大学の口頭試問は何を確かめる試験か|口述の試験の信頼性と準備の研究
職員室で募集要項を広げて相談するとき、面接とは別に書かれた試験名を見て、志望理由のほかに何を話せるようにすればよいのかと迷うことはないでしょうか。教科や専門の知識を覚えているかに加え、その意味や考え方を口頭で説明できるかを確かめる試験として準備するのが基本です。 志望の動機を整えて話す練習と、学んだ内容の根拠を説明する練習では、用意する材料が違います。まずは、要項に示された教科や資料と、試験の名称の位置づけを結びつけて読むことが出発点になります。
- 要項の言葉としては、教科や専門に関する知識や考え方を、声に出して答える試験と捉えます。
- 口述の試験を考えるうえでは、受験者の話す力だけでなく、試験をどう作るかも重要です。
- Iannone ほかは、英国の大学の数学の授業で口頭の試験を受けた学生の意見を調べました。
- Simper は、栄養学の最終学年で口述の試験を受けた37人の成績を、前年の筆記試験と比べました。
職員室で募集要項を広げて相談するとき、面接とは別に書かれた試験名を見て、志望理由のほかに何を話せるようにすればよいのかと迷うことはないでしょうか。教科や専門の知識を覚えているかに加え、その意味や考え方を口頭で説明できるかを確かめる試験として準備するのが基本です。 志望の動機を整えて話す練習と、学んだ内容の根拠を説明する練習では、用意する材料が違います。まずは、要項に示された教科や資料と、試験の名称の位置づけを結びつけて読むことが出発点になります。
口頭で答えると聞くと、とっさに話せる人だけが得意な試験に思えるかもしれません。けれども、準備で点検したいのは、会話が途切れないことだけでなく、自分の答えを支える知識が言葉になっているかという点です。答えを知っている状態と、その答えになる理由を人に伝えられる状態を分けると、復習する箇所が見えてきます。研究を読む際にも、評価が安定しているかという試験の性質と、受ける人が不安を感じるかという経験を分けて考えると、話すことへの苦手意識だけで準備の方向を決めずにすみます。
口頭試問は知識と考え方を言葉にする試験
要項の言葉としては、教科や専門に関する知識や考え方を、声に出して答える試験と捉えます。面接も口頭でやり取りする形式ですが、志望の動機や学びたいことについて話す準備と、学習内容について答える準備は区別する必要があります。たとえば、ある分野への関心を述べることと、その分野につながる用語の意味を説明することでは、答えの土台が違います。後者では、自分の気持ちを丁寧に述べるだけでなく、学んだ事柄を正確に取り出す作業が要ります。
用語を説明する練習なら、その言葉を別の難しい言葉に置き換えるだけで終えないようにします。どのような意味で使い、どんな例に当てはまり、似た用語とはどこが違うかまで話すと、理解の曖昧な所が具体的になります。解き方を説明する練習なら、答えに至る途中で何を手掛かりにしたかを言葉にします。これらは準備のための例であり、実際に扱う内容は募集要項の出題範囲に合わせて選びます。
答えの文章を丸ごと覚えると、その文章を言い切ることが練習の目標になりがちです。説明の目的を、聞かれた内容に必要な知識を示すことに置くと、同じ用語でも問いに応じて説明の長さを変えられます。定義を求められたときには意味を、理由を求められたときには根拠を話す、というように答える部分を選びます。準備した内容を多く話すことより、質問と説明が対応しているかを点検する方が、知識の確認という試験の役割に沿っています。
質問と採点の基準が評価の安定性を支える
口述の試験を考えるうえでは、受験者の話す力だけでなく、試験をどう作るかも重要です。Memon ほかは、医師の専門医の口述試験を対象に、妥当性、信頼性、公平さに関する懸念を整理しました。妥当性は測りたい力を測っているか、信頼性は採点者などが変わっても結果が安定するかという意味です。その検討では、口頭での評価を適切で安定した公平なものにするための条件が示されています。[1]
Abuzied ほかは、医療系の教育の口述試験に関する24本を系統的レビューとメタ分析で検討しました。系統的レビューは一定の基準で研究を選んで整理する方法で、メタ分析は複数の研究結果をまとめて計算する方法です。質問と採点基準をあらかじめ決める「構造化」を行った口述試験は、従来型より妥当性、信頼性、受け入れやすさの面で良好な結果を示しました。構造化とは、受け答えを機械的にすることではなく、何を尋ねて何を評価するかを整えることです。[2]
同じ検討で報告された信頼性の指標が、クロンバックのαです。これは複数の評価項目の結果がどれくらい一貫しているかを表す値で、構造化した試験では異なる場面で0.80と0.75、従来型では0.50でした。数値が表すのは評価の一貫性であり、受験者の正答の割合とは別のものです。研究どうしのばらつきも大きく、構造化という名称だけで個々の試験の安定性まで同じと扱うことはできません。[2]
受験者にとって、この研究は流暢さを競うことだけに注意を向けないための材料になります。評価の基準が知識や考え方に向いているなら、準備でも説明の正確さや根拠とのつながりを点検する筋道が立ちます。聞き役には、話し方の感想だけでなく、説明のどこに根拠が足りなかったかを返してもらうと復習に結びつきます。試験の設計に関する知見を、練習で何を見るかという観点に置き換える使い方です。
答えを説明すると理解の中身が見えてくる
Iannone ほかは、英国の大学の数学の授業で口頭の試験を受けた学生の意見を調べました。学生には不安や公平さへの心配がありましたが、口頭での評価を、理解に目を向けさせる試験としても捉えていました。また、自分の答えに応じて問いが返ってくることを、その試験の特徴として見ていました。試験を受ける側から見ても、用意した答えを述べるだけでなく、答えの意味を考える機会として受け止められていた点が注目されます。[3]
この捉え方を準備に生かすなら、正解を見て納得した問題を、解説を閉じて説明する方法があります。途中の式や用語を言葉にしたとき、理由を説明できる所と、解説の順番だけを覚えている所を区別します。聞き役がいる場合は、理解しにくかった箇所を伝えてもらい、その箇所に戻って説明します。完成した説明の上手さより、どの知識に戻る必要があるかを見つける練習として扱います。
説明が止まった箇所によって、復習の内容も変わります。用語の意味が曖昧なら定義を読み直し、考え方のつながりが抜けているなら、その間を埋める理由を確かめます。理由はわかっているのに言葉が出ないなら、短い文に分けて話す練習ができます。止まったという結果を一括りにして苦手だと考えるより、知識、つながり、言葉への直し方のどこで止まったかを見る方が、次の作業を選びやすくなります。
資料を使って説明する練習では、資料に書かれた事実と、自分がそこから考えたことの境目も声に出します。資料の内容を述べたあとで、その内容を理由にどう判断したかを続けると、聞き手は考えの道筋を追えます。説明を録音して聞き直す場合も、声の印象だけを評価するのではなく、結論を支える箇所が聞き取れるかを確かめます。資料を読む作業と話す作業をつなげることで、黙って読んでいるときには気づきにくい説明の不足を探せます。
不安の強さと試験の成績は分けて考える
Simper は、栄養学の最終学年で口述の試験を受けた37人の成績を、前年の筆記試験と比べました。平均点には統計的に有意な差、つまり偶然のばらつきだけでは説明しにくい差は見られませんでした。一方、感想を求めた14人からは、口述は実社会に近いものの、筆記より不安を強く感じるという声が出ています。点の比較と受験者の感想を並べると、試験の成績と、試験をどう経験したかが別の情報であることが見えてきます。[4]
この比較は前年の学年を相手にしたもので、同じ学生が両方の形式を受けた結果ではありません。そのため、形式の違いに加えて、比較した学生集団の違いも含む結果として読む必要があります。筆記と口述の平均点に差が見られなかったことと、個々の学生がどちらを受けやすいと感じるかは、分けて考える点です。練習後に評価するときも、説明できた内容の確認と、本人が感じた負担の聞き取りを別々に行うと整理できます。[4]
Huang は、台湾の英語学習者47人について、資料を読んでから話す課題と、話すだけの課題の不安を比べました。読んでから話す課題は学生に好まれていましたが、不安の程度は話すだけの課題と統計的に同じくらいでした。資料がある課題にも別の難しさがあり、答え方の工夫が必要とされました。手元に話す材料があることと、不安が軽いことは一致していなかったという結果です。[5]
準備では、緊張を感じたことだけでその回の練習を失敗とせず、説明のどこまでできたかを見ます。反対に、安心して話せた場合も、用語の使い方や理由のつながりを点検します。説明の内容と気持ちの負担を別に扱うことで、知識を補う必要があるのか、話す課題への取り組み方を調整したいのかを考えられます。資料を使う形式なら、読む時間だけで終わらず、読んだ内容を相手に伝えるところまで練習に含めます。
準備の方法を自分のつまずきに合わせる
長い解答文を覚える方法が合うかどうかは、説明が止まる理由から考えます。定義の記憶が曖昧な人には、話す回数を増やす前に、教科書に戻って内容を整える作業が必要です。知識はあるものの、聞かれたことと違う話を続けてしまう人には、問いの中心を捉えてから答える練習が向きます。すべてを「話すのが苦手」という問題にしてしまうと、復習すべき内容が隠れてしまいます。
次の表は、準備中のつまずきと、そのときに扱う作業を対応させたものです。自分の説明を聞き直すときや、先生に練習を見てもらうときに使う整理です。話せた長さだけで判断せず、止まった所や説明がずれた所に注目して選びます。
| 練習で見えた状態 | 点検すること | 次に取り組む作業 |
|---|---|---|
| 用語を言えても意味を説明しにくい | 定義を理解しているか | 教科書の定義と具体例を結びつける |
| 答えは合うが理由が途中で切れる | 途中の判断に根拠があるか | 省いた考え方を言葉で補う |
| 準備した話が質問から離れる | 何を尋ねられているか | 問いに必要な部分を選んで答える |
| 資料を読み上げるだけになる | 資料と自分の判断がつながるか | 読み取った事実を理由にして説明する |
| 緊張すると説明の順が崩れる | 話す内容を大きく抱えすぎていないか | 短い文ごとに内容を確かめて話す |
強い負担を感じる人には、長い試験形式を最初から繰り返すより、扱う内容を絞った練習が取り組みやすい場合があります。たとえば、教科書の用語の説明を終えてから理由の説明へ移るなど、練習する内容を小さく区切ります。聞き役は答えを急がせるより、どこまで説明できたかを一緒に確かめる役に回ります。知識の点検を進めることと、負担を増やしすぎないことを両立させるための準備の組み方です。
出願前は選考方法と出題範囲を照らし合わせる
募集要項では、まず選考方法の欄で、面接と別の項目として記載されているかを見ます。面接の中に含まれる書き方なら、その説明の中で教科の知識や資料への言及があるかを読みます。名称の違いだけで用意する答えを決めず、何について口頭で問うと書かれているかを探すことが要点です。総合型選抜や学校推薦型選抜の名称が同じでも、自分が出願する選考方法の記述に沿って準備を組み立てます。
次に、出題範囲として教科や資料の種類が示されているかを確かめます。教科が示されているなら、その範囲から説明する題材を選び、資料が示されているなら、読むことと話すことを組み合わせて練習します。範囲の記載が曖昧な場合は、書かれている内容をもとに、対象となる教科や資料の扱いについて大学に尋ねる事項を絞ります。先の内容まで広く先取りするより、示された範囲の基本を根拠とともに説明することが準備の足場になります。
高校の先生に相談するときも、単に面接練習を頼むだけでなく、選考方法と出題範囲の記載を示します。そのうえで、知識の説明を聞いてほしいのか、資料に基づく説明を点検してほしいのかを伝えると、練習の目的が具体的になります。保護者が聞き役になる場合は、専門的な正誤の判断を急がず、話のつながりが見えなかった箇所を本人に返せます。正確さを確かめる作業は、教科書やその内容を扱う先生との確認につなげます。
練習の手応えは、話し終えたあとの印象だけでなく、知識と説明のつながりを確かめた結果として受け止められます。生徒にとっては、覚えた答えを再現することから、理由を示して説明することへと準備の目標を移す意味があります。保護者にとっては、滑らかに話せたかだけを見ず、本人が何を説明でき、どこを復習したいかに目を向ける意味があります。
よくある質問
志望理由を話す練習だけでは足りませんか
選考方法に教科や専門の知識を口頭で問う記載があるなら、その内容を説明する準備も必要です。志望理由は自分が学びたい理由を伝える材料ですが、学習内容の意味や解き方を説明する材料とは役割が違います。出題範囲として示された内容から、用語の意味や答えに至る理由を話してみると、追加で復習したい箇所を見つけられます。
すぐに答えが出ないときは何を練習すればよいですか
まず、知識が曖昧なのか、理由はわかっていて言葉にするところで止まるのかを分けます。前者なら教科書に戻って意味を確かめ、後者なら説明を短い文に区切り、考えのつながりを順に話す練習ができます。速さだけを練習の目標にすると、根拠を省いて答えだけを急ぐことになるため、聞かれた内容に対応する説明ができたかも点検します。
資料を読む形式なら話すだけより安心できますか
台湾の英語学習者47人の研究では、読んでから話す課題は好まれましたが、不安の程度は話すだけの課題と同じくらいでした。[5] 準備としては、資料を理解した時点で終えず、読み取った内容を自分の説明に組み込むところまで扱います。資料にある事実を伝えたあと、その事実をどう考えたかを続けると、読めたことと説明できたことをそれぞれ点検できます。
この記事の限界
対象は医療系の教育、大学の数学や栄養学の授業、台湾の英語学習者であり、知識の深さや試験の目的が異なるため、日本の年内入試で同じ結果になるとまでは言えません。参照した文献には2010年の報告も含まれ、研究間のばらつきや異なる学年どうしの比較があることから、試験形式と成績、不安の関係を読む際にはそれぞれの条件を考慮する必要があります。
募集要項は年度ごとに変わるため、面接との位置づけや出題範囲については、出願する年度の要項と大学の発表が優先します。ここで示した準備の観点は、本人の知識と説明のつながりを点検する材料であり、個別の選考内容の確定や出願先の判断に代わるものではありません。
参考文献
- Memon ほか. Oral Assessment and Postgraduate Medical Examinations: Establishing Conditions for Validity, Reliability and Fairness. Advances in Health Sciences Education. 2010;15(2):277-289.
- Abuzied ほか. Structured viva validity, reliability, and acceptability as an assessment tool in health professions education: a systematic review and meta-analysis. BMC Medical Education. 2023;23(1):531.
- Iannone ほか. Students' Views of Oral Performance Assessment in Mathematics: Straddling the "Assessment of" and "Assessment for" Learning Divide. Assessment & Evaluation in Higher Education. 2015;40(7):971-987.
- Simper. A Comparison of an Oral Assessment with a Traditional Paper Exam within a Final Year Nutrition Module. Educational Research and Reviews. 2010.
- Huang. Examining the Practice of a Reading-to-Speak Test Task: Anxiety and Experience of EFL Students. Asia Pacific Education Review. 2010;11(2):235-242.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒の完全1対1で、総合型選抜は代表の宮川が専任で担当し、ほかの科目は大学教員や東京大学などの大学院生が教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
志望理由を話す練習だけでは足りませんか
選考方法に教科や専門の知識を口頭で問う記載があるなら、その内容を説明する準備も必要です。志望理由は自分が学びたい理由を伝える材料ですが、学習内容の意味や解き方を説明する材料とは役割が違います。出題範囲として示された内容から、用語の意味や答えに至る理由を話してみると、追加で復習したい箇所を見つけられます。
すぐに答えが出ないときは何を練習すればよいですか
まず、知識が曖昧なのか、理由はわかっていて言葉にするところで止まるのかを分けます。前者なら教科書に戻って意味を確かめ、後者なら説明を短い文に区切り、考えのつながりを順に話す練習ができます。速さだけを練習の目標にすると、根拠を省いて答えだけを急ぐことになるため、聞かれた内容に対応する説明ができたかも点検します。
資料を読む形式なら話すだけより安心できますか
台湾の英語学習者47人の研究では、読んでから話す課題は好まれましたが、不安の程度は話すだけの課題と同じくらいでした。[5] 準備としては、資料を理解した時点で終えず、読み取った内容を自分の説明に組み込むところまで扱います。資料にある事実を伝えたあと、その事実をどう考えたかを続けると、読めたことと説明できたことをそれぞれ点検できます。