年内入試で早く決まった後の高3の冬をどう過ごすか|進路決定後の学習意欲の研究
年内入試で進学先が決まった後、受験への緊張がほどける高3の冬を、どんな学習を続ける時間にすればよいのでしょうか。卒業までの授業と進学先から示された課題を軸に、学ぶ内容とのつながりを保つ過ごし方が基本です。早く決まったという日付だけで、その後の意欲や大学での成績まで決まるわけではなく、本人が置かれる学習環境も大切な論点になります。
- 総合型選抜や学校推薦型選抜で進学先が定まることは、大学への進路に区切りがつくことです。
- Leeds らは、米国の進学先が早く確定する制度を利用し、高校の最終学年の学習を比べました。
- Jensen らは、ある大学の早期決定の枠で入学した学生と、通常の選考で入学した学生の大学での成績を比べました。
- Young-Jones らは、「最終学年病」と呼ばれる、遅刻や欠席、意欲の低下などとして語られる現象を扱いました。
年内入試で進学先が決まった後、受験への緊張がほどける高3の冬を、どんな学習を続ける時間にすればよいのでしょうか。卒業までの授業と進学先から示された課題を軸に、学ぶ内容とのつながりを保つ過ごし方が基本です。早く決まったという日付だけで、その後の意欲や大学での成績まで決まるわけではなく、本人が置かれる学習環境も大切な論点になります。
部活の後に仲間と進路の話をする場面では、まだ試験が続く人と、進学先が決まった人とで、冬に気にかかることが違います。試験日から逆算する予定がなくなれば、空いた時間に何を置くかが新しい問題になります。勉強の量を周囲と同じにすることと、自分の学びを途切れさせないことは、別の課題です。
保護者にとっても、受験用の問題集を開く姿が減ると、気持ちまで離れたように見えることがあります。一方、進学のために続けてきた学習には、試験を通過する役割と、内容を理解する役割があります。前者の区切りがついた後にも後者は残るため、冬の過ごし方は「まだ受験生らしく見えるか」より、何を学び続けているかで考えるほうが具体的です。
進路の決定と、高校の学習の区切りを分ける
総合型選抜や学校推薦型選抜で進学先が定まることは、大学への進路に区切りがつくことです。それとは別に、高校で履修している授業、卒業までの出席や成績、大学に入るための手続きがあります。「決まった」という言葉でこれらをひとまとめにすると、受験準備の終了が、そのまま学校生活の終了のように聞こえてしまいます。
募集要項の「入学手続」は、選考の結果を受けて何を行うかを読む欄です。「入学前の課題」は学習上の指示を読む欄であり、高校の出席や成績の扱いは高校での学習に関わります。それぞれは扱う事柄が異なるので、課題を終えたという事実と、手続きを終えたという事実は同じではありません。冬の予定を考える前提として、書類の言葉がどの区切りを示すかという違いがあります。
学習意欲という言葉にも、いくつかの中身があります。勉強したいと思う気持ち、授業に参加する行動、課題を提出する行動、結果としての成績は、互いに関係していても同一ではありません。たとえば、試験のための緊張が薄れたという本人の感覚と、授業で学ぶ内容を理解できているかは、別々に説明できる事柄です。
この区別は研究を読む際にも重要です。高校の成績を比べた研究からは成績の違いが、大学生に気持ちを聞いた研究からはその受け止めが見えてきます。冬の学習の話として並べる場合も、それぞれが何を測ったのかを明らかにする必要があります。「やる気が下がる」という言葉だけでは、どの変化が起きたのかが隠れてしまうからです。
早く決まった生徒に見られた成績の小さな差
Leeds らは、米国の進学先が早く確定する制度を利用し、高校の最終学年の学習を比べました。対象の制度では、大学に入る1年以上前に、該当する生徒が自分の進路の確定を知ります。大都市の学区の記録を用い、制度の基準をぎりぎり満たした生徒と、その基準を満たさず最終学年の終わりに結果を知る生徒を比べた研究です。[1]
使われたのは、回帰不連続という、制度の境目のすぐ上とすぐ下にいる人を比べる方法です。成績が大きく異なる生徒どうしを単純に並べるよりも、基準を越えたことに伴う違いに注目しやすくなります。研究で見られたのは、進学先が早く確定した側の最終学年の成績がわずかに低く、上級の科目を取る数も少ないという結果でした。[1]
ここでの「わずか」という大きさは重要です。早期に決まった生徒の学習が全面的に止まった、という結果とは異なります。成績だけでなく、どの科目を選ぶかにも違いが見られたため、進路が定まった後の学びを考える際には、取り組む内容にも目が向きます。試験の結果を待つ状態と、すでに結果を知っている状態の違いが、学習行動と結びつく場合を示す材料です。[1]
この比較の単位は、制度の基準付近にいる生徒の集団です。「成績がわずかに低い」という結果は、その集団どうしを比べたときの違いを表しています。本人が勉強への意欲をどう感じていたかを直接聞く方法とは、捉えているものが異なります。成績と科目の選択という具体的な記録から、進路の確定に伴う学習の変化を考えた点が、この研究の特徴です。[1]
大学の成績と冬の意欲は、同じ結果ではない
Jensen らは、ある大学の早期決定の枠で入学した学生と、通常の選考で入学した学生の大学での成績を比べました。早期決定の後の枠で入った学生では、大学の成績が低く、表彰や奨学金を受けることも少ないという結果でした。一方、先の枠で入った学生の結果は、どの指標を見るかによってわかれていました。[2]
これは相関研究、つまり、実際に存在する集団の間で何と何が結びついているかを調べた研究です。この比較には、入学の時期に関する制度と、その制度を選んだ学生の背景がともに含まれます。また、測ったのは大学での成績などであり、高校の冬に本人がどれほど意欲を持っていたかという記録ではありません。[2]
そのため、成績の低さから高校時代の怠けをさかのぼって説明するのは、研究で測った範囲を越えます。同じ早期決定でも枠によって結果のそろい方が違う点は、早い時期という共通点だけでは説明が足りないことを示しています。大学での成績は、冬の過ごし方を考える背景にはなっても、目の前の生徒への人物評価には置き換わりません。
関連する研究で扱う結果は、次のように異なります。比較の相手に加え、結果が記録なのか、本人の認識なのかという違いもあります。並べると、早期決定から学習意欲、大学での成績へと一直線につながる説明が、研究を読む際の取り違えになりうることが見えてきます。
| 研究 | 対象や比較の中心 | 見ている結果 |
|---|---|---|
| Leeds ら [1] | 早く進路が確定する制度の基準付近の生徒 | 高校最終学年の成績と科目の選択 |
| Jensen ら [2] | 早期決定と通常の選考で入学した学生 | 大学での成績、表彰、奨学金 |
| Young-Jones ら [3] | 最終学年の意欲低下についての大学生の認識 | 学生が考える現象と支援関係 |
| Kolluri [4] | 大学進学を目指すラテン系の高校最終学年の生徒 | 学習の継続や離脱をめぐる経験 |
| Clayton ら [5] | 進学予定の秋に入学しなかった生徒 | 入学を先に延ばした理由とその後の進学 |
最後まで学ぶ生徒と、学校での関わり
Young-Jones らは、「最終学年病」と呼ばれる、遅刻や欠席、意欲の低下などとして語られる現象を扱いました。大学生に受け止めを尋ねると、学生は大学にもその現象があると考えていました。教員や助言者との支え合う関係も、その現象の受け止め方に大きく関わっていました。[3]
この研究で中心にあるのは、学生が終わりの時期をどう理解しているかです。成績の下落を測ることとは違い、同じ行動を本人や周囲がどう捉えるかに目を向けています。高校生に「進路が決まれば気が緩むものだ」と言う場合も、それは行動を説明する見方のひとつであって、生徒全員に当てはまる予定表ではありません。
Kolluri の質的研究は、その一律の見方を問い直す材料になります。質的研究とは、経験や語りなどから、出来事がどのように起きるかを詳しく捉える方法です。大学進学を目指すラテン系の高校最終学年の生徒を扱い、多くの生徒が最後まで厳しい学習を続けている姿を示しました。一方、学習から離れた生徒がいた総合高校では、教師の低い期待や、生徒の文化と切り離された授業が見られました。[4]
ここで焦点になるのは、本人の気合いだけでなく、授業や周囲との関係です。学ぶ内容が自分の生活や関心から遠く感じられる場面と、自分にも学びが期待されていると感じる場面では、学習の意味が違って見えます。冬の計画には、続けたい授業の内容と、つまずいたときに話せる相手をひと組にして置く方法があります。これは研究の結果を踏まえて生活に取り入れる提案であり、勉強時間の長さだけでは見えない学習環境への着目です。
勉強から離れたように見える状態を読み違えない
進路が決まった後の変化を考えるうえでは、「予定どおりに進まなかった」という外から見える事実と、その理由を区別する視点もあります。Clayton らは、高校最終学年の春には進学の意図があったのに、その秋に入学しなかった生徒に面接しました。その後の進学を追うと、多くは意図して入学を先に延ばしており、後から大学に入っていたことがわかりました。[5]
この研究の対象は入学という行動であり、勉強の意欲そのものではありません。それでも、ある時点で予定と違った人を、すべて進学から離れた人として扱うと、実際の経緯を大きく取り違えるという論点があります。本人の理由やその後の動きが加わることで、同じ記録の意味が変わります。[5]
冬の学習にも、外から見える活動と本人の目的を分ける余地があります。たとえば、受験用の演習を終えて学校の授業の復習に移る場合、以前の問題集を使わなくなること自体は自然な変化です。反対に、新しい教材を机に置いたというだけでは、学習が進んでいるかまでは見えません。活動の名前や見た目より、取り組んでいる中身があるかが論点になります。
したがって、すでに授業や課題に取り組んでいる生徒に、周囲の不安を打ち消すためだけの課題を上乗せする考え方は、この話題の中心から外れます。また、卒業までの履修に未完了の課題がある生徒と、新しい分野を学び始めたい生徒では、冬に扱う内容が異なります。どちらも「早く決まった人」という同じ分類に入りますが、必要な学習の見通しまで同じとは限りません。
出願前から読む欄と、決定後に残る学習
出願を考える段階では、選考を通過した後に卒業までどんな予定が残るかも、冬の生活を見通す材料になります。確認するのは、募集要項や合格通知の「入学前の課題」「入学手続」、そして高校の卒業までの出席や成績の扱いです。調査書の最終の記載がどの時点の状況を表すかも、ここに含まれます。大学から求められることと高校で終えることを、該当する記載から分けておくのが、手続き面での具体的な行動です。
記載に課題の案内時期が示されていれば、それは課題の内容が判明する時点を意味します。提出の指定があれば、学習を終える予定と提出する予定を結びつける情報になります。高校側の出席や成績の扱いも、大学への進路が決まったかどうかとは別の制度上の事柄です。こうした区別によって、気持ちの区切りと、実際に残っている予定の食い違いが見えます。
学習面では、今の授業で理解が曖昧な内容を、冬に取り組む具体的な課題として置く方法があります。「大学まで勉強を続ける」という広い予定よりも、どの説明を読み直し、どの問題を解けるようにするかが見える予定です。これは入試直前と同じ量を維持するという意味ではなく、卒業までに学ぶ内容を自分の課題として持つための提案です。
高3の冬は、試験に向けた準備が終わった後にも、高校で学んでいる内容が残る時期です。研究では、早期に進路が定まった生徒に小さな成績差が見られた一方、最後まで厳しい学習を続ける生徒の姿も捉えられています。[1][4] 日本の生徒それぞれの冬の意欲や大学での成績に、早期の決定自体が及ぼす影響は、未解明のままです。
よくある質問
入学手続きの書類の読み方は高校に聞けばよいですか
大学が発行した入学手続きの書類の意味や対象者を確定する窓口は、その書類を出した大学です。高校は高校で発行する書類や校内での扱いを説明する立場なので、扱う範囲が異なります。高校に伝えてある進路の情報と、大学側で手続きが済んだかという情報も別であり、どちらの状態を知りたいかによって質問の相手が変わります。
友人と進学先が決まる時期が違うときも同じ計画が必要ですか
友人と時期が違うことだけを理由に、同じ学習計画にする必要はありません。これから試験を受ける人には試験に向けた予定があり、進路が決まった人にはその後の予定があるためです。互いの忙しさを比べることと、学習上必要な内容を決めることは別で、同じ教室で学ぶ友人同士でも、卒業までの冬の時間の使い方が異なることはあります。
早く決まった経験を大学で説明する必要はありますか
早く進路が決まったこと自体について、誰もが大学で説明するという共通の決まりを想定する必要はありません。個別に提出を求められる書類や課題があれば、その設問が説明する範囲を定めます。進路の決定時期は本人の経歴の一部ですが、それだけで大学に入るまでの学習内容や関心の変化のすべてが伝わるものでもありません。
この記事の限界
比較の精度には限界があり、Leeds らは境目を狭くした推定を不確かとし、Jensen らの相関研究では早期決定の影響と学生にもともとある違いを区別できません。[1][2] 扱った研究には古い時期のものや、意欲とは異なる結果を測るものもあり、日本の年内入試後の高校生を直接追った根拠はここには含まれていません。
入学までの課題と手続きは年度ごとに変わるため、実際の条件については最新の募集要項、合格通知、大学の発表が優先されます。研究が述べる集団の傾向と、本人の出願や卒業までの履修をどう判断するかの間には、個別に確かめるべき学習状況が残っています。
参考文献
- Leeds ほか. Does Student Effort Respond to Incentives? Evidence from a Guaranteed College Admissions Program. Research in Higher Education. 2017;58(3):231-243.
- Jensen ほか. Early Decision and College Performance. Economics of Education Review. 2010;29(4):517-525.
- Young-Jones ほか. Senioritis: College Student Perceptions on Causes, Outcomes, and Support. NACADA Journal. 2021;41(1):64-79.
- Kolluri. Latinx High School Seniors Preparing for College: "Ganas" or Symbolic Violence? Journal of Latinos and Education. 2023;22(3):1065-1078.
- Clayton ほか. Summer Melt and Delayed Enrollment: Unpacking High School Seniors' College Intentions and Later Decisions. Journal of The First-Year Experience & Students in Transition. 2022;34(1):61-78.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
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よくある質問
入学手続きの書類の読み方は高校に聞けばよいですか
大学が発行した入学手続きの書類の意味や対象者を確定する窓口は、その書類を出した大学です。高校は高校で発行する書類や校内での扱いを説明する立場なので、扱う範囲が異なります。高校に伝えてある進路の情報と、大学側で手続きが済んだかという情報も別であり、どちらの状態を知りたいかによって質問の相手が変わります。
友人と進学先が決まる時期が違うときも同じ計画が必要ですか
友人と時期が違うことだけを理由に、同じ学習計画にする必要はありません。これから試験を受ける人には試験に向けた予定があり、進路が決まった人にはその後の予定があるためです。互いの忙しさを比べることと、学習上必要な内容を決めることは別で、同じ教室で学ぶ友人同士でも、卒業までの冬の時間の使い方が異なることはあります。
早く決まった経験を大学で説明する必要はありますか
早く進路が決まったこと自体について、誰もが大学で説明するという共通の決まりを想定する必要はありません。個別に提出を求められる書類や課題があれば、その設問が説明する範囲を定めます。進路の決定時期は本人の経歴の一部ですが、それだけで大学に入るまでの学習内容や関心の変化のすべてが伝わるものでもありません。