高校生のうちに大学の講義を受けると入学後に役立つか|早期の大学科目履修の研究
大学の講義を早く受けておけば入学後が楽になる、と勧められても、高校の勉強に加えて取り組む価値があるのか迷います。高校在学中に大学の科目を履修した生徒には進学や学位取得で良い傾向が見られますが、参加した生徒の条件も関わるため、講義の中身と志望とのつながりで選ぶのが妥当です。大学の説明会で高大連携の案内を見たときも、大学で学べるという響きだけでは、授業の内容や入学後の扱いまでは見えてきません。興味のある分野に触れたいのか、継続して課題に取り組みたいのか、単位を得たいのかによって、案内で探す記述も変わります。
- 高大連携の案内にある「大学の講義」という言葉は、学ぶ内容と制度上の扱いを合わせて読む必要があります。
- Anは米国の全国追跡調査の8,800人を使い、高校在学中の大学科目履修と、その後の学位取得を調べました。
- Leeらも米国のある州で、大学の科目を取った生徒と取らなかった生徒を比べています。
- Hemeltらは米国のある州で、大学の単位になる発展的な代数の科目を受けられる学校をくじで決めました。
大学の講義を早く受けておけば入学後が楽になる、と勧められても、高校の勉強に加えて取り組む価値があるのか迷います。高校在学中に大学の科目を履修した生徒には進学や学位取得で良い傾向が見られますが、参加した生徒の条件も関わるため、講義の中身と志望とのつながりで選ぶのが妥当です。大学の説明会で高大連携の案内を見たときも、大学で学べるという響きだけでは、授業の内容や入学後の扱いまでは見えてきません。興味のある分野に触れたいのか、継続して課題に取り組みたいのか、単位を得たいのかによって、案内で探す記述も変わります。
早期の大学科目履修を調べた研究には、大学に進んだかだけでなく、その後も在籍したか、学位を取ったかまで追ったものがあります。一方で、数学の科目を受ける機会をくじで割り当てた研究では、大学に進む割合全体には効果が見られませんでした。[4]「早く始めるほど良い」という助言を吟味するには、何を学んだ生徒を、誰と比べ、どの時点の成果を測ったのかが手掛かりになります。年内入試の準備と並行して講義を選ぶ際にも、経験の名前だけで期待を膨らませず、授業と進路の接点を具体的に考えることが出発点です。
高大連携で大学の講義を選ぶ前に読む欄
高大連携の案内にある「大学の講義」という言葉は、学ぶ内容と制度上の扱いを合わせて読む必要があります。履修は科目を学ぶこと、単位は定められた学習を修めたことを表すもので、講義への参加と単位の取得は同じ手続きではありません。募集要項や大学の案内の「高大連携」「科目等履修」の欄には、参加資格に加え、何を学び、どのような評価を受けるかという確認点があります。単位に関する記述では、高校在学中に単位を得る条件と、進学後にその単位が認められる条件を、それぞれ文章の主語と対象から読み取ります。
米国で行われている早期履修の研究では、高校在学中に大学の科目を取り、大学の単位につなげる制度が扱われています。Gianiらは、大学の単位になる科目を取った生徒と、条件の似た取らなかった生徒を比べました。[2]このように研究の対象は「大学に足を運んだ経験」よりも、科目の履修という具体的な学習です。米国の制度を中心にした研究の結果を、日本の高大連携の講義へそのまま当てはめることはできません。
| 案内で見る記述 | 読み取る内容 | 判断につながる点 |
|---|---|---|
| 高大連携の対象・参加資格 | 自分の学年や所属校が対象か | 参加を検討する前提 |
| 科目の内容・授業計画 | 扱うテーマと学習の順序 | 志望分野との接点 |
| 課題・試験・評価方法 | 聞く以外に求められる学習 | 継続して取り組む負担 |
| 単位の取得条件 | 何を満たすと単位を得るか | 履修の到達点 |
| 入学後の単位認定 | 対象科目と認定の条件 | 進学後の授業での扱い |
学位の取得まで追った研究で見られた傾向
Anは米国の全国追跡調査の8,800人を使い、高校在学中の大学科目履修と、その後の学位取得を調べました。学位は大学などの課程を修了して得る資格で、この研究が見ているのは入学した時点より先の到達点です。低所得の家庭の生徒では大学の科目を履修したことと学位を取る割合の高さが結びつき、恵まれた家庭の生徒では効果が弱い結果でした。[1]この対象の違いは、早期履修の意味を、もともと学習上の機会に恵まれた生徒の先取りだけに絞らず考える材料になります。
Anの研究では、別の時期の大学新入生のデータでも同じ結果が得られました。また、記録に表れていない要因がかなり大きい場合にも、結果が崩れにくいことを検討しています。[1]こうした確かめ方は、履修した生徒の結果が良かったという単純な比較より、結びつきの確かさを吟味するものです。ただし生徒をくじで分けた実験ではなく、実際の生徒の記録を追った観察研究という性質は残ります。
Gianiらは米国のある州の同じ学年の生徒全体を追い、似た条件の生徒どうしを照合しました。大学の単位になる科目を取った生徒は、大学への進学、進学後も在籍すること、学位を取ることの見込みが高く、高校の発展的な科目より効果が大きい可能性も示されました。[2]ただ、効果の大きさにはかなりのばらつきがあり、成績が高い生徒ほど大学の科目を取りやすい偏りも残っています。同じ「大学科目の履修」という括りの中でも、誰にどの程度の意味があるかを一律には捉えていない研究です。
参加する前の条件をそろえると何が見えるか
Leeらも米国のある州で、大学の科目を取った生徒と取らなかった生徒を比べています。使ったのは傾向スコアの照合という、記録された特徴から参加のしやすさを見積もり、似た生徒どうしを組み合わせる方法です。履修した生徒には、高校の卒業、大学への進学、四年制大学の選択、進学後の在籍の継続と正の関係がありました。[3]ここでの関係とは、履修の経験と良い結果が一緒に現れたという意味で、経験だけを結果の原因とする説明ではありません。
Leeらの研究では、少数派の人種、家族で初めて大学に行く生徒、低所得の生徒で、こうした結びつきが大きくなっていました。[3]Anの研究も家庭の条件による違いを示しており、参加者全体の傾向だけを見るより、誰を対象にした結果なのかを読む重要性が見えてきます。[1]対象の記述を省くと、どの生徒にも同じ程度の結びつきがあるように見えてしまいます。家族で初めて進学する生徒について読むときも、この研究で示されたのは、その集団で進学や在籍との関係が大きかったという結果です。
参加前の条件への目配りは、Isonの研究を読む際にも必要です。米国教育統計センターのデータでは、早期に大学の科目を取った学生は、全体として何らかの学位や修了証を得る見込みが高くなっていました。[6]しかし、この分析では、そもそもどのような生徒が早期履修を選ぶかという偏りを取り除いていません。参加者の良い結果を見つける分析と、参加する機会だけを変えて効果を調べる分析では、確かめている内容が変わります。
数学の機会をくじで割り当てた実験の結果
Hemeltらは米国のある州で、大学の単位になる発展的な代数の科目を受けられる学校をくじで決めました。この方法は無作為化と呼ばれ、参加者が自分で選ぶことから生じる偏りを抑えて、科目を受ける機会の効果を調べます。実験では、その後に高校で履修する数学が変わり、補習の数学が減って、上の段階の数学が増えました。[4]変化が現れた場所は、まず高校でどの数学を学んだかという学習の経路でした。
一方、大学に進む割合全体には効果が見られず、大学で最初に学ぶ数学の成績が良くなった証拠も限られていました。一部の生徒が二年制から四年制へと進学先の選択を変える効果はあり、進学の有無と、進む大学の種類とで結果の出方がわかれています。[4]この実験を「役立たなかった」とだけ紹介すると、高校の数学の履修に起きた変化が抜け落ちます。反対に「大学への準備になった」とだけ紹介すると、進学全体や入学後の成績で得られた結果を過大に読み込むことになります。
GianiらやLeeらが生徒の特徴を照合して得た良い傾向に対し、この実験の結果は、講義を提供するだけで幅広い成果が一斉に上がるという期待を抑える材料です。[2][3][4]観察された結びつきから参加者の選ばれ方の影響を切り離すと、期待される効き目は限られたものになります。また、実験が扱ったのは数学の科目であり、あらゆる分野の講義を比べたものではありません。検討している講義の案内では、「学べること」の説明が数学の先取りなのか、専門分野の導入なのかといった中身まで読むと、研究との接点を捉えやすくなります。
慣れた大学へ進むことと目指す学位
Jagesicらは、早期履修をした生徒が、科目を学んだ大学へそのまま進むことに注目しました。大学の科目を取った生徒は、取らなかった似た生徒より、学力に見合わない大学に進みやすい傾向がありました。[5]ここでいう学力に見合わない進学とは、研究上、本人の学力より選抜の水準が低い進学先を選ぶことであり、大学そのものの優劣を表す言葉ではありません。講義への参加が、学びの内容だけでなく、その後の進学先の選び方とも結びついていた点がこの研究の焦点です。
同じ研究では、二年制の大学にそのまま進み、学力に見合わない状態にある生徒は、四年制へ移った生徒より学士号を取る見込みが低くなっていました。[5]学士号は四年制大学などの課程を修了して得る学位です。この比較が測っているのは学士号の取得なので、早期履修に参加した時点の満足や、講義への興味の強さをそのまま表す結果ではありません。科目を受けた場所への親しみと、目標の学位まで進む経路とを重ねて考える際の論点になります。
Isonの研究では、学位や修了証を一括して数えた結果と、種類ごとの結果の向きが変わりました。学士号を取る見込みは高かった一方、二年制の準学士号や短い課程の修了証を取る見込みは低くなっていました。[6]「何かを修了する」という広い結果だけを読むと、自分の目標に近い資格でどのような傾向があったかを見失います。早期履修を選ぶ人がもともと違うという偏りを残した分析であることとともに、最終的に何の取得を測ったのかが重要です。
出願までにすること
研究が示すのは、早期履修をした集団と、その後の進学や学位取得とのつながりです。[1][2][3]日本で自分が参加する講義を決める段階では、集団の傾向を参加後の約束に置き換えず、案内の記述を判断材料にします。次の手順では、授業の内容、単位の扱い、進路の選択を、それぞれ手元に残る形で確かめます。
- 科目の案内から、学習するテーマ、課題、前提となる知識を書き出します。その横に、志望分野について今知りたいことを自分の言葉で添え、講義で扱う内容と接する箇所を線で結びます。参加日程と高校の課題の予定も同じ紙に置き、課題への取り組みまで含めて続けられるかを判断します。
- 大学の案内の「高大連携」「科目等履修」から、単位の取得条件と入学後の認定条件を抜き出します。認定の対象となる科目や手続きが読み取れない箇所には印を付け、案内に記された担当窓口に、その文章を示して尋ねます。回答を得たら、対象年度と確認した日を添えて保存し、出願時に参照する記録にします。
- 講義を開く大学と、それ以外の進学候補について、目指す分野の科目と取得する学位を並べた比較欄を作ります。参加したという事実を外しても選びたい理由が残るかを、科目の内容から書いてみます。親しみがあるという理由だけが残る場合は、出願先の決定を急がず、他の候補の学習内容を読む余地を残します。
進学先を狭める過程にも目を向けたJagesicらの研究は、講義の経験をどこで生かすかまで考える材料になります。[5]研究では、早期履修と進学・学位取得の良い結びつきが見られる一方、その大きさや現れる成果は比較の方法と対象によって変わっています。[1][2][4]個々の高大連携の講義が入学後の学びをどれだけ変えるかは、これらの結果だけでは決まりません。
よくある質問
高校を通して参加する案内は誰に相談すればよいですか
案内で高校経由の手続きが示されている場合は、校内でその案内を扱う担当の先生に相談するのが出発点です。参加希望を伝える際には、科目名と案内の該当箇所を示すと、校内で必要な手続きの話に進めます。大学へ直接連絡する手続きか、高校から取り次ぐ手続きかを先に尋ねれば、同じ申請を重ねることも避けやすくなります。相談の時点では、参加が決まっているかのように話を進めず、希望として伝えます。
出願書類の提出時にまだ履修が終わっていない場合はどう書きますか
書類の記入要領に従い、終了した学習と進行中の学習が読み取れる表現にします。記載が認められている欄なら、現時点で学んでいる内容を示し、単位をまだ取得していない場合に取得済みと書くことは避けます。修了証などの提出を求める欄では、提出時点の書類を求めているのか、後からの提出も扱うのかを出願の案内で読みます。後日の追加提出は自己判断で行わず、定められた手続きに沿います。
高校の行事と講義が重なったらどうすればよいですか
欠席の扱いについては、講義の履修案内にある出席条件や欠席時の連絡方法を確認します。高校側の行事の担当にも日程の重なりを伝え、双方に連絡が必要な事項を明らかにします。代わりの課題や別日程が用意されるかは、実施側の案内や回答に沿って判断します。大学の講義だから高校の予定より優先される、と先に決めず、参加を続けるために満たす条件を整理して相談します。
この記事の限界
測定された成果は主に進学、在籍の継続、学位の取得であり、読者が気にする個々の講義の理解や入学後の学びやすさを直接示す結果は限られています。参加者の条件を照合した観察研究と学校をくじで割り当てた数学の実験が含まれ、対象となる科目や比較の仕方がそろっていないため、全体を同じ大きさの効果として読むことも適切ではありません。日本の出願に向けた参加資格や単位認定の判断では、その年度の募集要項と大学の発表に記された条件が優先します。ここで扱った研究は、参加する科目や出願先を個別に決定するものではなく、早期履修に期待する成果を具体化する材料です。
参考文献
- An. The Impact of Dual Enrollment on College Degree Attainment. Educational Evaluation and Policy Analysis. 2013;35(1):57-75.
- Giani ほか. Exploring Variation in the Impact of Dual-Credit Coursework on Postsecondary Outcomes: A Quasi-Experimental Analysis of Texas Students. The High School Journal. 2014;97(4):200-218.
- Lee ほか. Does Dual Enrollment Influence High School Graduation, College Enrollment, Choice, and Persistence? Research in Higher Education. 2022;63(5):825-848.
- Hemelt ほか. Dual‐Credit Courses and the Road to College: Experimental Evidence from Tennessee. Journal of Policy Analysis and Management. 2020;39(3):686-719.
- Jagesic ほか. Unintended Consequences: Understanding the Relationship Between Dual Enrollment Participation, College Undermatch, and Bachelor’s Degree Attainment. Research in Higher Education. 2022;63(1):119-139.
- Ison. Dual Enrollment, Performance-Based Funding, and the Completion Agenda: An Analysis of Post-Secondary Credential Outcomes of Dual Enrollment Students by Credential Type. Community College Review. 2022;50(1):51-70.
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よくある質問
高校を通して参加する案内は誰に相談すればよいですか
案内で高校経由の手続きが示されている場合は、校内でその案内を扱う担当の先生に相談するのが出発点です。参加希望を伝える際には、科目名と案内の該当箇所を示すと、校内で必要な手続きの話に進めます。大学へ直接連絡する手続きか、高校から取り次ぐ手続きかを先に尋ねれば、同じ申請を重ねることも避けやすくなります。相談の時点では、参加が決まっているかのように話を進めず、希望として伝えます。
出願書類の提出時にまだ履修が終わっていない場合はどう書きますか
書類の記入要領に従い、終了した学習と進行中の学習が読み取れる表現にします。記載が認められている欄なら、現時点で学んでいる内容を示し、単位をまだ取得していない場合に取得済みと書くことは避けます。修了証などの提出を求める欄では、提出時点の書類を求めているのか、後からの提出も扱うのかを出願の案内で読みます。後日の追加提出は自己判断で行わず、定められた手続きに沿います。
高校の行事と講義が重なったらどうすればよいですか
欠席の扱いについては、講義の履修案内にある出席条件や欠席時の連絡方法を確認します。高校側の行事の担当にも日程の重なりを伝え、双方に連絡が必要な事項を明らかにします。代わりの課題や別日程が用意されるかは、実施側の案内や回答に沿って判断します。大学の講義だから高校の予定より優先される、と先に決めず、参加を続けるために満たす条件を整理して相談します。