小論文の過去問は何回書いて直せばよいか|採点者による点の揺れと添削の研究
0.87という効果量が、米国の小中学生を対象とした文章指導の研究で報告されています。効果量は、指導を受けた側と比較する側の違いを、成績のばらつきを物差しにして表す値で、ここでは大人から文章への指摘を受けた場合の結果です。入試の合否を調べた研究ではなく、日本の年内入試の研究ではないため、必要な練習回数はこの数字からは言えません。過去問を何回書き、どこまで直せば練習を終えてよいのかと迷うときは、添削を受けた後の変化に目を向けます。回数を先に決めるより、指摘された問題を自分で直し、別の課題でも同じ点を点検できることを、練習を進める目安にします。
- 過去問の公開範囲や入手先は大学ごとに異なるため、大学の公式発表で確かめます。
- Grahamらのメタ分析は、複数の研究をまとめて効果を計算する方法で、日々の授業につながる文章の評価を調べました。
- 英国イングランドの14歳向け全国作文テストを調べたLeckieらの研究は、実際の採点データを分析しました。
- 添削の指摘は、文章のどの働きに関するものかを整理すると扱いやすくなります。
0.87という効果量が、米国の小中学生を対象とした文章指導の研究で報告されています。効果量は、指導を受けた側と比較する側の違いを、成績のばらつきを物差しにして表す値で、ここでは大人から文章への指摘を受けた場合の結果です。入試の合否を調べた研究ではなく、日本の年内入試の研究ではないため、必要な練習回数はこの数字からは言えません。過去問を何回書き、どこまで直せば練習を終えてよいのかと迷うときは、添削を受けた後の変化に目を向けます。回数を先に決めるより、指摘された問題を自分で直し、別の課題でも同じ点を点検できることを、練習を進める目安にします。
図書室で過去問を開くと、未着手の問題を増やすか、返された答案を書き直すかで迷うことがあります。解いた問題の数は進み具合を記録する材料になりますが、答案のどこが変わったかも一緒に残すと、次の作業を選びやすくなります。点数、添削者の指摘、自分が直した理由を分けて見れば、評価が動いた理由も探れます。小論文の練習は、募集要項で試験の条件を確かめる作業と、答案を読み直して修正する作業をつないで進めます。
過去問を選ぶ前に、募集要項の試験条件を読む
過去問の公開範囲や入手先は大学ごとに異なるため、大学の公式発表で確かめます。手に入れた問題には、実施年度、学部、選抜方式を添えて保存しておきます。同じ大学名が付いていても、志望する方式と問題の条件が一致するかを照合する必要があります。募集要項の「選考方法」で小論文の位置づけを読み、「試験科目」「試験時間」「配点」などの欄に進むと、練習で再現する条件を拾えます。
「小論文」という名称だけで、毎回同じ作業を求められると考えるのは早計です。課題文を読んで答えるのか、図表を使うのか、設問がどのような応答を求めるのかを、実際の問題と照らします。総合型選抜や学校推薦型選抜では、ほかの選考資料と合わせて評価する場合もあるので、選考の段階や小論文の配点も記録します。小論文だけの評価と、選抜全体の合否を区別しておくと、添削の点数を受け取るときの位置づけが明確になります。
募集要項や問題冊子に「評価の観点」「出題の意図」が掲載されていれば、その言葉を添削者にも渡します。「論理的に述べる」などの表現は、練習ではどの箇所を見て判断するのかまで話し合うと使いやすくなります。たとえば、設問への応答、課題文の理解、主張を支える根拠を区別し、指摘がどこに関わるかを書き添えます。大学が公表した観点と、添削者が練習のために設けた観点は、出所を分けて記録します。
時間を区切って書いた答案と、資料を調べながら直した答案も別に扱います。前者はその条件で何が書けたかを知る資料になり、後者は理解を深めながら修正した結果を示します。答案の余白に、時間を区切ったか、途中で資料を見たかを書いておけば、読み返すときに比較の条件がそろいます。初めの答案を消さずに残すことが、その後の添削を練習の記録へ変える出発点です。
添削は、点を知らせることと直す情報を返すことにわかれる
Grahamらのメタ分析は、複数の研究をまとめて効果を計算する方法で、日々の授業につながる文章の評価を調べました。米国の小中学生に対する実験や準実験を集め、文章への指摘を受ける条件と、それぞれの研究で設けた比較条件を調べています。文章の質に対する平均の効果量は、大人からの指摘が0.87、仲間からが0.58、自分による評価が0.62、コンピュータからが0.38でした。どの形でも文章の質の向上が見られ、大人からの指摘の平均値が最も大きくなっていました。
ここで注目したいのは、書いた本人に情報が返されるという共通点です。教師が進み具合を見守るだけの取り組みでは、効果がはっきりしませんでした。練習に置き換えて考えるなら、答案を提出したかどうかに加えて、返却後に何を読み取り、どう修正するかを予定に入れます。添削を受ける前に、今回見てもらいたい箇所を書いておくと、返された指摘との対応を追いやすくなります。
学習全般への指摘をまとめたWisniewskiらのメタ分析では、平均の効果はd = 0.48でした。dも効果の大きさを示す記号で、研究ごとの結果には大きなばらつきがありました。著者らは、伝える情報の中身によって効果が変わることを重視しています。「添削を受けた」という記録の先に、どんな情報を受け取ったかを書き残すことが、練習を考える手掛かりになります。
点数が示すのは、ある基準で見たときの答案の評価です。一方、修正に使うには、問題がある箇所、その理由、次に点検することが必要になります。「説明が足りない」という指摘なら、どの主張とどの根拠の間に説明が必要かを尋ねると、作業に移せます。よかった箇所も理由と一緒に残しておけば、書き直すときに保つべき部分がわかります。
同じ答案でも、採点者と採点方法によって点が動く
英国イングランドの14歳向け全国作文テストを調べたLeckieらの研究は、実際の採点データを分析しました。そこで見られたのは、採点者が点を中央に寄せる傾向と、採点の厳しさが時間を通じて安定していないことです。中央に寄せるとは、高い点や低い点を避け、中間の評価に集める傾向を指します。採点の結果には答案の特徴に加えて、読み手が評価を付ける際の特徴も表れます。
Barkaouiは、英語を第二言語として使う人の作文を、経験の浅い採点者31人と経験のある採点者29人に評価してもらいました。第二言語とは、母語とは別に学んで使う言語のことです。採点者は、答案全体をまとめて評価する方法と、観点ごとに分けて評価する方法の両方を使いました。採点の方法や経験によって、点の厳しさや採点者どうしの評価の一致に違いがありました。
この違いを念頭に置くと、添削者が変わった日の点数は、コメントと一緒に読む必要があります。前の答案より低い点でも、以前は評価されていなかった観点を詳しく見た結果かもしれません。反対に、高い点が付いたときも、どの記述が評価されたのかを確かめれば、次の答案に生かす対象が見つかります。点の上がり下がりを記録する際は、採点者と評価の観点も並べます。
異なる添削者の意見が食い違ったら、まず同じ箇所について述べているかを確かめます。全体の読みやすさを評価する意見と、根拠の不足を指摘する意見は、両方が成り立つことがあります。同じ箇所について判断が異なる場合は、設問と公表された観点に戻り、それぞれの理由を聞きます。高い点を付けた人を選ぶ作業より、修正の根拠を言葉にする作業へ進めることが大切です。
指摘を受けた後は、答案の変更を見える形にする
添削の指摘は、文章のどの働きに関するものかを整理すると扱いやすくなります。Kangらが21研究をまとめたメタ分析では、第二言語の文章への誤りの指摘によって、文法の正確さが向上しました。その効果は、書き手の力、学習の場面、文章の種類によって変わっていました。ここから練習を考える際も、文法や表記の修正、課題の理解、根拠の説明を分けて記録すると、変化の内容が明確になります。
返された答案には、コメントをそのまま写す欄と、自分がどう直すかを書く欄を設けます。「何を求められたか」を自分の言葉で書くと、指摘の意味をつかめているかが表れます。意味が曖昧なままなら、全文を書き直す前に、該当箇所と設問を示して添削者に確かめます。次の表は、指摘を修正作業へ移すための記録例です。
| 返された指摘の例 | 確かめる箇所 | 書き直した後に残す記録 |
|---|---|---|
| 設問への答えが見えにくい | 設問の要求と、それに答えている記述 | 求められた内容をどこで明示したか |
| 課題文の読み取りが違う | 課題文の該当箇所と自分の説明 | 読み違えた語句や関係をどう捉え直したか |
| 根拠と結論のつながりが弱い | 根拠から結論へ進む説明 | 足した説明が何をつないでいるか |
| 表現の意味が取りにくい | 主語、指示語、文のつながり | 読み手が迷う部分をどう変えたか |
| 説明が明確になった | 修正前後で変わった箇所 | 次の課題でも点検したい内容 |
書き直しが終わったら、修正前後を並べて変更の理由を説明します。添削者の表現を写した箇所がある場合も、なぜその表現が必要だったかを言葉にします。説明に詰まった箇所は、再度見てもらう対象として残します。答案をきれいに清書する作業と、指摘の意味を確かめる作業を分けておくと、次に必要な相談がはっきりします。
同じ問題を続けるか、別の問題へ進むかを決める
同じ問題を続ける目安は、直すべき箇所が具体的に残っていることです。課題文の理解がずれていたなら、元の文章へ戻り、その読み違いが答案のどこに影響したかを点検します。根拠を求められているのに感想だけを書いていたなら、設問への応答を修正してから読み直します。問題を変える前に、その答案で受け取った指摘を処理する時間を取ります。
別の問題へ進む目安は、修正の理由を説明でき、次に自分で点検する観点を持てたことです。たとえば「結論を支える説明が抜けていた」と理解したら、別の課題で同じ抜けを自分で探します。前の添削を手元に置いて練習する段階と、それを見ずに取り組む段階を分けると、助けの有無も記録できます。見慣れた問題を整える作業から、別の内容で修正点を生かす作業へ移っていきます。
この進め方が合いにくいのは、課題文の語句や背景がまだつかめず、指摘を読んでも意味が結びつかないときです。その状態では、答案を丸ごと繰り返す前に、課題文の該当箇所を読み直し、何が理解を妨げているかを整理します。反対に、内容は説明できるのに制限時間内に終わらないなら、どの作業に時間を使ったかを振り返ります。練習の目的を今のつまずきに合わせると、同じ問題のやり直しと新しい問題への着手を選びやすくなります。
添削が戻るまでに時間が空く人は、返却待ちの答案と修正済みの答案を分けて管理します。返却待ちの間は、設問への応答や読みにくい箇所を自分で点検し、疑問を添えておきます。指摘が戻ったら、自分の点検とどこが一致し、何を見落としていたかを比べます。受け身で返却を待つ期間も、読み直しの観点を確かめる期間に変えられます。
出願までの予定には、書き直す時間も入れる
出願前には、対象年度の募集要項と大学の追加発表を読み、小論文の実施条件を照合します。変更があれば、問題を選ぶ基準や時間を区切る練習の条件も更新します。図書室にある過去の資料を使う場合は、手元の要項と年度を区別しておきます。資料の新旧を明記することが、以前の試験条件をそのまま練習へ持ち込むのを防ぎます。
高校で添削を相談するときは、問題文と自分の答案に加え、選抜方式と大学が公表した観点を持参します。先生には、返却の見通し、書き直した答案も見てもらえるか、どの点を中心に相談するかを確かめます。卒業後に相談する場合も、学校が対応する範囲や資料の渡し方を先に確かめると予定を立てやすくなります。依頼した日だけでなく、返却後に修正する日も予定に入れます。
練習記録には、取り組んだ課題、書いた条件、主な指摘、修正の理由を残します。点数がある場合は、添削者と採点の観点を添えて、ほかの記録から切り離さずに保存します。次に取り組む前には、未解決の指摘があるか、別の問題で試す段階かをその記録で判断します。こなした量の一覧に、何が変わったかという中身を加える形です。
予定が詰まってきたら、手を付ける問題の多さと、修正に使える時間の両方を見直します。返された指摘を読む時間が取れないなら、新しい問題を増やす前に、未処理の答案を整理します。どこを直し、なぜ直し、次に何を点検するかがつながっていれば、残りの時間に取り組む内容を選べます。過去問の練習は、答案の数に加えて、自分で修正を説明できる箇所を積み重ねて進めます。
よくある質問
同じ過去問を覚えるほど書き直してもよいですか
同じ課題を使って、指摘の意味や修正の理由を確かめる時間は取れます。答案を覚えて書ける状態になったら、次は別の課題で同じ点検を自分で行う段階に移します。覚えた表現を再現した部分と、新しい内容について考えて書いた部分を分けて振り返ると、練習の目的がはっきりします。前の添削を見たかどうかも記録しておけば、取り組んだ条件と結果を一緒に比べられます。
添削の点数が下がったら、書き直しは失敗ですか
点数とともに、評価の観点とコメントを見直します。添削者や採点方法が変わった場合は、前回との違いを確かめてから、答案の変化を読み取ります。同じ人の添削でも、以前の指摘が解消したか、新たな問題が生じたかを修正前後の文章で確かめます。総合点だけを結論にせず、改善した部分を保ち、残る指摘を次の作業へ移すと、書き直しで得たものを整理できます。
自分で読み直すだけの期間は、何を記録すればよいですか
設問の要求と答えている箇所を対応させ、読み返して迷った部分を記録します。課題文の理解に迷ったときは、根拠にした箇所も添えておきます。後で他者に見てもらう際には、自分がよいと考えた点と、判断に迷う点の両方を渡すと、評価の違いを比べやすくなります。読み直した日と修正した箇所を残し、返された指摘と照らす資料として使います。
この記事の限界
測定された成果は、米国の小中学生の文章の質、学習全般の成果、第二言語の文法の正確さ、英国の全国作文テストなどの採点の特徴です。用いた研究には国や年齢、評価方法の違いがあり、採点研究は過去の試験データを扱っているため、日本の総合型選抜や学校推薦型選抜に必要な練習回数や個別の合否を示すものではありません。練習の進め方は、これらの結果を踏まえて修正内容を記録するための提案であり、特定の大学の採点基準を再現したものではありません。出願や練習条件の判断では、年度ごとに更新される募集要項と大学の追加発表を優先し、高校での相談を通じて自分の状況に合う予定を整えます。
参考文献
- Graham ほか. Formative Assessment and Writing: A Meta-Analysis. Elementary School Journal. 2015;115(4):523-547.
- Wisniewski ほか. The Power of Feedback Revisited: A Meta-Analysis of Educational Feedback Research. Frontiers in Psychology. 2020;10:3087.
- Kang ほか. The Efficacy of Written Corrective Feedback in Improving L2 Written Accuracy: A Meta-Analysis. Modern Language Journal. 2015;99(1):1-18.
- Leckie ほか. Rater Effects on Essay Scoring: A Multilevel Analysis of Severity Drift, Central Tendency, and Rater Experience. Journal of Educational Measurement. 2011;48(4):399-418.
- Barkaoui. Effects of Marking Method and Rater Experience on ESL Essay Scores and Rater Performance. Assessment in Education: Principles, Policy & Practice. 2011;18(3):279-293.
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よくある質問
同じ過去問を覚えるほど書き直してもよいですか
同じ課題を使って、指摘の意味や修正の理由を確かめる時間は取れます。答案を覚えて書ける状態になったら、次は別の課題で同じ点検を自分で行う段階に移します。覚えた表現を再現した部分と、新しい内容について考えて書いた部分を分けて振り返ると、練習の目的がはっきりします。前の添削を見たかどうかも記録しておけば、取り組んだ条件と結果を一緒に比べられます。
添削の点数が下がったら、書き直しは失敗ですか
点数とともに、評価の観点とコメントを見直します。添削者や採点方法が変わった場合は、前回との違いを確かめてから、答案の変化を読み取ります。同じ人の添削でも、以前の指摘が解消したか、新たな問題が生じたかを修正前後の文章で確かめます。総合点だけを結論にせず、改善した部分を保ち、残る指摘を次の作業へ移すと、書き直しで得たものを整理できます。
自分で読み直すだけの期間は、何を記録すればよいですか
設問の要求と答えている箇所を対応させ、読み返して迷った部分を記録します。課題文の理解に迷ったときは、根拠にした箇所も添えておきます。後で他者に見てもらう際には、自分がよいと考えた点と、判断に迷う点の両方を渡すと、評価の違いを比べやすくなります。読み直した日と修正した箇所を残し、返された指摘と照らす資料として使います。