方言やなまりは選考で不利に働くか|発音のなまりと面接の研究
地方の言葉や外国にルーツのある発音で話すと、年内入試の面接で低く評価されるのでしょうか。採用の研究ではなまりへの評価の偏りが見られますが、その現れ方は聞き手や場面で異なり、方言だけで選考結果が決まるという結論にはなりません。 話した内容が伝わるかという問題と、聞き手が発音から人柄や能力を推し量る問題は別です。
- 「方言」と「なまり」は、日常では重ねて使われる言葉です。
- Spenceらは、なまりと採用判断について139の効果量を統合するメタ分析を行いました。
- なまりがあれば、どの場面でも同じように評価が下がるわけではありません。
- Telóらは、192人の聞き手のデータを事後分析しました。
地方の言葉や外国にルーツのある発音で話すと、年内入試の面接で低く評価されるのでしょうか。採用の研究ではなまりへの評価の偏りが見られますが、その現れ方は聞き手や場面で異なり、方言だけで選考結果が決まるという結論にはなりません。 話した内容が伝わるかという問題と、聞き手が発音から人柄や能力を推し量る問題は別です。
なまりを気にするとき、普段と違う話し方を身につけなければならないと感じるかもしれません。しかし、言葉の響きに慣れているかと、説明の筋道を理解できるかは異なる問題です。受験者の話し方だけに注目すると、聞き手がどんな基準で評価するかという問題が見えにくくなります。
夏休みに面接の準備を始め、ふだんの語尾や抑揚まで変える必要があるのかと気になる場面を考えてみます。募集要項に「面接」とあっても、その言葉だけで、どんなやり取りをするかまで明らかになるわけではありません。研究の評価場面と入試の実施方法を分けると、不安のうち何が研究の問題で、何が受験案内で確かめる事項なのかが見えてきます。
面接で方言が気になるときに分けたい言葉
「方言」と「なまり」は、日常では重ねて使われる言葉です。ここでは、地域の語彙や言い回しを含む言葉の違いを方言、そのうち発音や抑揚に聞こえる違いをなまりと呼びます。外国語を学んで使う人の発音の特徴も、なまりとして評価されることがあります。地域の言葉と外国語を使うときの発音は、同じ条件として扱うより、どちらを対象にした結果かを分ける必要があります。
さらに、聞き取りやすさと採用に向くという判断にも距離があります。前者は発話の内容をどれほど理解しやすいか、後者はその仕事に就く人としてどう評価するかという判断です。ある語が聞き取れたかどうかと、話し手に仕事を任せたいと思うかどうかは、聞き手に尋ねている内容が違います。なまりの研究が扱う「評価」を読む際は、この違いが出発点になります。
入試の書類にある「実施方法」は、面接がどんな形で行われるかを説明する部分です。たとえば個人で受けるか集団で受けるか、対面かオンラインかという記載は、やり取りの条件に当たります。「受験上の配慮」は、受験に際して必要な対応を相談するための案内に当たります。実施の形を示す記載と、相談の手続きを示す記載は役割が違い、どちらも発音の好みを示す言葉ではありません。
この区別は、総合型選抜や学校推薦型選抜を検討する際にも意味があります。面接が課されるという事実から、特定の地域の話し方が採点されると推測すると、試験の方法と評価への想像が混ざります。以下の研究で測られているのは、主として話し手が仕事に向くと判断される程度です。大学で学ぶための選考と採用の評価を同じ物差しとして扱わないことが、研究の読み方の土台になります。
標準的な発音に評価が寄った研究
Spenceらは、なまりと採用判断について139の効果量を統合するメタ分析を行いました。効果量は、差の大きさを研究どうしで比べられる形にした値です。メタ分析とは、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法です。結果は、標準的なアクセントの候補者のほうが、そうでない候補者より採用に向くと評価される方向でした。偏りは、意思疎通の多い仕事で強く現れていました。[1]
この分析で重要なのは、評価の違いがわかりやすさの差だけでは説明されなかった点です。もし評価の差が単に内容を聞き取れたかどうかで説明されるなら、問題は伝達の条件に絞られます。ところがこの結果は、聞き取りやすさ以外の問題も含めて考える必要を示しています。また、外国なまりへの偏りは地域なまりへの偏りより大きく、なまりをひとまとめにした扱いでは違いが見えなくなります。[1]
Carlsonらの研究では、人事の専門家60人が、女性の話し手3人を評価しました。なまりや方言が強く聞こえる場合には雇われやすさの評価が下がり、わずかに聞こえる場合には民族の違いが評価に影響しませんでした。対象は英語の変種で、「なまりがあるか」という区分だけでなく、どれくらい強く感じられたかが関わる結果です。[2] 聞き手の人数に比べて話し手が少ないため、幅広い発音や人物を代表する結果として読むには幅が狭い研究です。
これらの結果は、話し手の実際の力と、評価された力を分ける理由になります。採用に向くと低く評価されたことは、それ自体で仕事をする力が低いことを意味しません。なまりに伴って評価が変わるなら、聞き手が何を根拠に点を付けたのかが問題になります。評価の偏りを本人の能力不足へと言い換えると、研究が示した問題の場所を取り違えます。
差が出ない場面と、途中で変わる評価
なまりがあれば、どの場面でも同じように評価が下がるわけではありません。Cargileの研究では、非アジア系の米国人に、中国系の話し手による英語を採用面接の場面として示しました。条件が違っても仕事への適性は同じに評価され、なまりの違いに応じた低評価は見られませんでした。[3] 差が出た研究だけを並べると見落とす、評価のされ方の別の例です。
Lindbergらの研究は、面接が進む途中の評価を扱っています。ケベックのフランス語話者60人が、女性応募者6人の面接音声を、質問の進行に沿って評価しました。第二言語話者、つまり後から学んだ言語で話す調理職の応募者は、最初に低く評価された後、面接が進むと評価が持ち直しました。[4] 出だしに受けた印象が、そのまま最後まで固定された結果ではありません。
この時間の見方には意味があります。面接の冒頭の評価を測る場合と、やり取りの進行に沿って評価を測る場合では、判断のどの時点を捉えるかが違います。最初に低い点が付いたという事実と、その後も低いままだったという事実は区別されます。この研究は、なまりを含む第一印象の後にも評価が動く場合を示しています。[4]
結果の位置づけには、研究の規模と時期も関わります。Lindbergらが追った応募者は6人で、質問が進む中での変化を、この小さな集団について捉えています。[4] Cargileの結果は古い採用場面の研究に属し、差が出ない条件もあったことを示す事例として位置づけられます。[3] 差の有無と評価の時間的な変化を並べると、なまりの影響は一定という見方が粗いことがわかります。
聞き手の考え方も評価に関わる
Telóらは、192人の聞き手のデータを事後分析しました。事後分析とは、得られているデータを使って、追加の問いを調べる分析です。「なまりは人柄を表す」と強く信じる聞き手ほど、聞き取りやすさと雇われやすさの評価の結びつきが強くなっていました。[5] なまりへの判断には、話し手の特徴とともに、聞き手が何を信じているかという側面があります。
ここでの「結びつき」は、聞き取りやすいと評価する程度と、雇われやすいと評価する程度が一緒に動くという意味です。聞き手の信念を変える働きかけの効果を示すものとは異なり、著者も探索的な結果として位置づけています。[5] 探索的とは、まだ広く確かめられた結論としてではなく、今後調べる手掛かりとして読む性質のことです。受験者の側だけを見ていては捉えにくい条件が、この研究には含まれています。
研究間の違いは、結論を賛成と反対に分けるだけではつかめません。比べた発音、聞き手、評価した時点が違えば、結果の意味も違います。次の表では、発音の特徴から評価が決まるまでのどの部分を扱ったかに注目して並べています。
| 研究 | 比較や観察の焦点 | 結果を読む際の要所 |
|---|---|---|
| Spenceら [1] | 標準的な発音とそれ以外の発音 | 採用評価に偏りがあり、地域なまりより外国なまりで大きい |
| Carlsonら [2] | なまりや方言が強く聞こえる場合とわずかな場合 | 強く聞こえる場合に雇われやすさの評価が低い |
| Cargile [3] | 英語の話し方が異なる条件 | 仕事への適性の評価に差が出ない |
| Lindbergら [4] | 質問が進む中での評価の変化 | 当初低かった応募者の評価が持ち直す |
| Telóら [5] | なまりについての聞き手の信念 | 聞き取りやすさと採用評価の結びつきが聞き手によって異なる |
なまりを直すことと、内容を届けること
なまりをなくすことを準備の中心に置くと、評価の偏りへの対応を話し手だけが引き受ける形になります。先に見たように、わかりやすさだけでは説明できない偏りもあり、聞き手の考え方と評価との関係も示されています。[1][5] この問題は、受験者の努力だけを増やせば解決する種類のものとして扱うべきではありません。発音の特徴を、その人の能力や人柄の証拠として読む評価の側に課題があります。
受験者に勧める手当ては、意味のまとまりをはっきり区切って話すという、聞き取りやすさの工夫にとどまります。たとえば経験を話す場合、何をしたかと、その経験から何を考えたかの区切りが聞こえると、言葉の続き方を追いやすくなります。これは地域の抑揚を消す練習とも、外国語由来の発音を隠す練習とも目的が違います。伝えたい内容の境目を明らかにするという、意思疎通のための提案です。
一方、方言があること自体と、発話や聞こえについて個別の対応が必要な状態は同じではありません。必要な対応がある人に対して、はっきり話す努力だけを求めても、その人の困りごとに合うとは限りません。反対に、地域の言葉を使うという理由だけで、特別な手続きが必要だと決めることも適切ではありません。何に困っているのかという問題と、どの地域の言葉で話すかという情報は別々です。
保護者が受け止める際も、この区別は役に立ちます。聞き慣れない語尾を聞いたという感想と、話の内容を理解できなかったという感想には違いがあります。前者だけを理由に、本人の説明が足りないと評価すると、発音の好みと内容の評価が混ざります。受験者を支える場でも、言葉の響きから人柄まで決めつけないという視点が必要になります。
出願前は受験上の配慮と実施方法を読む
出願前に行う確認は、募集要項や受験案内の「受験上の配慮」と面接の「実施方法」を並べて読むことです。前者に相談の対象や手順が示されていれば、どんな条件で対応を相談する仕組みかがわかります。後者に書かれているのは、面接の場でどんな形のやり取りを予定しているかという情報です。なまりを気にしているだけなのか、受験時に具体的な対応を要するのかを、手続きの問題と切り離さずに考えられます。
受験上の配慮の欄は、「方言がある人は評価が下がる」と知らせるための欄ではありません。そこにある相談の仕組みと、面接の点をどう付けるかという問題は役割が異なります。また、実施方法の記載からわかるのは受験の形式であり、面接官が聞き慣れている発音までは読み取れません。書かれた事項の意味を広げすぎず、その欄が何を案内しているかに沿って読むことが大切です。
たとえば個人面接と集団面接は、受験者と面接官のやり取りの組み方が異なります。対面とオンラインも、話を届ける場の条件を表します。こうした違いは、なまりへの偏りが強い方式を順位づけする情報とは別です。どの方式なら自分の話し方が高く評価されるかを推測する材料にすると、案内の記載を超えた読み方になります。
採点する側から見ると、内容についての判断に、発音から受けた印象が入り込む可能性が問題です。面接のやり取りには、最初の印象の後にも評価を見直す機会があります。[4] 選考で問う力と話し方の好みを混ぜず、答えから得た根拠で判断することが、なまりのある受験者を迎える評価の側の課題です。
よくある質問
海外の「標準的なアクセント」は日本の標準語と同じ意味ですか
日本でいう標準語とそのまま同じ区分を指す言葉ではなく、研究が行われた言語の中で比べられた発音を指します。日本で標準語と呼ばれる言葉へ、外国語の発音の分類をそのまま移すと、比べた相手が変わってしまいます。地域なまりと外国なまりでも偏りの大きさが異なったことは、分類の違いを残して読む理由になります。[1]
話し手が少なくても評価者が多ければ十分ですか
評価者の数は、どれほど多くの判断を集めたかに関わり、話し手の数は、どれほど多様な人物の発話を扱ったかに関わります。Carlsonらの60人という人数は、評価した人の数であり、評価された話し手は3人です。[2] 多くの人が採点していても、話し手の種類が同じだけ豊富になるわけではなく、人数の役割を区別する必要があります。
論文の刊行年は面接が行われた年ですか
参考文献の年は論文が刊行された年であり、面接や評価が行われた時期とは区別されます。とくに複数の研究を統合するメタ分析では、刊行年が新しくても、その中には以前に行われた研究の結果が含まれます。新しい論文かどうかと、新しい時期の受験者を調べたかどうかは別の情報なので、参考文献の年だけから調べた場面の時期まで決めることはできません。
この記事の限界
測定されているのは主に採用に向くという評価で、日本の方言を使う高校生の年内入試の結果を直接追ったものではありません。英語・フランス語の採用場面に対象が偏り、話し手が少ない研究や古い研究も含まれるため、地域の言葉と現在の入試評価の関係を述べる根拠には隔たりがあります。
面接中の変化や聞き手の信念との関係も、個々の受験者の得点や出願の可否を判断する代わりには使えません。受験案内と募集要項は年度ごとに変わり、最新の要項と大学の発表が優先するため、研究上の偏りと、志望先で実際に必要となる手続きは別々に扱います。
参考文献
- Spence ほか. Is Your Accent Right for the Job? A Meta-Analysis on Accent Bias in Hiring Decisions. Personality and Social Psychology Bulletin. 2024;50(3):371-386.
- Carlson ほか. Effect of accent and dialect on employability. Journal of Employment Counseling. 2006;43(2):70-83.
- Cargile. Evaluations of Employment Suitability: Does Accent Always Matter? Journal of Employment Counseling. 2000;37(3):165-177.
- Lindberg ほか. When Accent Does Not Match Expectations: A Dynamic Perspective of L2 Speaker Evaluations in a French Interview Context. Canadian Journal of Applied Linguistics. 2023;26(2):1-31.
- Teló ほか. Essentialist beliefs about accented speakers moderate the effect of processing fluency on employability ratings. Frontiers in Psychology. 2026;17:1834790.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
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よくある質問
海外の「標準的なアクセント」は日本の標準語と同じ意味ですか
日本でいう標準語とそのまま同じ区分を指す言葉ではなく、研究が行われた言語の中で比べられた発音を指します。日本で標準語と呼ばれる言葉へ、外国語の発音の分類をそのまま移すと、比べた相手が変わってしまいます。地域なまりと外国なまりでも偏りの大きさが異なったことは、分類の違いを残して読む理由になります。[1]
話し手が少なくても評価者が多ければ十分ですか
評価者の数は、どれほど多くの判断を集めたかに関わり、話し手の数は、どれほど多様な人物の発話を扱ったかに関わります。Carlsonらの60人という人数は、評価した人の数であり、評価された話し手は3人です。[2] 多くの人が採点していても、話し手の種類が同じだけ豊富になるわけではなく、人数の役割を区別する必要があります。
論文の刊行年は面接が行われた年ですか
参考文献の年は論文が刊行された年であり、面接や評価が行われた時期とは区別されます。とくに複数の研究を統合するメタ分析では、刊行年が新しくても、その中には以前に行われた研究の結果が含まれます。新しい論文かどうかと、新しい時期の受験者を調べたかどうかは別の情報なので、参考文献の年だけから調べた場面の時期まで決めることはできません。