要項の「主体性」は書類と面接でどう測られるか|意欲や粘り強さを測る難しさの研究
要項の評価の観点に「主体性」「意欲」とあると、自分のどんな経験を示せば伝わるのか迷います。主体性を伝える材料は、自分につけた性格の名前より、何を考えて行動したかの記録と、その経緯を説明する受け答えです。進路指導室で活動報告書の空欄を見る場面でも、「積極的です」と書くだけでは、読み手が確かめる中身が残りません。活動の始まり、自分が担った役割、途中の判断が見えると、書類に書いた言葉について面接で話す筋道も見えてきます。
- 総合型選抜や学校推薦型選抜の募集要項にある「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」という記述は、評価したい資質を示す言葉です。
- Schmittらの研究では、大学で積み重ねた成績などを、入学時の学力の指標と、それ以外の指標で予測しました。
- やり抜く力には、努力を続ける面と、興味を持ち続ける面が含まれます。
- Duckworthらは、学力以外の資質を教育の目的で測る難しさを論じ、本人の自己評価、教員による評価、課題を解かせる方法を比べました。
要項の評価の観点に「主体性」「意欲」とあると、自分のどんな経験を示せば伝わるのか迷います。主体性を伝える材料は、自分につけた性格の名前より、何を考えて行動したかの記録と、その経緯を説明する受け答えです。進路指導室で活動報告書の空欄を見る場面でも、「積極的です」と書くだけでは、読み手が確かめる中身が残りません。活動の始まり、自分が担った役割、途中の判断が見えると、書類に書いた言葉について面接で話す筋道も見えてきます。
大学での成績や行動を調べた研究では、学力以外の質問紙にも、学力の指標に加えて予測に役立つ部分がありました。[1][2]一方で、やり抜く力と成績の結びつきは強いものではなく、答え方を変えると測定の点と成績の関係まで動く結果も報告されています。[3][6]要項の言葉を読む際には、何を評価するのか、どの書類や試験から読み取るのか、そこで見える情報にはどんな偏りがあるのかを続けて考える必要があります。面接に自信がなくても、まずは自分の行動について説明する内容と、大学が求めている材料との対応から考えられます。
入試で主体性を評価する欄は何と結びついているか
総合型選抜や学校推薦型選抜の募集要項にある「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」という記述は、評価したい資質を示す言葉です。その資質を読み取る材料は、選抜方法や評価の観点の欄にある書類・試験の記述と組み合わせて捉えます。たとえば活動報告書で経験を問うなら過去の行動が、面接で書類の内容を問うならその行動を選んだ理由や経緯が説明の対象になります。「協働」が含まれている記述では、自分が先頭に立った話だけでなく、他の人の意見をどう受け止めたかも、問いの範囲に入れて考えます。
研究で使われる経歴の質問紙は、これまでの経験や行動を質問への回答として集めるものです。状況判断テストは、ある場面を示して、そこでどのように対応するかを尋ねる方法です。Oswaldらはこれらを大学生の幅広い成果の予測に用い、共通の入学試験や性格の指標に加える意味を調べました。[2]日常語の「主体性」を考えるときにも、過去の経験を聞くのか、場面への判断を聞くのかという測り方に目を向けると、求められる説明を整理しやすくなります。
| 要項や様式にある記述 | 読み取る対象 | 説明に含まれる中身 |
|---|---|---|
| 主体性・意欲などの評価の観点 | 大学が評価したい資質 | その資質に関わる自分の判断や行動 |
| 活動の内容・本人の役割 | 過去に行ったこと | 全体の活動と、その中で自分が担当したこと |
| 書類にもとづく面接 | 記述の背景や経緯 | なぜ取り組み、途中でどう考えたか |
| 他者との協働についての記述 | 周囲と関わりながら学ぶ態度 | 意見の違いへの対応や役割の調整 |
学力以外の情報は何の予測に役立ったか
Schmittらの研究では、大学で積み重ねた成績などを、入学時の学力の指標と、それ以外の指標で予測しました。[1]学力の指標には共通の入学試験であるSAT・ACTと高校の成績を、学力以外の指標には経歴の質問紙と状況判断テストを用いています。累積の成績を最もよく予測したのは学力の指標で、経歴や状況判断の情報はそこに少し予測を上乗せしました。ここでいう上乗せとは、すでに学力の情報を持っている状態で、さらに予測の手掛かりが加わったという意味です。
同じ研究でも、予測する対象が欠席や大学への協力的な行動などになると、学力以外の指標のほうがよく予測しました。[1]授業の成績を見通す目的と、大学生活での行動を見通す目的では、役立つ情報の組み合わせが変わっています。また、この研究の質問紙などは、選考に使ったものではなく、入学後の最初の数週間に研究のために実施したものでした。入学後の行動との結びつきを調べたという測定の時期も、結果を読むうえで大切な条件です。
Oswaldらの研究でも、経歴と状況判断の質問紙を、共通の入学試験と性格の指標に加えると、大学生の成果の予測が上乗せされました。[2]性格の指標には、人の性格を大きな側面に分けて捉える質問紙を使っています。人種の集団どうしの平均の差は、共通の入学試験や大学の成績に比べて小さいという結果もありました。これらの結果を要項に照らすときは、「主体性を見る」という言葉だけで終えず、大学が学業への取り組みや協働などの何を評価対象として挙げているかが焦点になります。
やり抜く力と成績の関係はどのくらいか
やり抜く力には、努力を続ける面と、興味を持ち続ける面が含まれます。Lamらのメタ分析、つまり複数の研究をまとめて計算し直す方法による分析では、やり抜く力全体と学業成績の相関は r = .19 でした。[3]相関とは、ある値が高い人ほど別の値も高い傾向があるかを示す度合いで、この結果は弱いものから中くらいの関係とされています。やり抜く力の得点から一人ひとりの成績を決める数値ではなく、集団の中で見られた結びつきの強さです。
Lamらは、努力を続ける側面のほうが、興味が続く側面より成績と強く結びついていたと報告しています。[3]また、個人主義と集団主義という文化の違いによって、関係の強さは変わりませんでした。分析の中心は相関であり、やり抜く力を高める働きかけによって成績が上がるという因果を示したものではありません。書類で長く続けた経験を書く場合も、この結果が注目しているのは「続いた」という看板だけでなく、努力を続ける側面だと読む必要があります。
Credéらは、88の標本、66,807人分を合わせたメタ分析で、やり抜く力と成果や在籍の続きやすさとの関係を検討しました。[5]関係は中くらいにとどまり、やり抜く力は、責任を持って物事に取り組む傾向を表す性格の「誠実性」ととても強く重なっていました。努力を続ける側面は、誠実性の影響を差し引いても、学業成績を少し説明しました。要項や書類の欄に「粘り強さ」がある場合には、同じテーマを持ち続けた期間だけを材料にするより、うまく進まないときにどのように取り組んだかまで説明するほうが、研究で扱う側面に沿った捉え方になります。
自己評価や答え方によって測定は揺れる
Duckworthらは、学力以外の資質を教育の目的で測る難しさを論じ、本人の自己評価、教員による評価、課題を解かせる方法を比べました。[4]新たに参加者のデータを集めた実験ではなく、測り方の問題を検討した論考です。自己評価には、言葉を判断する際の基準や、自分を良く見せようとする答え方が入り込みます。同じ「よく努力する」という回答にも、何を努力と考え、誰と比べて答えたかという問題があり、回答の強さだけで行動の中身を捉える難しさがあります。
同論考では、教員が評価する方法や課題による方法にも、それぞれ欠点があるとしています。[4]著者らが特に退けたのは、当時の測り方を使って学校どうしを比べ、その結果について責任を問う用途でした。これは測る目的が変わると、求められる確かさも変わるという問題です。自分の振り返りに使う質問への回答を、そのまま人や学校の順位を決める資料として扱う際には、回答が何を表すかを改めて検討する必要があります。
Peetersらは、心理学を学ぶ大学生を、状況判断テストに正直に答える群と、良く見せるように答える群に分けました。[6]良く見せた群の得点は高く、効果量、つまり差の大きさを比較しやすく表した値は d = .89 でした。一方、テストの点と成績の相関は r = .33 から r = .09 に下がり、学力と性格の情報に加わる予測の働きも弱まりました。高い点を取る答え方が増えたのに、測定の目的であるその後の成績を見通す働きは弱くなった、という結果です。
自分を強く評価する言葉が合わない場合
自己評価の言葉に抵抗がある人は、強い形容詞を選ぶことから始めると、説明したい経験から離れやすくなります。Duckworthらの論考が扱った測定の問題は、まさに自己評価の回答を、そのまま本人の資質の量として読む難しさでした。[4]「誰よりも意欲がある」と書くには他の人との比較が要りますが、「疑問が残ったため資料を読み直した」なら本人が行ったことを述べられます。書類に自己評価を求める欄がある場合も、評価を表す言葉と、その判断のもとになった事実を続けて示す書き方が考えられます。
取り組むテーマを途中で変えた人も、興味を変えなかった話に整える必要はありません。Lamらの分析では、興味が続くことより、努力を続ける側面のほうが成績と強く結びついていました。[3]たとえば当初の問いを調べた結果、もっと確かめるべき課題が見つかったなら、方向を変えた理由そのものが説明の対象になります。要項が協働して学ぶ態度を求めている場合には、誰かの提案を受けて方法を変えた経緯も、自分の判断と周囲との関わりがわかる材料になります。
評定に不安がある人にとっても、主体性を示せば学力の準備を省けると考えるのは、Schmittらの結果とは合いません。[1]累積の成績の予測では学力の指標が最もよく働き、学力以外の指標は補う位置にありました。要項に評定などの出願資格が書かれているなら、その条件を満たすかという確認が先にあり、書類で何を示すかは選抜方法の欄に沿って考えます。意欲の説明に使う経験を選ぶ際も、学習上の課題にどう取り組んだかという経緯なら、勉強と活動を切り離さずに話を組み立てられます。
出願までにすること
状況判断テストで答え方によって得点と成績の関係が動いたPeetersらの結果は、よく見える回答と、その人の行動を知る材料とのずれを示しています。[6]準備では、評価されそうな人物像に合わせる作業より、要項の要求と本人の経験を照らし合わせる作業に時間を使えます。以下は、出願する年度の要項と様式を手元に置いて進める手順です。
- 評価の観点と提出先を対応させます。要項の「主体性」「意欲」「協働」の記述を抜き出し、それぞれをどの書類・試験で評価すると書かれているかを横に記します。活動報告書、志望理由書、面接などの名称と掲載箇所を一緒に残し、対応の記述がない箇所は推測で埋めず、質問する項目として印を付けます。学部や選抜方式ごとに欄がわかれている場合は、自分が出願する区分の記述に絞って対応させます。
- 下書きの行動を、手元の記録と照合します。活動のメモや作成物を使い、参加した時期、全体の目的、自分が担った部分を確かめ、本人が行った範囲に記述をそろえます。全体で決めたことを自分だけの提案として書いていないか、後から思ったことを当時の理由として書いていないかも、この段階で点検します。
- 面接で説明が必要な空白を探します。書類を読んだ人に、出来事の順序や判断の理由が追えなくなる箇所へ印を付けてもらい、その箇所について口頭で説明します。答える途中で経緯が曖昧になった部分を記録に戻って確かめ、言い回しを覚える前に、事実のつながりを整えます。
よくある質問
証明書がない活動も書いてよいですか
活動を書く欄の対象と、証明資料の添付を求める条件を、様式と提出書類の一覧で確かめます。証明書のない日常の活動と、資格や受賞のように所定の証明を求める項目では、必要な提出物が変わるためです。欄の対象に含まれるか迷うときは、活動の種類と添付条件を示して大学の入試担当窓口に尋ね、独自の資料を追加してよいかも併せて確かめます。
活動の途中で出願する場合はどう書きますか
書類に記入する基準日や、活動の対象期間について指示があるかを確認します。その日までに終わったことと進行中のことを明示し、予定している発表や成果を完了した出来事として扱わないようにします。提出後に結果が出る場合の追加提出は、募集要項や出願の注意にある扱いを調べ、追加が認められている場合だけ、その方法と期限に従います。
評価の意味が曖昧なときは誰に聞けばよいですか
出願手続きや大学が示す評価方法の記述については、大学の入試担当窓口が質問先になります。「自分は高く評価されるか」ではなく、要項の該当箇所を示し、どの提出書類で扱う項目なのかなど、記述の意味を尋ねる形にします。高校が作成する調査書や推薦書の記載については担当の先生に相談し、大学への質問と学校で確かめる内容を振り分けます。
この記事の限界
適用範囲は、大学生の成果の予測、やり抜く力と成績の関係、教育のための測定方法の検討までで、日本の年内入試にある「主体性」の評価を直接調べた研究ではありません。質問紙を入学後に実施した研究や、良く見せる回答を指示した実験も含まれ、個別の入試における書類の配点や面接の判断は、その年度の要項と大学の発表に沿って捉える必要があります。生徒にとっては、自分の経験の何を読み手に示すかを考えるための材料になります。保護者にとっては、本人の資質を短い言葉で決めつけず、取り組みの経緯を読み取る視点を得られます。
参考文献
- Schmitt ほか. Prediction of 4-year college student performance using cognitive and noncognitive predictors and the impact on demographic status of admitted students. Journal of Applied Psychology. 2009;94(6):1479-1497.
- Oswald ほか. Developing a Biodata Measure and Situational Judgment Inventory as Predictors of College Student Performance. Journal of Applied Psychology. 2004;89(2):187-207.
- Lam ほか. Grit and academic achievement: A comparative cross-cultural meta-analysis. Journal of Educational Psychology. 2022;114(3):597-621.
- Duckworth ほか. Measurement Matters: Assessing Personal Qualities Other Than Cognitive Ability for Educational Purposes. Educational Researcher. 2015;44(4):237-251.
- Credé ほか. Much ado about grit: A meta-analytic synthesis of the grit literature. Journal of Personality and Social Psychology. 2017;113(3):492-511.
- Peeters ほか. Situational Judgment Tests and their Predictiveness of College Students' Success: The Influence of Faking. Educational and Psychological Measurement. 2005;65(1):70-89.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
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よくある質問
証明書がない活動も書いてよいですか
活動を書く欄の対象と、証明資料の添付を求める条件を、様式と提出書類の一覧で確かめます。証明書のない日常の活動と、資格や受賞のように所定の証明を求める項目では、必要な提出物が変わるためです。欄の対象に含まれるか迷うときは、活動の種類と添付条件を示して大学の入試担当窓口に尋ね、独自の資料を追加してよいかも併せて確かめます。
活動の途中で出願する場合はどう書きますか
書類に記入する基準日や、活動の対象期間について指示があるかを確認します。その日までに終わったことと進行中のことを明示し、予定している発表や成果を完了した出来事として扱わないようにします。提出後に結果が出る場合の追加提出は、募集要項や出願の注意にある扱いを調べ、追加が認められている場合だけ、その方法と期限に従います。
評価の意味が曖昧なときは誰に聞けばよいですか
出願手続きや大学が示す評価方法の記述については、大学の入試担当窓口が質問先になります。「自分は高く評価されるか」ではなく、要項の該当箇所を示し、どの提出書類で扱う項目なのかなど、記述の意味を尋ねる形にします。高校が作成する調査書や推薦書の記載については担当の先生に相談し、大学への質問と学校で確かめる内容を振り分けます。