要項に書かれた面接の評価の観点は何を見ているか|入試の面接で入学後がどこまでわかるかの研究
面接の控室で募集要項を開くと、「意欲」「思考力」「表現力」といった言葉に目が止まります。答える内容を考えてきても、当日のどんな受け答えがその観点と結びつくのか、つかみにくいものです。要項に書かれた観点は、面接官が何を確かめようとしていると読めばよいのでしょうか。観点は、大学が求める力を受け答えのどこから確かめるかを示す手掛かりであり、求める学生像と面接の形式を照らして読む言葉です。
- 募集要項の「評価の観点」は、選考で着目する力や姿勢を示す欄です。
- 観点を具体的に読むには、「この力を確かめるなら何を尋ねるか」と考えます。
- 面接の研究でいう信頼性は、測定の条件による偶然の揺れがどれほど小さく、点を安定して捉えられるかという性質です。
- 予測的妥当性とは、入試などで得た点が、その後の成績をどれほど言い当てるかという性質です。
面接の控室で募集要項を開くと、「意欲」「思考力」「表現力」といった言葉に目が止まります。答える内容を考えてきても、当日のどんな受け答えがその観点と結びつくのか、つかみにくいものです。要項に書かれた観点は、面接官が何を確かめようとしていると読めばよいのでしょうか。観点は、大学が求める力を受け答えのどこから確かめるかを示す手掛かりであり、求める学生像と面接の形式を照らして読む言葉です。
たとえば意欲なら、希望する学びの内容や、関心を持って調べた過程が問いの候補になります。思考力なら、結論に至る理由や、別の見方を示されたときの考え方と結びつけて読めます。観点の名前から人物の良し悪しを丸ごと判断するものだと受け取るより、何について、どのような説明を求める欄なのかを捉えることが大切です。
以下で扱う研究はすべて医学部・医療系の選抜に関するもので、日本の年内入試の研究ではありません。中心となるのはカナダの医学部で開発された面接方式と、海外の医療系の研究をまとめた分析です。研究を読む際には、面接の評価がどれほど安定するかと、その点が入学後の何を予測するかを分けて考えます。
観点、求める学生像、面接の形式をつなぐ
募集要項の「評価の観点」は、選考で着目する力や姿勢を示す欄です。一方、アドミッション・ポリシーは、大学や学部がどのような学生を求めるかを示す入学者受入れの方針です。両方に似た言葉があっても、面接で扱う範囲を読むには、その方式の選考方法までたどる必要があります。「主体的に学ぶ」という方針と、面接の「学習意欲」という観点を結びつければ、自分で何を調べ、どんな疑問を持ったかという説明に目が向きます。
面接の形式は、その力をどの場面で示すかに関わります。個人面接か集団面接か、口頭試問を含むか、資料の読み取りや説明があるかによって、受け答えの材料が変わります。口頭試問とは、口頭で出された問いに答え、知識や考え方を示す試験です。形式と内容を確かめると、意欲を語る場面と、学んだ知識を使って説明する場面を読み分けやすくなります。
要項を読むメモには、観点の言葉だけでなく、その言葉が載っている学部名と選抜方式も残します。同じ大学でも、全学の方針と学部の方針、さらに選抜方式の説明では、対象とする範囲が違うためです。時間の記載があれば形式と並べ、出願書類を面接で使う旨の記載も拾います。これで、抽象的な観点と、当日示すことになる材料を同じ場所で見渡せます。
観点の言葉を当日の問いとして読み直す
観点を具体的に読むには、「この力を確かめるなら何を尋ねるか」と考えます。これは大学の出題を予告する作業ではなく、要項の言葉の意味を自分の経験や学習に結びつけるための整理です。一般的な観点の例を、説明の焦点と問いの形にすると、次のようになります。
| 観点の例 | 説明のどこに目を向けるか | 問いとしての読み替えの例 |
|---|---|---|
| 学習意欲 | 関心の対象と調べた過程 | その分野の何に関心を持ち、何を調べましたか |
| 思考力 | 結論を支える理由と検討の過程 | そう考えた理由は何ですか |
| 表現力 | 相手に伝わる順序と具体性 | 初めて聞く人に、その内容をどう説明しますか |
| 主体性 | 自分で選んだ行動と判断 | 自分で決めて取り組んだ部分はどこですか |
| 他者への理解 | 異なる立場を捉える視点 | 自分と違う考えを、どのように受け止めましたか |
同じ経験でも、問われる観点によって説明の焦点は変わります。授業で取り組んだ調査を例にすると、テーマを選んだ理由は意欲に、資料を比べた過程は思考力に、読み手に伝える工夫は表現力につながります。経験の名前だけを対応させるより、その中で何を判断し、どう行動したかまで読むと、観点の違いが具体的になります。
また、観点は複数の問いで確かめられます。志望理由に関する質問の後で、それに関係する学習経験や、入学後に深めたい内容を尋ねるという形も考えられます。それぞれ別の質問に見えても、関心の内容と行動のつながりを異なる方向から捉えることになります。要項の観点を読む際には、質問と観点を固定した組にせず、説明のどの部分がどの観点に関係するかを考えると整理が進みます。
面接の点の安定性は、見る場面によって変わる
面接の研究でいう信頼性は、測定の条件による偶然の揺れがどれほど小さく、点を安定して捉えられるかという性質です。面接官が誠実かどうかを表す言葉ではなく、評価方法についての用語です。同じ受験生でも、得意な話題を尋ねられたときと、判断に迷う課題を出されたときでは、示す受け答えが変わります。研究では、こうした場面による違いを含めて、面接の組み立て方を検討しています。
カナダの医学部志願者117人を対象にしたEvaらの研究では、10か所の短い面接を回るMMIという形式が試されました。MMIは複数の短い課題や面接場面を順に経験して評価を受ける方式で、観察する場面を広げるのが特徴です。この研究で報告された信頼性は0.65でした。従来の面接の弱点として、どの場面を見たかによって点が変わることに着目した研究です。
その後のEvaらの研究では、各場面10分、評価者を各場面に配置した12か所のMMIについて、信頼性の中央値は0.73と報告されました。中央値とは、値を順に並べたときの中央に位置する値です。ここで読んでいるのは評価方法の安定性であり、合格する人の割合ではありません。人数や時間を変えて得た値を比較するときも、面接がどのように設計されたかを数字と一緒に読む必要があります。
Knorrらは、MMIについて66本の文献を一定の手順で集めて検討する系統的レビューを行いました。そこで整理された傾向は、同じ場面を見る評価者を増やすより、観察する場面の数を増やす方が信頼性を高めるというものでした。評価者の人数と、受験生が示す行動の幅は別の条件です。要項の面接官の人数だけで評価の細かさを判断せず、課題や問いの形式にも目を向ける意味が、この違いから見えてきます。
入学後の何を予測したかで、研究の意味が違う
予測的妥当性とは、入試などで得た点が、その後の成績をどれほど言い当てるかという性質です。評価が安定していても、それが将来の学業と強く結びつくかは別に調べる必要があります。大学の授業で知識を学ぶ成績と、実際の場面で判断や対応をする実技の成績も、区別して扱います。面接で入学後がどこまでわかるかを考えるには、予測した対象を先に確かめることが重要です。
カナダの医学部などの選抜を追ったEvaらの研究では、MMIの成績と、国家試験の実技で合格した課題数の関係が調べられました。学部段階の対象者では、面接から5年後の試験との相関係数がr = 0.35で、卒後の対象者ではr = 0.43でした。相関係数は、二つの測定値の動きがどれほどそろうかを示す値で、この結果では面接の点が高い人ほど実技の成績も高い傾向がありました。関連が見られた先は、医療の場面を使った実技試験です。
別のEvaらの研究では、1071人が面接の対象になったカナダの医学部の選抜を調べています。MMI、作文、成績を同じ重みで組み合わせた選抜の合格者は、不合格となって他大学の医学部に進んだ人より、カナダの国家試験の点が高いという結果でした。この比較が扱うのは、面接だけを切り出した評価ではなく、複数の材料を合わせた選抜全体です。要項の読み方でも、面接の観点と、書類や試験を合わせる選考の仕組みを並べて捉えることにつながります。
一方、Gohoらが医療系の入試面接に関する20研究をまとめたメタ分析では、入学後の学業の予測に関する平均の効果量は0.06、臨床の成績では0.17でした。メタ分析は複数の研究をまとめて計算する方法で、効果量は関連などの大きさを比べるための値です。学業については非常に小さく、臨床についても控えめな予測力という結果でした。主に質問や採点の手順を十分にそろえていない従来型の面接を扱っており、面接の形式と予測する成績の両方を見て解釈する必要があります。
「話せるから向いている」だけで方式を選ばない
Knorrらのレビューでも、MMIと学業の指標との関係は小さいか、見られないという結果が整理されています。学業と実技で結果が違うことは、面接の点を「大学で伸びる力」全体の点として読む際の重要な論点です。入学後に必要な力には、知識を積み重ねること、資料を読み取ること、他者に説明することなど、異なる面があります。そのため、何を測り、どの成果と照らした研究なのかによって、面接の位置づけも変わります。
話すことに自信があり、面接を重く見る方式を探している人は、口頭試問や教科に関する質問の記載も併せて読みます。知識を使う説明が含まれていれば、日常会話の得意さとは別に、学習内容を理解していることが求められるからです。反対に、長く話すことを好まない人も、形式だけで自分に合わないと決める前に、問いの対象と観点を確かめます。自分の学習や経験のどこに説明の材料があるかが、方式との対応を考える出発点になります。
また、成績の条件に不安がある場合は、面接の観点より先に出願資格の欄を読みます。面接の配点が大きいことと、出願の条件を満たしていることは別の事柄です。学校推薦型選抜なら推薦に関する条件、総合型選抜ならその方式で求める提出物や選考段階も確認します。面接で伝えたい内容を考える作業と、出願する資格や手続を確かめる作業をそろえて進めることが大切です。
保護者と要項を読むときも、「よく話せる」「おとなしい」という印象だけで向き不向きを決めず、観点の文に戻ると話が具体的になります。たとえば思考力なら、何について考えた経験を説明するのか、口頭試問なら、どの学習範囲を求めているのかを見ます。本人の性格を評価する話から、選考で示す材料を確かめる話へ移せます。こうした読み分けは、面接を得意不得意だけで判断しないための手掛かりです。
出願前は、評価の対象と選考全体の扱いを確かめる
出願前の確認では、まず志望する年度、学部、選抜方式が一致する募集要項を用意します。そのうえで、評価の観点が書かれた箇所と、入学者受入れの方針、選考方法の欄を照らします。面接と書類をまとめて評価する説明なのか、それぞれの配点が示されているのか、選考段階ごとに使う資料が違うのかを読み分けます。観点の言葉が同じでも、選考の中での役割が見えると受け止め方が具体的になります。
高校で相談するときには、気になった言葉だけでなく、その前後の文章も示します。「意欲とは何か」と広く尋ねるより、「この観点は面接の説明にあり、別の欄には口頭試問とある」というように、記載の関係を伝える方が論点が定まります。出願書類を面接で参照する旨があれば、提出する内容と本人が説明する事実のつながりも確かめます。学校での確認事項と、大学の公表内容に照会する事項を分けてメモに残しておくと、その後の確認が進みます。
記載から読み取れない点は、採点者の好みを推測するより、大学が示す選抜方式の説明や追加の発表を確かめます。面接の観点と配点、当日の形式を同じメモに置けば、どの記載に基づいて理解したかを見直せます。研究の数値は面接という測定方法を考える材料として読み、出願する方式の条件はその大学の記載から捉えます。両者の役割を分けることで、抽象的な観点を合否の予想に直結させずに読めます。
面接の短い受け答えも、複数の問いや書類と組み合わせた評価の一部として位置づけられます。面接のその場の印象だけで全てが決まると受け止めず、要項に示された評価材料全体を見ることが大切です。観点の言葉を説明の焦点に置き換えると、出願前に確認すべき経験や学習内容が定まります。
よくある質問
評価の観点が「意欲」なら、強い希望を伝えればよいですか
希望の強さに加えて、何に関心を持ち、そのために何を調べてきたかを、要項の求める学生像と照らして捉えます。たとえば学部で扱う課題への理解や、自分の学習経験とのつながりが、説明の材料になります。「意欲」という語を声の大きさや話す長さに置き換えず、関心の中身と行動を確かめる観点として読むと、要項の他の記載ともつながります。
面接官が多いほど、細かく評価してもらえるのでしょうか
評価者の人数と、観察する場面の数を分けて考えます。MMIの研究をまとめたレビューでは、同じ場面の評価者を増やすより、場面を増やす方が点の安定性を高める傾向が示されました。要項を読む際も、人数だけに注目せず、課題や口頭試問の有無など、何を示す機会があるかを合わせて見ます。観点がどんな場面で確かめられるかに目を向けることが大切です。
面接の点が高い人は、入学後の成績も高いのですか
医療系の研究では、実技や臨床の成績との関連が見られる一方、学業との関係は小さいという結果があります。面接の点を読むには、将来の何と関係したかを確かめる必要があります。面接、書類、教科の試験などを用いる選抜では、それぞれが扱う内容を募集要項で照らします。出願先を考える際も、面接だけの印象より、求める学びと選考全体の対応を確かめることが判断の手掛かりになります。
この記事の限界
対象はカナダの医学部の選抜を中心とする海外の医療系研究で、扱った論文の公表時期も古く、日本の総合型選抜や学校推薦型選抜を直接追った根拠には限りがあります。MMIの入学後の予測に関する知見は特定の大学に偏り、追跡した人数の少なさや、観点がどの力を測るかという課題もあるため、これらの結果だけでは個別の出願判断を代わりに行えません。面接と後の成績の関連を調べた研究と、複数の材料を合わせた選抜全体を調べた研究では、数字が表す対象が異なります。実際の選考方法と評価の扱いは年度によって改められるため、個別の方式を読む際の基準は、出願する年度の募集要項と大学の追加発表にある記載です。
参考文献
- Eva ほか. An admissions OSCE: the multiple mini-interview. Medical Education. 2004;38(3):314-326.
- Eva ほか. Predictive validity of the multiple mini-interview for selecting medical trainees. Medical Education. 2009;43(8):767-775.
- Eva ほか. Association between a medical school admission process using the multiple mini-interview and national licensing examination scores. JAMA. 2012;308(21):2233-2240.
- Knorr ほか. Multiple mini-interviews: same concept, different approaches. Medical Education. 2014;48(12):1157-1175.
- Goho ほか. The effectiveness of academic admission interviews: an exploratory meta-analysis. Medical Teacher. 2006;28(4):335-340.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
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よくある質問
評価の観点が「意欲」なら、強い希望を伝えればよいですか
希望の強さに加えて、何に関心を持ち、そのために何を調べてきたかを、要項の求める学生像と照らして捉えます。たとえば学部で扱う課題への理解や、自分の学習経験とのつながりが、説明の材料になります。「意欲」という語を声の大きさや話す長さに置き換えず、関心の中身と行動を確かめる観点として読むと、要項の他の記載ともつながります。
面接官が多いほど、細かく評価してもらえるのでしょうか
評価者の人数と、観察する場面の数を分けて考えます。MMIの研究をまとめたレビューでは、同じ場面の評価者を増やすより、場面を増やす方が点の安定性を高める傾向が示されました。要項を読む際も、人数だけに注目せず、課題や口頭試問の有無など、何を示す機会があるかを合わせて見ます。観点がどんな場面で確かめられるかに目を向けることが大切です。
面接の点が高い人は、入学後の成績も高いのですか
医療系の研究では、実技や臨床の成績との関連が見られる一方、学業との関係は小さいという結果があります。面接の点を読むには、将来の何と関係したかを確かめる必要があります。面接、書類、教科の試験などを用いる選抜では、それぞれが扱う内容を募集要項で照らします。出願先を考える際も、面接だけの印象より、求める学びと選考全体の対応を確かめることが判断の手掛かりになります。