パソコンで書く小論文と手書きで点は変わるか|入力の方式と採点の研究
小論文の解答がパソコン入力になると聞くと、手書きより点が変わるのか、練習も切り替えるべきかと迷う人がいます。書く方式によって点は動きえますが、どちらが高くなるかは採点方法や本人の慣れに左右されるため、練習は本番の方式を基準に考えます。画面に文章を打つことが得意でも、課題を読み、理由を組み立て、制限の中で論じる作業まで自動的に進むわけではありません。反対に、普段は紙に書いている人にも、入力なら文章の順番を直しやすいと感じる場面はあるはずです。
- CBTは、コンピューターを使って受ける試験のことです。
- 書く方式による点の差には、完成した文章をどう見せたかがかかわる場合があります。
- 点を付ける方法によっても、比較の結果は変わります。
- 入力が文章の出来にかかわる可能性は、外国語として中国語を学ぶ大学生の研究にも表れています。
小論文の解答がパソコン入力になると聞くと、手書きより点が変わるのか、練習も切り替えるべきかと迷う人がいます。書く方式によって点は動きえますが、どちらが高くなるかは採点方法や本人の慣れに左右されるため、練習は本番の方式を基準に考えます。画面に文章を打つことが得意でも、課題を読み、理由を組み立て、制限の中で論じる作業まで自動的に進むわけではありません。反対に、普段は紙に書いている人にも、入力なら文章の順番を直しやすいと感じる場面はあるはずです。
大学の説明会で解答方法の案内に触れたとき、気になるのは端末の種類だけではありません。書いている間の操作と、完成した答案に対する評価の両方が関係します。同じ内容を打ち直して点を比べた研究もあれば、実際に紙とパソコンで作文を書いてもらった研究もあります。この比較の仕方を押さえると、「入力のほうが高得点だった」という結果が、自分の練習に何を意味するかを考えやすくなります。
小論文をパソコンで解答する方式の読み方
CBTは、コンピューターを使って受ける試験のことです。ただし、その呼び名だけでは、小論文の課題がどこに表示され、答案をどのように提出するかまで決まりません。要項の「試験の実施方法」は試験全体の進め方、「解答方法」は答案の作り方、「持ち物」は受験生が用意する物を読む手掛かりになります。オンラインで出願するという説明も、それだけでは試験の答案を入力するという意味にはなりません。
小論文の内容を考える前提には、使える道具の範囲があります。パソコンを使う場合でも、普段の文書作成ソフトと同じ機能が使えるか、端末を持参するか、大学の端末を使うかによって準備の対象が変わります。紙に手書きする場合には、解答用紙の形式や記入の指示が作業の条件になります。こうした条件は、文章の主張や根拠そのものではなく、答案を作って提出するまでの手順に関する情報です。
出願前の行動の一つ目は、要項で解答の方式と文字の数え方を確かめることです。「試験の実施方法」「解答方法」「持ち物」の記載をつなぎ、手書きか入力か、入力なら持参の端末か大学の端末かを押さえます。大学がCBTの操作案内を公表している場合は、その案内もこの確認に含めます。要項に文字の上限が書かれていても、画面上の文字の数の表示や提出の操作まで同じ欄に説明されるとは限らないため、解答方法の案内には文章量以外の役割もあります。
同じ答案でも採点する側で点が動いた研究
書く方式による点の差には、完成した文章をどう見せたかがかかわる場合があります。Sweedler-Brownの研究は、大きな州立大学の文章の補習課程で書かれた最終の作文を扱いました。同じ答案について、手書きのものと打ち直したものを、全体の印象で採点しています。打ち直した答案のほうが低く採点される偏りがあり、とくに手書きで高い点だった答案で目立ちました。[1]
この比較では、入力した人が考えをうまくまとめられなかったことを原因にする説明は合いません。完成した答案の内容を保って形式を変えたため、注目するのは採点する側の評価です。Powersらの研究でも、32 人が手書きとワープロの両方で書いた作文を、もう一方の形式に書き直して採点し直しました。結果は、平均すると手書きの答案の点が高いというものでした。[2]
これらは、同じ文章なら表示の方式にかかわらず同じ評価になる、という想定を問い直す研究です。とくに全体の印象で点を付ける採点では、内容を変えていない答案の点が動いたこと自体に意味があります。ただし、ここで扱ったのは古い研究で、現在の日本語の小論文に同じ方向の差が出るとは言えません。手書きを選ぶための理由というより、書く力を測る試験でも、評価の過程に方式の影響が入りうることを示す材料になります。[1][2]
総合評価と観点ごとの評価で結果がわかれる
点を付ける方法によっても、比較の結果は変わります。Leeの研究では、英語を第二言語とする留学生 42 人が、紙とパソコンの作文の試験を両方受けました。総合評価、つまり文章全体をまとめて判断する方法では、平均点に統計的にはっきりした差はありませんでした。一方、分析的評価、つまり観点ごとに点を付ける方法では、すべての観点でパソコンの答案の点が高くなりました。[3]
総合評価では、採点者どうしの評価の一致もパソコンの答案のほうが高い結果でした。採点者の一致とは、同じ答案に対して複数の採点者がどの程度そろった評価をするかということです。これは平均点が高いという意味ではなく、評価する人によるばらつきの小ささに関する結果です。この研究では、総合評価の平均点には差がなくても、採点の一致という面には方式による差が表れました。[3]
研究の結果を読む際には、点の高低だけでなく、何を採点した点なのかが大切です。文章全体の評価を示す報告と、観点ごとの評価を示す報告をひとまとめにすると、同じ研究の中にある結果の違いが見えなくなります。さらに、Leeの研究は実際に両方の方式で作文を書いた比較なので、完成した同じ答案を打ち直した研究に比べ、書く過程も比較の中に入っています。入力の答案の評価が高かった事実には、書かれた内容と採点の方法の両方を含めて読む必要があります。[3]
漢字を使う作文では内容の量にも差があった
入力が文章の出来にかかわる可能性は、外国語として中国語を学ぶ大学生の研究にも表れています。Cossらは、中級の学習者 60 人に手書きと入力の両方で作文を書いてもらい、120 の答案を調べました。言語の力、多言語を使った経験、中国語を書く習慣や入力する習慣を考慮しても、入力の答案のほうが内容が多く、点も高い結果でした。これは、同じ内容を別の形式で見せ直した比較ではなく、書き手が各方式で作った文章の比較です。[4]
この結果は、漢字を使う言葉では入力の答案の点が高いという先行研究に沿うものでした。日本語の小論文を準備する人にも、漢字を手で書く作業と、入力して文字を選ぶ作業の違いを考える材料になります。ここで大切なのは、入力の答案が高く評価されたという点だけでなく、文章に含まれた内容にも差があったという点です。研究で報告された結果を、内容の量と採点された点に分けて並べると、何を測った比較なのかが見えます。[4]
これまでの研究を表にすると、手書きと入力の優劣を単純な票数で決めにくい理由がわかります。古い研究では手書きの点が高く、新しい研究では入力の点が高い結果が見られますが、時代とともに対象や比較の仕方も変わっています。発表年だけで一直線の変化を想定せず、次のように比較の条件と評価の結果を対応させる読み方が適切です。[1][2][3][4]
| 研究 | 比較した条件 | 報告された結果 |
|---|---|---|
| Sweedler-Brown | 同じ答案を手書きと打ち直しで採点 | 打ち直した答案の点が低かった |
| Powersら | 両方式で書いた作文を、もう一方の形式にして再採点 | 手書きの平均点が高かった |
| Lee | 留学生が紙とパソコンの両方で作文 | 総合評価に差はなく、観点ごとの評価は入力が高かった |
| Cossら | 中国語の学習者が手書きと入力の両方で作文 | 入力の答案は内容が多く、点も高かった |
平均点に差がなくても本人の慣れは関係する
方式の比較で平均点に差がなければ、操作の準備は不要だと考えたくなるかもしれません。Horkayらは、全国を代表する標本による学力調査の作文試験で、8 年生に同じ二つの課題を紙と画面で出し、別々の標本の点を比べました。全体として、紙と画面の平均点に統計的にはっきりした差はありませんでした。しかし、紙で書く力をそろえても、パソコンへの慣れは画面での点を予測しました。[5]
平均は集団全体をひとつの値にしたものなので、方式に慣れている人と慣れていない人の事情までは表しません。この研究でパソコンへの慣れが点を予測したことは、紙で作文を書く力だけでは画面での結果を説明しきれなかったことを意味します。「普段からよい文章が書けるから、試験中の操作にも困らない」と決めるには、途中の作業が抜けています。また、これは慣れと成績の関係を示す結果であり、入力の練習を増やせばその分だけ点が伸びるという量の目安ではありません。[5]
行動の二つ目は、本番と同じ方式で時間を計り、小論文を 1 本書く練習を入れることです。入力の速さだけを切り出すのでなく、課題を読んでから文章を仕上げるまでを含めると、内容を考える間と操作に使う間の両方が練習に入ります。普段の短いメッセージでは支障がなくても、長い文章では前の段落へ戻ったり、文の順序を変えたりする場面が生じます。本番が手書きなら紙の答案を仕上げること、本番が入力なら画面上の文章を仕上げることが、この練習の到達点です。
入力の利点がそのまま使えない場面と最後の見直し
入力では文字を消したり、文章を移したりする操作がしやすい一方、その便利さを活用するには、どこをどう直したいかが定まっている必要があります。設問に対する立場が曖昧なままなら、文を移動しても理由の不足は残ります。また、手書きで解答する試験に向けて、画面上で修正を重ねた文章だけを完成の基準にすると、紙で書く際の作業量が見えにくくなります。方式の選択肢がない試験では、使える道具の中で考えを文章にすることが準備の前提になります。
入力で書く人の行動の三つ目は、変換の誤りを見直す時間を最後に確保することです。誤った漢字でも文の形が整って見えることがあり、打ち終えたという感覚だけでは内容の誤りを拾いにくくなります。たとえば、主張の中心になる語が違う漢字に変わると、読み手は意図とは違う意味で理由を受け取るかもしれません。この見直しは、入力の答案に特定の減点規則があるという説明ではなく、意図した文章として提出するための手順です。
平均点が同じでも慣れと点が結びついた研究は、集団の結果から本人の準備を省いてよいとは判断しない姿勢につながります。[5]生徒にとって方式の研究を読む意味は、入力か手書きかという評判に振り回されず、自分が文章を完成させる条件に目を向けられることです。保護者にとっては、パソコンを使うのが速いという印象だけで、小論文の準備全体を評価しないための手掛かりになります。
よくある質問
パソコンの試験で文字の数はどう数えられるか
数え方は大学ごとの要項や解答の案内に従います。たとえば、空白や改行をどう扱うか、画面に表示された数を解答量の基準とするかは、文字の上限だけでは決まらない事項です。普段使う文書作成ソフトの表示と試験画面の表示が同じ計算方法だと考えると、文章量の判断がずれるおそれがあります。これは文章の内容に対する採点の問題ではなく、提出する答案の長さを扱う手続きの問題です。
ローマ字入力とかな入力で評価に差はあるか
この二つの入力方法のどちらを選ぶと評価が高くなるかは、ここで扱った比較の対象ではありません。手書きと入力を比べた結果を、そのままキーボードの入力方法の順位に置き換えることには根拠がありません。入力方法の設定を変更できるかどうかは、使用する端末と試験の操作案内にかかわる事項です。普段の方法が使えるという前提と、入力方法そのものに点が付くという想定を混ぜないことが大切です。
手書きの試験の下書きをパソコンでしてもよいか
家庭での学習として、考えを並べたり段落の順番を考えたりするために使う方法はあります。試験中の下書きについては、試験で使用が認められた道具の範囲に従うことになります。家庭の下書きは文章の構成を検討する作業なので、そこで仕上がった文章と、制限のある試験中に書き上げる答案とでは完成までの条件がそろいません。下書きの道具が何かだけで練習を評価せず、その作業が何の準備に当たるかという位置づけが必要です。
この記事の限界
適用範囲は、補習課程の作文、留学生の英作文、中国語を外国語として学ぶ大学生の作文、学力調査の作文に及びますが、日本語の小論文で方式を比べた年内入試の研究は含まれていません。古い研究や少人数の研究も含み、対象の言語、時代、採点の方法がそろっていないため、手書きか入力かによる点の差を一つの大きさとして示す材料にはなりません。
募集要項や操作案内は年度ごとに変わるため、受験する年度の要項と大学の発表が、解答の方式や使える端末を判断する基準になります。研究の比較だけで個別の出願先や選抜方式を決めることはできず、本人の準備と志望先の条件を照らし合わせた検討が残ります。
参考文献
- Sweedler-Brown. Computers and Assessment: The Effect of Typing versus Handwriting on the Holistic Scoring of Essays. Research & Teaching in Developmental Education. 1991.
- Powers ほか. Will They Think Less of My Handwritten Essay If Others Word Process Theirs? Effects on Essay Scores of Intermingling Handwritten and Word-Processed Essays. Journal of Educational Measurement. 1994;31(3):220-233.
- Lee. A Comparative Study of ESL Writers' Performance in a Paper-Based and a Computer-Delivered Writing Test. Assessing Writing. 2004;9(1):4-26.
- Coss ほか. Are We Testing What We Think We Are? A Multi-Site Investigation of Typed and Handwritten L2 Chinese Writing Assessments. Language Learning & Technology. 2025;29(2):190-221.
- Horkay ほか. Does It Matter if I Take My Writing Test on Computer? An Empirical Study of Mode Effects in NAEP. Journal of Technology, Learning, and Assessment. 2006.
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- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
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よくある質問
パソコンの試験で文字の数はどう数えられるか
数え方は大学ごとの要項や解答の案内に従います。たとえば、空白や改行をどう扱うか、画面に表示された数を解答量の基準とするかは、文字の上限だけでは決まらない事項です。普段使う文書作成ソフトの表示と試験画面の表示が同じ計算方法だと考えると、文章量の判断がずれるおそれがあります。これは文章の内容に対する採点の問題ではなく、提出する答案の長さを扱う手続きの問題です。
ローマ字入力とかな入力で評価に差はあるか
この二つの入力方法のどちらを選ぶと評価が高くなるかは、ここで扱った比較の対象ではありません。手書きと入力を比べた結果を、そのままキーボードの入力方法の順位に置き換えることには根拠がありません。入力方法の設定を変更できるかどうかは、使用する端末と試験の操作案内にかかわる事項です。普段の方法が使えるという前提と、入力方法そのものに点が付くという想定を混ぜないことが大切です。
手書きの試験の下書きをパソコンでしてもよいか
家庭での学習として、考えを並べたり段落の順番を考えたりするために使う方法はあります。試験中の下書きについては、試験で使用が認められた道具の範囲に従うことになります。家庭の下書きは文章の構成を検討する作業なので、そこで仕上がった文章と、制限のある試験中に書き上げる答案とでは完成までの条件がそろいません。下書きの道具が何かだけで練習を評価せず、その作業が何の準備に当たるかという位置づけが必要です。