オープンキャンパスで要項に書かれていない何を確かめるか|大学訪問と進学先の選択の研究
3回の大学訪問を同じ学年の間に組み込んだ米国の実験では、資料だけを受け取った生徒より、訪問もした生徒の大学についての知識や学校での相談行動が増えました。募集要項を読んでから大学を訪れる高校生にも、現地では書類にない何を確かめればよいのか、という疑問があるでしょう。確かめたいのは、授業への関わり方、学生の学びの様子、通学を含む生活の条件が、自分の希望とどう合うかです。 訪問を、志望を強めるだけでなく、入学後の暮らしを具体的に描き直す機会にすると、持ち帰る情報の意味がはっきりします。
- 募集要項では、まず志望する学部と選抜方式をそろえ、出願資格、提出書類、選考方法の欄を読みます。
- Swansonらの研究は、米国の中学生を学校内で無作為に分けて比較した実験です。
- Smithらが進学との関係を調べた研究は、米国ノースカロライナ州の農村部11学区を対象にしています。
- Bowmanらは米国の大学生について、学生と大学の「合い方」と、満足度や孤立感、在学を続ける意思との関係を調べました。
3回の大学訪問を同じ学年の間に組み込んだ米国の実験では、資料だけを受け取った生徒より、訪問もした生徒の大学についての知識や学校での相談行動が増えました。募集要項を読んでから大学を訪れる高校生にも、現地では書類にない何を確かめればよいのか、という疑問があるでしょう。確かめたいのは、授業への関わり方、学生の学びの様子、通学を含む生活の条件が、自分の希望とどう合うかです。 訪問を、志望を強めるだけでなく、入学後の暮らしを具体的に描き直す機会にすると、持ち帰る情報の意味がはっきりします。
オープンキャンパスの会場で「雰囲気がよかった」と感じたら、何を見てそう思ったのかを、その場で短く書き留めます。説明する学生の話し方なのか、授業で意見を交わす様子なのか、自分が落ち着いて過ごせそうな場所なのかで、確かめる先は変わります。募集要項で読む出願の条件と、訪問で知る学びや生活の実際を並べると、志望理由の根拠も具体的になります。気になる点や期待と違った点も残し、帰宅後に授業の案内や高校での相談につなげることが、見学を進路選択に生かす出発点です。
要項の条件と、現地で確かめる生活を分ける
募集要項では、まず志望する学部と選抜方式をそろえ、出願資格、提出書類、選考方法の欄を読みます。参加に関する記載があれば、どの行事が対象なのか、出願との関係がどう書かれているかを原文に沿って整理します。同じ大学でも、学部の案内と選抜方式の説明は読む目的が違います。参加したという事実と、出願のために満たす条件を別々に記録すると、見学後にも手続きを追いやすくなります。
入学者受け入れ方針は、大学がどのような学びの姿勢や力を求めるかを示す文章です。そこに「主体的に学ぶ」とあれば、その言葉と、自分が望む学び方のつながりを考えます。現地では、学生が授業の準備をどう進め、課題に詰まったときに誰に相談するかを聞くと、抽象的な方針が日常の行動として見えてきます。制度の説明は担当者に、日々の経験は在学生に聞くと、答えの位置づけも明確になります。
次の表は、書類で読む項目と訪問時の観察を結びつけるための整理です。自分が重く見る条件に沿って、質問する内容を選びます。答えを記録するときは、資料の記載、担当者の説明、学生個人の経験のどれに当たるかも添えます。
| 確かめたいこと | 先に読む場所 | 現地で見る・聞くこと |
|---|---|---|
| 出願と参加の関係 | 出願資格、事前の手続きの欄 | 記載が指す行事や手続きの対象 |
| 授業で求められる行動 | 教育方針、授業の内容や評価方法の説明 | 発言、予習、課題への取り組み方 |
| 学びを支える人との関係 | 学習相談や学生支援の案内 | 困ったときの相談先と使い方 |
| 続けられる生活 | 学部の所在地、授業を行う場所の案内 | 移動の負担、授業の前後の過ごし方 |
大学訪問は知識を増やし、相談するきっかけになる
Swansonらの研究は、米国の中学生を学校内で無作為に分けて比較した実験です。無作為に分けるとは、生徒の希望や成績で参加者を選ばず、偶然に任せて条件を割り当てることをいいます。一方には大学についての資料を渡し、もう一方には同じ資料に加えて、学年の間に州立の中心的な大学を3回訪れる機会を設けました。訪問を加えた群では、大学の知識や自己効力感、つまり自分にも取り組めそうだという感覚が高く、学校の職員と大学について話す割合も高くなりました。[1]
この実験が追ったのは、中学から高校への時期の意識や履修の変化です。訪問の価値を考えるうえでは、「大学が身近になった」「次に聞くことが具体的になった」という変化に注目できます。資料で読んだ言葉を、学生や教員の活動と結びつけると、自分の疑問を説明する材料が増えます。高校で相談するときも、見た場面と気になった点を示すと、必要な資料や次の確認先を絞りやすくなります。
たとえば、説明で研究活動に関心を持ったなら、普段の授業から研究に至るまでに何を学ぶのかを聞きます。学生が発表する姿に引かれたなら、発表までに読む資料や、仲間と準備する過程にも目を向けます。「楽しそう」という印象の先に、自分が取り組む作業を見つけるのが質問の役割です。見学後の記録には、その作業に興味を持った理由と、入学前に調べたい内容を続けて書くと、次の相談につながります。
早い訪問との関連を、回数の目標に置き換えない
Smithらが進学との関係を調べた研究は、米国ノースカロライナ州の農村部11学区を対象にしています。進学を支える事業に中学校段階から高校卒業まで参加した2,274人を追い、正式な大学訪問と、授業の一環として行う見学を区別しました。どちらもその後の進学と関連し、正式な訪問のほうが関連は強く、早い学年の訪問も進学と結びついていました。ここでの関連とは、訪問の経験と進学という出来事が、調べた集団の中で結びついていたという意味です。[2]
これは訪問する生徒を無作為に決めた実験ではなく、もともとの進学意欲や周囲の支えが関わる可能性を含む観察研究です。そこで準備に生かすなら、早く訪れること自体を目標にするより、訪れた後に調べ直す時間を確保するという読み方が適切です。現地で興味を持った授業を調べ、自分の関心に合う別の学び方も探す余地が生まれます。訪問の時期を、進路の答えを出す期限ではなく、疑問を育てる途中の機会として予定に置けます。
すでに出願時期が近い人は、見学の予定と、書類をそろえる予定を並べて考えます。授業の内容を知りたいのか、生活の負担を見たいのか、目的を決めると現地での時間を使いやすくなります。興味のある学部が定まっていない人は、学問の対象や課題の進め方を知ることから始めます。訪問した大学の数を増やすよりも、自分が何に引かれ、何が気になったかを説明する材料を持ち帰ることに意味があります。
「自分に合う」を授業・学生・通学に分けて観察する
Bowmanらは米国の大学生について、学生と大学の「合い方」と、満足度や孤立感、在学を続ける意思との関係を調べました。自分と大学が合うと感じる学生ほど満足度が高く、孤立感は低く、在学を続ける意思とも間接的に正の関連がありました。この研究の合い方は、学生自身が環境をどう受け止めるかを質問で捉えたものです。訪問で確かめる項目を考えるときにも、自分がその場でどのように学び、人と関わるかに目を向ける手掛かりになります。[3]
授業では、説明を聞く時間と、学生が考えたり話したりする時間の様子を観察します。話題への興味に加えて、資料を読む、答えを比べる、文章でまとめるといった作業に、自分がどう関われそうかを考えます。授業の内容や進め方、評価方法を示すシラバスと照らすと、当日の紹介と普段の学習を結びつけられます。難しそうだと感じた場合も、どの知識が必要なのか、学び始めるときの支えは何かと質問を進められます。
学生の様子を見るときは、明るいか静かかという印象に加えて、課題や相談の具体的な話を聞きます。授業のあとに誰と学ぶか、質問する機会をどう作るか、活動と勉強をどう組み合わせるかは、生活を思い描く材料です。人前で話すのが得意でない人なら、落ち着いて質問する方法や個別の相談先にも関心を向けられます。自分と似た人がいるかだけでなく、自分が必要とする関わり方を選べるかという視点も持てます。
通学については、駅からの移動も含めた疲れ方や、授業の前後に過ごす場所を確かめます。移動中に勉強したいのか、帰宅してから課題に取り組みたいのかによって、重く見る条件は変わります。学部で学ぶ場所と訪問先が一致するかを資料で読み、通学の経験を普段の時間割と組み合わせて考えます。授業、対人関係、移動を分けてメモすると、印象のよさと生活の続けやすさを、それぞれ自分の言葉で説明できます。
期待と実際のずれも、訪問で集める情報にする
Smithらによる別の研究は、米国の大学に入った31人の学業面と生活面の期待を、入学後の経験と比べています。入学前に思い描いたことと、大学生活の途中や終わりに答えた経験にはずれがあり、期待が現実離れして高かった学生は、平均的か低めの期待を持つ学生より成績が低いという関連がありました。入学前の期待を尋ね、入学後と照らした小規模な調査です。訪問時の記録にも、楽しみにしていることと、それを支える日々の作業を並べる発想を加えられます。[4]
たとえば「自由に学べる」と聞いて引かれたら、自由に選ぶまでに必要な基礎科目や、履修の相談方法を聞きます。「学生どうしが親しい」と感じたら、交流が生まれる授業や活動について、話してくれた学生の経験を詳しく聞きます。紹介を聞いて喜んだ気持ちも、負担が気になった感覚も、その理由と一緒に残します。期待を下げる作業にするより、期待の中身に条件と手順を加える作業にすると、志望理由も具体的になります。
Rocconiらは米国の学生を対象に、性格の型と専攻の環境との合い方を、職業選択の理論に基づいて調べています。合い方は自己申告の成績と正の関連があった一方、学んだ実感や大学への満足度との統計的に明確な関連は見られませんでした。Bowmanらが扱った大学全体との合い方と、この研究の性格と専攻の対応では、同じ「合う」という言葉でも測る内容が違います。満足、成績、人との関係をまとめて判断せず、自分が大切にする条件ごとに見る理由がここにあります。[5]
好印象を持ったときは、その印象を支える具体的な話を探します。気になる点があれば、すぐに候補から外す前に、別の学び方や相談の仕組みを確かめます。自分が期待した姿と異なる点も含めて知るほど、入学後にどんな工夫が必要かを考える材料が増えます。訪問の記録には、魅力だけでなく、続けるために整えたい条件も同じ重さで残します。
見たことを書き留め、志望理由と出願条件に戻る
見学後は、メモを「実際に見たこと」「説明を受けたこと」「自分が考えたこと」に分けて読み直します。「学生が授業の課題について質問していた」は観察で、「質問しやすそうだ」は自分の解釈です。両方を残すと、感じたことの根拠をたどれます。説明を受けた内容には、どの学部や授業の話だったかを添え、後で対応する案内を探せるようにします。
志望理由との照合では、見学の感想に、自分がこれまで関心を持ってきたことを結びつけます。研究の紹介に引かれたなら、どの問題をもっと知りたいと思ったのか、その学部の学びのどこが関係するのかを書きます。学生の活動に引かれた場合は、活動名に加えて、どの作業に自分も取り組みたいのかを言葉にします。説明を聞いて新しく生まれた関心と、以前から続く関心の両方を残すと、選択の理由を整理しやすくなります。
訪問が難しい人は、大学が公表する授業紹介や学生の話を読み、同じ観点でメモを作ります。移動の条件は経路の情報で、授業の進め方はシラバスで調べ、生活の疑問は質問できる機会を探します。現地で聞くことが苦手な人も、先に質問を文章にすると、知りたい点を絞れます。参加に関する出願条件がある場合は、その手続きと情報収集の方法をそれぞれ担当部署に確かめます。
最後に、高校で相談する際には、志望理由のメモと募集要項の該当箇所を一緒に持ち寄ります。出願資格や校内で必要な手続きは要項と高校で、学部の教育内容は大学の説明と資料で照らし直します。訪問を終えた時点での好みを大切にしながら、残った疑問を確認先につなぐと、選択の根拠が整います。大学訪問は期待を現実に寄せる場として使い、見たことを記録し、自分の志望理由を更新する機会にします。
よくある質問
大学を訪れた経験は、志望理由にどう結びつければよいですか
見たことや聞いたことに、関心を持った理由と、その学部で学びたい内容を続けて書きます。授業が印象に残った場合は、扱っていた問題や学び方のどこに引かれたのかを具体化します。そのうえで教育内容の案内と照らし、入学後の学びとして位置づけます。参加の記録を残すことと、学びたい理由を説明することを、それぞれ意識して整理すると文章の中心が定まります。
在学生の話と、自分の希望が食い違うときはどうしますか
話してくれた学生の学部、学ぶ内容、生活の条件を確かめ、自分の希望との違いを書き出します。課題が多いという話でも、課題の内容に引かれる人と、ほかの活動との両立を重く見る人では受け止め方が変わります。授業の案内や別の説明も照らし合わせ、どの条件が自分にとって大切なのかを考えます。その過程で必要な支えや工夫も見つけると、進学先を比べる材料になります。
現地で質問を思いつかなかった場合はどうすればよいですか
帰ってから、印象に残った説明と、思い描いていた大学生活を並べてみます。違いがあった部分から、授業の準備、課題の進め方、相談先などの疑問を文章にします。資料を読み直しても疑問が残れば、大学が案内している質問の窓口を利用する方法があります。高校で相談するときにも、何を知りたくなったかをメモで示すと、確認する順序を決めやすくなります。
この記事の限界
測定されたのは、米国の中学生の知識や相談行動、支援事業に参加した生徒の進学、大学生が答えた期待や環境との合い方などで、日本の年内入試で訪問が評価に及ぼす効果を調べた研究ではありません。研究の時期や対象、測り方は異なり、期待の研究は31人と小さく、合い方の研究には自己申告や同じ時点の回答に基づく比較が含まれます。要項は年度ごとに変わるため、参加条件や出願手続きについては、出願する年度と方式に対応した募集要項と大学の最新の発表を優先します。ここで挙げた観察点は個別の出願判断に代わるものではなく、訪問の記録を大学の説明と高校での相談に結びつけ、本人の希望と生活の条件を確かめるための材料です。
参考文献
- Swanson ほか. An Evaluation of the Educational Impact of College Campus Visits: A Randomized Experiment. AERA Open. 2021;7.
- Smith ほか. Campus Visits as Predictors of Postsecondary Enrollment in Low-Income, Rural School Districts. Journal of College Access. 2022.
- Bowman ほか. A Missing Piece of the Departure Puzzle: Student-Institution Fit and Intent to Persist. Research in Higher Education. 2014;55(2):123-142.
- Smith ほか. Do First-Year College Students' Expectations Align with Their First-Year Experiences? NASPA Journal. 2005;42(2):153-174.
- Rocconi ほか. The Impact of Person-Environment Fit on Grades, Perceived Gains, and Satisfaction: An Application of Holland's Theory. Higher Education. 2020;80(5):857-874.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
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よくある質問
大学を訪れた経験は、志望理由にどう結びつければよいですか
見たことや聞いたことに、関心を持った理由と、その学部で学びたい内容を続けて書きます。授業が印象に残った場合は、扱っていた問題や学び方のどこに引かれたのかを具体化します。そのうえで教育内容の案内と照らし、入学後の学びとして位置づけます。参加の記録を残すことと、学びたい理由を説明することを、それぞれ意識して整理すると文章の中心が定まります。
在学生の話と、自分の希望が食い違うときはどうしますか
話してくれた学生の学部、学ぶ内容、生活の条件を確かめ、自分の希望との違いを書き出します。課題が多いという話でも、課題の内容に引かれる人と、ほかの活動との両立を重く見る人では受け止め方が変わります。授業の案内や別の説明も照らし合わせ、どの条件が自分にとって大切なのかを考えます。その過程で必要な支えや工夫も見つけると、進学先を比べる材料になります。
現地で質問を思いつかなかった場合はどうすればよいですか
帰ってから、印象に残った説明と、思い描いていた大学生活を並べてみます。違いがあった部分から、授業の準備、課題の進め方、相談先などの疑問を文章にします。資料を読み直しても疑問が残れば、大学が案内している質問の窓口を利用する方法があります。高校で相談するときにも、何を知りたくなったかをメモで示すと、確認する順序を決めやすくなります。