年内入試で合格した後の入学前課題は何のためにあるか|大学の入学前の準備講座と1年目の成績の研究
夜、合格後に届いた大学の案内を開くと、入学までに取り組む教材や提出物の説明が目に入ります。試験を終えてほっとしたところで、なぜまた勉強が必要なのか、提出を済ませればよいのかと戸惑う人もいるでしょう。合格後の課題は、大学が示す学習の準備を進め、自分が授業に入る前に補う内容を見つけるためのものと捉えると、取り組む意味が明確になります。まずは案内にある目的と、何を提出するよう求められているかを結びつけて読みます。
- 総合型選抜や学校推薦型選抜の募集要項では、選考方法のほかに、合格者に求める学習や入学までの予定を探します。
- 米国には、大学へ入る前の夏に学習を支える準備講座があります。
- Douglasらは、米国の全国の追跡データと大学システムのデータを使い、夏の準備講座と卒業との関係を調べました。
- Walpoleらは、米国の大学で夏の準備講座に参加した新入生と、参加しなかった新入生を比べました。
夜、合格後に届いた大学の案内を開くと、入学までに取り組む教材や提出物の説明が目に入ります。試験を終えてほっとしたところで、なぜまた勉強が必要なのか、提出を済ませればよいのかと戸惑う人もいるでしょう。合格後の課題は、大学が示す学習の準備を進め、自分が授業に入る前に補う内容を見つけるためのものと捉えると、取り組む意味が明確になります。まずは案内にある目的と、何を提出するよう求められているかを結びつけて読みます。
たとえば、基礎の問題を解く課題と、本を読んで考えを書く課題では、作業の中身も確かめる力も異なります。前者なら解き方を説明するために必要な知識、後者なら文章の要点と自分の考えを区別することに目を向けられます。締切までに送る準備と、取り組む途中で見つけた疑問を解く準備を並べておくと、提出後に戻る場所も残ります。研究を見る際も、成績、取れた単位、在籍の継続を分けると、準備の成果を具体的に考えられます。
募集要項と合格後の案内で、目的と義務を読み分ける
総合型選抜や学校推薦型選抜の募集要項では、選考方法のほかに、合格者に求める学習や入学までの予定を探します。出願前なら、自分が対象になる課題の説明があるか、詳細をいつ伝えると書かれているかを読みます。合格後なら、届いた案内の対象学部・入試区分・年度が自分と一致するかを確かめます。要項と後から届く案内をつなげておくことが、取り組む範囲を決める出発点です。
読み分けたいのは、課題を行う目的と、実際に求められる行動です。「基礎学力を補う」という説明は学ぶ内容の方向を示し、「提出必須」という説明は提出の扱いを示します。「推奨」とある教材についても、何に備える教材なのかを見て、必須の作業との順序を考えます。目的の説明だけで提出の要否を判断せず、対象者、提出物、提出方法、期限の記載をそれぞれ拾います。
| 読む欄・記載 | 確かめる内容 | 自分の予定に移すこと |
|---|---|---|
| 対象者・対象学部 | 自分の入試区分や学部が含まれるか | 対象の課題を抜き出す |
| 目的・到達目標 | 基礎の復習か、専門への導入か | 学び終えたときに説明したい内容を書く |
| 必須・推奨の区別 | 提出や参加を求める範囲 | 必須の作業を先に予定へ置く |
| 提出方法・期限 | 郵送、入力、ファイルなどの指定 | 作成と提出確認の予定を分ける |
| 評価・返却・質問先 | 結果をどこで見て、誰に尋ねるか | 返却後に読み直す機会を残す |
案内を読んで不明な箇所があれば、該当する文と質問を並べてメモします。教材の難しさなら高校の教科担当に、大学が定める提出の扱いなら案内に記された担当先に尋ねると、相談する内容を絞れます。入学手続の期限と課題の期限は別々に控え、済んだ作業にはその記録を残します。保護者と予定を共有する場合も、本人が課題の中身を説明し、手続の確認を一緒に行う形にすると役割が明確になります。
準備講座と大学1年目の成績を結びつけた研究
米国には、大学へ入る前の夏に学習を支える準備講座があります。研究者は講座の参加者などを追い、成績や在籍の記録を用いて入学後の状況を調べています。入学前の準備をどの成果で評価したかに注目すると、研究どうしを比べる視点が定まります。まず、成績と在籍の継続を調べた研究から見ると、準備に期待される役割を整理しやすくなります。
Bradfordらは、理系分野の入学前の夏の準備講座を16プログラムまとめました。用いたのはメタ分析という、複数の研究結果をまとめて計算する方法です。参加者と比較対象の差をまとめたところ、大学1年目のGPA、つまり科目の成績を平均した指標について、効果量は d = 0.34 でした。効果量とは、測り方の異なる研究の差を比べるために共通の尺度で表した値で、この分析は成績に中程度の効果があると報告しています。[1]
この数値は、成績表の点がそのまま0.34点増えたという意味ではありません。研究で扱う値の種類を区別し、実際の点数の上昇や個人の将来の成績へ読み替えずに読みます。同じ分析は、大学1年目に在籍を続けることについても、参加者に良い結果を報告しました。成績の平均と大学に残って学ぶことの両方を見ている点が、この研究を読む際の要所です。
読者が自分の準備へ戻すときは、平均点を想像するより、課題がどの授業の入口につながるかを考えます。数学の基礎問題なら、答えに至る式の意味を説明し、読書なら著者が主張を支える根拠を探す、といった目標が立ちます。大学の案内に到達目標があれば、その言葉を作業の後に確かめる項目へ移します。提出物と一緒に、自力で説明がついた内容や、まだ質問したい箇所を残すと、次に学ぶ内容を選びやすくなります。
卒業までを見る研究と、単位の差が出なかった研究
Douglasらは、米国の全国の追跡データと大学システムのデータを使い、夏の準備講座と卒業との関係を調べました。参加した学生と参加しなかった学生を比べる際には、傾向スコアという、参加しやすさを数値にして似た条件の人を組み合わせる方法を使っています。短大と選抜度の低い4年制大学では、参加者の6年以内の卒業の割合が10ポイント高いという結果でした。卒業の割合の差を示す数字なので、先ほどの成績の効果量とは別の物差しで読みます。[2]
一方、Barnettらが米国テキサス州で調べたのは、補習を必要とする学生向けの夏の準備講座です。研究への参加に同意した学生を、講座に参加できる群と、大学のほかの支援を利用できる比較群へ無作為に分けました。無作為に分けるとは、本人の希望や担当者の判断だけで群が決まらないよう、偶然によって割り当てることです。参加前の違いの影響を抑えながら、その後の成果を比べる方法です。[3]
この研究では、2年間で修得した単位の平均は講座の群が19.4単位、比較群が19.9単位でした。在籍した学期数の平均も、それぞれ3.3学期と3.4学期で、いずれも統計的に有意な差はありませんでした。統計的に有意な差がないとは、観測された違いを偶然のばらつきと区別するだけの根拠が得られなかったということです。成績の差、卒業の差、単位の差を並べて読むと、準備講座の成果には複数の見方があるとわかります。[3]
研究結果を選ぶときには、自分に都合のよい指標だけを取り出さず、比べた相手と追った期間も見ます。卒業まで追った調査は長い見通しを与え、単位を調べた実験は学びがどれだけ進んだかを示します。本人の準備でも、教材を終えたこと、内容を説明すること、入学後に関連する授業を学ぶことを別々の到達点として置けます。どこまで進んだかを言葉にしておくと、課題を終えた後の復習にもつながります。
成績と大学生活への参加は、別の成果として見る
Walpoleらは、米国の大学で夏の準備講座に参加した新入生と、参加しなかった新入生を比べました。学生への調査と大学の記録を使うと、参加者は学業や学生生活への関わりを増やしていました。一方、履修した単位数とGPAには統計的に有意な差がなく、比べた2学期では参加しなかった学生のほうが多くの単位を修得していました。大学で活動することと、成績や単位として表れることを分けて捉える材料になります。[4]
また、履修した単位と修得した単位は意味が異なります。履修は科目を学ぶために登録することで、修得はその科目に必要な条件を満たして単位を得ることです。授業を多く登録したかどうかと、実際に学び終えたかどうかを混ぜると、研究の結果を取り違えます。大学生活への準備を考える際にも、参加や提出の記録に加え、学習内容がどれだけ身についたかを確かめる視点が必要です。
研究方法にも違いがあり、Bradfordらの分析には自分で参加を選んだ講座が含まれ、Douglasらの比較には測定していない意欲などの違いが残ります。Walpoleらの研究も限られた大学の無作為化されていない比較であり、参加と成績の関係だけで講座の原因としての効果は決まりません。Barnettらの無作為化された比較と併せて読むことで、良い結果が出た研究と差が出なかった研究の条件を点検できます。研究の読み方としては、対象、比較方法、測った成果を同じ順序で見ていくと整理しやすくなります。
自分の課題で確かめる内容も、この区別を参考に具体化します。動画を見終えたなら、その中の説明を資料を閉じて言い直し、演習を終えたなら、間違えた理由を解説と照らします。交流を含む機会があるなら、話した内容から授業や相談先について知ったことを記録します。作業が終わった記録に学びの記録を添えると、準備のどの部分が進んだかを自分で捉えられます。
難しい課題と、すでに理解している課題への向き合い方
課題を開いて手が止まるときは、進まない理由を分けることから始めます。設問の意味が読めないのか、用語を知らないのか、解き方を思い出せないのかで、戻る場所が変わります。高校の教科書やノートと照らし、必要な単元を探してから取り組み直すと、相談時にも困っている点を伝えやすくなります。解答を眺めても納得できない箇所は、途中までの考えと一緒に残します。
たとえば計算の課題なら、どの式までは自力で進めたかを書いておきます。読書の課題なら、要点をつかめない段落と、その前後で話題がどう変わるかをメモします。「全部難しい」とまとめるより、手が止まった箇所が示されているほうが、質問を受ける相手も説明の入口を選べます。課題の指示に質問方法があれば、それに合わせて教材名や該当箇所を伝えます。
すでに内容を理解している人は、提出の条件を確かめたうえで、自分の説明の確かさを点検します。正解を覚えている問題でも、その理由を示せるか、別の問われ方でも考えられるかを試せます。文章を書く課題では、読んだ内容の紹介と自分の意見が区別されているかを読み直します。余裕があれば学部が示す学習案内を見て、専門の入口へ関心を広げる順序を考えます。
対面参加の予定や通信環境が負担になる場合は、必要な条件を早めに整理します。参加日時、使う機器、資料の受け取り方などを案内から拾い、支障がある箇所を担当先へ伝えます。時間が足りないときも、学習内容の難しさと、生活上確保しにくい時間を分けて説明すると相談が具体的になります。自分の判断で必要な作業を省く前に、大学が示す対応方法を確かめて予定を組み直します。
提出した後に、授業へ持ち越すものを残す
課題の計画は、教材を開くところから提出後の確認までを含めて作ります。最初に全体の内容を読み、必要な本や機器を準備し、高校の授業や卒業までの予定と並べます。作成に使う時間に加えて、疑問を尋ねる時間や指示を読み直す時間も置いておくと、途中で調整しやすくなります。計画表には作業名だけでなく、終えたと判断する状態も短く書き添えます。
提出時には、案内に合う形式か、必要な情報がそろっているか、送信や提出が完了したかを確かめます。自分が書いた内容や解いた過程は、大学の指示に従う範囲で手元に残します。提出の記録と学習の記録を一緒に保存しておけば、後から返却や連絡があったときに照らし合わせられます。返却の予定が示されている場合は、その時期も予定へ入れます。
返却された課題は、点や提出済みの表示を見るだけで閉じず、指摘された箇所を元の考えと比べます。何を読み落としたのか、知識が足りなかったのか、説明が伝わらなかったのかを言葉にしてみます。そのうえで、もう一度取り組む内容と、授業が始まってから質問したい内容を分けて残します。大学へ持ち越す疑問が具体的なら、学び始めるときの確認事項も明確になります。
合格後の学習の目的は、提出物を通して、これから学ぶ内容との接点をつくることです。研究が測っていた成績、単位、在籍の継続という違いを踏まえると、自分の準備にも複数の目標を置けます。まず必要な作業を把握し、取り組んだ過程から自分の課題を見つけ、入学後に戻れる記録を残します。夜に開いた案内の余白に、最初に確かめる項目と着手する作業を記し、入学までの学びを始めます。
よくある質問
合格しているのに、基礎の勉強を続ける意味はありますか
基礎を復習する意味は、大学の授業へ入る際に使う知識や考え方を、自分で取り出せる状態にしておくことです。まず大学が示した目的を読み、課題の内容と結びつけて取り組みます。正答した問題も理由まで説明し、読み物では要点を自分の言葉でまとめると、今の理解を確かめられます。合格後に何を学ぶかを選ぶ手掛かりとして、課題から見つけた疑問を残しておくとよいでしょう。
課題に取り組めば、大学で良い成績が取れますか
米国の準備講座には、参加者の成績が高かった研究と、成績や単位に差が出なかった研究の両方があります。良い成績を目標にする場合も、参加した事実と、内容を理解して授業で使うことを分けて考えます。自分の取り組みでは、説明に詰まった箇所や間違いの理由を残し、そこへ戻って学び直します。入学後も授業の要求に沿って確かめ直すことを、準備の続きとして位置づけます。
提出に間に合いそうにないときは、何を伝えればよいですか
案内にある連絡方法を読み、課題名、期限、現在の進み具合と、遅れそうな理由をまとめて担当先に相談します。教材が届かない場合と、内容が難しく進まない場合では、必要な対応が変わります。自分が済ませた作業と止まっている作業を分けて伝え、大学から示された対応を記録します。高校の学習との重なりがあるときは、その予定も整理して先生に相談すると、進め方を検討しやすくなります。
この記事の限界
対象は米国の夏の準備講座に参加した大学進学者などで、理系向けの講座や補習を必要とする学生への支援を含み、日本の総合型選抜・学校推薦型選抜の合格者に課される学習とは、選抜制度、内容、実施時期が異なります。研究の刊行時期にも幅があり、準備講座全体を比較した結果から、現在の日本の個々の教材や提出課題だけの効果を取り出すことはできません。紹介した研究は日本の年内入試の研究ではないため、成績、単位、卒業という結果は、それぞれの対象と追跡期間に沿って読む必要があります。課題の義務や扱いは年度ごとの募集要項と大学の最新の案内を優先し、個別の出願や合格後の手続では、それらの記載と大学からの回答が判断のよりどころとなります。
参考文献
- Bradford ほか. A Meta-Analysis of University STEM Summer Bridge Program Effectiveness. CBE - Life Sciences Education. 2021;20(2):ar21.
- Douglas ほか. The Bridge and the Troll Underneath: Summer Bridge Programs and Degree Completion. American Journal of Education. 2014;121(1):87-109.
- Barnett ほか. Bridging the Gap: An Impact Study of Eight Developmental Summer Bridge Programs in Texas. National Center for Postsecondary Research. 2012.
- Walpole ほか. Bridge to Success: Insight into Summer Bridge Program Students' College Transition. Journal of The First-Year Experience & Students in Transition. 2008;20(1):11-30.
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よくある質問
合格しているのに、基礎の勉強を続ける意味はありますか
基礎を復習する意味は、大学の授業へ入る際に使う知識や考え方を、自分で取り出せる状態にしておくことです。まず大学が示した目的を読み、課題の内容と結びつけて取り組みます。正答した問題も理由まで説明し、読み物では要点を自分の言葉でまとめると、今の理解を確かめられます。合格後に何を学ぶかを選ぶ手掛かりとして、課題から見つけた疑問を残しておくとよいでしょう。
課題に取り組めば、大学で良い成績が取れますか
米国の準備講座には、参加者の成績が高かった研究と、成績や単位に差が出なかった研究の両方があります。良い成績を目標にする場合も、参加した事実と、内容を理解して授業で使うことを分けて考えます。自分の取り組みでは、説明に詰まった箇所や間違いの理由を残し、そこへ戻って学び直します。入学後も授業の要求に沿って確かめ直すことを、準備の続きとして位置づけます。
提出に間に合いそうにないときは、何を伝えればよいですか
案内にある連絡方法を読み、課題名、期限、現在の進み具合と、遅れそうな理由をまとめて担当先に相談します。教材が届かない場合と、内容が難しく進まない場合では、必要な対応が変わります。自分が済ませた作業と止まっている作業を分けて伝え、大学から示された対応を記録します。高校の学習との重なりがあるときは、その予定も整理して先生に相談すると、進め方を検討しやすくなります。