英語で書く小論文は日本語の小論文と何が違うか|外国語で書く文章の研究
早朝、英語の小論文の練習用紙を前にすると、日本語なら浮かぶ考えをどう英文にすればよいのか、準備も日本語の小論文とは変えるべきなのかと迷うことがあります。英語で書く小論文では、主張と理由を組み立てる力を土台に、英語で意味を表す力と、書く不安に対処する準備が必要です。 日本語で論を考える練習は英文にもつながりますが、考えた内容を実際に英語で書き切る過程まで練習に含めることが大切です。使いたい単語が出ないときも、考えが足りないのか、表現が見つからないのかで、取り組む課題は変わります。
- 日本語で書く場合も英語で書く場合も、意見文の中心にあるのは、何を主張し、なぜそう考えるのかを読み手に伝えることです。
- Kimらは、韓国の高校生298人について、英語で書く課題に関係する力や不安を調べました。
- Tsujiは、日本の英語学習者77人を対象に、英語の意見文を書く手順を比較しました。
- van Weijenらの研究では、オランダ語を母語とする学生20人が、母語と英語で短い意見文を4本ずつ書きました。
早朝、英語の小論文の練習用紙を前にすると、日本語なら浮かぶ考えをどう英文にすればよいのか、準備も日本語の小論文とは変えるべきなのかと迷うことがあります。英語で書く小論文では、主張と理由を組み立てる力を土台に、英語で意味を表す力と、書く不安に対処する準備が必要です。 日本語で論を考える練習は英文にもつながりますが、考えた内容を実際に英語で書き切る過程まで練習に含めることが大切です。使いたい単語が出ないときも、考えが足りないのか、表現が見つからないのかで、取り組む課題は変わります。
総合型選抜や学校推薦型選抜の募集要項で英語に関わる小論文を見つけたら、まず資料の言語と答案の言語を読み分けます。英語の資料を読んで日本語で論じる場合と、自分の意見そのものを英語で書く場合とでは、答案を作る作業が違います。後者を準備するなら、英文の誤りだけでなく、理由のつながりや、書き進められた部分にも目を向けます。日本語をどこで使うか、不安をどう受け止めるかを、外国語で書く文章の研究から考えていきます。
英語の小論文を大学入試で書くときに増える作業
日本語で書く場合も英語で書く場合も、意見文の中心にあるのは、何を主張し、なぜそう考えるのかを読み手に伝えることです。英語で書くときには、その関係を、自分が使える語や文の形で表す作業が加わります。頭の中で理由がそろっていても、英文にした段階で理由の一部が抜けると、読み手にはつながりが見えにくくなります。そこで練習では、内容が思い浮かんだ段階と、英文として伝わる形になった段階を区別して見ます。
たとえば、ある取り組みに賛成する理由として「参加しやすくなる」と考えたとします。英文にする際には、誰が参加しやすくなるのか、何が変わるからそうなるのかを表す必要があります。日本語のメモを短くしておくことと、答案で説明を省くことは別の作業です。メモでは省いた相手や条件を英文で補えば、主張を支える理由として読みやすくなります。
資料を読む課題なら、書き始める前にも英語を使う作業があります。資料の筆者の主張をつかみ、その理由と自分の考えを区別してから答案に移します。文章に書かれた語を拾えていても、なぜその結論になるのかを追えているかは、別に点検したいところです。英語を読む力と書く力を切り離しすぎず、読んだ内容が自分の理由のどこに使われているかを見ると、練習の目的が具体的になります。
| 作業の場面 | 日本語で論じるときの着眼点 | 英語で論じるときに加えて見る点 |
|---|---|---|
| 主張を決める | 設問に対応した立場があるか | その立場を手持ちの表現で書けるか |
| 理由を述べる | 主張を支える説明になっているか | 英文にしたときに原因や条件が抜けていないか |
| 資料を使う | 資料の内容と自分の考えを区別できるか | 英文を読んで理由のつながりまで捉えられるか |
| 読み直す | 結論と説明がかみ合っているか | 語や文の誤りで意味が変わっていないか |
母語で論を作る力も英語の文章を支える
Kimらは、韓国の高校生298人について、英語で書く課題に関係する力や不安を調べました。英語の意見文の出来には、母語で意見文を書く力、英語で推論しながら読む力、英語の力、英語で書くことへの不安が直接結びついていました。推論しながら読むとは、書かれた情報のつながりを考え、理由や含まれている意味を読み取ることです。単語の知識に加え、論を作ることや読み取ることも、英語の意見文に関わっていたという結果です。[1]
この結果を練習に生かすなら、英文が書けなかった箇所をすべて語彙の不足と片づけず、まず説明の中身を見ます。日本語でも賛成の理由を述べられなければ、英語の言い回しを増やす前に、理由を考える余地があります。日本語では理由を説明できるのに英文にすると止まるなら、その理由を伝える語や文の形が課題になります。原因をこのように見分けると、同じ答案からでも次に練習する内容を選びやすくなります。
日本語の文章で培った力を使うとは、完成した日本語をすべてそのまま訳すことだけではありません。主張と理由がかみ合っているか、例が理由を支えているかを判断することも、母語で行える作業です。たとえば例だけが長くなった答案なら、その例によって何を説明したかったのかを日本語で言い直してみます。説明したい関係がはっきりすれば、残す内容と短くする内容を決める基準になります。
また、英語を読む練習でも、単語の意味を追うところで終えず、書き手の理由を説明してみる方法があります。自分が理解した理由を言葉にすると、読めたつもりの箇所を点検できます。そのうえで英語の答案に戻り、資料の理解と自分の意見の間をつなぎます。母語で考える力を土台にしつつ、最終的には英語の文として伝える練習まで進める、という使い方です。
日本語で考えるなら構成と組み合わせる
Tsujiは、日本の英語学習者77人を対象に、英語の意見文を書く手順を比較しました。先に日本語で書いてから英語に直す手順と、直接英語で書く手順を、文章の構成の枠組みを使うかどうかと組み合わせて調べています。日本語で組み立ててから訳し、枠組みも使った群では、英文の質が統計的に有意に伸びました。有意とは、観察された変化を偶然のばらつきだけでは説明しにくいと判断した、という意味です。[2]
ここで注目したいのは、言語の選択と、構成を考える支えが組み合わされている点です。日本語で書きたいことを並べるだけでなく、それぞれを主張や理由として整理する手順が含まれています。準備に取り入れるなら、日本語のメモを読み返し、どの説明がどの主張を支えるのかを明らかにしてから英文に移す方法が考えられます。これは研究を踏まえた練習の案であり、自分の答案のどこが書きやすくなるかを見ながら使います。
日本語で構想する際にも、最初から長く整った文章にする必要はありません。主張と理由の関係がわかる程度に書き、英語で表せる内容かを確かめながら進める選択があります。抽象的な日本語を重ねて翻訳に困るなら、誰が何をするのかが見える説明に言い換えます。言いたいことの中心を残したまま説明を具体的にすると、必要な語や文の形を選びやすくなります。
すでに英語で考えを組み立てて書ける人は、途中で日本語の完成稿を作る手順を追加する前に、その目的を考えます。理由が弱い部分だけを日本語で点検するなど、困っている作業に合わせて使い方を絞れます。一方、日本語で構想すると書き始めやすい人は、その助けを使いながら英文を最後まで作る経験を重ねます。練習後には、構想が明確になったのか、英語に移すところで止まったのかを見て、次の取り組みを調整します。
母語の使用は場面によって意味が違う
van Weijenらの研究では、オランダ語を母語とする学生20人が、母語と英語で短い意見文を4本ずつ書きました。書くときには考えていることを声に出す方法が使われ、全員が英語で書く途中にも母語を使っていました。そのうち、書きぶりについて母語で独り言を言う使い方は、英語の文章の質と負の関係がありました。負の関係とは、一方が多いほど他方が低い傾向があった、という意味です。[3]
構成を整理するために母語を使うことと、書いている自分について母語でつぶやくことは、役割が違います。前の研究が構想と枠組みを組み合わせた手順を比べているのに対し、この研究は書く最中の母語の使い方を捉えています。両者を読むときには、日本語を使ったかどうかだけでなく、何のために使ったかに目を向けます。母語を使う行為をまとめて同じものとして扱うと、練習に役立つ違いを見落とします。[2][3]
答案が進まないときの見直しでも、この区別が役立ちます。「どう書けばよいのだろう」と考え続けているなら、止まった箇所の主張や理由を短い言葉で表してみます。必要な語が出てこないのなら、その意味を別の言葉で説明できるかを試します。構成を決める作業と表現を探す作業に戻すことで、何に困っているかを捉えやすくなります。
書き始めから日本語を一切使わないという目標よりも、使った後に答案がどう進んだかを点検する方が、練習の目的を具体化できます。日本語のメモによって理由がはっきりした場合は、その理由が英文にも残っているかを見ます。日本語の文章を長く書いたために英語への置き換えで止まった場合は、次の練習でメモを短くする余地があります。手順の良し悪しは、考えを整える場面と英文にする場面の両方から見ていきます。
書く不安と答案の課題を分けて受け止める
Liuらは、中国の大学の初年次の学生1174人について、英語で書くことへの不安を調べました。不安は、英作文の試験の成績を統計的に有意に下げる方向に働いていました。一方、対象者全体は英語で書くことに自信があり、評価を過度に恐れていたわけではありません。不安と成績の関係が見られたことと、対象者全体の不安が強いこととは、分けて受け止める必要があります。[4]
Chengは、外国語で書く不安と、学習者の違いや他の言語の不安との関係を調べました。その結果から、自分の書く力について前向きで現実的な見方を育てることは、書く技術を育てるのと同じくらい大切だとしています。現実的な見方とは、何でもできると思い込むことではなく、できた部分と課題のある部分を実際の文章から捉えることです。練習では、誤りの数だけを見て自分の力全体を決めつけず、伝わった内容にも目を向ける読み方につながります。[5]
たとえば、主張は英文で書けたけれど、理由の説明で止まった答案なら、主張を書けたことは残ります。そのうえで、理由の中身を考える必要があるのか、理由を英語で表す練習が必要なのかを見ます。「英語の小論文が全部苦手」と捉えるより、次に取り組む場所が具体的になります。書けた部分を確かめることと、足りない部分を直すことを、同じ答案に対して行います。
保護者が練習を見守る場合も、本人が困っている場所を説明できる会話が考えられます。たとえば、書き出しは作れたのか、理由の内容で迷ったのか、表現を探していたのかを本人の言葉で聞きます。単に「もっと自信を持つ」と促すより、答案にある具体的な進み具合を話題にできます。不安の強さを能力そのものと同じにせず、練習で扱える課題へ戻していく姿勢です。
出願前は答案の言語と辞書の条件を確かめる
募集要項の選考方法の欄では、英語で答案を書く小論文なのか、英語の資料を読んで日本語で答案を書く小論文なのかを区別します。「英語」と「小論文」という語が近くにあるだけで、解答の言語まで判断しないようにします。資料についての説明と、解答についての指示をそれぞれ読み、何を読むのかと何語で書くのかを対応させます。表記の意味が曖昧な場合は、答案の言語を特定するために高校で相談し、大学の案内を確かめることになります。
英語で答案を書く条件なら、日本語で考えを作った後も、英文を完成させるところまでが練習の範囲です。英語の資料を読んで日本語で書く条件なら、英文の理解を日本語の説明につなげる練習が中心になります。同じ資料を扱っても、最後に作る文章の言語によって点検すべき箇所が変わります。出願先の課題を読み分けることは、今ある練習のどの部分を厚くするかを決めるためにも役立ちます。
辞書の使用の可否も、選考方法に関する記載から確かめたい条件です。使用できると書かれている場合は、辞書について付されている条件まで読み、その範囲で練習を考えます。使用しない条件なら、知っている語で意味を説明する作業を練習に組み込みます。普段は辞書を引きながら書いている人も、試験で使える条件に合わせて書く機会を持つと、表現のどこで止まりやすいかを見られます。
英語で書く小論文の準備は、日本語での思考を捨てることではなく、考えを英文にして相手に渡すところまでつなぐ作業です。研究では、母語で論を作る力との結びつきや、日本語での構想と枠組みを組み合わせた群での文章の向上が示されています。[1][2] 一方、日本語を使う量を増やすことが、それぞれの受験者の答案の改善に結びつくかは、今後も検討が必要です。[2][3]
よくある質問
日本語の小論文の練習も続けた方がよいですか
日本語で主張と理由の関係を考える練習は、英語で論じる準備にもつながります。母語で意見文を書く力と英語の意見文の出来との結びつきが研究で示されています。[1] ただ、日本語の段階で止めず、そこで作った説明を自分の英語で書いてみることが大切です。日本語なら説明できた関係が英文に残っているかを見ると、論を考える練習と英語で表す練習をつなげられます。
最初から英語だけで考えるべきですか
考えが進む手順を見つけるために、日本語で構想する方法も選択肢になります。日本の学習者の比較では、日本語で組み立ててから訳し、構成の枠組みも使った群で英文の質が伸びました。[2] 英語で書き進められる部分はそのまま進め、理由の関係が曖昧な部分だけ日本語で点検する方法も考えられます。使う言語を決める際は、その後に説明が明確になったかを見ます。
英文の誤りが気になって書き出せないときはどうしますか
練習では、まず自分の立場を表す短い英文を書き、その文で伝えられた内容を確かめる方法があります。続いて理由を書き足し、意味がつながったところと直したいところを見ます。自分の書く力を前向きかつ現実的に捉える大切さは、不安を扱った研究でも指摘されています。[5] 書けた文を足場にして次の説明へ進むと、何を練習するかを答案に即して考えられます。
この記事の限界
対象は、韓国の高校生、日本の英語学習者、オランダ語を母語とする学生、中国の大学生などで、取り上げた研究は日本の年内入試の英語の小論文を直接検証したものではありません。母語の使用や不安と文章の質との関係を調べた結果、書く手順を比較した結果、考えを声に出して捉えた結果を含むため、それぞれが扱った条件に沿って読む必要があります。
扱った文献には刊行から時間が経ったものもあり、現在の個別の入試で求められる解答の言語や辞書の条件は、年度ごとに更新される募集要項と大学の発表が優先します。ここで整理した練習の考え方は、自分の答案を見直す手掛かりであり、個別の出願を判断する際には実際の選考条件との照合が必要です。
参考文献
- Kim ほか. Examining the Simultaneous Effects of L1 Writing, L2 Reading, L2 Proficiency, and Affective Factors on Different Task Types of L2 Writing. Discourse Processes. 2021;58(7):662-680.
- Tsuji. Effects of L1 Use on L2 Text Quality: Rethinking Cognitive Process of Formulating L1 Texts during L2 Writing. English Language Teaching. 2021;14(7):44.
- van Weijen ほか. L1 Use during L2 Writing: An Empirical Study of a Complex Phenomenon. Journal of Second Language Writing. 2009;18(4):235-250.
- Liu ほか. Chinese University EFL Learners' Foreign Language Writing Anxiety: Pattern, Effect and Causes. English Language Teaching. 2015;8(3).
- Cheng. Factors Associated with Foreign Language Writing Anxiety. Foreign Language Annals. 2002;35(6):647-656.
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よくある質問
日本語の小論文の練習も続けた方がよいですか
日本語で主張と理由の関係を考える練習は、英語で論じる準備にもつながります。母語で意見文を書く力と英語の意見文の出来との結びつきが研究で示されています。[1] ただ、日本語の段階で止めず、そこで作った説明を自分の英語で書いてみることが大切です。日本語なら説明できた関係が英文に残っているかを見ると、論を考える練習と英語で表す練習をつなげられます。
最初から英語だけで考えるべきですか
考えが進む手順を見つけるために、日本語で構想する方法も選択肢になります。日本の学習者の比較では、日本語で組み立ててから訳し、構成の枠組みも使った群で英文の質が伸びました。[2] 英語で書き進められる部分はそのまま進め、理由の関係が曖昧な部分だけ日本語で点検する方法も考えられます。使う言語を決める際は、その後に説明が明確になったかを見ます。
英文の誤りが気になって書き出せないときはどうしますか
練習では、まず自分の立場を表す短い英文を書き、その文で伝えられた内容を確かめる方法があります。続いて理由を書き足し、意味がつながったところと直したいところを見ます。自分の書く力を前向きかつ現実的に捉える大切さは、不安を扱った研究でも指摘されています。[5] 書けた文を足場にして次の説明へ進むと、何を練習するかを答案に即して考えられます。