小論文に難しい言葉を使うと評価は上がるか|語彙の難しさと文章の評価の研究
小論文では、ふだん使わない難しい言葉や硬い言い回しを入れると、評価が上がるのでしょうか。難しい語を含む英語の作文ほど高く評価される関係はありますが、言葉の難しさだけで点が決まるわけではなく、正確に使えることが大切です。 総合型選抜や学校推薦型選抜に向けて書き始めると、内容を考えることと、文章を立派に見せることが混ざりやすくなります。まずは、語の難しさと、その語で何を伝えているかを分けて考える必要があります。
- 募集要項の小論文の欄で「表現」という言葉を見たら、どのような表現を評価すると書かれているかに目を向けます。
- McNamaraらは、専門家が採点した英語の作文を自動解析し、文章の特徴と評価の関係を調べました。
- Kyleらは、語の難しさを測る自動の道具の指標と、第二言語の学習者に対する評価の関係を調べました。
- McDonoughらの研究では、大学の経営学部の学生が期末試験で書いた事例の批評文を、担当教員が採点しました。
小論文では、ふだん使わない難しい言葉や硬い言い回しを入れると、評価が上がるのでしょうか。難しい語を含む英語の作文ほど高く評価される関係はありますが、言葉の難しさだけで点が決まるわけではなく、正確に使えることが大切です。 総合型選抜や学校推薦型選抜に向けて書き始めると、内容を考えることと、文章を立派に見せることが混ざりやすくなります。まずは、語の難しさと、その語で何を伝えているかを分けて考える必要があります。
書店で小論文の参考書を開き、見慣れない熟語の多さに戸惑う場面を考えてみます。同じような語を覚えればよいのか、それとも自分の言葉のままでよいのか、迷うかもしれません。選ぶ目安は、その語の意味を説明でき、書こうとしている事柄に合う形で使えるかどうかです。
26の文のつながりの指標を調べても、評価の高い英作文と低い英作文には差が見られなかったという研究があります。その一方で、高く評価された文章には、難しい語や洗練された言い回しの特徴が多く含まれていました。[1] この違いを出発点に、言葉の選び方と評価の関係を見ていきます。
難しさ、正確さ、表現を分けて読む
募集要項の小論文の欄で「表現」という言葉を見たら、どのような表現を評価すると書かれているかに目を向けます。「評価の観点」は答案の何を見るかを、「出題の意図」はその課題でどのような力を確かめようとしているかを読む欄です。表現に触れた記載があれば、難しい単語を知っていることと、考えを文章で伝えることを区別して読むと、準備の方向が定まります。
語彙とは、使ったり理解したりする言葉の集まりのことです。研究でいう「語の洗練度」は、よく使われる語より少し難しい語をどれほど使うか、といった特徴を指します。それに対して正確さは、意味や文の形に誤りがないかという面です。同じ語でも、意味を理解して使う場合と、響きだけで選ぶ場合では、文章の中で果たす役割が違います。
たとえば「公平」と「平等」は、どちらも社会の仕組みを論じる際に使う言葉です。しかし、全員への同じ扱いを述べたいのか、事情の違いに応じた扱いを述べたいのかによって、説明すべき内容は変わります。言葉を入れ替えると、主張まで変わることがあります。難しいかどうかより、何を同じにし、どの違いを考慮するのかを説明する方が、選んだ語の意味を確かめやすくなります。
「表現力を評価する」という記載を読んだときも、見栄えのよい熟語を増やす課題に置き換えないことが大切です。自分の答案で確かめるのは、主張と理由を結ぶ文が、意図した意味になっているかという点です。読み手に補ってもらう内容が多ければ、その部分を具体的に書く余地があります。研究の「難しい語」という特徴と、募集要項の「表現」という評価の言葉は、それぞれの文脈の中で読む必要があります。
高い評価の英作文には難しい語の特徴があった
McNamaraらは、専門家が採点した英語の作文を自動解析し、文章の特徴と評価の関係を調べました。高く評価された作文ほど、文章の難しさや洗練された言い回しに関わる特徴を含む傾向がありました。一方、つなぎの言葉など、文のつながりを測る指標では評価の高低に差が見られませんでした。[1] 語や文の特徴をまとめて「難しそうな文章」と捉えると、この結果の違いを見落とします。
この結果で注目したいのは、難しい語の特徴と、つながりの特徴が別々に調べられていることです。「したがって」「一方で」といった言葉を足す作業と、伝えたい事柄に合う語を選ぶ作業は、文章の違う面に関わります。つなぎの言葉があっても、その前後の内容が本当に理由と結論の関係になっているかは、文章を読んで確かめる必要があります。見直すときには、表面の言い回しだけでなく、それが示す関係に目を向けます。
Guoらは、英語を外国語として学ぶ人の試験であるTOEFL iBTの異なる作文課題を比べました。語の洗練度は、調べた課題のいずれでも点の予測に関わっていました。ただし、ほかの言葉の特徴と評価との関係は課題によって異なり、評価に結びつく面には共通点と違いがありました。[2] 同じ試験の作文でも、課題を離れて語の特徴だけを見ると、評価の仕組みを単純に捉えすぎてしまいます。
ここでいう予測は、文章の特徴を手掛かりに評価の高低を説明するという意味です。語を難しくした同じ答案を比較して、点の上昇を確かめたという意味とは異なります。これらの英語の作文の研究は、特徴と評価が一緒に動く関係である相関を扱っています。[1][2] 言葉を選ぶ際には、この区別を保ちながら結果を読むことになります。
47.5%は答案の配点の割合ではない
Kyleらは、語の難しさを測る自動の道具の指標と、第二言語の学習者に対する評価の関係を調べました。その指標で、語彙の力の総合評価のばらつきの47.5%、話す力の総合評価のばらつきの48.7%を説明できました。[3] ここで扱われているのは、語彙の力や話す力に付いた評価です。小論文の総合点の配点を示した数字とは、測っているものが違います。
「評価のばらつきを説明する」とは、人によって評価が高かったり低かったりする違いが、測った特徴とどれだけ結びつくかを表すことです。答案の点を言葉と内容に切り分け、そのうちの取り分を算出したわけではありません。語の難しさは評価と関わるものの、それだけでは評価の違いのすべてを説明しきれない、という位置づけで読むのが適切です。[3] 残る部分をそのまま「論理の点」「知識の点」などに割り振る読み方も、測定の範囲を超えます。
作文の研究と、この語彙の評価の研究を並べると、共通する点と測定の違いが見えてきます。難しい語の特徴が人の評価と結びつく点は共通しています。次の表では、どの評価を見た結果なのかを分けて示します。
| 研究 | 調べた文章や力 | 評価と結びついたこと |
|---|---|---|
| McNamaraら [1] | 専門家が採点した英語の作文 | 高評価の作文に難しい語や洗練された表現の特徴が多かった |
| Guoら [2] | TOEFL iBTの異なる作文課題 | 語の洗練度は共通して関係し、ほかの特徴には課題による違いがあった |
| Kyleら [3] | 第二言語の語彙の力と話す力 | 語の難しさの指標が評価のばらつきの一部を説明した |
| McDonoughら [4] | 経営学部の学生が書いた事例の批評文 | 語の洗練度と誤りの多さが、点に対して逆向きに関係した |
| Barkaoui [5] | 第二言語として書いた英語の作文 | 経験のある採点者は言葉の正確さを重く見た |
言葉の正確さを軽く扱えない理由
McDonoughらの研究では、大学の経営学部の学生が期末試験で書いた事例の批評文を、担当教員が採点しました。語の洗練度は点が高い方向と関係した一方、誤りの多さは点が低い方向と関係しました。[4] 難しい語を使う面と、誤りを避ける面が、同時に評価と関わっている結果です。語を難しくすることだけに注意を向けると、正確さという別の面が抜け落ちます。
この結果は、難しい語をすべて避ける理由にもなりません。考えを表すのに必要な語で、意味と用法を理解しているなら、その語を使う理由があります。問題になるのは、語が表す内容よりも、文章が立派に見えるかを先にしてしまう選び方です。正確な語を選ぶという基準なら、難しい語を残す場合も、身近な言葉に戻す場合も、同じ理由で判断できます。
Barkaouiの研究では、経験のある採点者31人と経験の浅い採点者29人が、英語を第二言語として書いた作文を評価しました。経験のある採点者は、経験の浅い採点者よりも言葉の正確さを重く見ていました。[5] この結果から着目したいのは、読み手が語の高度さだけを見ているわけではないという点です。書き手にとっては、難しい語を知っていることと、その語を適切な文の中で使えることを分ける材料になります。
たとえば「相関」と書くなら、どの事柄とどの事柄が一緒に変わる関係を述べているのかを説明します。「原因」と書くなら、何が何を引き起こすと主張しているのかを確かめます。どちらを選ぶかによって、文が述べる関係の強さは変わります。語を覚えたかどうかに加えて、その語を置くことで自分がどこまで主張したことになるかを見るのが、正確さを確かめる作業です。
説明できる語を残し、曖昧な語を見直す
日本語の小論文で言葉を選ぶ目安としては、その語の意味を、別の難しい語に置き換えて逃げずに説明できるかを使えます。辞書の説明を確かめた後、自分が書いた文の中では何を指しているかを具体的に考えます。語だけを取り出して意味を言えることと、文の中の用法が適切なことは、続けて点検する必要があります。文章を直す際は、気になった語を含む文を読み、前後の主張との関係まで見ます。
たとえば「持続可能な仕組みが必要だ」と書いたなら、何を続ける仕組みなのかを説明します。費用を負担し続ける話なのか、資源を使い切らない話なのか、担い手を確保する話なのかによって、理由として挙げる内容が変わります。その説明が文章の中にあれば、語が主張の中で働いています。説明を考えても対象が定まらなければ、先に主張を具体化する余地があります。
覚えたばかりの語を急いで答案に入れようとしている人には、まず意味を確かめる段階が必要です。似た語との違いを尋ねられると答えに迷う場合や、使うたびに違う意味で説明している場合は、文を身近な言葉で書き直してみます。その際、もとの語が表していた大切な区別まで失っていないかを見ます。短く易しくしただけで満足せず、伝えたい内容が残っているかを確かめる作業です。
一方、課題の中で重要な意味を持つ用語まで、難しいという理由で消す必要はありません。その語を使うことで何と何を区別できるのかが明確なら、説明を添えて用いる選択ができます。保護者が答案を読むときも、「もっと難しい言葉にした方がよい」と直す前に、その文の意味を本人に説明してもらうと、曖昧な部分を見つけやすくなります。言葉の響きより、書き手の説明と文の意味が一致しているかを判断の中心に置きます。
出願前は評価の観点と出題の意図を確かめる
募集要項で確認するのは、小論文の「評価の観点」と「出題の意図」に、言葉の正確さや表現について何が書かれているかです。「表現」という語があれば、その前後にどのような説明が付いているかを読みます。自分の考えを伝えることを求めている記載と、用語の理解に触れる記載とでは、答案で確かめる場所も変わります。自分が気にしている「難しい語の数」を、書かれている評価の観点に置き換えてしまわないようにします。
言葉の正確さが挙げられている場合は、答案中の語が意図した意味で使われているかを照らし合わせます。表現の明確さに触れている場合は、誰について、何について述べているかが文から読み取れるかを確かめます。どちらも、目立つ熟語を探して増やす作業とは異なる確認です。観点の言葉と答案の具体的な箇所を結びつけると、何を直そうとしているのかがはっきりします。
「出題の意図」を読む際は、言葉の理解が課題のどこに関わるかにも注意を向けます。たとえば、概念の区別に触れる説明があるなら、似た言葉を使い分けた箇所が確認の対象になります。考えを伝える表現に触れる説明があれば、主張や理由が曖昧な名詞だけで済まされていないかを見ることができます。記載されている観点に合わせて見直すと、使った語が課題に応じた役割を果たしているかを考えやすくなります。
小論文の言葉選びは、難しい語を使うか使わないかの二択で終わる作業ではありません。必要な意味を表せる語を選び、その意味を説明できる形で文章に置くことが、準備の目安になります。英語の作文の研究では、語の洗練度と評価の結びつきとともに、誤りの多さや正確さの重みが示されています。[1][2][4][5] 難しい語への置き換えで点が上がるという因果関係や、日本語の小論文で評価がどれほど変わるかは、これらの結果だけでは判断できない点です。
よくある質問
易しい言葉ばかりだと低く評価されますか
紹介した研究が示すのは、高く評価された英作文に、難しい語や洗練された表現の特徴が多かったという関係です。[1] 易しい語を含む文を一律に低く評価するという規則とは違います。書いた内容を曖昧にしている語があるか、必要な区別を言葉で表せているかを確かめる方が、答案を直す場所を見つけやすくなります。身近な言葉でも意味が正確に伝わっているなら、難しさだけを理由に置き換える必要はありません。
語彙を増やす勉強は何を目標にすればよいですか
文章で使うことを考えるなら、語の意味と、どのような場面で使うかを結びつけて覚えるのが目標になります。似た言葉との違いや、その語が指す具体的な事柄を説明してみると、理解の曖昧な部分が見えます。答案に使った後は、もとの意味のまま文に収まっているかを読み直します。覚えた語を使うこと自体を目的にせず、必要な意味を表すために選べる状態を目指す、という学び方の目安です。
表現を直すとき、保護者はどう関われますか
難しい語に言い換えた完成文を渡す前に、気になった語が何を指しているのかを本人に説明してもらいます。説明と答案の意味がずれていたら、どちらを伝えたかったのかを確かめると、直す方向が定まります。募集要項の評価の観点に表現や正確さへの記載がある場合は、その言葉を手掛かりに読む場所を絞れます。本人が意味を説明できる文を残すことが、読み手として支える際の目安になります。
この記事の限界
測定されているのは、英語の作文の評価や第二言語の語彙・話す力であり、日本の年内入試における日本語の小論文の評価を直接調べた結果ではありません。語の難しさと評価との関係を扱う研究や採点者の比較を材料にしているため、ここで示した言葉選びの目安は、特定の語へ置き換えた場合の得点の変化を表すものではありません。
扱った研究は刊行された時期や課題が異なり、語彙の評価と作文の評価の違いを保って読む必要があります。出願に際しては、年度ごとに変わる募集要項と大学の最新の発表を優先し、言葉の正確さや表現に関する実際の記載に沿って判断することが必要で、研究を整理したこの文章は個別の出願判断の代わりにはなりません。
参考文献
- McNamara ほか. Linguistic Features of Writing Quality. Written Communication. 2010;27(1):57-86.
- Guo ほか. Predicting Human Judgments of Essay Quality in Both Integrated and Independent Second Language Writing Samples: A Comparison Study. Assessing Writing. 2013;18(3):218-238.
- Kyle ほか. Automatically Assessing Lexical Sophistication: Indices, Tools, Findings, and Application. TESOL Quarterly. 2015;49(4):757-786.
- McDonough ほか. Instructor Evaluation of Business Student Writing: Does Language Play a Role?. Business and Professional Communication Quarterly. 2021;84(2):116-134.
- Barkaoui. Explaining ESL Essay Holistic Scores: A Multilevel Modeling Approach. Language Testing. 2010;27(4):515-535.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
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よくある質問
易しい言葉ばかりだと低く評価されますか
紹介した研究が示すのは、高く評価された英作文に、難しい語や洗練された表現の特徴が多かったという関係です。[1] 易しい語を含む文を一律に低く評価するという規則とは違います。書いた内容を曖昧にしている語があるか、必要な区別を言葉で表せているかを確かめる方が、答案を直す場所を見つけやすくなります。身近な言葉でも意味が正確に伝わっているなら、難しさだけを理由に置き換える必要はありません。
語彙を増やす勉強は何を目標にすればよいですか
文章で使うことを考えるなら、語の意味と、どのような場面で使うかを結びつけて覚えるのが目標になります。似た言葉との違いや、その語が指す具体的な事柄を説明してみると、理解の曖昧な部分が見えます。答案に使った後は、もとの意味のまま文に収まっているかを読み直します。覚えた語を使うこと自体を目的にせず、必要な意味を表すために選べる状態を目指す、という学び方の目安です。
表現を直すとき、保護者はどう関われますか
難しい語に言い換えた完成文を渡す前に、気になった語が何を指しているのかを本人に説明してもらいます。説明と答案の意味がずれていたら、どちらを伝えたかったのかを確かめると、直す方向が定まります。募集要項の評価の観点に表現や正確さへの記載がある場合は、その言葉を手掛かりに読む場所を絞れます。本人が意味を説明できる文を残すことが、読み手として支える際の目安になります。