練習の録画を見返すと大学の面接の受け答えは良くなるか|スピーチの映像による振り返りの研究
面接の練習を録画しても、見返せば受け答えが良くなるのか、自分の姿が気になって緊張が増すのか迷います。録画は、見る観点を決めて評価や講評につなげると練習に役立ちますが、自信の変化と外から見たできは同じようには動きません。週末にスマートフォンで練習を撮った場面を考えると、映像には話の内容だけでなく、本人が気にしていなかった間や、説明を省いた箇所も残ります。それを漠然と眺めるのか、何を確かめるか決めて読むように見るのかが、振り返りの組み立てを変えます。
- 募集要項の面接の欄は、録画のどこに注目するかを決める入口です。
- Fukkinkらの分析では、対人のやり取りの技能に0.40標準偏差の効果がありました。
- Ritchieの研究では、大学の授業で発表を録画し、一方の組には録画を見て評価表で自己評価することを求めました。
- Parrらは、人前で強い不安を感じる13〜17歳の36人を、スピーチの録画を見る組と見ない組にくじ引きで分けました。
面接の練習を録画しても、見返せば受け答えが良くなるのか、自分の姿が気になって緊張が増すのか迷います。録画は、見る観点を決めて評価や講評につなげると練習に役立ちますが、自信の変化と外から見たできは同じようには動きません。週末にスマートフォンで練習を撮った場面を考えると、映像には話の内容だけでなく、本人が気にしていなかった間や、説明を省いた箇所も残ります。それを漠然と眺めるのか、何を確かめるか決めて読むように見るのかが、振り返りの組み立てを変えます。
大学の授業で発表の録画を見た研究では、評価表で自己評価した組のほうが、見るよう勧められただけの組より次の発表で高い点を取りました。[3]一方、自分のできを前向きに見るようになっても、第三者には差が見分けられなかった実験もあります。[4]手掛かりとなるのは面接そのものではなく、スピーチや対人技能の研究であり、大学入試の面接で同じ成果が出るとは言えません。総合型選抜や学校推薦型選抜の準備に取り入れるときは、募集要項が示す評価の観点と、研究で実際に測った変化の両方を読む必要があります。
面接練習の録画は、要項の評価の観点から読む
募集要項の面接の欄は、録画のどこに注目するかを決める入口です。「評価の観点」は何について判断するかを示し、「時間」は練習の長さを考える材料になり、「形式」は個人・集団・オンラインなどの進め方に関わります。たとえば説明の筋道に関する記述があれば、話した順序と根拠のつながりが映像を読む対象になります。要項に書かれた言葉を、録画の中で探せる発言ややり取りへ置き換えると、漠然とした印象だけでできを決めずに済みます。
評価の観点を先に置く意味は、専門職の訓練をまとめた研究にも表れています。Fukkinkらは、自分の映像を見て振り返る訓練について、33の実験研究、計1,058人をまとめました。[1]このメタ分析は、複数の研究の結果をまとめて計算する方法で、身につける技能を決めた観察の用紙を使う訓練ほど効果が大きくなっていました。[1]研究で使う用紙は、映像を見る人に、何を技能として捉えるかという枠を与える役割を持っています。
面接の「時間」の記載も、録画を読む際には単なる終了の合図にとどまりません。発表の録画を評価表で振り返った研究では、次の発表の内容の説明だけでなく、時間の使い方にも差が出ています。[3]要項に示された時間が面接全体を指すのか、発表部分を指すのかによって、録画で見る区間は変わります。個人で話す場面と集団で順番を待つ場面を同じ長さの独話として練習するより、形式の記述に対応する区間を持つ記録のほうが、振り返る対象を定めやすくなります。
映像を使った訓練で、何が伸びたのか
Fukkinkらの分析では、対人のやり取りの技能に0.40標準偏差の効果がありました。[1]標準偏差は得点の散らばりを表す尺度で、この値は尺度の違う研究の変化を比べるために使われています。面接の点がそのまま一定の割合だけ増えるという読み方ではなく、対人技能の訓練に平均として改善が見られた、という結果です。分析の対象は人と接する仕事の専門職であり、観察用紙を用いた訓練の特徴と併せて読むことが大切です。[1]
より話す課題に近いのが、中国の大学の英語の授業を比べたLiuらの研究です。74人が在籍するクラスを、授業内で映像を見て振り返る組、個別に映像を見て振り返る組、口頭で講評を受ける組に割り当てました。[2]授業内で映像を使った組は、口頭の講評だけの組より話し方と総合的な力が伸び、話す不安も下がりました。[2]映像を使うという共通点の中にも、誰と、どんな場で振り返るかという条件が含まれています。
Liuらの比較は、参加者をくじ引きで分けたものではなく、クラス単位の割り当てでした。[2]そのため、結果を読む際には、映像の有無だけでなく、もとのクラスの特徴も考慮する必要があります。ここで伸びたのは、授業内の振り返りを組み込んだ英語スピーチの力で、スマートフォンを置くことだけを試した結果ではありません。授業内の組と口頭の講評の組との比較を、映像を使うすべての方法の順位へ広げず、実際に伸びが見られた条件のまま受け取るのが適切です。[2]
評価表は、次の発表に直す箇所をつなぐ
Ritchieの研究では、大学の授業で発表を録画し、一方の組には録画を見て評価表で自己評価することを求めました。[3]もう一方の組は、録画を見るように勧められただけでした。[3]次の発表では、評価表で自己評価した組の点が高く、内容の説明、時間の使い方、話し方に差が出ました。[3]映像に触れる機会を設けることに加えて、評価する作業を練習の中に組み込んだ比較になっています。
ただし、この研究では自己評価の点と教員の点が合っていませんでした。[3]自己評価を行うことが次の発表に役立つという結果と、自分で付けた点が教員の採点に近いという結果は、研究の中でも揃っていなかったのです。評価表を使う意義を、自分で本番の点を予想することに置くと、この結果を読み違えます。本人の評価は、何を直そうと考えたかを残す記録として読み、教員の評価は発表を外から見た記録として読むと、それぞれの用途が明確になります。[3]
要項の言葉を練習用の表に移す場合は、点だけでなく、その判断の根拠となる発言を残す欄があると扱いやすくなります。たとえば「理由が伝わった」と書くだけで終えず、どの説明を聞いてそう判断したかを発言の順序とともに記します。「途中で迷った」という感想には、問いを聞き直した場面なのか、理由を探して止まった場面なのかを添えます。こうした記録は大学の採点表を再現するものではなく、次の練習で同じ箇所を見比べるための作業用の表です。
自分への評価、不安、第三者の評価を分けて捉える
Parrらは、人前で強い不安を感じる13〜17歳の36人を、スピーチの録画を見る組と見ない組にくじ引きで分けました。[4]録画を見た組では、自分のできをより前向きに捉えるようになり、次のスピーチへの不安も下がりました。[4]しかし、第三者の観察者には、録画を見た組と見なかった組の違いが見分けられませんでした。[4]本人が感じた変化と、外から捉えた変化が一致しない結果は、録画の効果を何で判断するかを考える材料になります。
Rodebaughは、スピーチに不安のある大学生95人に、映像を見る前の心の準備を行う方法を試しました。[5]何が映るかを予想するなどの準備を、注意をそらす準備と比べたところ、自分のできの見え方には大きな効果がありました。[5]一方、不安の低下は小さく、スピーチを避ける行動には効果がありませんでした。[5]同じ実験の中でも、見え方、気持ち、行動のそれぞれで結果が違ったことが、この研究の重要な点です。
両研究の結果を並べると、「見返して良かった」という感想だけでは練習のどの部分が変わったかを捉えきれないことが見えてきます。[4][5]前向きな自己評価は本人の受け止め方を、不安の低下は次の課題に向かう気持ちを表しています。第三者の評価や実際に話す行動まで同じ向きに動いたかは、それぞれ測った結果を読む必要があります。以下は、映像による振り返りで測られたものを比較した表です。
| 測ったもの | 研究で見られた変化 | 練習の記録で対応するもの |
|---|---|---|
| 発表の出来 | 評価表で自己評価した組の次の発表の点が高い[3] | 説明や時間の使い方に対する講評 |
| 自分の出来の見え方 | 録画を見た組で前向きになった[4] | 本人が映像を見た感想 |
| 次のスピーチへの不安 | 録画を見た組で下がった[4] | 話す前の本人の気持ち |
| 第三者から見た出来 | 録画を見たかどうかを見分けられなかった[4] | 聞き手が捉えた受け答え |
| スピーチを避ける行動 | 映像を見る前の準備による効果はなかった[5] | 実際に話す課題へ取り組んだ記録 |
映像での講評が向く部分と、向かない使い方
「映像による振り返り」には、自分の録画を見る方法だけでなく、相手が動画で講評を返す方法もあります。Tsengらの研究では、英語を外国語として学ぶ43人が話す動画を作り、仲間から動画または文字で講評を受けました。[6]動画の講評は抑揚の改善に、文字の講評は文法と語の使い方の正確さに役立ちました。[6]どちらの形式でも、発音や流暢さ、つまり途切れずに話す滑らかさには大きな改善が見られませんでした。[6]
この研究の学生は、効率とわかりやすさから文字の講評を好みました。[6]映像のほうが情報が多そうに見えても、受け取る人が扱いやすい形式は文字の場合があります。Tsengらが比べたのは仲間から届く講評の形式であり、本人が録画を何度見るかではありません。本人の感じ方を尋ねた部分が多い研究でもあるため、講評の好みと、発音などの技能の変化は、測られた項目に沿って読む必要があります。[6]
映像を見るたびに姿ばかりが気になる人には、録画を繰り返し再生すること自体を練習の目標にする使い方は向きません。要項の評価の観点に対応する発言を文字で整理する、聞き手に説明が伝わった箇所を短く書いてもらう、といった進め方も選べます。目の前の課題が説明の不足なら、表情の小さな変化を追い続けるより、抜けている理由を記録の中に探すほうが作業の目的に沿います。録画を使うかどうかは、撮影の手軽さより、今回直したい内容を扱えるかで決めます。
出願までにすること
研究を練習に移す際は、録画を撮る予定だけで終えず、見る対象と振り返り後の作業を予定に入れます。Ritchieの比較で次の発表に差が出たのは、評価表による自己評価を求められた組でした。[3]次の手順は、その研究の点数を再現するためではなく、要項から読み取れる条件のもとで、自分の練習に修正の過程を作るためのものです。
- 募集要項の面接の「評価の観点」「時間」「形式」を抜き出し、練習する課題と対応させます。時間が発表部分だけを指すのか、質疑も含むのかを前後の説明まで読んで確かめます。記載のない条件は推測で埋めず、要項に明記された内容と学校で相談する内容を分けてメモに残します。
- 録画を見る前に、今回直したい箇所を選び、再生中はその箇所の発言を記録します。たとえば理由の説明を対象にしたなら、結論に続く根拠がどこで述べられたかを追い、次に話すときに補う内容を書きます。再び話した記録では、同じ説明が聞き手に届く形になったかを見比べます。
- 他の人に見てもらう際は、選んだ観点と該当する映像を一緒に渡し、判断の根拠になった発言を尋ねます。自分の感想と相手の指摘が食い違った箇所は、どちらの点が高いかを争わず、実際の発言に戻って照らし合わせます。聞き手が受け取った内容を踏まえて、次の練習で修正する箇所を決めます。
よくある質問
学校で撮影するときは、先に誰に相談すればよいですか
練習を担当する教員に、撮影する目的と、映像を誰が見る予定なのかを伝えるのが出発点です。教員や他の生徒が映る場合は、その人にも撮影と共有の範囲を確かめ、学校の機器や場所を使うときの決まりに従います。本人の振り返り用に撮った映像を、相手に知らせず別の人へ送る予定に変えないよう、保存先と共有する相手を撮影前に揃えておくと、後から扱いを迷わずに済みます。
撮影専用の機器を用意する必要がありますか
まずは手元の機器で、質問と答えの音声、話している場面が見直せる状態になっているかを確かめます。録画が途中で止まったり、質問が聞き取れなかったりすると、受け答えの流れを追う材料が欠けます。専用機器を選ぶことより、保存容量や充電、再生時の聞き取りを短い試し撮りで確かめておくことが、練習の記録を残すための準備になります。
本番の面接も録画して振り返ってよいですか
練習用の録画を本人たちで作ることと、試験会場で記録することでは、従う手続きが変わります。本番は募集要項や受験上の注意にある端末の持込み・使用の決まりに従い、記述が曖昧なら大学の入試担当窓口へ事前に尋ねます。練習で便利だったという理由で撮影を始めず、大学が示した条件のもとで受験することを優先します。
この記事の限界
測定された成果は、発表の評価、本人の自己評価、不安、話すことを避ける行動にまたがり、研究によって変化を捉えた場所が違います。対象も働く専門職、大学の授業の学生、人前で強い不安を感じる若者などで、クラス単位の比較や少人数の実験を含むため、高校生の練習方法を選ぶ際には対象と課題を併せて読む必要があります。評価の観点を設けた映像の振り返りには技能の改善を示す結果がありますが、日本の年内入試の面接の点がどこまで変わるかは、これらの研究からは言えません。出願年度の募集要項と大学の最新の発表を基準に練習条件を定め、研究の結果を練習の組み立てに生かす際にも、測られた技能の範囲を踏まえます。
参考文献
- Fukkink ほか. Video Feedback in Education and Training: Putting Learning in the Picture. Educational Psychology Review. 2011;23(1):45-63.
- Liu ほか. The effect of in-class and one-on-one video feedback on EFL learners’ English public speaking competency and anxiety. Studies in Language Assessment. 2022:25-57.
- Ritchie. Self-assessment of video-recorded presentations: Does it improve skills? Active Learning in Higher Education. 2016;17(3):207-221.
- Parr ほか. Social anxiety in adolescents: the effect of video feedback on anxiety and the self-evaluation of performance. Clinical Psychology & Psychotherapy. 2009;16(1):46-54.
- Rodebaugh. I might look OK, but I’m still doubtful, anxious, and avoidant: The mixed effects of enhanced video feedback on social anxiety symptoms. Behaviour Research and Therapy. 2004;42(12):1435-1451.
- Tseng ほか. The impact of video and written feedback on student preferences of English speaking practice. Language Learning & Technology. 2019;23(2):145-158.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
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- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
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よくある質問
学校で撮影するときは、先に誰に相談すればよいですか
練習を担当する教員に、撮影する目的と、映像を誰が見る予定なのかを伝えるのが出発点です。教員や他の生徒が映る場合は、その人にも撮影と共有の範囲を確かめ、学校の機器や場所を使うときの決まりに従います。本人の振り返り用に撮った映像を、相手に知らせず別の人へ送る予定に変えないよう、保存先と共有する相手を撮影前に揃えておくと、後から扱いを迷わずに済みます。
撮影専用の機器を用意する必要がありますか
まずは手元の機器で、質問と答えの音声、話している場面が見直せる状態になっているかを確かめます。録画が途中で止まったり、質問が聞き取れなかったりすると、受け答えの流れを追う材料が欠けます。専用機器を選ぶことより、保存容量や充電、再生時の聞き取りを短い試し撮りで確かめておくことが、練習の記録を残すための準備になります。
本番の面接も録画して振り返ってよいですか
練習用の録画を本人たちで作ることと、試験会場で記録することでは、従う手続きが変わります。本番は募集要項や受験上の注意にある端末の持込み・使用の決まりに従い、記述が曖昧なら大学の入試担当窓口へ事前に尋ねます。練習で便利だったという理由で撮影を始めず、大学が示した条件のもとで受験することを優先します。