、出願時は最新の要項と大学の発表を優先し、個別の判断は高校での相談と必要な照会を通じて進めます。
参考文献
- Martin ほか. Investigating the Reciprocal Relations between Academic Buoyancy and Academic Adversity: Evidence for the Protective Role of Academic Buoyancy in Reducing Academic Adversity over Time. International Journal of Behavioral Development. 2020;44(4):301-312.
- Putwain ほか. Academically Buoyant Students Are Less Anxious about and Perform Better in High-Stakes Examinations. British Journal of Educational Psychology. 2015;85(3):247-263.
- Han ほか. Effect and Mechanism of an ACT-Based Psychological Resilience Intervention Targeting Students Failing in Postgraduate Entrance Examinations in China: A Randomized Controlled Trial. PsyCh Journal. 2025;14(3):344-356.
- Darnon ほか. Academic Failure and Psychological Disengagement: Can Belief in School Meritocracy Make a Difference? Educational Psychology. 2024;44(6-7):765-783.
- Reardon ほか. Effects of Failing a High School Exit Exam on Course Taking, Achievement, Persistence, and Graduation. Educational Evaluation and Policy Analysis. 2010;32(4):498-520.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
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よくある質問
気持ちが落ち着くまで勉強を休んでもよいですか
気持ちを整理する時間を取りつつ、次に予定を見直す時点を決めておくと、再開の相談がしやすくなります。休む間も、出願の期限や高校への書類依頼など、先に確認が要る作業は周囲と分担して確かめられます。再開するときは、長時間の学習をいきなり予定するより、今の状態で取りかかれる課題を具体的に選び、進み方に合わせて量を調整します。
不合格の理由を突き止めてから一般選抜へ移るべきですか
次の試験に必要な準備がわかれば、理由の分析を終える前でも学習に移れます。結果の通知や公表された評価から読み取れる事実を記録し、推測だけで面接や書類の反省を延々と続けないよう、振り返る範囲を決めます。一般選抜へ向けた修正点は、必要科目の答案と出題範囲をもとに選ぶと、その後の勉強の内容に直接つなげられます。
同じ大学の一般選抜なら以前の出願書類を使えますか
一般選抜の要項にある提出書類、提出方法、再提出の扱いを読んで判断します。以前出した書類の記憶だけで準備を省かず、今回の方式で何を出すかを一覧にし、調査書など高校が作る書類は依頼の手順も確かめます。要項の文言で判断しにくい部分は、該当箇所を控えて大学の入試窓口に照会し、その回答に沿って準備を進めます。