出願書類の誤字脱字は評価にどこまで響くか|文章の誤りと読み手の印象の研究
志望理由書に誤字や脱字を見つけたら、内容が良くても評価が大きく下がるのでしょうか。文章の誤りは書き手の能力や注意深さの印象に響くことがありますが、少数の誤りだけで評価が決まると考える必要はありません。気づいた誤りは直すとしても、その前に、何が誤っているのかと、どの方法で訂正できるのかを分けて考えると作業がはっきりします。大事なのは、読み手に伝えたい内容を保ちながら、誤りによる読み違いを減らすことです。
- 誤字は文字の取り違え、脱字は必要な文字の抜けとして考えると、直す場所を捉えやすくなります。
- Kreinerらの研究では、大学生が短い作文を読み、書き手の知的な能力、論理の力、書く力を評価しました。
- Figueredoらは、大学生に作文を読んでもらい、書き手の能力と文章の質を評価してもらいました。
- Grobeの研究では、生徒の説明文と物語文に教員が付けた総合の点が、作文の長さとつづりの誤りの少なさの影響を強く受けていました。
志望理由書に誤字や脱字を見つけたら、内容が良くても評価が大きく下がるのでしょうか。文章の誤りは書き手の能力や注意深さの印象に響くことがありますが、少数の誤りだけで評価が決まると考える必要はありません。気づいた誤りは直すとしても、その前に、何が誤っているのかと、どの方法で訂正できるのかを分けて考えると作業がはっきりします。大事なのは、読み手に伝えたい内容を保ちながら、誤りによる読み違いを減らすことです。
誤字を見つけた瞬間には、それまで書き込んだ経験や学びへの関心まで薄く見られる気がするかもしれません。けれども、文章の評価には、中身の理解、表現の正確さ、書き手への印象という異なる面があります。誤りが目立つときに起こることを知るには、これらを分けて研究を読む必要があります。総合型選抜や学校推薦型選抜の書類を仕上げる際も、誤りの個数から結果を予想するより、読み手がどこで意味を取り違えそうかに目を向ける方が、修正の目的を定めやすくなります。
誤字の訂正と、文章の中身の修正を分ける
誤字は文字の取り違え、脱字は必要な文字の抜けとして考えると、直す場所を捉えやすくなります。一方、理由と結論のつながりが弱いことや、経験の説明が足りないことは、中身の修正に当たります。誤字をなくす作業と、志望の動機を具体的にする作業には、それぞれ別の目的があります。文字を直す際に文章全体まで組み直そうとすると、どこを直す必要があったのかを見失いやすくなります。
たとえば、学びたい分野の名称を別の漢字に変換していた場合は、まず意図した名称に戻す訂正になります。自分がその分野に関心を持った理由が書かれていなければ、それは説明を補う修正です。また、助詞の抜けで誰が何をしたのか曖昧になっていれば、文字の不足が内容の理解にも関わっています。見た目の小さな誤りと意味の大きなずれは重なることがあるため、個数だけを数えるより、文の意味に沿って直す場所を判断することが大切です。
出願書類の「記入上の注意」は、その訂正をどう行うかを確かめる欄です。手書きか入力かの指定と、書き誤った場合の扱いを読み、提出用の文章に手を入れる方法を決めます。書き手が見やすいと思う直し方と、その書類で求められる直し方が一致するかを、作業前に確かめる順序です。文章の良し悪しを考える時間と、指定に合った形に整える時間を分ければ、訂正のたびに内容まで疑い直す必要がなくなります。
少数の誤りと、多い誤りでは結果が違う
Kreinerらの研究では、大学生が短い作文を読み、書き手の知的な能力、論理の力、書く力を評価しました。つづりの誤りが4か所ある条件では、評価は統計的に有意には変わりませんでした。有意とは、偶然のばらつきだけでは説明しにくい差と判断された、という意味です。一方、誤りが多い場合には書き手の能力が低く見られ、とくに書く力の評価が下がりました。[1]
この結果を読むときは、「少数の誤りがあっても明確な差が出なかった」と「誤りが増えると評価に響いた」を一緒に受け止めることが大切です。前者だけを読むと見直しを省きたくなり、後者だけを読むと小さな誤りまで致命的に感じられます。また、有意な差が出なかったことは、すべての読み手がまったく同じ点を付けたという意味ではありません。実験全体として差を捉えられたかという話と、目の前の読み手がどう感じるかという話には違いがあります。
4か所という数を、出願書類で許される誤りの上限に置き換えることはできません。ここで扱うのは英語のつづりや文の誤りをめぐる研究であり、日本語の誤字・脱字に対する年内入試の減点を測ったものではないからです。それでも、研究の中に評価の差が現れる条件と現れない条件の両方があることは、誤りを見つけた直後の考えを落ち着かせる材料になります。提出前なら、評価の予想に時間を使う代わりに、意図した文に戻す作業へ注意を向けられます。
誤りから書き手の能力や注意深さが推測される
Figueredoらは、大学生に作文を読んでもらい、書き手の能力と文章の質を評価してもらいました。スペルチェックで見つかる種類のつづりの誤りがあると、その両方の評価が下がりました。読み手は誤りを道具の責任として片づけるのではなく、書き手の責任として受け取っていました。[2] ここには、文字の誤りを見つけたことが、その文章を作った人の評価へ広がるという問題があります。
採用担当者445人を対象にしたSterkensらの場面実験でも、履歴書のつづりの誤りが判断に影響しました。誤りの多い履歴書では面接に呼ばれる見込みが18.5ポイント低く、誤りの少ない履歴書でも7.3ポイント低くなりました。書き手の人付き合いの力、まじめさ、知的な能力が低いと受け取られたことが、評価の低下を説明する要素になっていました。[3] 見つかった文字の誤りから、直接は書かれていない人の特徴まで推測されていたわけです。
読み手が能力を低く見積もったことと、書き手が実際に低い能力を持っていたことは別です。研究が示したのは評価の動きであり、誤りをした人の人格の判定ではありません。生徒が見直しをするときも、保護者が誤りを指摘するときも、直す対象はその文の表記です。「こんな誤りをする自分は注意が足りない」と広げず、どの文字をどう直すと意図が伝わるかという具体的な話に戻すと、文章を仕上げるためのやり取りになります。
同じ「誤りの影響」という言葉でも、評価の対象には違いがあります。作文を読んで書く力を評価することと、履歴書を読んで面接に呼ぶか判断することでは、読み手の目的が異なります。次の表では、数字の大小だけで並べず、何を読んで何を評価したのかを対応させています。
| 研究 | 読んだ文章と評価者 | 評価したこと | 主な結果 |
|---|---|---|---|
| Kreinerら [1] | 大学生が短い作文を読む | 書き手の能力 | 誤りが4か所では有意な差がなく、多い場合は低く評価 |
| Figueredoら [2] | 大学生が作文を読む | 書き手の能力と作文の質 | 道具で見つかる種類の誤りで両方の評価が低下 |
| Sterkensら [3] | 採用担当者445人が履歴書を評価 | 面接に呼ぶ見込み | 誤りが多い条件で18.5ポイント低下 |
構成の良さより誤りが重く見られることもある
Grobeの研究では、生徒の説明文と物語文に教員が付けた総合の点が、作文の長さとつづりの誤りの少なさの影響を強く受けていました。[4] 文章全体の点には、伝えようとする考えだけでなく、表面に現れた特徴も入り込んでいたことになります。内容の評価と表記の評価を、読み手が常に明確に切り離しているとは限らないという例です。書き手にとっては、考えを練る作業と、その考えを読むときの妨げを減らす作業の両方が意味を持ちます。
Sweedler-Brownの研究では、第二言語の指導の訓練を受けていない、経験のある作文の教員が、大学水準の作文6本を採点しました。教員は作文の構成の良さよりも、文の単位の誤りをはるかに重く見ていました。[5] うまく組み立てた文章でも、読み手の注意が文の誤りに向かう場合があることを示しています。構成を考えた努力を読み手に届けるという点からも、仕上げの見直しには役割があります。
ただし、誤りへの反応には読み手による幅があります。Beasonは、仕事をする14人の読み手が文章の誤りをどう受け止めるかを、質的な方法で調べました。質的な方法とは、反応を点数だけにせず、語られた内容や受け止め方から特徴を捉える調べ方です。反応は一様ではないものの、誤りから書き手の信用や注意深さを悪く読み取る共通の型が見られました。[6]
Witchelらが調べたのは、出願書類ではなく健康についての掲示板の短い文です。英国で集めた301人の評価では、つづりの誤りを含む文の信頼性が8.86点低く評価されました。[7] 能力の印象、作文の点、文章への信頼は異なる評価ですが、いずれにも文字の誤りが関わる例があります。誤りの指摘を受けた際には、読み手が意味を取り違えたのか、読みにくく感じたのかを聞くと、修正の目的を捉えやすくなります。
見直しは、声・時間・別の読み手を使う
仕上げの見直しには、声に出して読む、時間を置いて読む、人に読んでもらうという方法があります。これは、ここまでの研究で効果の順位が付けられた方法ではなく、誤りを探す際の実務上の選択肢です。自分がつまずきやすい場所と、提出までに残っている時間に合わせて選びます。すべてを同じ長さで行うより、何を見つけたいのかを決めて取り組む方が、作業の終わりを定めやすくなります。
声に出して読むときは、頭の中にあるつもりの文章ではなく、目の前に書かれている文字をたどります。助詞が抜けていないか、同じ言葉が重なっていないか、文末まで読んで意味がつながるかを確かめる使い方です。読み上げることが負担になる人や、声を出せる環境にいない人は、別の方法を選べます。話し方の練習に切り替える必要はなく、書かれた内容と伝えたい内容を照らすために声を使います。
時間を置いて読む方法では、書いた直後の勢いから離れて、再び文章に向き合います。さきほど直した箇所ばかりを追わず、前後の文と続けて読んで意味が通るかを確かめます。提出が迫っている場合は、長い間隔を空けることを目的にするより、いま確かめるべき文を明確にする方が現実的です。文章から離れる時間は、修正を先延ばしするためでなく、読み直す視点を切り替えるために使います。
人に読んでもらう場合は、「誤字と、意味を取りにくい箇所を教えてほしい」と依頼の範囲を伝えます。読んだ人には、完成形を書いてもらうのではなく、引っかかった箇所を示してもらいます。保護者や先生から指摘された場所は、生徒が意図していた意味に照らして直します。他人の好む言い回しにすべて変えるより、本人の経験と考えを保ったまま、誤りを取り除く作業として進められます。
訂正の前に「記入上の注意」を読む
見直しで誤りを見つけたら、募集要項の出願書類の「記入上の注意」に戻ります。まず、手書きか入力かの指定が、自分が仕上げている書類にどう当てはまるかを確かめます。次に、書き誤った場合の訂正方法が示されているかを読みます。誤りが気になるからとすぐに消したり書き足したりする前に、その書類で使う方法を定めることが先です。
手書きの書類なら、訂正の仕方が指定されている場合、その方法に沿って直します。修正液や修正テープなどの使用を、自分の経験だけで決めるのは避け、記入上の注意の記載に合わせます。入力の書類なら、訂正に関する記載が、どの段階の操作を指しているかを読み分けます。下書きの修正と提出操作を終えた後の変更は場面が異なるので、いま自分がどちらにいるかを意識して読む必要があります。
訂正方法の説明が曖昧な場合は、大学の出願に関する窓口に、書類名と誤りの箇所、現在の提出状況を伝えて確かめます。「誤字があると評価が下がるか」と広く尋ねるより、「この状態で、どの方法で訂正するか」と聞く方が、必要な作業につながります。すでに提出した書類に気づいた場合も、訂正の案内に沿って扱います。読み手の印象を取り戻そうとして、独自の判断で書類を送り直すことを先にしない順序です。
締切の前日に誤りを見つけた場面では、直したい気持ちと、触ることで別の箇所を崩す心配が重なります。そのときは、書き手の能力を値踏みする問題から、指定どおりの文章を提出する作業へ考えを戻します。気づいた箇所を意図した文字に直すことには、積み上げた内容を読み手に届ける意味があります。提出前の最後の行動を、記入上の注意に沿って該当箇所を訂正することに定めます。
よくある質問
誤字が少なければ、そのまま出してもよいですか
気づいた誤りは、提出前に指定の方法で直すのが基本です。Kreinerらの実験で少数の誤りによる有意な差が出なかったことは、見つけた誤りを残す理由にはなりません。[1] 不安を大きくするために誤りを数えるのではなく、書こうとした言葉に戻すために確認します。内容を大きく書き換える必要がない箇所は、訂正の目的を文字の修正に絞れば、仕上げの作業を具体的にできます。
保護者に読んでもらうと、本人の文章でなくなりますか
誤りの箇所を指摘してもらうことと、経験や志望の動機を代わりに書いてもらうことは、作業として異なります。誤字を見る依頼なら、まず気になった文字や読み取りにくい文を示してもらいます。その指摘を受けて、本人が伝えたい意味を確かめながら修正します。保護者の役割を、文章全体の言い回しを整えることまで広げず、本人が気づかなかった箇所を伝えることに定めると、見直しの範囲が明確になります。
提出した後で脱字に気づいたら、どう動けばよいですか
まず、その書類の記入上の注意に、提出後の訂正について記載があるかを確かめます。記載だけで扱いを判断しにくい場合は、書類名、脱字の場所、提出済みであることをそろえて大学に尋ねます。新しい書類を自分の判断で送り直す前に、案内された手順を確認する順序です。評価を予想して説明を長く重ねるより、どこが誤りで、意図した表記が何かを簡潔に伝えると、訂正の相談を進めやすくなります。
この記事の限界
比較されているのは、英語の作文や履歴書、掲示板の文章を読むときの評価であり、日本語の出願書類にある誤字や脱字を日本の年内入試でどれだけ減点するかは、これらの結果からは言えません。採点の研究には古いものも含まれ、大学生、教員、採用担当者などの読み手や、能力・文章の質・信頼性という評価の対象も異なるため、結果はそれぞれの条件と組み合わせて読む必要があります。
また、募集要項は年度ごとに変わるため、訂正の方法については、出願する年度の要項と大学が出す最新の案内が優先します。研究を読む目的は誤りへの反応を理解することであり、個別の書類をどう訂正し提出するかの判断は、その書類に適用される指示に基づいて行うものです。
参考文献
- Kreiner ほか. Effects of spelling errors on the perception of writers. The Journal of general psychology. 2002;129(1):5-17.
- Figueredo ほか. Didn't You Run the Spell Checker? Effects of Type of Spelling Error and Use of a Spell Checker on Perceptions of the Author. Reading Psychology. 2005;26(4-5):441-458.
- Sterkens ほか. Costly mistakes: Why and when spelling errors in resumes jeopardise interview chances. PloS one. 2023;18(4):e0283280.
- Grobe. Syntactic Maturity, Mechanics, and Vocabulary as Predictors of Quality Ratings. Research in the Teaching of English. 1981;15(1):75-85.
- Sweedler-Brown. ESL Essay Evaluation: The Influence of Sentence-Level and Rhetorical Features. Journal of Second Language Writing. 1993;2(1):3-17.
- Beason. Ethos and Error: How Business People React to Errors. College Composition & Communication. 2001;53(1):33-64.
- Witchel ほか. Spelling Errors and Shouting Capitalization Lead to Additive Penalties to Trustworthiness of Online Health Information: Randomized Experiment With Laypersons. Journal of medical Internet research. 2020;22(6):e15171.
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- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
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よくある質問
誤字が少なければ、そのまま出してもよいですか
気づいた誤りは、提出前に指定の方法で直すのが基本です。Kreinerらの実験で少数の誤りによる有意な差が出なかったことは、見つけた誤りを残す理由にはなりません。[1] 不安を大きくするために誤りを数えるのではなく、書こうとした言葉に戻すために確認します。内容を大きく書き換える必要がない箇所は、訂正の目的を文字の修正に絞れば、仕上げの作業を具体的にできます。
保護者に読んでもらうと、本人の文章でなくなりますか
誤りの箇所を指摘してもらうことと、経験や志望の動機を代わりに書いてもらうことは、作業として異なります。誤字を見る依頼なら、まず気になった文字や読み取りにくい文を示してもらいます。その指摘を受けて、本人が伝えたい意味を確かめながら修正します。保護者の役割を、文章全体の言い回しを整えることまで広げず、本人が気づかなかった箇所を伝えることに定めると、見直しの範囲が明確になります。
提出した後で脱字に気づいたら、どう動けばよいですか
まず、その書類の記入上の注意に、提出後の訂正について記載があるかを確かめます。記載だけで扱いを判断しにくい場合は、書類名、脱字の場所、提出済みであることをそろえて大学に尋ねます。新しい書類を自分の判断で送り直す前に、案内された手順を確認する順序です。評価を予想して説明を長く重ねるより、どこが誤りで、意図した表記が何かを簡潔に伝えると、訂正の相談を進めやすくなります。