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入学手続と入学辞退——実施要項・入学料の通知・最高裁判決の文言で読む

最終更新:2026-10-09

実施要項は、3月31日までに入学辞退の意思表示をした人について、大学が授業料等と諸会費等の返還に「原則として」応じるとしています。ただし専願と学校推薦型選抜はこの原則から外されており、入学料(入学金)は別の考え方で扱われます。決まりの文言を、要項・通知・判決のそれぞれから読みます。

資料の年度:2027年度(令和9年度)入試/確認日:2026-10-09

このページで分かること

総合型選抜や学校推薦型選抜は、合否が年内に出ることが多い入試です。合格して入学手続をしたあとで、一般選抜を受けた別の大学に進むことにする人もいます。そのとき、すでに納めた入学料や授業料がどう扱われるのかは、高校生にとっても、進路指導をする先生にとっても、出願の前に知っておきたい事実です。

このページでは、次の4つの資料の文言を、頁をつけて読みます。

ここに書くのは、全国の大学に共通する決まりと、裁判所が示した一般的な考え方だけです。ある大学のある手続で、納めたお金が実際にどう扱われるかは、その大学の募集要項・入学手続要項の定めと個別の事情で決まります。このページは個別の事案についての法的な助言ではありません。

用語の整理——入学料・授業料等・諸会費等・在学契約

資料によって言葉が少しずつ違うので、先にそろえておきます。

用語の整理——入学料・授業料等・諸会費等・在学契約
言葉意味出てくる資料
入学料(入学金)入学のときにだけ納めるお金。実施要項と通知は「入学料」、判決は「入学金」と書きます実施要項・通知・判決
授業料等授業料と、実験実習費・施設設備費・教育充実費などの費目判決(6頁)・実施要項
諸会費等学生自治会費・同窓会費・父母会費・傷害保険料など判決(6頁)・実施要項
学生納付金上の3つを合わせた呼び方。大学によって「入学時納入金」「校納金」などとも呼びます判決(5頁)・実施要項
在学契約大学と学生の間の契約。判決は、入学手続の期間内に学生納付金の納付を含む入学手続を終えたときに成立すると述べています判決(5〜6頁)

平成18年判決は、学生納付金を「①入学金」「②授業料」「③実験実習費,施設設備費,教育充実費などの費目の金員」「④学生自治会費,同窓会費,父母会費,傷害保険料などの諸会費等」に分け、②と③を合わせて「授業料等」と呼んでいます(最高裁判所, 2006a, 6頁)。実施要項の「授業料等及び諸会費等」も、この区分と同じ言葉づかいです。

実施要項の決まり(第10の2「入学手続」)

実施要項の第10の2には、入学手続について4つの項目があります(文部科学省, 2026a, 9頁)。

  1. (1) 手続の方法: 合格者の負担等に配慮し、必要に応じ郵送による手続も認めるなど弾力的な実施に配慮する。
  2. (2) 学生納付金の額と負担軽減: 額の抑制と負担軽減の方策を講ずるよう努め、額や納付時期の趣旨・考え方を社会に説明する。納付が困難な学生には「独自の減免又は分割納入、納付時期の猶予等の措置」を積極的に講じるよう努め、その具体的内容を募集要項等に明記する。高等教育の修学支援新制度の利用者については、申請から認定までの間、授業料の納付を猶予することを原則とする。
  3. (3) 納入までの期間: 入学料以外の学生納付金について「合格発表後、短期間内に納入させるような取扱いは避ける」。
  4. (4) 入学辞退者への返還: 返還の申出期限について、平成18年12月28日の文部科学省の通知の趣旨を踏まえ、次の①②を募集要項・入学手続要項などで受験者に明らかにする。

(4)の①と②は、要項の文言をそのまま引きます。

①「3月 31 日までに入学辞退の意思表示をした者(専願又は学校推薦型選抜(これに類する入学試験を含む。)に合格して大学等と在学契約を締結した受験者を除く。)については、原則として、受験者が納付した授業料等及び諸会費等の返還に応じる。」

②「①にかかわらず、募集要項、入学手続要項等に、「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」、「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」などと記述している場合には、入学式の日までに受験者が明示的に又は黙示的に在学契約を解除したときは、授業料等及び諸会費等の返還に応じる。」

(文部科学省, 2026a, 第10の2(4)、9頁)

読むときの要点は3つです。

なお、平成18年12月28日の通知(「大学、短期大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校の入学辞退者に対する授業料等の取扱いについて」)の本文は、文部科学省の現行サイトでは見つけられませんでした。このページでは、その通知を引いて中身を書いている実施要項の第10の2(4)を一次資料にしています。

最高裁判所 平成18年11月27日判決が述べたこと

実施要項の「3月31日」という日付は、平成18年判決が示した考え方と重なります。ここでは、判決が一般論として述べた部分を、判決書の文言のまま引きます(引用の「,」や数字の書き方も判決書のとおりです)。

入学金の性質

「入学金は,その額が不相当に高額であるなど他の性質を有するものと認められる特段の事情のない限り,学生が当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有するものであり,当該大学が合格した者を学生として受け入れるための事務手続等に要する費用にも充てられることが予定されているものというべきである。」(最高裁判所, 2006a, 8頁)

「学生が大学に入学し得る地位を取得する対価の性質を有する入学金については,その納付をもって学生は上記地位を取得するものであるから,その後に在学契約等が解除され,あるいは失効しても,大学はその返還義務を負う理由はないというべきである。」(同, 10〜11頁)

在学契約はいつでも解除できる

「学生は,原則として,いつでも任意に在学契約等を将来に向かって解除することができる」(同, 8〜9頁)

判決は続けて、入学辞退の申出は在学契約の解除の意思表示と評価できるとし(同, 9頁)、「入学辞退の方式を定めた法令はなく,入学辞退の申出が当該学生本人の確定的な意思に基づくものであることが表示されている以上は,口頭によるものであっても,原則として有効な在学契約の解除の意思表示と認めるのが相当である」と述べています(同, 9頁)。

入学式の無断欠席

「要項等に,「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,あるいは「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」というような記載がある場合には,学生が入学式を無断で欠席することは,特段の事情のない限り,黙示の在学契約解除の意思表示をしたものと解するのが相当である。」(同, 10頁)

実施要項の②は、この文言とほぼ同じ言い回しを使っています。

3月31日という区切り

判決は、授業料等を返還しないとする特約(判決の言葉で「不返還特約」)を、消費者契約法9条1号にいう損害賠償額の予定または違約金の定めにあたるとしたうえで(同, 12〜13頁)、区切りを次のように述べました。

「在学契約の解除の意思表示がその前日である3月31日までにされた場合には,原則として,大学に生ずべき平均的な損害は存しないものであって,不返還特約はすべて無効となり,在学契約の解除の意思表示が同日よりも後にされた場合には,原則として,学生が納付した授業料等及び諸会費等は,それが初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り,大学に生ずべき平均的な損害を超えず,不返還特約はすべて有効となるというべきである。」(同, 16〜17頁)

「その前日」とは4月1日の前日のことです。判決は、国公立大学の後期日程の合格発表が例年3月24日ころまでにあり、補欠合格の発表もほとんどが3月下旬までに行われているという実情から、一般に4月1日には「学生が特定の大学に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される」と述べています(同, 16頁)。

この事件で判断されたこと

判例情報の「裁判要旨」によれば、この事件は、3月25日までに辞退を申し出れば入学金を除く納付金を返還するという特約のある在学契約を結んだ受験者が、3月26日に大学へ問い合わせた際、職員から入学式に出席しなければ入学辞退として扱うと告げられ、3月31日までに解除せずに4月2日の入学式を欠席して解除したものです。判決は、こうした事情のもとでは、大学が特約が有効であると主張して授業料の返還を拒むことは許されないとしました(最高裁判所, 2006a, 判例情報「裁判要旨」)。判決書では、入学金27万円の返還を求める部分は認められず、授業料80万円の返還が命じられています(同, 1頁・18〜19頁)。

この判決書(平成18年(受)第1130号)は、専願や推薦入試の扱いには触れていません。同じ日に同じ第二小法廷が言い渡した平成17年(受)第1158号・第1159号の判決は、「その大学,学部を専願あるいは第1志望とすること,又は入学することを確約することができることが出願資格とされている推薦入学試験(これに類する入学試験を含む。)」に合格して在学契約を結んだ学生について、「他の多くの受験者よりも一般に早期に有利な条件で当該大学に入学できる地位を確保している」ことなどから、入学することが在学契約の時点で「客観的にも高い蓋然性をもって予測される」と述べました(最高裁判所, 2006b, 19頁)。そのうえで、解除の時期が代わりの入学者を通常容易に確保できる時期を経過していないなどの「特段の事情がない限り」、大学には「初年度に納付すべき授業料等及び諸会費等に相当する平均的な損害が生ずる」としています(同, 19頁)。実施要項の①の括弧書き「(これに類する入学試験を含む。)」は、この判決の言い回しと重なります。この判決が専願の推薦入試をどう扱ったかは、専願・併願・入学確約の決まりで判決書の文言のまま読めます。

入学料の負担軽減の通知(令和7年6月26日)

入学料(入学金)は、平成18年判決の考え方では、特段の事情のない限り返還の対象になりません。そのうえで文部科学省は、令和7年6月26日、高等教育局私学部長の名で、私立大学の設置者あてに入学料の負担軽減を求める通知を出しました(7文科高第491号)。通知は、平成18年判決を引いて入学料の性質を確認したうえで、次のような事情を挙げています(文部科学省, 2025, 1〜2頁)。

そして、令和8年度入試に向けて検討し対応するよう求めたのが、次の3点です(文部科学省, 2025, 2頁)。

  1. 入学料の額や納付時期等の趣旨・考え方を、学生や保護者をはじめ社会の理解が得られるよう積極的に説明すること
  2. 入学料の額の抑制に努めること
  3. 入学しない学生が納める入学料の負担軽減のための方策を講ずるよう努めること。その際、経済的に困難な学生への特段の配慮、辞退の意思表示の時期が代わりの入学者を決められる時期かどうか、入学料を納める時期を複数回設けることなどの観点も考慮することが望ましい

令和9年度の実施要項も、第10の2(2)でこの通知を引き、学生納付金の額の抑制と負担軽減に努めるよう求めています(文部科学省, 2026a, 9頁)。

文部科学省の「考え方等」(令和8年3月13日更新)

文部科学省は、入学料の通知について寄せられた質問への考え方を13問にまとめて公表しています(文部科学省, 2026c)。高校生と先生が知っておくとよいのは次の問いです。

文部科学省は、入学料の通知について寄せられた質問への考え方を13問にまとめて公表しています(文部科学省, 2026c)
質問文部科学省の回答(要約)
質問1 判決との関係入学料の額や納付期限の扱いは、判決等も踏まえて各設置者が判断するもの。判決当時より併願できる総合型選抜等が増え、入学料を複数の大学に納める機会が広がっていることなどを踏まえ、負担軽減の対応をお願いするもの
質問2 対象の入試一般選抜・総合型選抜・学校推薦型選抜の別にかかわらず、入学料を複数の大学に納める機会が生じうる場合が対象
質問4 公表済みの要項募集要項に「納付された入学料は返還しない」と書いて公表している場合でも、負担軽減の取組は志願者に不利益な変更ではないので、ホームページ等で別に公表して対応できる
質問5 経済的に困難な学生入学料の減免、納付時期を複数回にする、納付の猶予などが考えられる
質問9 辞退の時期辞退の意思表示の時期によって入学料の全部または一部を返還する、時期に応じて返還額に差を設けるなどが考えられる
質問10 納付時期合格発表後に入学料の一部を納め、年度内など一定の時期までに残りを納める、納付期限を後ろ倒しするなどが考えられる
質問12 確認文部科学省から各設置者に、令和8年度入試に向けた対応状況や方針を聞く予定

(文部科学省, 2026c, 質問1・2・4・5・9・10・12)

ここから分かるのは、入学料の扱いが大学ごとに違ってきているということです。同じ大学でも、入試の方式によって扱いを分けることがありえます。考え方等の質問3は、全ての入試方法で対応するのに時間がかかる場合、入試方法の一部から対応することも考えられるとしています(同, 質問3)。

高校生と先生が募集要項で確かめる欄

実施要項は、各大学に、入学検定料「その他入学に要する経費の種類・額やその納入手続・期限」などを書いた募集要項を、2026年12月15日までに発表するよう求めています(文部科学省, 2026a, 第10の1(1)、8頁)。入学手続の細かな定めは、合格者に配る入学手続要項に書かれることもあります。読むときに見る欄を、上の決まりに対応させて並べます。

実施要項は、各大学に、入学検定料「その他入学に要する経費の種類・額やその納入手続・期限」などを書いた募集要項を、2026年12月15日までに発表するよう求めています(文部科学省, 2026a, 第10の1(1)、8頁)
確かめること対応する決まり
その方式が専願か併願か(「合格した場合は入学を確約できる者」などの出願資格)実施要項 第10の2(4)①の除外
入学料の納付期限と、それ以外の学生納付金の納付期限が分かれているか実施要項 第10の2(3)、判決(6頁)
入学辞退の申出の方法(書式・提出先・必着か消印有効か)と期限実施要項 第10の2(4)①②
入学式の無断欠席を辞退とみなす記載があるか実施要項 第10の2(4)②
入学料の減免・分割納入・納付猶予・一部返還の定め実施要項 第10の2(2)、入学料の通知、考え方等
修学支援新制度を申請する場合の授業料の納付猶予実施要項 第10の2(2)

専願と併願の決まりそのものは、専願・併願・入学確約の決まりで扱っています。入学料・授業料の全国の平均額や国立大学の標準額は、入学料・授業料・検定料の全国の数字にまとめています。

よくある取り違え

合格から入学までの日付の決まり

入学手続に関係する日付を、実施要項とQ&Aから並べておきます。

年内に手続を済ませた人ほど、入学までの期間が長くなります。その間に別の大学の結果が出ることもあるので、辞退の申出期限と方法は、手続の時点で控えておくのが確実です。

このページの限界

出典

よくある質問

3月31日までに入学を辞退すれば、納めたお金は全部返ってきますか。

実施要項が返還の原則を定めているのは「授業料等及び諸会費等」で、入学料(入学金)は含まれていません。また「専願又は学校推薦型選抜(これに類する入学試験を含む。)に合格して大学等と在学契約を締結した受験者」はこの原則から除かれています(文部科学省, 2026a, 第10の2(4)①、9頁)。実際の扱いは、各大学が募集要項や入学手続要項に書くことになっています。

入学金が返ってこないのはなぜですか。

最高裁判所の平成18年11月27日判決は、入学金を、特段の事情のない限り「学生が当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有するもの」とし、その納付で地位を取得するので、その後に在学契約等が解除されても大学は返還義務を負う理由はないと述べました(最高裁判所, 2006a, 8頁・10〜11頁)。一方で文部科学省は令和7年6月26日に、入学しない学生の入学料の負担を軽くする方策を考えるよう私立大学に通知しています(文部科学省, 2025, 2頁)。

総合型選抜で合格した場合も、3月31日までの辞退の原則は当てはまりますか。

実施要項の文言で除かれているのは「専願又は学校推薦型選抜(これに類する入学試験を含む。)」です。総合型選抜でも、合格したら入学することを条件にする専願の方式は、文言の上では除かれる側に入ります。併願を認める総合型選抜かどうかは、各大学の募集要項の出願資格の欄で確かめてください(文部科学省, 2026a, 第10の2(4)①、9頁)。

入学辞退は書面でないといけませんか。

大学は辞退届の様式や提出先を入学手続要項で定めています。最高裁判所の判決は、入学辞退の方式を定めた法令はないとし、本人の確定的な意思にもとづく申出であることが表示されていれば、口頭でも原則として有効な在学契約の解除の意思表示と認めるのが相当だと述べています(最高裁判所, 2006a, 9頁)。手続は大学の定める方法で行うのが確実です。

合格発表から入学手続の締切までが短すぎると感じます。決まりはありますか。

実施要項は、入学料以外の学生納付金について、昭和50年9月1日の通知の趣旨を踏まえ「合格発表後、短期間内に納入させるような取扱いは避ける」としています(文部科学省, 2026a, 第10の2(3)、9頁)。具体的な期限は大学ごとの入学手続要項で決まります。

総合型選抜の対策(志望理由書・活動報告書・小論文・面接)は、武蔵野個別指導塾 武蔵境本校で副塾長の宮川涼が直接受け持っています。

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