総合型選抜の資料室運営: 武蔵野個別指導塾 武蔵境本校

小論文のために新聞を読むと書く力は伸びるか|題材の知識と文章の質の研究

最終更新:2026-10-22

新聞を読む時間を増やせば、小論文で自分の考えを書く力も伸びるのでしょうか。新聞は題材を知る助けになりますが、書く力につなげるには、読んだ内容について自分の考えを短く書く練習と組み合わせるのがよいでしょう。 読んだ量を目標にすると、記事の内容は説明できても、自分の意見を書く段階で手が止まることがあります。

資料の年度:2026/確認日:2026-10-22

新聞を読む時間を増やせば、小論文で自分の考えを書く力も伸びるのでしょうか。新聞は題材を知る助けになりますが、書く力につなげるには、読んだ内容について自分の考えを短く書く練習と組み合わせるのがよいでしょう。 読んだ量を目標にすると、記事の内容は説明できても、自分の意見を書く段階で手が止まることがあります。

小論文の準備では、世の中の出来事を知ることと、その知識を使って理由を述べることを分けて考えると、取り組む内容が具体的になります。記事に出てくる制度や人々の困り事を理解するのは、考える材料を増やす作業です。その材料から何を重く見るかを決め、読み手に伝わる文章にするのは、さらに先の作業です。

55日間、新聞を教材に加えた授業で、中学生と高校生の読む力と書く力が伸びたという報告があります。[4] この数字が表しているのは、授業として取り組んだ期間です。自分で新聞を読み続ける場合の目標日数と受け取るより、読む活動をどのような学習に結びつけたのかに目を向けると、小論文の準備を考える入口になります。

新聞で得る知識と、小論文で使う知識

総合型選抜や学校推薦型選抜に向けて新聞を読むなら、まず「時事を知る」と「小論文の題材を理解する」の違いを押さえたいところです。時事とは、その時々の社会の出来事や問題を指します。出来事の名称を覚えるだけでなく、誰が困り、どのような対応が論じられているかまで理解すると、考えを述べるための材料になります。

たとえば交通に関する記事を読む場合、事業の開始や終了という出来事だけに注目する読み方があります。それに加えて、利用する人、費用を負担する人、運営する人の事情を捉える読み方もできます。小論文で対応の是非を考える場面では、後者の読み方によって、便利さと負担の両方に目を向けやすくなります。

ただし、記事で扱う問題の範囲と、設問で求められる範囲は区別しておく必要があります。交通の記事から得た知識でも、問われているのが地域の暮らしなのか、費用の分担なのかによって、使う部分は変わります。知っている話をすべて書くより、問われたことに関係する材料を選び、その材料が理由になるまで説明することが大切です。

募集要項の「求める学生像」にある関心の分野と、過去の出題のテーマは、読む記事を選ぶ手掛かりになります。前者は大学でどのような学びに関心を持ってほしいかを読む欄で、後者は実際にどんな題材が示されたかを見る材料です。新聞の知識をためることと、出題に沿って使うことの間に、この選び直す作業を置くと、読む目的がはっきりします。

題材を知っていることは文章の質を支える

Olinghouseらは、小学5年生50人が宇宙を題材に書いた物語、意見文、説明文を調べました。文章の書き方に関する知識と、宇宙という題材に関する知識は、それぞれ別に作文の質を予測していました。書く方法を知っていることに加え、何について書くかを知っていることも、文章の出来と結びついていたのです。[1]

ここでいう「予測」は、ある知識の違いから作文の質の違いを統計的に説明することです。書き方の知識は、文章としてどう伝えるかに関わり、題材の知識は、説明や意見に何を盛り込めるかに関わります。この区別は、新聞を読んで材料を増やす学習と、その材料を文章にする学習の役割を考える助けになります。[1]

Heらの研究では、カナダ西部の大学で使われる英語の試験で、英語を第二言語とする学生50人が異なる題に取り組みました。大学での学びという一般的な題と、連邦の政治という専門の知識が要る題の両方について書いたところ、どの英語の力の層でも、知識の要る題の方が点は低くなりました。差は考えの中身だけでなく、構成と言葉にも表れていました。[2]

この結果を読むときには、言葉を使う力と題材を理解する力の両方に目を向けることが大切です。文章がまとまらないとき、表現だけを直す前に、扱っている問題を自分で説明できるかを点検する余地があります。たとえば「その対応が必要な理由」を書こうとして止まるなら、対応によって誰のどんな困り事が変わるのかを、記事に戻って捉え直すことができます。

読む指導の効果と、新聞の授業の効果を読み分ける

Grahamらは、読むことへの働きかけが書く力を伸ばすかを、メタ分析という、複数の研究をまとめて計算し直す方法で調べました。読み方を教えた54本の実験、5,018人を含む分析では、作文の質への効果量は0.63でした。効果量は、差の大きさを研究どうしで比べられるようにした値で、読む指導が書く力にもつながるという結果です。[3]

文章を読む機会や、人が読むのを見る機会を増やした研究では、作文の質への効果量は0.44でした。こちらも書く力の向上を支える結果ですが、読み方を教えた研究とは、行った活動の内容が違います。数字の大小だけを見るより、学習の中で何を変えた研究なのかを一緒に読むことが重要です。[3]

新聞そのものに近いのが、Palmerらによる中学生と高校生の授業の報告です。新聞を教材に加えた55日間の授業で、読む力と書く力が伸びたと報告しています。これらの研究を、対象と活動に沿って並べると、次のようになります。[4]

新聞そのものに近いのが、Palmerらによる中学生と高校生の授業の報告です
研究調べた活動や関係報告された結果
Olinghouseら [1]題材の知識、書き方の知識と作文の質それぞれの知識が別に作文の質を予測
Heら [2]一般的な題と専門の知識が要る題での英作文知識の要る題では中身・構成・言葉の評価が低下
Grahamら [3]読み方の指導、読む機会などの増加作文の質への効果量はそれぞれ0.63、0.44
Palmerら [4]新聞を教材に加えた55日間の授業読む力と書く力の伸びを報告
Kentら [5]読む力などと作文の質の関係弱い〜中程度の正の相関

読むだけで書けるようになると考えない理由

新聞を使った授業の成果と、新聞という教材だけの効果は、分けて考える必要があります。Palmerらの報告で示されている結果には、比べる群や伸びの大きさの数値がなく、新聞の効果と授業全体の効果を切り分ける材料が不足しています。Grahamらの分析も新聞に限ったものではないため、これらから新聞を読むだけで書く力が伸びるとは言えません。[3][4]

別の角度から関係を調べたのが、Kentらのメタ分析です。手書きの速さ、つづり、読む力、話す力と作文の質をまとめると、いずれも弱い〜中程度の正の相関がありました。相関とは、ある力が高い人ほど別の力も高い傾向を指し、この結果は読む力が作文の質を支える要素の一つであることを示しています。[5]

読む力と書く力を同じものとして扱うと、練習の途中で困っている場所が見えにくくなります。記事の説明は理解できるのに意見を書くと止まるなら、次に試す作業は、自分が何を重く見たかを理由とともに言葉にすることです。逆に、意見はあるのに理由があいまいなら、記事の事実や説明に戻り、その意見を支える材料を探す方が目的に合います。

また、読む量を増やすために、書く時間がなくなる場合にも取り組み方の調整が必要です。新聞を読み終えたかだけでなく、記事を離れても内容の筋を説明できるか、自分の考えを文章にできるかを練習の目安にします。読書量だけを積み上げる目標から、実際に書いた文章でつまずきを見つける目標へ変えると、次に読む理由も具体的になります。

読んだ記事への短い意見を練習に加える

新聞を小論文の準備に使うなら、記事を読んだ後に、その問題への自分の考えを短く書いてみる方法があります。記事の説明を写す作業と、自分の判断を述べる作業を区別するのが出発点です。「何が起きたか」を書いた後に、「その点をどう考えるか」を添えると、説明から意見へ移る箇所を自分で見つけられます。

たとえば公共の施設の利用方法を変えるという記事なら、便利になる人の事情に注目する考え方も、利用しにくくなる人の事情に注目する考え方もあります。どちらを選ぶ場合も、注目した事情と判断の間を言葉でつなぎます。「困る人がいるので反対です」で終えるより、どんな困り事を重く見たのかまで書く方が、自分の考えの中身を点検しやすくなります。

書いた後は、記事の内容を説明した部分と、自分の考えを述べた部分を読み返します。記事にある発言を自分の意見のように書いていたら、誰の考えなのかが伝わる形に直します。記事に賛成する場合にも、その意見を選んだ理由を自分の言葉で添えると、賛否だけで終わらない文章になります。

新聞を読むことに慣れていない場合は、長い記事を最後まで読み切る目標より、意味のつながりを追える記事を選ぶ方が取り組みやすいでしょう。知らない言葉が多くて筋を見失うなら、その問題を説明する記事を先に読む選択もあります。すでに記事を理解できる人は、読む対象を増やす前に、その記事からどんな理由を取り出して書けるかに時間を使えます。

出題の分野に合わせて読む目的を決める

出願に向けて確認するのは、過去の出題で扱われたテーマの分野と、募集要項の「求める学生像」に書かれた関心の分野です。過去の出題は、時事的な出来事を扱うのか、学部の専門に関係する問題を扱うのかという観点で見ます。資料が付いている場合には、題材の名前に加え、どのような文章や資料を通して問題が示されているかにも注目します。

時事的な題なら、出来事を知らせる記事に加えて、その背景を説明する記事が読む候補になります。専門に関わる題なら、その分野で使われる考え方や問題の背景を説明する文章も候補です。資料型は問題を示す形式なので、時事や専門のテーマと重なる場合もあり、資料のある出題を別の話題として切り離す必要はありません。

「求める学生像」は、自分が選ぶ記事と学びたい分野の接点を見るために使います。関心のある分野が書かれているなら、記事のどの問題がその分野につながるかを考えます。過去に出た題をそのまま予想するためではなく、自分が理解を深めたい問題を絞るために読むと、記事を選ぶ基準ができます。

保護者と取り組む場合も、記事を読んだかどうかだけで終わらせず、本人がどこに関心を持ったかを聞く形にすると、書く内容を選ぶ助けになります。大人の意見に合わせて整えるより、本人が選んだ理由を文章の中に残す方が、練習で何を考えたかを見返せます。食卓に新聞を広げる機会には、気になった記事への自分の考えを、理由を添えた短い段落として書き残します。

よくある質問

新聞の記事を要約するだけでもよいですか

要約は、記事の中心となる内容を捉えて短く伝える練習として使えます。小論文で自分の意見を求められることに備えるなら、要約に加えて、どの点を重く見てどう考えたかを書く時間を設けると、練習の目的がはっきりします。記事の説明と自分の判断の違いが読み手に伝わるかを点検し、筆者や取材された人の意見をそのまま自分の結論にしていないかも見直します。

興味のない分野の記事も読んだ方がよいですか

読む分野を選ぶときは、過去の出題のテーマと「求める学生像」にある関心の分野を手掛かりにできます。今の興味から少し離れていても、学びたい分野に結びつく問題なら、その背景を説明する記事から触れる方法があります。広く読んだという感覚だけを目標にせず、その問題を短く説明できるか、何が気になったかを自分の言葉で書けるかを目安にすると、取り組む対象を選びやすくなります。

新聞を読む時間と書く時間はどう分ければよいですか

記事の内容を理解する段階で止まるのか、理解したことを文章にする段階で止まるのかによって、時間を使う先を変えます。内容の説明はできるのに意見が出てこないなら、読む量を追加する前に、自分が大切だと考えた点とその理由を書く作業に進みます。書いた理由があいまいなときは記事へ戻るという往復をすると、読む時間と書く時間にそれぞれ具体的な役割を持たせられます。

この記事の限界

測定されたのは、小学生の作文や第二言語の英作文、読む活動を変えた学習の成果であり、日本の年内入試の小論文で新聞の習慣がどれほど評価につながるかを直接調べた結果ではありません。新聞教材の授業について引いた報告は1994年のもので、比較の条件や伸びの大きさを詳しく判断する材料も限られ、現在の高校生の自主的な読み方への効果を切り分けて示すには限界があります。

読む分野を選ぶ際は、年度ごとに変わる募集要項と大学の最新の発表を優先し、過去の出題は準備の方向を考える材料として扱います。ここで述べた読み書きの練習は学習方法を考えるための提案であり、個別の出願先や選考方法を決める判断の代わりにはなりません。

参考文献

  1. Olinghouse ほか. The Relationship of Discourse and Topic Knowledge to Fifth Graders' Writing Performance. Journal of Educational Psychology. 2015;107(2):391-406.
  2. He ほか. Topical Knowledge and ESL Writing. Language Testing. 2012;29(3):443-464.
  3. Graham ほか. Reading for Writing: A Meta-Analysis of the Impact of Reading Interventions on Writing. Review of Educational Research. 2018;88(2):243-284.
  4. Palmer ほか. Improving Reading and Writing of Students with Newspaper-Based Instruction. Newspaper Research Journal. 1994.
  5. Kent ほか. The Relationship between Component Skills and Writing Quality and Production across Developmental Levels: A Meta-Analysis of the Last 25 Years. Review of Educational Research. 2016;86(2):570-601.

要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う

  • 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
  • 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
  • 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
  • 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人

このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒の完全1対1で、総合型選抜は代表の宮川が専任で担当し、ほかの科目は大学教員や東京大学などの大学院生が教えます。アルバイト講師はいません。

武蔵野個別指導塾の国語塾案内

よくある質問

新聞の記事を要約するだけでもよいですか

要約は、記事の中心となる内容を捉えて短く伝える練習として使えます。小論文で自分の意見を求められることに備えるなら、要約に加えて、どの点を重く見てどう考えたかを書く時間を設けると、練習の目的がはっきりします。記事の説明と自分の判断の違いが読み手に伝わるかを点検し、筆者や取材された人の意見をそのまま自分の結論にしていないかも見直します。

興味のない分野の記事も読んだ方がよいですか

読む分野を選ぶときは、過去の出題のテーマと「求める学生像」にある関心の分野を手掛かりにできます。今の興味から少し離れていても、学びたい分野に結びつく問題なら、その背景を説明する記事から触れる方法があります。広く読んだという感覚だけを目標にせず、その問題を短く説明できるか、何が気になったかを自分の言葉で書けるかを目安にすると、取り組む対象を選びやすくなります。

新聞を読む時間と書く時間はどう分ければよいですか

記事の内容を理解する段階で止まるのか、理解したことを文章にする段階で止まるのかによって、時間を使う先を変えます。内容の説明はできるのに意見が出てこないなら、読む量を追加する前に、自分が大切だと考えた点とその理由を書く作業に進みます。書いた理由があいまいなときは記事へ戻るという往復をすると、読む時間と書く時間にそれぞれ具体的な役割を持たせられます。