探究の授業の成果を出願書類にどう書くか|探究学習と大学での学びの研究
高校の探究の授業で取り組んだことは、活動報告書や志望理由書にどう書けば伝わるのでしょうか。テーマと成果に加えて、つまずいた点、受けた手助け、その後に自分で決めたことをつなげて書くと、学びの過程が伝わります。 発表を終えたという事実から、考え方がどう変わったかまで振り返ることが出発点です。
- 活動報告書の探究に関する欄を読むときは、テーマ、活動の内容、得られた成果など、何の説明を求めているかを確かめます。
- Öztürkらは、複数の研究をまとめて計算し直すメタ分析を、さらにまとめる方法で探究型の学習を検討しました。
- Lazonderらが72本の研究をまとめた分析では、手助けがあることによる学習の成果への効果は、d = 0.50でした。
- 手助けの少ない探究について、Kirschnerらは、学習の過程を導く指導に比べて効果も効率も低いと論じました。
高校の探究の授業で取り組んだことは、活動報告書や志望理由書にどう書けば伝わるのでしょうか。テーマと成果に加えて、つまずいた点、受けた手助け、その後に自分で決めたことをつなげて書くと、学びの過程が伝わります。 発表を終えたという事実から、考え方がどう変わったかまで振り返ることが出発点です。
成果と聞くと、発表の規模や完成した作品に目が向きがちです。けれども、最初の予想を変えた場面や、うまく比べられなかった資料を見直した場面にも、書く材料があります。先生から教わったことを明らかにすると、その後に自分が担った判断も説明しやすくなります。活動の名称を並べる前に、途中のノートを読み返す意味はそこにあります。
72本の研究をまとめた分析では、探究型の学びへの手助けが学習の成果を支えていました。[3] 探究型とは、生徒が問いを立てて調べる学び方のことで、周囲の支えも大切な条件です。総合型選抜や学校推薦型選抜に向けた文章でも、支えを受けて何ができるようになったかを具体的に残すと、自分の経験を説明する材料になります。
探究学習の出願書類では、成果と過程を書き分ける
活動報告書の探究に関する欄を読むときは、テーマ、活動の内容、得られた成果など、何の説明を求めているかを確かめます。テーマは取り組んだ題材、成果は調べて得られた結果や完成したものです。過程は、その結果に至るまでに選んだ方法や、途中で変えた考えを指します。同じ探究でも、どの部分を尋ねる欄なのかによって、文章の中心が変わります。
たとえば、校内のごみの分別を題材にした場合、「分別について調べて発表した」は活動の概要です。「表示の伝わり方に着目した」は問いの絞り込みであり、「記録の分類を見直した」は途中の判断にあたります。このように言葉の役割を分けると、出来事の説明と自分の考えの説明を重ねずに書けます。実際の書類には、自分の記録に残っている出来事を選んで使います。
志望理由書に探究を取り上げるなら、その経験からどんな学問上の関心が生まれたかを続けます。活動報告書と同じ経過をすべて繰り返すより、問いが変わった場面を取り出すと、関心の由来を説明できます。分別の方法を調べるうちに、人が表示をどう読むかに興味を持ったなら、その変化が大学で学びたいことへの接点になります。大きな将来像に急いで結び付けず、まず現在の疑問を正確に言葉にします。
完成品の見栄えと、自分が理解した内容も分けて考えます。班で整えた発表資料には全員の作業が含まれるため、自分が説明できる部分を見つけることが必要です。自分で比べた資料や、採用する案を選んだ理由があれば、完成品に添える説明が具体的になります。「主体的に取り組んだ」という評価の言葉も、そうした動作や判断に置き換えると読み手が内容を追えます。
探究型の学びは、知識や考える力を支える
Öztürkらは、複数の研究をまとめて計算し直すメタ分析を、さらにまとめる方法で探究型の学習を検討しました。対象となったメタ分析は10本で、学習の成果への効果はd=0.62で、中程度の正の値でした。[1] これは、個々の活動の成功例を紹介するのとは異なり、複数の分析を通して学び方の傾向を捉える試みです。探究の経験を振り返るときにも、発表をしたという事実に加えて、何を理解し、何を考えられるようになったかに目を向ける手掛かりになります。
Wilsonらの実験では、14〜16歳の生徒58人を無作為に群に分け、同じ先生が同じ目標で、探究型の教材と通常の教材を使って教えました。無作為に分けるとは、本人の希望や先生の判断で所属する群を選ばず、偶然に任せて割り当てることです。探究型の群は、知識、推論、論証のいずれでも高い到達度を示しました。[2] 推論は資料や知識から筋道を立てて考えること、論証は主張を根拠と結び付けて説明することです。
この区別を使うと、「学びが深まった」という感想をもう少し具体的にできます。知識の面なら、以前は知らなかった仕組みを説明できるようになったことが材料です。推論の面なら、予想と異なる結果に対して別の理由を考えたことが材料になります。論証の面なら、結論を述べる際にどの記録を根拠にしたかを示せます。
ただし、これらは理科の授業などでの学習効果を調べた研究であり、この書き方が出願書類の評価を上げるかを調べた研究ではありません。書類への応用は、学んだ内容を具体的に説明するための考え方として位置付けます。研究の結果を自分の能力の証明に使うより、自分の活動の中から説明できる変化を探す方が、経験に即した文章になります。大学での学びへの関心も、その変化の先にある疑問として記すとつながりが見えます。
手助けを受けた場面にも、自分の学びがある
Lazonderらが72本の研究をまとめた分析では、手助けがあることによる学習の成果への効果は、d = 0.50でした。[3] dは効果量を表す記号で、差の大きさを研究どうしで比べられるようにした値です。この分析では中程度の効果とされ、探究の学びを支える条件として、適切な手助けが位置付けられています。[3] 自分で調べる活動と、教わることは、学びの中で組み合わさります。
Furtakらは、理科の探究型の授業について37本の実験や、それに近い比較をまとめました。先生が導く活動は、生徒だけに任せる活動より、平均の効果量が約 .40大きいという結果でした。[4] ここで注目したいのは、探究という名称の内側にも、指導の仕方による違いがあることです。探究の経験を書くときにも、誰から何を教わったかは、学びが進んだ経緯を説明する要素になります。
書類で手助けに触れるなら、「先生に指導してもらった」から一歩進めます。たとえば、比較の条件がそろっていないと指摘されたのか、調べる範囲が広すぎると助言されたのかによって、その後の作業は違います。助言の中身を書いた後に、自分がどの方法を選び、何を変更したかを続けます。すると、教わったことと、自分が判断したことのつながりを示せます。
助言を受けた回数を強調する必要はなく、判断が変わった場面を選ぶことが大切です。すべての相談を時系列で並べると、活動の説明が長くなり、肝心の変化が埋もれます。「比べ方への指摘を受け、条件のそろう記録を選び直した」のように、助言と行動を近くに置くと読みやすくなります。何を教わり、何を自分で選び直したかを確かめる作業が、経験の輪郭をはっきりさせます。
行き詰まりは、方法を選び直した経緯と一緒に書く
手助けの少ない探究について、Kirschnerらは、学習の過程を導く指導に比べて効果も効率も低いと論じました。これは新たな実験の報告ではなく、先行研究と理論を整理した論考です。学ぶ人に十分な前提知識がある場合に、手助けの利点が薄れるとしています。[5] 探究に必要な知識や方法を学ぶ時間も、取り組みを理解するうえで大切になります。
この指摘を踏まえると、行き詰まった経験を、努力が足りなかったという感想だけで終える必要はありません。何がわからなくて作業が止まり、何を学ぶことで先へ進めたかを振り返れます。たとえば、資料どうしの条件が違うことに気付かず比べていたなら、その問題と修正した方法を組み合わせます。失敗を大きく見せるための文章ではなく、考え直した経緯を説明する文章にします。
次の表は、記録を読み返すときに、活動の出来事からどんな説明を取り出せるかを比べたものです。どの行も、実際にあったことを具体化するための視点です。自分の活動に合う場面から、根拠になる記録とともに文章へ移せます。
| 記録に残る出来事 | そのまま書くと短くなる説明 | 掘り下げる内容 |
|---|---|---|
| 問いを絞った | テーマを決めた | 広い題材から何を確かめる問いに変えたか |
| 途中で作業が止まった | 調べるのが難しかった | 不足していた知識や比べ方は何だったか |
| 助言を受けた | 先生に相談した | どの指摘を受けて方法を変えたか |
| 結果を説明した | 発表を完成させた | 結論を支えた記録をどう選んだか |
結果がはっきり出なかった探究なら、どこまで確かめられたかを丁寧に書きます。たとえば、予想した違いが見られなかったという結果と、比べる対象の選び方に課題が残ったという判断は別の内容です。前者は観察したこと、後者は方法を振り返ったこととして説明できます。次に試したい方法まで書く場合も、実施した作業と今後の案を分けると、到達点を正確に示せます。
班の成果から、自分が担った判断を取り出す
共同で取り組んだ探究では、班の目標や成果を短く示したうえで、自分が担った作業を続けます。「班で提案した」だけでは、調べた人、整理した人、発表した人の違いが読み手に伝わりません。自分の担当が資料整理なら、どの資料をどんな基準で分けたかが中心になります。発表担当でなくても、資料の扱いに関する判断を説明できます。
準備の段階では、本人の作業と、高校・先生・協力団体の作業を分けて記録します。学校が調整した見学先、先生が示した調べ方、団体が提供した資料などを整理すると、自分の担当範囲を捉えやすくなります。そのうえで、自分が資料の何に着目し、どんな解釈や提案をしたかを書き出します。支えてもらった環境と自分の判断の両方が見える説明になります。
自分の担当が小さく感じられる場合も、役職名や作業量だけで判断する必要はありません。記録の分類に疑問を持って変更を提案したなら、その理由と班での扱いを説明できます。別の案が採用された場合には、自分の案と比べてどこが適していると考えたかも、実際の議論に沿って書けます。班の決定をすべて自分の判断として語らず、自分の考えがどう動いたかを残します。
書く経験を選ぶときには、派手な結果より、途中の記録をたどれることが役立ちます。活動が進行中なら、現時点で終えた作業と得られた知見を示し、計画は計画として扱います。探究の題材が志望分野と離れている場合には、無理に同じ専門分野の話に変えるより、資料の比べ方や問いの立て方への関心を確かめます。自分の経験から生まれた接点を選ぶと、借り物の言葉に頼らず説明できます。
出願前には、探究の記入欄と添付の条件を確かめる
文章を整える前に、募集要項の活動報告書の様式で、探究専用の記入欄があるかを確かめます。専用欄があれば、その欄が求める内容に合わせて材料を選びます。活動全般を書く欄なら、探究の説明をどこに置くかを様式に沿って考えます。授業名を記す部分と成果を説明する部分がわかれているなら、各欄の役割に合わせて情報を配分します。
次に、使える文字の量と、記入する範囲を確かめます。短い欄では、活動全体の経緯を詰め込むより、問い、判断が変わった場面、到達点を結び付ける方が文章を整理できます。背景の説明を削るときも、何を比べた活動なのかがわかる言葉は残します。欄に収めるために助言の存在だけを消すと経緯が変わるため、事実関係を保ちながら表現を縮めます。
証明の添付については、必要かどうかに加え、何を示す資料が求められているかを読みます。高校や協力団体に関係する資料が必要なら、手元の成果物で足りるのか、別の書類が必要なのかを担当の先生と照らし合わせます。発表資料が手元にあることと、それを出願時に添付できることは別なので、様式の指定に沿って選びます。本文に記す活動内容と添付資料の内容が対応しているかも確認します。
文化祭で展示した探究のポスターを見返す場面を考えると、完成品には最後の結論が目立ちます。その裏にあるノートには、問いを変えた理由や、助言を受けて直した箇所が残っているかもしれません。出願までの具体的な準備として、そのポスターに至る途中の記録から、自分が方法を選び直した場面を書き出します。
よくある質問
先生に多く手伝ってもらった探究も書けますか
書く材料として整理する際は、先生から受けた手助けと、その後に自分で行った判断を結び付けます。たとえば、調べる範囲を絞る助言を受けて、どの対象を選んだかまで記すと、活動の中身が見えます。手助けの有無だけで経験を選別せず、教わったことをどのように使ったかに目を向けます。実際に記入する場所は、活動報告書の探究に関する欄と、その指示に合わせます。
目立つ成果や受賞がなくても、何を書けばよいですか
調べる前の予想と、記録を見た後の考えの違いを取り出すと、書く材料になります。結果が予想どおりであっても、どの記録を根拠に結論を出したかを説明できます。途中で方法を変えたなら、その必要に気付いた理由を添えることで、単なる作業の列挙から学びの説明に進めます。活動の規模を広げて語るより、実際に確かめたことと残った課題を具体的に記します。
班で作った発表資料を自分の成果として使ってよいですか
共同の成果物であることを示し、自分の担当と判断を説明すると、班全体と本人の働きが読み分けられます。たとえば、資料整理を担当したなら、分類の基準を考えたのか、決まった基準に沿って作業したのかまで確かめます。添付する場合は、募集要項の活動報告書にある証明資料の指定を確認します。成果物の完成度を説明するだけでなく、その中のどの部分について自分が説明できるかを整理します。
この記事の限界
測定されたのは理科の授業などでの学習の成果であり、日本の年内入試で探究の記述がどう採点されるかや、入学後の大学での成績を直接示す材料は、ここで扱った研究には含まれていません。Wilsonらの研究は実験室で行われた小規模な比較で、複数の研究をまとめた分析とも対象や方法が異なり、書類への助言は学びの過程を説明するための応用として位置付けています。
活動報告書の様式や添付の条件は年度によって変わるため、実際の記入では最新の募集要項と大学の発表が優先します。探究の記録から何を選び、どの欄に記すかは、自分の活動の事実とその様式を照らして判断する必要があり、この整理だけで個別の出願の判断が決まるものではありません。
参考文献
- Öztürk ほか. Does Inquiry-Based Learning Model Improve Learning Outcomes? A Second-Order Meta-Analysis. Journal of Pedagogical Research. 2022.
- Wilson ほか. The Relative Effects and Equity of Inquiry-Based and Commonplace Science Teaching on Students' Knowledge, Reasoning, and Argumentation. Journal of Research in Science Teaching. 2010;47(3):276-301.
- Lazonder ほか. Meta-Analysis of Inquiry-Based Learning: Effects of Guidance. Review of Educational Research. 2016.
- Furtak ほか. Experimental and Quasi-Experimental Studies of Inquiry-Based Science Teaching: A Meta-Analysis. Review of Educational Research. 2012;82(3):300-329.
- Kirschner ほか. Why Minimal Guidance during Instruction Does Not Work: An Analysis of the Failure of Constructivist, Discovery, Problem-Based, Experiential, and Inquiry-Based Teaching. Educational Psychologist. 2006;41(2):75-86.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
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- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
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よくある質問
先生に多く手伝ってもらった探究も書けますか
書く材料として整理する際は、先生から受けた手助けと、その後に自分で行った判断を結び付けます。たとえば、調べる範囲を絞る助言を受けて、どの対象を選んだかまで記すと、活動の中身が見えます。手助けの有無だけで経験を選別せず、教わったことをどのように使ったかに目を向けます。実際に記入する場所は、活動報告書の探究に関する欄と、その指示に合わせます。
目立つ成果や受賞がなくても、何を書けばよいですか
調べる前の予想と、記録を見た後の考えの違いを取り出すと、書く材料になります。結果が予想どおりであっても、どの記録を根拠に結論を出したかを説明できます。途中で方法を変えたなら、その必要に気付いた理由を添えることで、単なる作業の列挙から学びの説明に進めます。活動の規模を広げて語るより、実際に確かめたことと残った課題を具体的に記します。
班で作った発表資料を自分の成果として使ってよいですか
共同の成果物であることを示し、自分の担当と判断を説明すると、班全体と本人の働きが読み分けられます。たとえば、資料整理を担当したなら、分類の基準を考えたのか、決まった基準に沿って作業したのかまで確かめます。添付する場合は、募集要項の活動報告書にある証明資料の指定を確認します。成果物の完成度を説明するだけでなく、その中のどの部分について自分が説明できるかを整理します。