答えに詰まって黙ると面接の評価は下がるか|沈黙と言いよどみの研究
面接で答えに詰まり、黙ったり「えーと」と言いよどんだりすると、その場で評価が下がるのでしょうか。沈黙やためらいは聞き手の印象に関わりますが、評価を考えるうえでは、その後に答えた内容の正確さや展開が大切です。 言葉が滑らかに続くことと、質問に合った説明が届くことは同じではありません。間があったという記憶だけでは、回答全体にどんな内容が含まれていたかまで振り返れないからです。
- 「答えられない」という言葉には、違う状態が含まれます。
- Boskerらは、オランダ語を第二言語として話す人の発話について、間、速さ、言い直しが流暢さの印象にどう関わるかを実験で調べました。
- Gintherらは、英語の話す試験の150人分の回答で、話す速さや無音の間の数・長さと総合点との関係を調べました。
- Duijmらは、オランダ語の職業試験の回答について、流暢さと正確さを別々に変えた実験を行いました。
面接で答えに詰まり、黙ったり「えーと」と言いよどんだりすると、その場で評価が下がるのでしょうか。沈黙やためらいは聞き手の印象に関わりますが、評価を考えるうえでは、その後に答えた内容の正確さや展開が大切です。 言葉が滑らかに続くことと、質問に合った説明が届くことは同じではありません。間があったという記憶だけでは、回答全体にどんな内容が含まれていたかまで振り返れないからです。
帰りの電車で面接練習を思い返し、答えの中身より黙った場面ばかり気になることはないでしょうか。考えてから言葉にした時間も、言いたいことが浮かばなかった時間も、外からは同じ無音に見えます。それでも、無音の後に理由を説明できた場合と、問いへの回答がないまま終わった場合では、相手に届いた材料が違います。沈黙の有無だけを取り出すと、その違いが隠れてしまいます。
総合型選抜や学校推薦型選抜の面接を考える際には、話の滑らかさと回答全体の評価を区別する必要があります。研究が扱う「流暢さ」は、言葉がどれだけ滑らかに続くかという側面です。募集要項に書かれた面接の時間や課題の種類は、受験者がどのような条件で考え、答えるかを知る手掛かりになります。
面接で答えられないときに起きていることを分ける
「答えられない」という言葉には、違う状態が含まれます。伝えたい考えはあるが適切な言葉を探している場合、質問の意味を整理している場合、問われた事実を知らない場合がその例です。どの状態でも口が止まることはあり、無音という見た目だけでは中で何が起きているかは見えません。沈黙を数えることと、回答の中身を評価することは、別の作業です。
言いよどみと、言い直しにも違いがあります。「えーと」のように言葉を探す声を挟むことと、すでに述べた言葉を訂正することは同じではありません。言い直しによって意味が正確になる場合もあれば、話が途中で切れたままになる場合もあります。止まったという点だけを共通項にすると、訂正の前後にある意味の変化が抜け落ちます。
面接の時間とは、回答を組み立てて相手に伝えるための条件です。募集要項の面接欄に時間の記載があっても、それは個々の沈黙をどう採点するかとは別の記述です。また、口頭試問や資料を読む課題を含むかどうかで、問いを受けてから答えを出すまでに必要な作業も違います。問いを聞くだけの場面と、文章や図表を受け取って考える場面を、同じ「すぐ答える」という基準にそろえると課題の違いが消えてしまいます。
ここで役立つのは、沈黙を回答の前後から切り離さずに捉えることです。たとえば、考える間の後に根拠が示されたなら、聞き手には間だけでなく根拠も届きます。反対に、言葉が途切れなくても、質問と関係のない説明が続けば、問われた内容は伝わっていません。速やかに話し始めたかと、質問に対応した説明になったかは、分けて記述できる性質です。
間やためらいが印象に関わるという結果
Boskerらは、オランダ語を第二言語として話す人の発話について、間、速さ、言い直しが流暢さの印象にどう関わるかを実験で調べました。第二言語とは、母語とは別に身につけて使う言語のことです。訓練を受けていない評価者の採点を最もよく予測したのは、間と速さの指標で、言い直しの寄与はごく小さいという結果でした。[1]
この結果は、聞き手が感じる滑らかさに、声の出ていない時間が関わることを示しています。同時に、発話の途中で起こることをすべて同じ重さで扱う見方とも違います。言い直しの寄与が小さかったため、「言葉が止まる」「言葉を修正する」をひとまとめにして、どちらも同じ程度に印象を下げると読むのは飛躍です。測っていたのは、あくまで流暢さという評価の側面でした。[1]
ためらいの受け止めを別の場面から示すのが、Ottらによるカナダの医学部の研究です。外科研修医9人とその指導医を観察し、面談を行ったところ、手術中のためらいは双方から力不足のしるしと受け取られていました。これは質的研究と呼ばれる方法で、観察や語りを通して、行動がどのように意味づけられるかを調べています。人数を増やして割合を推定する研究とは、得られる答えの種類が違います。[2]
この研究で焦点になったのは、手術を進めるという場面の性質と、ためらいの意味との関係です。止まるという行動は、周囲が何を期待しているかと結びついて受け取られていました。語学の話す試験と手術室の研究を、日本の年内入試の面接にそのまま当てはめることはできませんが、間が能力の印象に入り込む仕組みを考える材料にはなります。印象への影響と、入試の採点上の扱いとの距離が残っています。[1][2]
沈黙の長さだけでは回答全体を採点できない
Gintherらは、英語の話す試験の150人分の回答で、話す速さや無音の間の数・長さと総合点との関係を調べました。これらの指標には、総合点と強い程度から中程度の相関がありました。相関とは、ある値の違いと別の値の違いが結びついていることを表し、それだけで原因を特定するものではありません。一方で、流暢さの指標だけでは隣り合う級の区別がつかなかったという結果も出ています。[3]
総合点と結びつくことと、個々の人の評価を決められることは違います。全体の傾向として間の特徴が点と動いていても、級の境目を分けるには、ほかの側面の情報が必要だったということです。これは、間を測ることに意味がないという話でも、間さえ測れば十分という話でもありません。測った情報が、回答全体のどの部分を表すかという問題です。[3]
研究を比べると、評価の対象が少しずつ異なります。流暢さの印象、能力の受け止め、語学試験の総合点は、同じ名称の点数ではありません。下の表では、沈黙との関係だけでなく、各研究が何を評価したかを並べています。
| 研究 | 扱った場面 | 評価したもの | 主な結果 |
|---|---|---|---|
| Boskerら [1] | 第二言語の発話 | 流暢さの印象 | 間と速さが最もよく予測し、言い直しの寄与は小さい |
| Ottら [2] | 手術中の研修医と指導医 | ためらいに伴う能力の受け止め | ためらいが力不足のしるしと受け取られた |
| Gintherら [3] | 英語の話す試験 | 総合点と級 | 間などは点と結びついたが、隣り合う級の区別には足りない |
| Duijmら [4] | オランダ語の職業試験の回答 | 話す力の総合評価 | 流暢さより正確さの改善への反応が強い |
| Sato [5] | 日本の大学生の英語の独話 | 総合評価と合計点 | 内容の練り上げ・展開が実質的に寄与した |
正確さと内容の展開が評価に加わる
Duijmらは、オランダ語の職業試験の回答について、流暢さと正確さを別々に変えた実験を行いました。評価したのは職業の評価者55人と、訓練を受けていない41人です。どちらの側面を改善した場合も評価は高くなりましたが、評価者は流暢さより正確さの改善に強く反応しました。[4]
流暢さを変えた回答と正確さを変えた回答を比べると、聞き手が滑らかさ以外にも反応していることが見えてきます。ここでの正確さは、語学試験における言語面の正確さです。志望する分野の知識が正しいか、進学の理由が妥当かといった入試の回答内容とは、評価の対象が異なります。それでも、途切れずに話すという特徴だけで、話す力の総合評価が説明されるわけではないという方向は読み取れます。[4]
内容そのものに着目したSatoの研究では、日本の大学生30人による英語の独話を9人の評価者が採点しました。独話とは、相手とのやり取りを挟まず、話し手が続けて話す形式です。直感的な総合評価と合計点には、流暢さなどの言語面の基準に加えて、内容の練り上げや展開が実質的に寄与していました。[5]
内容の展開とは、発した言葉の量だけに注目する見方とは違います。たとえば、ある判断を述べた後に理由を説明する場合には、判断と理由のつながりが聞き手に渡されます。同じ主張を言葉だけ変えて繰り返す場合には、声は続いても説明の材料は増えません。こうした違いに目を向けると、言いよどみの少なさと説明の充実を、別の軸で捉えられます。
日本の大学生を扱ったという点でも、この研究は読者に近く感じられるかもしれません。ただし、扱った課題は英語の独話であり、質問を受けて返す面接とは形式が違います。標本も小さく、主に語学課題を扱う研究群の一部として読む位置づけになります。そこで示されたのは、話し方だけでなく、話された中身にも評価との結びつきがあるということです。[5]
詰まった理由が違えば、同じ直し方にはならない
沈黙をなくすことだけを目標にすると、異なる困りごとが同じものに見えてしまいます。考えを言葉にする途中で止まった回答と、必要な事実を知らずに止まった回答には、内容上の違いがあります。前者には説明したい考えがあり、後者では説明の根拠そのものが欠けています。両方を「間を短くする」という課題にすると、何が欠けたかを区別する手掛かりがなくなります。
また、言い直しがある回答を、すべて完成度の低い回答と呼ぶのも粗い捉え方です。たとえば、経験について話していて不正確な表現に気づき、より適切な言葉に置き換える場面があります。このとき、言葉の流れには切れ目が入っても、最終的に伝わる説明は前より明確になります。止まった回数だけでは、修正した結果の違いが記録されません。
振り返る際の提案は、詰まった箇所の前後を含めて、最終的に質問に対応する内容が伝わったかを確かめることです。「何も答えていない」「理由までは述べた」「言い直して意味を整えた」のように、届いた内容で言い表します。この整理では、沈黙の位置と、相手に渡った回答の意味を対応させます。間の長短だけに目を向けるより、どこまで答えになったかが具体的になります。
この整理が向くのは、自分が答えた内容と止まった場面を一緒に振り返れる場合です。問いの内容そのものが思い出せない場合には、回答が問いに対応していたかという比較の片側が欠けています。また、発話の困難そのものへの支援が必要な場合には、ここで扱う回答内容の振り返りとは課題が異なります。沈黙という共通の表れがあっても、抱えている困りごとの範囲は人によって違います。
出願前には時間と課題の記載を照合する
募集要項で確かめる対象は、面接の時間と、口頭試問や資料を読む課題を含むかの記載です。時間が書かれていれば、その数字が面接全体を指すのか、課題ごとに示されているのかを、同じ欄の文章と合わせて読みます。これは、沈黙を許される時間を探す作業ではなく、受験者に与えられた課題と時間の関係を把握する作業です。課題名だけを抜き出すより、記載された条件のつながりが見えます。
たとえば「面接」とだけ捉えていると、質問を聞いて自分の経験を話す場面を思い浮かべやすくなります。そこに資料を読む課題の記載があれば、資料を受け止めて考える作業も含めて理解する必要があります。口頭試問を含むと書かれていれば、考えや経験を述べるだけの場面とも区別がつきます。いずれも、大学ごとの出題や時間配分を推測で埋めるためではなく、要項が明示する範囲を読むための区別です。
時間の長短だけでは、考えを求める問いの難しさや、回答の中身までは表せません。同じように、受験者が黙ったという事実だけでは、何を考え、何を言葉にできたかまでは表せません。面接の条件を読むことと回答を振り返ることには、目に見える部分だけで全体を決めないという共通点があります。準備の対象は「沈黙のない自分」という姿より、課題に対して何を示せるかという内容になります。
評価の材料を考えると、間の取り方と、伝わった説明は重なりつつも別の情報です。滑らかに聞こえるかだけに注目すると、正確さや展開に関する材料が見落とされます。評価する側から見れば、ためらいは印象の手掛かりになり得る一方、その後の答えによって初めて見える内容もあります。沈黙の瞬間だけでなく、回答がどこまで形になったかを捉えることが、評価の全体を考えるうえで重要です。
よくある質問
保護者が本人から沈黙したと聞けば、結果を予想できますか
本人の「黙ってしまった」という報告は、その場面をどう受け止めたかという情報です。実際の質問、前後に交わされた言葉、評価者がつけた点とは、それぞれ別の情報になります。話す本人が強く意識した場面と、聞き手が回答全体から受け取った材料は、そもそも視点が異なります。保護者が知る失敗感の強さと、面接で得られた評価の大きさには、同じ物差しを置けないという違いがあります。
試験が終わった後に、答えを補足する文章を送ってよいですか
終了後の補足が認められるかは、沈黙に関する研究ではなく、その試験の手続きの問題です。送付した文章が採点の対象になるかも、研究結果から決まることではありません。補足を考えている場合は、大学が示す試験後の連絡方法に従い、送付の可否を入試担当窓口に尋ねるのが先です。送れば回答として追加されるという前提で、本人の判断だけで文章を作り直すこととは区別されます。
質問が聞き取れなかった場合も、答えに詰まった場合と同じですか
問いの言葉が聞こえなかった状態と、問いを理解したうえで回答が浮かばない状態は違います。前者では答える対象を受け取る段階、後者では受け取った問いに対して内容を組み立てる段階で止まっています。外から見える無音は似ていても、止まるまでに得られた情報が異なります。「話せなかった」という出来事の中にも、質問の受け取りと回答の作成という別の過程があります。
この記事の限界
測定されているのは主に語学課題の流暢さや総合評価であり、手術中のためらいを扱う小規模な質的研究も含むため、日本の年内入試で沈黙による減点の有無や大きさを決める根拠にはなりません。発表時期の異なる研究を並べても、話す試験や手術室に偏った対象の範囲は残り、日本の大学生を対象とした研究も英語の独話を扱っています。
間と回答内容の区別は評価を理解する手掛かりにとどまり、個別の受験者の得点や出願先を決める根拠としては不足しています。面接の時間や課題は年度によって変わるため、出願の際に従う条件は、最新の募集要項と大学が公表する案内に示されます。
参考文献
- Bosker ほか. What makes speech sound fluent? The contributions of pauses, speed and repairs. Language Testing. 2013;30(2):159-175.
- Ott ほか. Resident hesitation in the operating room: does uncertainty equal incompetence? Medical Education. 2018;52(8):851-860.
- Ginther ほか. Conceptual and empirical relationships between temporal measures of fluency and oral English proficiency with implications for automated scoring. Language Testing. 2010;27(3):379-399.
- Duijm ほか. Professional and non-professional raters' responsiveness to fluency and accuracy in L2 speech: An experimental approach. Language Testing. 2018;35(4):501-527.
- Sato. The Contribution of Test-Takers' Speech Content to Scores on an English Oral Proficiency Test. Language Testing. 2012;29(2):223-241.
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よくある質問
保護者が本人から沈黙したと聞けば、結果を予想できますか
本人の「黙ってしまった」という報告は、その場面をどう受け止めたかという情報です。実際の質問、前後に交わされた言葉、評価者がつけた点とは、それぞれ別の情報になります。話す本人が強く意識した場面と、聞き手が回答全体から受け取った材料は、そもそも視点が異なります。保護者が知る失敗感の強さと、面接で得られた評価の大きさには、同じ物差しを置けないという違いがあります。
試験が終わった後に、答えを補足する文章を送ってよいですか
終了後の補足が認められるかは、沈黙に関する研究ではなく、その試験の手続きの問題です。送付した文章が採点の対象になるかも、研究結果から決まることではありません。補足を考えている場合は、大学が示す試験後の連絡方法に従い、送付の可否を入試担当窓口に尋ねるのが先です。送れば回答として追加されるという前提で、本人の判断だけで文章を作り直すこととは区別されます。
質問が聞き取れなかった場合も、答えに詰まった場合と同じですか
問いの言葉が聞こえなかった状態と、問いを理解したうえで回答が浮かばない状態は違います。前者では答える対象を受け取る段階、後者では受け取った問いに対して内容を組み立てる段階で止まっています。外から見える無音は似ていても、止まるまでに得られた情報が異なります。「話せなかった」という出来事の中にも、質問の受け取りと回答の作成という別の過程があります。