総合型選抜の準備はいつから始めるか|所要時間の見積もりの甘さ(計画錯誤)の研究
総合型選抜の準備は、いつ始めれば出願までに間に合うのでしょうか。始めどきは月だけで決めず、募集要項から必要な作業を拾い、手間の見積もりを早めに試すところから考えます。 米国の大学生の学業課題を調べたBradyらは、学生が所要時間を見誤る傾向と、以前の課題や次の課題をどれほど難しいと思うかとの関係を報告しています[1]。日本の年内入試の開始時期を比べた研究ではなく、準備にかかる時間を予想するときの注意を考える材料です。
- 募集要項の出願期間は、大学が出願を受け付ける期間です。
- 計画錯誤とは、作業が終わるまでの時間を実際より短く、楽観的に見積もってしまうことです。
- Steelは、先延ばしに関する691の相関をメタ分析でまとめました[2]。
- WangとChiouは大学生102人を対象に、課題に必要な手間の大きさと、締切までの距離の感じ方を実験で調べました[3]。
総合型選抜の準備は、いつ始めれば出願までに間に合うのでしょうか。始めどきは月だけで決めず、募集要項から必要な作業を拾い、手間の見積もりを早めに試すところから考えます。 米国の大学生の学業課題を調べたBradyらは、学生が所要時間を見誤る傾向と、以前の課題や次の課題をどれほど難しいと思うかとの関係を報告しています[1]。日本の年内入試の開始時期を比べた研究ではなく、準備にかかる時間を予想するときの注意を考える材料です。
夏休みの予定表に「志望理由書を完成させる」と書く場面を考えると、文章を打つ時間は想像しやすいでしょう。その前には学びたい内容を調べ、経験を振り返り、根拠になる記録を探す作業があり、書いた後には読み返しや修正もあります。「書く」という短い言葉の中に入っている手間を取り出すと、着手の判断が具体的になります。
準備を始めることと、出願先を最終決定することは別の作業です。まだ学部を迷っていても、関心のある分野を調べたり、活動の記録を整理したりして、実際の負担を知ることはできます。出願までの空白を作業で埋める前に、何が終われば次へ進めるかを見える形にしておきます。
「総合型選抜 いつから」を考える入口は要項の作業量
募集要項の出願期間は、大学が出願を受け付ける期間です。準備の開始日を示す欄ではないので、そこだけを見て予定を組むと、書類の作成や高校での確認が予定から抜けます。まず出願資格、提出書類、選考方法の欄を読み、条件を満たしているかの確認と、これから手を動かす作業とを分けます。学校推薦型選抜も検討する場合は、高校での推薦手続きに必要な時間を別に尋ねます。
提出書類の欄では、名称に加えて、書く内容、様式、添付する資料を見ます。同じ志望理由書でも、経験と志望先とのつながりを述べるものと、学びたい内容を詳しく説明するものでは、準備に使う資料が変わります。選考方法に面接や小論文があれば、書類を提出するまでの準備と、その後の試験に向けた準備を区別します。本人の作業と外部の返事を待つ時間を分けるため、次のように読み取ったことを並べます。
| 要項で読む欄 | 本人が進める作業 | 他者に確かめること・待つこと |
|---|---|---|
| 出願資格 | 条件と手元の記録を照合する | 条件の解釈や証明方法 |
| 志望理由書などの様式 | 設問を読む、材料を集める、下書きを直す | 高校で相談できる時期 |
| 調査書などの提出書類 | 必要な書類と提出方法を拾う | 高校への依頼方法と発行までの期間 |
| 選考方法 | 面接や小論文の形式を読む | 別途公表される案内の有無 |
| 出願手続き | 入力内容と添付物を点検する | 不明な手順への回答 |
書類の準備では、「自分が書き終えた状態」と「提出に使える状態」を区別して予定に記します。たとえば下書きが完成しても、内容の確認を受けて直す工程を予定に入れていれば、その先の作業が残っているとわかります。大学の期限と高校への依頼期限を別々に書き込むと、自分が最初に動く必要のある箇所が見えてきます。要項を読む目的を、日付を写すことから作業のつながりをつかむことへ広げるのが出発点です。
計画錯誤は「書くだけなら終わる」という予想に潜む
計画錯誤とは、作業が終わるまでの時間を実際より短く、楽観的に見積もってしまうことです。予定表には完成までの滑らかな流れを書きやすく、途中で資料を探し直したり、考えを変えて書き直したりする時間が入りにくくなります。総合型選抜の準備に置き換えて考えるなら、入力する時間だけを見積もり、内容を決める時間を落としていないかが点検の入口です。ここで必要なのは、長く構える決心よりも、予想に含めた作業を言葉にすることです。
Bradyらの研究では、学業課題にかかる時間の予想に偏りがあり、その偏りには過去の課題の難しさと、これからの課題の難しさについての考えが関わっていました[1]。課題についての考えを意識させる働きかけをしても、見積もりの正確さは変わりませんでした。つまり、予定を考える際には「前にも文章を書いた」という記憶に加え、今回の課題の中身を確かめる作業が要ります。経験がある部分と初めて取り組む部分を分ければ、どこを試してみるか選びやすくなります。
志望理由書を例にすると、過去の作文と似ているのは文章を組み立てる部分かもしれません。一方、大学の教育内容を調べて自分の関心と結びつける部分は、新しい作業として残ります。そこで「資料を読む」「関心とのつながりをメモする」「設問に沿って下書きする」と分け、終えたと判断する状態も書きます。「資料を読む」の終点を必要な箇所のメモまでとすれば、読む途中で増えた疑問も記録に残せます。
手間を分ける際は、細かい予定を書き続けること自体が目的にならないようにします。止まりそうな箇所を見つけたら、そこを少し進めて実際の負担を確かめる方へ移ります。予想した工程に漏れがあれば予定を直し、短く終わった部分は次の見積もりの材料にします。準備の開始は、完成品を作り始める日だけでなく、こうした予想の確かめ方を始める日としても考えられます。
締切が遠いと、使える時間も多く感じやすい
Steelは、先延ばしに関する691の相関をメタ分析でまとめました[2]。相関は物事が一緒に変化する関係、メタ分析は複数の研究の結果をまとめて検討する方法です。単一の国の入試や特定の学年だけを対象にした研究ではなく、課題を嫌だと感じることや、課題までの時間が遠いことなどが先延ばしと強く一貫して結びついていました。これは原因を確定する比較ではありませんが、締切まで日があることと、今着手することの間に隔たりが生まれる点を考える助けになります。
予定表で出願日が遠くに見えても、その間の時間をすべて準備に使うわけではありません。授業の課題、定期考査、部活動、家庭で担うことなどと並行して進めるため、まとまった作業を置ける場所を探す必要があります。空いている日に「準備」とだけ書く代わりに、その日に開く資料や書き出す内容まで決めます。始めるときに何から手をつけるか選び直す負担を、予定を立てる段階で引き受ける考え方です。
嫌な作業を後回しにしている場合は、その理由によって入口を変えます。文章を書くことが重いなら、最初は材料となる経験を短くメモし、要項の表現が難しいなら、意味を尋ねたい箇所に印を付けます。大学の情報を調べるだけで時間が過ぎるなら、いまの設問に答えるために必要な情報へ範囲を絞ります。「準備を進める」という大きな目標を、今日の作業の終点まで落とすと、着手したかどうかも確かめやすくなります。
また、保護者と予定を共有する際には、開始した日だけで進み具合を判断しないことが大切です。何を終え、どこで手が止まり、誰の返事を待っているかを本人の説明で確かめます。遅れている工程が見えたら、次の作業を小さくするか、必要な相談を予定に入れます。早く始めたという安心感より、残っている仕事が把握されていることを重視します。
手間を具体化すると、締切の感じ方も変わる
WangとChiouは大学生102人を対象に、課題に必要な手間の大きさと、締切までの距離の感じ方を実験で調べました[3]。手間の大きい課題の条件では、締切を近く感じ、完了までの時間を短く見積もる傾向が減りました。対象国は抄録には記載されておらず、扱ったのは実験室の課題です。読むときの焦点は、残りの日数が同じでも、必要な作業をどう受け止めるかによって見積もりが変わるという結果にあります。
この結果を準備の工夫へつなげるなら、作業名の横に「何に手間がかかるか」を添える方法が考えられます。資料集めなら、探すこと、必要な箇所を読むこと、自分の文章で説明するために整理することを区別します。下書きなら、経験を選ぶこと、理由をつなぐこと、設問から外れていないか確かめることを書き出します。手間が大きいとわかった工程は、最後にまとめて置かず、早く試す候補にします。
試す対象は、出願先が変わっても経験を使いやすい作業から選べます。関心のある分野の資料を読み、興味を持った理由を短く書く作業なら、調べることと文章にすることの両方を経験できます。始める前に必要そうな時間をメモし、終わった後には実際に手を動かした時間と、途中で止まった理由を残します。記録は自分の速さを採点するためではなく、次の予定に抜けている工程を探すために使います。
自分が動いていない時間も、予定上は別に扱います。先生に原稿を見てもらうまでの期間や、必要な資料を手に入れるまでの期間は、本人の集中だけで短くするのが難しい部分です。相談を頼む時期を先に決め、返事を待つ間に進められる作業を用意しておきます。作業時間と待ち時間を同じ欄にまとめないことで、前倒しして動く意味が具体的になります。
前回の時間を知るだけでは、見積もりは整わない
ThomasとKönigは、英国の大学生を対象とする実験で、前にした課題と次にする課題の類似性や、前回の所要時間を伝えることを検討しました[4]。同じ課題を経験した場合には次の時間予想の偏りが小さくなりましたが、前回の時間を知らせること自体では偏りは減りませんでした。経験した作業が何だったかと、その作業に何分かかったかは、見積もりの材料として別の側面を持っています。準備でも、過去の記録を写すだけでなく、今回と共通する工程を探すことが大切になります。
たとえば、自由な題材の作文を完成させた経験と、指定された設問に沿って志望理由を説明する経験を比べます。入力に慣れている点は共通していても、資料の調べ方や理由の組み立て方は変わります。以前の所要時間を参考にするときは、どこまでをその時間に含めたかも見直します。書く前の調査や、人に見てもらった後の修正が記録から抜けていれば、その工程を今回の予定へ足します。
思い込みについて学ぶだけで、見積もりが長く改善するかにも検討が要ります。Aczelらはハンガリーの大学生154人に対し、計画錯誤を含む10種類の思い込みを扱う訓練を用意し、訓練を受ける条件と受けない条件などを比べました[5]。4週後に改善が見られたのは統計の原則に関わる課題で、原著では計画錯誤そのものは効果測定の対象から外されています。したがって、この研究は計画錯誤への訓練が失敗した証拠としてではなく、学んだ知識と持続する行動変化を分けて評価する材料として読みます。
予定の作り直しでは、自分の性格に原因をまとめるより、予想と違った工程を探します。資料が難しかったのか、設問の読み違いに気づいたのか、完成の基準が途中で変わったのかで、次に変える箇所は違います。手を動かして得た経験に、こうした条件の説明を添えると、似た作業に取り組む際の比較材料になります。見積もりを完成させてから始めるのではなく、始めた経験を見積もりへ戻していく進め方です。
予定が詰まっている人は、追加より先に条件を確かめる
学校の課題や家庭の事情で使える時間が少ない場合、作業を細かく分けた分だけ予定へ追加すると、全体が収まりにくくなります。まず要項が求める提出物と、自分で増やした準備を分け、どこが必要な条件なのかを確かめます。英語資格などの条件がある方式を考える場合も、資格を持っているかだけでなく、出願に使える証明とその準備を要項に沿って調べます。条件の確認が済む前に大量の書類作成を進めるより、出願の前提を把握してから作業量を決めます。
志望先や学部が定まっていない人は、専用の書類を仕上げる前に、関心と経験の整理に時間を使う選択があります。過去の活動の記録を探し、何に疑問を持ち、何を調べたいと思ったかを書き留めます。そのうえで候補の学部の教育内容を読み、合う点とさらに調べたい点を分けます。決めるための調査も予定に載せると、「まだ決めていないから何も始められない」という停滞をほどく入口になります。
出願が近い人は、高校で必要な手続きや相談の時期を先に確かめます。要項の該当箇所と現在の作業状況を持って相談すれば、残っている条件や依頼の順序について話しやすくなります。提出までの作業と並べて、一般選抜などほかの進路に向けた学習時間も予定に残します。準備の総量を見て、取り組む方式や作業の優先順位を判断する材料にします。
最初の予定には、見積もりを直す時点も置いておきます。下書きを終えたとき、必要な資料がそろったときなど、実物を見て残りの仕事を数え直せる区切りが適しています。始めどきを考える際には、要項を読んで手間を書き出し、似た作業を早めに試すことが足場になります。その経験をもとに、本人が動く時間と他者を待つ期間を組み合わせて、出願までの予定を具体化していきます。
よくある質問
志望校が決まるまで準備を待った方がよいですか
学ぶ分野を調べたり、活動の記録を集めたりする準備は、志望校を絞る作業と並行して進められます。候補の要項を読んで、共通して使える材料と、その方式に合わせて作る書類とを分けておきます。短い説明文を書いてみると、資料を探す手間や、自分の考えを言葉にする難しさにも気づけます。その経験を次の予定の材料にし、提出用の様式や内容は出願先を決めた段階で合わせます。
前に書類を作った経験があれば、同じ時間で組めますか
前回の記録は、今回と共通する工程を探すところから使います。書く内容や提出形式が変われば、調査や確認に必要な作業も変わるので、完成までに何をしたかを並べて比べます。ThomasとKönigの研究では、同じ課題の経験と、前回の時間を教えられることとで結果が異なりました[4]。合計時間だけを移すより、経験のある部分と初めての部分を分けて予定に置く方法が考えられます。
予定より遅れたときは、作業時間を増やせばよいですか
最初に、本人の作業が進んでいないのか、資料や返事を待っているのかを分けます。自分の工程に時間がかかった場合は、予想から抜けていた作業を足し、残りの予定を組み直します。待ち時間が中心なら、相談先に見通しを確かめ、その間に進められる工程へ移ります。睡眠や学校の学習を含む生活全体の予定と照らし、増やせる時間と作業の優先順位を考えます。
この記事の限界
比較した研究の中心は大学生の課題や思い込みへの訓練で、米国・英国・ハンガリーなどの環境、実験課題、短期の測定に偏りがあり、日本の高校生が年内入試の準備を始める時期を直接比べた根拠は含まれていません。相関をまとめた先延ばし研究と、条件を変えた実験では結論の性質が異なり、個人に必要な準備期間や開始する月をこれらの結果から決めることはできません。募集要項は年度ごとに変わるため、出願資格や書類の扱いは最新の要項と大学の発表を優先し、高校に依頼する手続きの時期も合わせて確かめます。ここで示した作業の分け方は予定を考える補助として使い、個別の出願判断は本人の条件と準備状況を照合して行います。
参考文献
- Brady ほか. Self-regulation of time: The importance of time estimation accuracy. Frontiers in Psychology. 2022;13:925812.
- Steel. The Nature of Procrastination: A Meta-Analytic and Theoretical Review of Quintessential Self-Regulatory Failure. Psychological Bulletin. 2007;133(1):65-94.
- Wang ほか. Greater Required Effort May Induce Closer Perceived Proximity to the Task Deadline, Leading to Less Underestimation of Task Completion Time. Educational Psychology. 2022;42(1):108-118.
- Thomas ほか. Knowledge of Previous Tasks: Task Similarity Influences Bias in Task Duration Predictions. Frontiers in Psychology. 2018;9:760.
- Aczel ほか. Is it time for studying real-life debiasing? Evaluation of the effectiveness of an analogical intervention technique. Frontiers in Psychology. 2015;6:1120.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒の完全1対1で、総合型選抜は代表の宮川が専任で担当し、ほかの科目は大学教員や東京大学などの大学院生が教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
志望校が決まるまで準備を待った方がよいですか
学ぶ分野を調べたり、活動の記録を集めたりする準備は、志望校を絞る作業と並行して進められます。候補の要項を読んで、共通して使える材料と、その方式に合わせて作る書類とを分けておきます。短い説明文を書いてみると、資料を探す手間や、自分の考えを言葉にする難しさにも気づけます。その経験を次の予定の材料にし、提出用の様式や内容は出願先を決めた段階で合わせます。
前に書類を作った経験があれば、同じ時間で組めますか
前回の記録は、今回と共通する工程を探すところから使います。書く内容や提出形式が変われば、調査や確認に必要な作業も変わるので、完成までに何をしたかを並べて比べます。ThomasとKönigの研究では、同じ課題の経験と、前回の時間を教えられることとで結果が異なりました[4]。合計時間だけを移すより、経験のある部分と初めての部分を分けて予定に置く方法が考えられます。
予定より遅れたときは、作業時間を増やせばよいですか
最初に、本人の作業が進んでいないのか、資料や返事を待っているのかを分けます。自分の工程に時間がかかった場合は、予想から抜けていた作業を足し、残りの予定を組み直します。待ち時間が中心なら、相談先に見通しを確かめ、その間に進められる工程へ移ります。睡眠や学校の学習を含む生活全体の予定と照らし、増やせる時間と作業の優先順位を考えます。