調査書のどの学年の成績が大学での学びを言い当てるか|成績の伸び方と予測の研究
三者面談で学年ごとの成績を見比べると、高校の初めにつまずいた分を、その後の伸びがどこまで補うのか気になります。後の学年の成績が大学での成果をよく予測した研究はありますが、どの学年を重く見るべきかは研究で一致しておらず、成績の上昇が選考で高く評価されると直接示したものでもありません。総合型選抜や学校推薦型選抜を考えるときには、今の成績への手応えと、出願に使う成績の範囲の両方が関わります。以前の低い成績だけで先を決めることも、最近の好調だけで過去の記録が消えると考えることも、学習の経過を狭く捉える読み方です。
- 出願資格の欄にある成績の条件では、必要な水準だけでなく、集計する期間が意味を持ちます。
- Bulmanは、高校在学中に成績が大きく上がったり下がったりする生徒に注目し、後の学年の記録が持つ情報を調べました。
- Prasadらは、大学生の成績を継続して追い、最初の成績と、その後に成績が伸びたことを分けて分析しました。
- Steenmanらは、オランダの研究大学で複数の学士課程の学生を対象に、高校のどの成績が大学の成績を予測するかを調べました。
三者面談で学年ごとの成績を見比べると、高校の初めにつまずいた分を、その後の伸びがどこまで補うのか気になります。後の学年の成績が大学での成果をよく予測した研究はありますが、どの学年を重く見るべきかは研究で一致しておらず、成績の上昇が選考で高く評価されると直接示したものでもありません。総合型選抜や学校推薦型選抜を考えるときには、今の成績への手応えと、出願に使う成績の範囲の両方が関わります。以前の低い成績だけで先を決めることも、最近の好調だけで過去の記録が消えると考えることも、学習の経過を狭く捉える読み方です。
研究でいう「予測」は、先に測った成績が、その後の成果とどれくらい結びつくかを調べることです。大学が志願者の努力をどう受け止めたかを尋ねることとは、調べる対象が違います。実際に、後の学年の成績が将来の成果をよく予測していても、入学の判断ではそこに大きな重みが置かれていなかった研究があります。[1]募集要項で定められた条件と、成績の推移から読み取れる学習の情報を、それぞれの役割に沿って読むことが出発点です。
調査書の成績はどの学年まで使われるか
出願資格の欄にある成績の条件では、必要な水準だけでなく、集計する期間が意味を持ちます。「全体の評定平均値」という言葉なら、調査書の評定は基本的に全学年の成績を平均したものとして捉えますが、出願時にはどの時点までを含めるかという指定も伴います。「第3学年1学期まで」などの表記や、特定の教科・学年を指定する文言が、その範囲を示します。学年の途中で出願する場合、まだ終えていない期間の見込みと、提出する書類に記録される成績を混ぜずに読む必要があります。
Bulmanの研究が扱ったのは、こうした出願条件の計算ではなく、高校の後の学年の成績と、その後の大学や仕事の成果との関係です。[1]一方、Papadogiannisらは、高校の初めの成績から、その後の高校の成績を予測しています。[5]同じ「後の成績」という表現でも、大学で学ぶ時期を指す場合と、高校在学中の次の学年を指す場合があります。調査書を読む目的に引き寄せる前に、研究がどの時点からどの時点を見ているのかを押さえると、結論の取り違えを減らせます。
| 見る項目 | その項目が答えること | 成績の伸びとの関係 |
|---|---|---|
| 出願資格の成績の範囲 | 提出時点でどの期間の記録を用いるか | 範囲外の成績を自分の判断で加えない |
| 教科・学年の指定 | どの成績について条件を満たす必要があるか | 全体が上向きでも指定された部分を読む |
| 選抜方法・評価の観点 | 調査書をどのような資料として扱うか | 学習の経過についての記述の有無を見る |
| 将来の成果を調べる研究 | 以前の成績が後の成果と結びつくか | 個別の大学が上昇分をどう採点するかは扱いが違う |
後の学年がよく予測した研究の中身
Bulmanは、高校在学中に成績が大きく上がったり下がったりする生徒に注目し、後の学年の記録が持つ情報を調べました。それ以前の成績や入試の点と比べると、後の学年の成績が大学と仕事の成果を最もよく予測していました。[1]入学を判断する時点に近い記録には、古い成績だけを見ていると捉えにくい情報が含まれていたと読めます。ここでの比較対象には高校の以前の成績だけでなく入試の点もあり、学年をまたいで記録を追う意義を考える材料になります。
ただし、この予測の強さは、主に高校で成績が大きく下がった生徒によるものだと著者は説明しています。[1]下向きの変化がその後の成果を見通すのに役立ったという結果を、上向きの生徒が高く評価されるという話に置き換えるのは飛躍です。上がった人も下がった人も含む全体の結果では、どちらの動きが結びつきの強さを生んでいるかが重要になります。高校の初めより今のほうがよいという自分の状況と照らす際には、この研究で特に情報量が大きかった変化の方向に目を向ける必要があります。
さらに、この研究では後の学年の成績が、実際の入学の判断でより重く扱われていたわけではありませんでした。[1]研究者が過去の記録を並べて見いだした予測の強さと、選考の際に採用されていた重みづけにはずれがありました。したがって、この結果の読みどころは「最近の成績なら大学が重視する」という期待より、古い成績だけでは捉えきれない情報が後の記録にあったという点です。高い成績を維持している途中で下がった場合にも関わる研究であり、低い出発点から伸びた生徒だけを取り上げた結果として読むと、対象の重要な部分が抜けます。
大学の中では成績の伸びも卒業と結びつく
Prasadらは、大学生の成績を継続して追い、最初の成績と、その後に成績が伸びたことを分けて分析しました。最初の成績も、経過の中で伸びたことも、それぞれ卒業や在籍を続けることと結びついていました。[2]入学後の学びについては、初めにどの位置にいたかだけでなく、その後にどの方向へ動いたかも情報になっていたわけです。ある時点の成績だけを取り出す見方に、時間を通じた変化を加える研究といえます。
この結果は相関、つまり複数の事柄が一緒に動く傾向を示すものです。成績の伸びと卒業の結びつきを見つけたことから、成績を上げる特定の方法が卒業を増やしたと結論づけることはできません。[2]また、扱っている成績は大学に入ってからの記録であり、高校の上向きの成績を入試担当者に見せる実験ではありません。学ぶ途中の変化を捉えるという発想は参考になりますが、測定が始まる場所は入学後にあります。
Bulmanの研究と並べると、時間の経過を扱う研究にも、何を起点にして何を結果とするかによる幅が見えます。[1][2]前者は高校の後の成績から大学や仕事の成果へ、後者は大学の中の成績の経過から卒業や在籍へと目を向けています。高校の成績が上がったという事実、大学に入った後も伸びること、学びを続けて卒業することは、時間の順に並ぶ出来事です。その途中の関係を調べた研究をつなぎ合わせて、最初の出来事から最後までが確定した筋道のように読むことは避けたいところです。
最終学年ほどよいとはならなかった比較
Steenmanらは、オランダの研究大学で複数の学士課程の学生を対象に、高校のどの成績が大学の成績を予測するかを調べました。高校の最終学年とその前の学年の成績では、予測の強さにはっきりした差は見られませんでした。[3]後の学年に近いほどいつでも情報として優れている、という単純な順番にはなっていません。この研究では、入学直前の成績に絞る考えを積極的に支持する結果は得られていないのです。
教科のまとめ方にも注目すると、高校の全体の平均は、志望する分野に近い科目だけをまとめた平均より一貫してよく予測していました。[3]進学先で使いそうな科目だけを見たほうが将来を捉えやすい、という直感と合わない結果です。予測の強さは大学の課程を進むにつれて弱まっており、高校の記録と大学での成績との結びつき自体も、同じ強さで続いたわけではありません。どの教科をまとめるかと、大学のどの時期の成績を見るかが、ここでは両方とも読みどころになります。
Bulmanの結果と見比べる際には、両者を「新しい成績を支持するか」という賛否だけに縮めないほうが内容を捉えやすくなります。Bulmanは大学と仕事の成果を対象にし、成績が下がった生徒が全体の予測の強さに大きく関わっていました。[1]Steenmanらは大学の成績を対象に、高校の学年や科目のまとめ方を比べています。[3]対象と結果の置き方がこうして違うため、後の学年を一律に優先する規則を作るより、それぞれの比較で何が見つかったかを保ったまま読むほうが適切です。
| 研究 | 先に見る記録 | 後に見る結果 | 主な読みどころ |
|---|---|---|---|
| Bulman [1] | 高校の後の学年の成績など | 大学と仕事の成果 | 後の成績がよく予測し、主に下向きの変化が関与 |
| Prasadら [2] | 大学の最初の成績とその後の伸び | 卒業と在籍の継続 | 最初の水準と伸びがそれぞれ結びつく |
| Steenmanら [3] | 高校の最終学年とその前の学年の成績など | 大学での成績 | 学年間で予測の強さに差が見られない |
以前の成績と順位の安定をどう受け止めるか
Scherrerらは、同じ生徒を時間を置いて追う縦断研究をまとめ、学校の成績の順位がどれくらい保たれるかを調べました。こうして複数の研究の結果を統合して計算する方法をメタ分析と呼びます。2年の間隔を置いた順位の保たれ方は、ρ = .70でした。[4]これは順位の対応の強さを表す指標で、誰かの成績が将来その値まで上がるという意味ではなく、集団の中での並び方がかなり続く傾向を示しています。
この分析では、教員がつける成績の順位は学力テストの順位より少し保たれにくく、測定の間隔が長いほど順位は動きやすくなっていました。[4]成績の持続性があるという結果の中にも、測り方や時間による動きが含まれています。得点そのものが伸びることと、周囲との位置が上がることを同じものとして読むと、この研究の問いを取り違えます。自分の点が上がっても周囲の点も上がれば順位は保たれるため、順位についての結果だけで本人の学習内容の変化まで表すことはできません。
Papadogiannisらは、ギリシャで高校の初めから後の学年へ進んだ85,000人超の記録を使い、初めの成績がその後の高校の成績を予測することを示しました。[5]国語や数学に重みをつけて平均を作っても、予測は改善しませんでした。こちらが追った結果は高校の中の成績であり、大学での学びに直接つながるかを調べたものではありません。以前の成績をまったく意味のない過去と扱う見方を見直す材料にはなりますが、後の学習の可能性を閉じる判定として使うのには向いていません。
出願までにすること
成績の推移を扱った研究が示すのは、いつの記録を取り出すかによって、見える学習の情報が変わるということです。[1][2][3]その情報を出願準備に移すには、要項の条件を読む作業と、自分の学習の経過を説明する作業に落とし込む必要があります。次の手順は研究で効果が検証された選考対策ではなく、提出する記録と本人の説明の食い違いを減らすための整理です。
- 募集要項の出願資格から、成績を使う期間と対象の教科・学年を同じ紙に転記します。条件の数値だけを抜き出さず、その前後にある「まで」「以上」などの語も一緒に残します。別の方式の欄を混ぜないよう、方式名と対象年度を上に記します。
- 学年ごとの成績を時系列に並べ、全体の動きと、指定教科の動きを高校の先生と照らします。まだ確定していない期間は見込みとして分け、今ある記録に限って変化を読みます。上がった教科だけを選んだ並べ方になっていないかも、この段階で点検します。
- 上向きになった時期に、学習の何を変えたかを事実に沿って短く書きます。「努力した」だけで終えず、解き直しの仕方を変えた、提出前の点検を続けた、といった本人が実際に行った内容を選びます。要項の書類の欄や面接の実施方法と対応させ、学習の経過を説明する機会がある場合の材料として整えます。
生徒にとって、学年ごとの記録は、過去の自分に評価を固定するためでなく、今の学びを具体的に言葉にする材料になります。保護者にとっては、伸びた幅だけを急いで評価に置き換えず、本人が続けている学びと提出条件を見守る手掛かりになります。出願資格の欄に沿って記録を整えることで、期待の大きさに左右されずに準備を進められます。
よくある質問
出願した後に成績が上がったら追加で送ってよいですか
追加の送付は、要項の追加資料や出願後の変更の扱いに沿って判断します。成績が更新されたという理由だけで別の書類を送ると、大学が求めている提出物と一致しないおそれがあります。案内に該当する記述が見当たらない場合は、出願済みの方式と更新された書類の種類を伝え、提出が必要かどうかを大学の入試窓口に尋ねるのが適切です。送る必要があると案内された場合は、提出期限と方法もその案内に合わせます。
転校していて学年ごとの記録がそろわない場合はどうしますか
転校前後の記録については、自分で成績の数字をつなぎ直す前に、在籍する高校の調査書発行の担当者に相談します。手元の通知表がそろっているかだけでなく、学校がどの記録をもとに発行するかを尋ねることが要点です。出願先の要項に転入学者などの提出書類の記述がある場合は、その箇所も担当者に示します。大学に確認が必要な事項は、学校で用意する書類の内容を把握してから伝えると、必要な説明を絞れます。
成績が下がった事情をすべて志望理由書に書く必要がありますか
志望理由書では、まず設問が求めている内容と使える分量に沿って記述します。学習歴や事情の説明を求める別の欄があれば、その目的に合う情報をそこに置く考え方になります。個人的な事情を詳しく開示するか迷う場合は、書類の指示を高校の先生と読み、出願上必要な説明の範囲を検討します。成績の変化に触れる場合にも、事情の長い説明だけで欄を埋めず、現在どのように学んでいるかが伝わる配分を考えます。
この記事の限界
適用範囲は、海外の成績記録による観察研究や学校の順位の持続性を扱う研究であり、日本の調査書を年内入試で評価した結果へそのまま当てはめられません。高校内の成績、大学内の成績、卒業、仕事の成果と、研究によって測っている結果が違い、上昇した成績の説明が個別の選考でどう読まれるかは直接扱われていません。特に後の学年の予測の強さには成績が下がった生徒の影響もあるため、上向きの記録だけに注目した解釈には範囲のずれがあります。個々の出願では、年度ごとに更新される募集要項と大学の発表を優先し、成績の対象期間と提出書類の指定に沿って判断を進めます。
参考文献
- Bulman. Weighting recent performance to improve college and labor market outcomes. Journal of Public Economics. 2017;146:97-108.
- Prasad ほか. From a point to a line: investigating social and ethnic predictors of longitudinal academic performance and degree attainment. Current Psychology. 2025;44(3):1840-1855.
- Steenman ほか. Which grades predict what? A more nuanced understanding of using high school results for university admission. Assessment & Evaluation in Higher Education. 2026;51(6):1015-1031.
- Scherrer ほか. The stability of students' academic achievement in school: A meta-analysis of longitudinal studies. Educational Research Review. 2025;48:100687.
- Papadogiannis ほか. First Grade GPA as a Predictor of Later Academic Performance in High School. Knowledge. 2023;3(3):513-524.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
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よくある質問
出願した後に成績が上がったら追加で送ってよいですか
追加の送付は、要項の追加資料や出願後の変更の扱いに沿って判断します。成績が更新されたという理由だけで別の書類を送ると、大学が求めている提出物と一致しないおそれがあります。案内に該当する記述が見当たらない場合は、出願済みの方式と更新された書類の種類を伝え、提出が必要かどうかを大学の入試窓口に尋ねるのが適切です。送る必要があると案内された場合は、提出期限と方法もその案内に合わせます。
転校していて学年ごとの記録がそろわない場合はどうしますか
転校前後の記録については、自分で成績の数字をつなぎ直す前に、在籍する高校の調査書発行の担当者に相談します。手元の通知表がそろっているかだけでなく、学校がどの記録をもとに発行するかを尋ねることが要点です。出願先の要項に転入学者などの提出書類の記述がある場合は、その箇所も担当者に示します。大学に確認が必要な事項は、学校で用意する書類の内容を把握してから伝えると、必要な説明を絞れます。
成績が下がった事情をすべて志望理由書に書く必要がありますか
志望理由書では、まず設問が求めている内容と使える分量に沿って記述します。学習歴や事情の説明を求める別の欄があれば、その目的に合う情報をそこに置く考え方になります。個人的な事情を詳しく開示するか迷う場合は、書類の指示を高校の先生と読み、出願上必要な説明の範囲を検討します。成績の変化に触れる場合にも、事情の長い説明だけで欄を埋めず、現在どのように学んでいるかが伝わる配分を考えます。