友人と小論文を読み合うと書く力は伸びるか|生徒どうしの相互評価の研究
図書室で先生の添削を待つ間、友人と答案を交換したいと思っても、専門家ではない相手の指摘で小論文を直してよいか迷うことがあります。読み合いは見る観点を決めて行えば書く力を伸ばす助けになりますが、表記や語法の正誤まで仲間の判断に任せないことが大切です。友人に読んでもらう価値は、正しい解答を教わることだけにあるわけではなく、自分の説明がどのように伝わったかを知ることにもあります。
- 生徒どうしが文章を読み、良い点や説明の足りない点を伝える取り組みを、相互評価と呼びます。
- Huismanらは、大学生の学術的な文章を扱った24件の研究をまとめるメタ分析を行いました。
- Liらは、58件の研究に含まれる134の効果量をまとめ、生徒どうしの相互評価に参加した人は、参加しない人より成績が0.291標準偏差高いと報告しました。
- 友人に読んでもらう側だけが、読み合いの学習者なのではありません。
図書室で先生の添削を待つ間、友人と答案を交換したいと思っても、専門家ではない相手の指摘で小論文を直してよいか迷うことがあります。読み合いは見る観点を決めて行えば書く力を伸ばす助けになりますが、表記や語法の正誤まで仲間の判断に任せないことが大切です。友人に読んでもらう価値は、正しい解答を教わることだけにあるわけではなく、自分の説明がどのように伝わったかを知ることにもあります。
書いた本人には筋が通って見える文章でも、初めて読む人には、理由と結論の間が飛んで見えることがあります。反対に、自分では弱いと思っていた説明が、読み手には具体的で伝わりやすい場合もあります。友人の反応は答案を考え直す材料になり、指摘する側にも文章を検討する機会があります。
ただし、読み合いの研究で扱われるのは、答案を渡して感想を聞くだけの活動とは限りません。評価の練習や文章についての指導を伴う取り組みも含まれます。総合型選抜や学校推薦型選抜に向けた準備では、練習用の答案と提出する書類の扱いにも目を向けながら、研究で効果が見られた条件を読む必要があります。
小論文の読み合いと「本人が作成したもの」の意味
生徒どうしが文章を読み、良い点や説明の足りない点を伝える取り組みを、相互評価と呼びます。ここでいう評価には、点を付けることだけでなく、書き直しのための意見を返すことも含まれます。小論文の準備で考えたいのは、友人が採点者の役をどれほど正確に演じられるかより、書き手が自分の説明を検討する材料を得られるかという点です。
募集要項では、志望理由書や課題レポートの提出物の欄と、それぞれの作成上の注意が関係します。「本人が作成したもの」という記載がある場合、文章を作る主体が受験生本人であることを求めています。提出する文章を誰かが書き換え、そのまま本人の文章として出すことは、この条件に沿いません。練習中の意見交換を考える際にも、提出物の作成条件を起点にすると、相談と文章の作成を混同せずに済みます。
書類の名称だけでは、求められる作業の範囲は決まりません。同じ課題レポートでも、設問が求めるのが自分の考えなのか、資料を踏まえた説明なのかによって、本人が担う思考の中身は変わります。注意書きが対象にしているのは、その書類なのか、添付する資料も含むのかという読み方も大切です。友人から「ここで意味が取れなかった」と聞く場面と、友人に結論や段落を作ってもらう場面では、後者で文章の作り手そのものが入れ替わります。
指摘がない場合や自分で見直す場合との比較
Huismanらは、大学生の学術的な文章を扱った24件の研究をまとめるメタ分析を行いました。メタ分析とは、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法です。仲間の指摘を受けた群は、指摘を受けない群より大きく伸び、自分だけで見直す群と比べても伸びていました。[1]読み合いを考える根拠は、このように比較相手を置いた研究にもあります。
差の大きさを研究どうしで比べられるようにした値を、効果量といいます。この分析の効果量は、指摘を受けない群との比較でg = 0.91、自分で見直す群との比較でg = 0.33でした。[1]いずれも仲間の指摘を受けた群の伸びを示す値ですが、比較相手が変わると数値も変わります。すでに自分で見直す活動をしている人にとっては、何もしない状態からの変化より、その活動に読み合いを加えた比較のほうが近い問いになります。
先生の指摘との比較では、信頼区間が0をまたいでおり、差ははっきりしませんでした。信頼区間は、本当の値がありそうな幅を示すもので、この結果は先生と仲間のどちらが上かを決める材料としては幅が大きいことを意味します。著者らは、条件をよくそろえて効果を調べた研究がまだ少ない点も指摘しています。[1]比較の結果を整理すると、読み合いの価値が示された場面と、優劣が定まらなかった場面の位置づけが見えます。
| 比較した相手 | 仲間の指摘を受けた群の結果 | 結果の読み方 |
|---|---|---|
| 指摘を受けない群 | 大きく伸びた。効果量g = 0.91 | 指摘を受ける活動の有用性を示す |
| 自分で見直す群 | より伸びた。効果量g = 0.33 | 自分だけの見直しに加わる価値を示す |
| 先生から指摘を受ける群 | 差ははっきりしなかった | 仲間の指摘が先生を上回るとも、同等とも決めない |
評価する練習が読み合いの効果に関わる
Liらは、58件の研究に含まれる134の効果量をまとめ、生徒どうしの相互評価に参加した人は、参加しない人より成績が0.291標準偏差高いと報告しました。標準偏差は、成績などの値のばらつきの大きさを表す尺度です。この数値は異なる尺度の成績を比較するための表し方で、答案に加わる点数や入試で通る見込みを示すものではありません。作文以外も含めたこの分析で、効果を最も左右したのは、評価のしかたの練習を受けたかどうかでした。[2]
評価の練習を受けた場合には、受けない場合より相互評価の効果がかなり大きくなりました。[2]友人に「よく読んで」と伝えるだけでは、相手が内容、言葉遣い、文章の長さのどこに注意を向けるかが定まりません。たとえば、「理由が弱い」という感想には、理由が本文に書かれていない場合と、書かれた理由に読み手が納得しない場合が含まれます。見る対象が共有されていれば、同じ言葉で述べた指摘の中身を話し合いやすくなります。
子どもと青年の作文に関するHoogeveenらのレビューは、読み合いを扱った26件の研究を検討しています。そこでは、読み合いに加え、文章を書くための方法、やりとりのルール、文章の型の知識についての指導が、どの研究でも行われていました。そうした指導を伴う読み合いは、一人で書く活動より効果があるようだった一方、読み合いだけの効果は切り分けられていません。[6]読み合う機会の有無だけでなく、参加する生徒が何を学び、どのような準備をしていたかが結果を理解する鍵です。
読む側にも書く力と結びつく学びがある
友人に読んでもらう側だけが、読み合いの学習者なのではありません。Wuらは中等学校の生徒の作文で、指摘をする量、受ける量、書き直す量と、書く力の伸びとの関係を調べました。指摘を受ける量も、相手に指摘をする量も、書き直しの多さと結びついており、書き直しの量は書く力の伸びを予測していました。さらに、指摘をすること自体も、書く力の伸びと直接結びついていました。[3]
これは相関、つまり複数の値の動きがどの程度そろうかを扱う研究です。指摘を多くしたことが原因で書く力が伸びた、とまでは研究からは言えませんが、読む側の活動にも注目する理由になります。[3]「自分より上手な人の答案でないと読む意味がない」と考えると、相手の文章を検討する作業を見落とします。完成度の高い文章を受け取ることだけが、読み合いの価値を決めるわけではありません。
たとえば、結論が明確でも、その理由として挙げた例が結論の一部にしか対応していない文章を考えます。読む側が感じる引っ掛かりを説明するには、結論がどこまでの範囲を指し、例が何を示しているのかを見定める必要があります。「賛成できない」という意見の対立と、「この理由から結論まで進む説明が足りない」という文章への指摘では、話題にしているものが変わります。この例で読み手が取り組むのは、相手の主張への賛否を決める前に、文章の中にあるつながりを捉える作業です。
内容への指摘と細部の正誤に同じ確かさを求めない
Falchikovらは、大学で学生が付けた点と先生が付けた点を比べた48件の研究をまとめました。よく理解された基準に基づいて全体を判断すると、学生の点は先生の点に近づきました。一方、いくつもの観点を一つずつ採点する場合は、先生の点から離れていました。[4]観点を細かく増やすことが、そのまま友人の評価を正確にするとは限らない結果です。
Zhangらは、中国の英語専攻の大学生118人を対象に、学年による相互評価の確かさを調べました。1年生も4年生も、評価のぶれの小ささを表す信頼性は、先生と同じくらい高いものでした。しかし、測りたいものを測れている度合いである妥当性については、1年生は特に文法や表記の評価で低く、内容や構成など大きな観点の評価は両学年で比較的妥当でした。[5]同じ判断を安定して出せることと、その判断が適切な対象を捉えていることは、ここでは別々に測られています。
この結果を踏まえると、「みんなが同じ誤りだと言っている」という一致だけで、表現の正誤を決める扱いには慎重さが要ります。特に、読み合う人たちが語法の根拠を説明できない場合、繰り返し見聞きした表現かどうかが判定の理由になりがちです。逆に、「誰の意見を述べた段落なのか読めなかった」という反応は、読み手が文章のどこで困ったかを表しています。仲間の点数を本番の予測に使いたい人や、細部の正解だけを求める人より、説明の届き方を検討したい人に合う使い方です。
観点を決め、指摘の採否を自分で担う
最初の行動は、読み合う前に「設問に答えているか」「主張と理由がつながっているか」の2つに見る観点を絞り、紙に書くことです。前者は、問われた対象について答えになっているかを見て、後者は、挙げた理由がその主張を導く説明になっているかを見ます。たとえば対策を求める設問で問題の説明だけが続く答案は前者に関わり、対策の提案はあっても実行する理由が示されない答案は後者に関わります。これは細かな点数表を作る手順ではなく、読み合いの話題を共有するための準備です。
次の行動は、自分の答案への指摘を受けたら、採るか採らないかを決め、採らない理由を1行で書くことです。友人の意見を採らない場合にも、「自分はそう思わない」だけで終えるのでなく、設問や文章の内容に理由があるかが焦点になります。たとえば、課題文の考えを説明している段落に、自分の体験を増やすよう求められたとき、その段落の役割によっては提案を採らない判断が成り立ちます。意見をくれた相手への好意や遠慮だけで決めず、答案で果たす役割を根拠にする作業です。
最後の行動は、表記や語法の正誤については、辞書か先生に確かめてから直すことです。友人が迷った箇所は疑問の所在を知らせますが、誤りの判定には、その言葉が文の中でどう使われているかという根拠が要ります。試験で評価する側に届くのは、仲間との相談の経緯ではなく、設問に対する本人の文章です。読み合いで浮かんだ疑問を本人が引き受け、文章として説明を成立させることが、評価される答案につながります。
よくある質問
同じ大学を志望する友人と答案を見せ合ってよいか
練習用の答案を共有することと、提出する課題の共同作成とは、相手の志望先が同じという理由だけで一括りには扱えません。提出課題では、募集要項と課題ごとの作成条件が判断の基準になります。互いに見せることに納得しているか、答案を他の人へ渡さない範囲を共有できているかも大切です。同じ大学を目指しているからという理由で、見せたくない文章まで交換する義務はありません。
読み合う相手は何人がよいか
ここで取り上げた研究から、人数の最適な値は決まりません。相手が増えると複数の反応に触れる機会がある一方、読む時間も、意見を受け止める負担も増えます。人数を増やすこと自体より、文章を最後まで読める時間があり、相手の指摘の意味を落ち着いて聞ける関係かどうかが、実際に続けられる規模を考える目安です。集まりに参加する全員が、同じだけの答案を見せられるとは限らないことにも配慮が要ります。
志望理由書も友人に読んでもらってよいか
志望理由書は本人が書く書類であり、友人が文章を作り直すような代筆に当たる直し方はしません。第三者の関与について作成条件が示されている場合は、その条件に従うことが前提です。また、小論文の練習答案より、家庭の事情や個人的な経験が含まれることがあります。親しい相手でも話していない内容を含むため、文章を見せるかどうかには、読みやすさの相談に加えて本人の情報を誰と共有するかという判断が伴います。
この記事の限界
対象は大学生の学術的な文章や外国語の作文に偏り、中等学校の生徒、子どもと青年の研究も含みますが、日本の年内入試の小論文を直接調べたものは含まれていません。扱う研究の公表時期にも幅があり、中国の英語専攻の学生の結果を含め、国や学習段階、指導の条件を越えて効果の大きさを一律には当てはめられません。
読み合いの効果が示された研究でも、評価の練習や書く指導を伴う条件が含まれているため、友人との意見交換を個別の出願判断の代わりにはできません。募集要項や提出課題の条件は年度ごとに変わるため、実際の書類作成の基準は、最新の要項と大学の発表に置きます。
参考文献
- Huisman ほか. The Impact of Formative Peer Feedback on Higher Education Students' Academic Writing: A Meta-Analysis. Assessment & Evaluation in Higher Education. 2019;44(6):863-880.
- Li ほか. Does Peer Assessment Promote Student Learning? A Meta-Analysis. Assessment & Evaluation in Higher Education. 2020;45(2):193-211.
- Wu ほか. The Effects of Providing and Receiving Peer Feedback on Writing Performance and Learning of Secondary School Students. American Educational Research Journal. 2021;58(3):492-526.
- Falchikov ほか. Student Peer Assessment in Higher Education: A Meta-Analysis Comparing Peer and Teacher Marks. Review of Educational Research. 2000;70(3):287.
- Zhang ほか. Changes in the Reliability and Validity of Peer Assessment across the College Years. Assessment & Evaluation in Higher Education. 2020;45(8):1073-1087.
- Hoogeveen ほか. What Works in Writing with Peer Response? A Review of Intervention Studies with Children and Adolescents. Educational Psychology Review. 2013;25(4):473-502.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
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- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
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よくある質問
同じ大学を志望する友人と答案を見せ合ってよいか
練習用の答案を共有することと、提出する課題の共同作成とは、相手の志望先が同じという理由だけで一括りには扱えません。提出課題では、募集要項と課題ごとの作成条件が判断の基準になります。互いに見せることに納得しているか、答案を他の人へ渡さない範囲を共有できているかも大切です。同じ大学を目指しているからという理由で、見せたくない文章まで交換する義務はありません。
読み合う相手は何人がよいか
ここで取り上げた研究から、人数の最適な値は決まりません。相手が増えると複数の反応に触れる機会がある一方、読む時間も、意見を受け止める負担も増えます。人数を増やすこと自体より、文章を最後まで読める時間があり、相手の指摘の意味を落ち着いて聞ける関係かどうかが、実際に続けられる規模を考える目安です。集まりに参加する全員が、同じだけの答案を見せられるとは限らないことにも配慮が要ります。
志望理由書も友人に読んでもらってよいか
志望理由書は本人が書く書類であり、友人が文章を作り直すような代筆に当たる直し方はしません。第三者の関与について作成条件が示されている場合は、その条件に従うことが前提です。また、小論文の練習答案より、家庭の事情や個人的な経験が含まれることがあります。親しい相手でも話していない内容を含むため、文章を見せるかどうかには、読みやすさの相談に加えて本人の情報を誰と共有するかという判断が伴います。