相手の目を見て話すことは面接でどこまで大切か|視線・表情と評価の研究
面接で相手の目を見て話すことは、答えの内容と比べてどこまで大切なのでしょうか。視線や表情は好ましさの評価に入りますが、目を見続けることを面接全体の評価より優先する根拠はありません。 質問に向き合っているつもりでも、相手にはどう映るのか気になる人はいるはずです。「目を見て話す」という助言を受けると、話す内容より目の置き場所に意識が向くことも考えられます。
- 視線とは目を向ける方向、表情とは顔の動きによる表れを指します。
- Shinya らは、大学生12人を話し手にした模擬のオンライン採用面接で、視線の向きを変えた映像の評価を比べました。
- Renier らは、採用面接の動画にAIで表情を加え、823人の観察者がどう評価するかを調べました。
- Hollandsworth らは、大学で行われた採用面接338件について、採用担当者の評価を分析しました。
面接で相手の目を見て話すことは、答えの内容と比べてどこまで大切なのでしょうか。視線や表情は好ましさの評価に入りますが、目を見続けることを面接全体の評価より優先する根拠はありません。 質問に向き合っているつもりでも、相手にはどう映るのか気になる人はいるはずです。「目を見て話す」という助言を受けると、話す内容より目の置き場所に意識が向くことも考えられます。
ここで区別したいのは、相手に好ましく見えること、答えが適切であること、そして選考でよい評価を受けることです。これらは似ているようで、測っているものが違います。笑顔を好ましいと感じたという結果から、大学で学ぶ力まで高く評価されたと読み進めると、研究の意味が変わってしまいます。
総合型選抜や学校推薦型選抜を考えるときも、視線の作法だけで面接を捉えると、質問と回答の関係が見えにくくなります。募集要項に書かれた面接の形式と、聞き手が見た目から受ける印象は、分けて考える必要があります。まず用語を整理し、視線が評価に入り込んだ実験と、内容や評価者の違いに目を向けた研究を読み比べます。
面接の目線と「実施方法」は別の情報
視線とは目を向ける方向、表情とは顔の動きによる表れを指します。これらは、言葉そのもの以外で相手に伝わる「非言語の手がかり」に含まれます。一方、質問に対して何を説明したかは、回答の内容です。「話し方がよい」という日常の表現には、この内容と、見た目や声から受ける印象が一緒に含まれることがあります。
募集要項や受験案内の「実施方法」は、面接がどのような形で行われるかを示す情報です。対面かオンラインかという区別と、個人か集団かという区別は、それぞれ別の側面を表しています。個人という語は受験者の参加の仕方を示し、目を向ける先についての細かな作法まで意味する語ではありません。オンラインという語も実施の形を表し、表情にどれだけ重みを置いて採点するかとは別の情報です。
この区別が必要なのは、視線の研究でも、条件によって「相手を見る」の意味が変わるためです。画面に映る相手を見ているときと、撮影するレンズを見ているときでは、本人の意図が同じでも映像に写る目の向きは違います。また、ある動きを好ましいと感じることと、それを選考の判断材料にすることも別です。形式、映像の見え方、評価の観点を一括りにすると、研究が何を確かめたのか曖昧になります。
たとえば「よく目が合った」という感想は、視線についての観察です。「質問への説明が十分だった」という感想は、答えに対する判断です。前者だけを取り出して後者の代わりにすると、聞き手が感じた好ましさと、受験者が伝えた内容が混ざります。視線の大切さを考える出発点は、この違いを保つことにあります。
カメラを向いた映像と下を向いた映像の差
Shinya らは、大学生12人を話し手にした模擬のオンライン採用面接で、視線の向きを変えた映像の評価を比べました。同じ準備した話をカメラ目線と画面目線で録画し、社会人が評価する実験です。視線が下にずれた映像は、カメラを見た映像だけでなく、音声だけの条件よりも有意に低く評価されました。[1] 有意という語は、統計上、偶然のばらつきだけでは説明しにくい差と判断されたことを指します。
この比較の特徴は、異なる話し手の印象を並べただけではなく、同じ準備した話を使っている点です。内容が違うから評価が違ったという説明を抑え、視線の条件に注目する作りになっています。さらに音声だけの条件を入れることで、顔が見えることと、どの方向を見ているかという問題を分けています。比較の組み合わせを読むと、「映像があればそれだけで好ましい」という単純な話ではないことがわかります。
| 比較に使った条件 | 評価者に届くもの | 実験で報告された関係 |
|---|---|---|
| カメラ目線の映像 | 準備した話とカメラを向いた視線 | 下にずれた視線の映像より好ましい評価 |
| 画面目線の映像 | 準備した話と下にずれた視線 | ほかの条件より低い評価 |
| 音声のみ | 映像を伴わない話 | 下にずれた視線の映像より好ましい評価 |
本人が画面の相手を見ようとしていることと、評価者に向けられた視線として映ることは、ここでは一致していません。目の向きには、話し手の気持ちだけでなく、撮影する位置と見る位置の関係も含まれます。したがって、この結果を受験者の誠実さや関心の強さの差として扱うと、実験で変えた条件から離れてしまいます。オンラインで受ける場合の準備としては、普段の話す姿勢のままカメラの位置を調整し、目が下を向いて写っていないかを確かめる、という対応が考えられます。
表情の豊かさと聞き手が注目するところ
Renier らは、採用面接の動画にAIで表情を加え、823人の観察者がどう評価するかを調べました。扱った表情には視線、うなずき、笑顔が含まれ、表情が豊かな人ほど好ましく評価されました。[2] 視線だけでなく、顔の動き全体が人の受け止めに関係することを示す結果です。表情を変えた動画を使う方法は、外見上の動きと印象の関係を取り出して見るための工夫です。
この研究の評価対象は第一印象です。実際に誰が採用されたかを追う方法ではなく、映像を見た観察者がその人物をどう受け取ったかを測っています。[2] 第一印象には、まだ詳しく話を聞いていない段階の好ましさも含まれます。そのため、「笑顔がある人を好ましく感じる」という判断と、「質問への回答を高く採点する」という判断では、評価の対象がずれます。
LeVasseur らは、専門家ではない聴き手がさまざまなスピーチを評価するとき、理由として何を書くかを分析しました。聴き手は話の中身より話し方に多く言及し、とくに視線などの個別の非言語の手がかりを挙げていました。[3] 内容分析とは、このような自由な記述を、その中に現れる特徴ごとに整理する方法です。視線は、聞いた後に感想を述べる際にも取り上げられやすい要素でした。
ただし、「評価の理由に多く書かれる」と「点を最も強く決める」は異なる読み方です。この結果の中心は、聴き手が説明の中で何に注目したかにあります。[3] 話し方へのコメントが目立つとき、それをそのまま採点の重みの順番に置き換えると、感想の言葉と点の仕組みを混ぜることになります。顔の動きが人目に付きやすいという知見は、内容を評価する作業とは分けて読むことで意味が明確になります。
内容の適切さと、その人らしさを測った研究
Hollandsworth らは、大学で行われた採用面接338件について、採用担当者の評価を分析しました。好ましい採用判断への寄与が最も大きかったのは、答えの内容の適切さ、話の流暢さ、落ち着きでした。[4] 流暢さは、話が途切れず滑らかに進む度合いです。見た目の動きだけではなく、質問に対して何をどう答えたかが評価の中心に入っていた結果と読めます。
これは相関の研究であり、特徴と評価がどのように結びついていたかを扱っています。[4] たとえば内容の適切さと判断の関係が強くても、視線を一定に保ったまま回答だけを書き換えて試した実験とは異なります。説明の中身、話す様子、落ち着いた印象が同時に現れている場面では、その結びつきをほどいて読む必要があります。この方法の違いを押さえると、視線を変えた映像の実験と結果を比べやすくなります。
Liou らが調べたのは、録画した模擬の採用面接における「真正さ」、つまりその人らしく見える度合いです。面接官が評価した真正さは、話す語数や速さなど言葉の特徴と関係していましたが、非言語や声の特徴との関係は見つかりませんでした。[5] 好ましさを測った実験とは異なる結果であり、表情から得られる手がかりが、どんな評価にも同じように結びつくわけではないことを示しています。何を高く評価したのかによって、着目する特徴も変わります。
「好ましい人に見える」と「その人らしく見える」は、日常の会話では近い褒め言葉に聞こえます。しかし、研究で別の項目として扱われる以上、それぞれの結果を別に読む必要があります。視線が好ましさと関係した結果を、真正さや答えの適切さの証拠として使うと、この違いが消えます。面接で伝わるものには複数の側面があり、目の向きだけにそのすべてを代表させることは適切ではありません。
同じふるまいを同じ意味で受け取るとは限らない
Huang らは、台湾とオーストラリアの医学部の入試面接官125人に、受験者の非言語のふるまいについて質問しました。受け取り方は男女では同じでしたが、国の間では異なり、とくに不安そうに見えるふるまいの解釈に違いがありました。[6] 横断調査という、ある時点で回答を集めて比べる方法による結果です。話し手の動きに固定した意味が付いているというより、受け取る側の解釈も含めて評価が成立していることが見えてきます。
この調査で測ったのは面接官の受け取り方で、受験者の合否への影響ではありません。[6] それでも、視線の意味を考えるうえで大切な区別を与えます。たとえば目が下を向いているという観察と、その人は不安を感じているという解釈は、同じ文に見えて異なる判断です。前者は見えた動きについて述べ、後者はその動きから気持ちを推し量っています。
目を合わせること自体が負担で、目の位置を気にすると話の内容を追いにくい人にとっては、見た目の型を細かく増やす助言は負担にもなります。「相手を見ている」という動作と、「相手の質問を理解している」という状態は別だからです。顔の向きだけから意欲を決めつける見方には、話し手の内側を単純に推測してしまう問題があります。表情が乏しく見えるという感想にも、受け手が期待する顔の動きとの比較が含まれます。
文化による違いを知ることは、特定の国の作法を新しい正解として覚えることとは違います。研究が示したのは受け取り方の差であり、全員に当てはまる顔の動かし方の一覧ではないためです。視線を向け続けるほど関心が伝わるという考えを一律の規則にすると、受け手や場面の違いが取り残されます。人の動きを評価する際には、見えたものと読み取った意味の間に距離があることが重要です。
出願前は面接の形式を具体的にする
ここまでの研究に登場したのは、映像を使う模擬の採用面接、スピーチの聴き手、実際の採用面接、医学部の入試面接官です。それぞれ、映像の条件、感想に現れる語、採用判断との結びつき、ふるまいの解釈を扱っています。研究の対象をそろえて読むと、視線が印象に入ることと、目を見続ける技術が選考全体を左右することの間には隔たりがあります。答えの内容を脇に置いて、目の動きだけで準備の出来を判断する読み方は、この隔たりを飛び越えてしまいます。
出願に結びつく情報は、自分が受ける面接がどの形式で行われるかです。確認する場所は、募集要項と受験案内にある面接の「実施方法」に絞れます。対面かオンラインか、個人か集団かという記載は、受験者がどんな場面で回答するのかを具体的にします。この欄は、研究で使われた条件と、自分が臨む試験の条件を区別するための足場になります。
実施方法の記載が短いと、知らない部分を経験談や一般的な作法で埋めたくなるかもしれません。しかし、形式を表す語から目線の配点を想像することと、公表された実施の形を理解することは別です。個人か集団かがわかった段階では、まず話す場の形がわかったのであり、目を向ける回数まで決まったわけではありません。書かれた内容の範囲を保つことが、過度に細かな作法に振り回されない読み方につながります。
大学の説明会で手元にある案内を読む場面なら、視線の正解を探す前に、実施の形を言葉にする作業ができます。形式が明らかになると、目の向きを気にしていた理由が、画面の映り方なのか、複数の人と話す場への戸惑いなのかも区別しやすくなります。出願までの具体的な行動は、面接の「実施方法」の欄から、対面かオンラインか、個人か集団かを手元のメモに書き出すことです。
よくある質問
有意な差があれば全員の評価が同じように変わったのですか
有意な差は、比べた条件の間に統計上の差があったという意味で、全員に同じ変化があったという意味ではありません。集団としての評価の違いと、個々の話し手が受けた評価の動きは、別の単位の情報です。また、有意かどうかという判断と、差が実際にどれほど大きいかも異なる問題です。個人の点がどれだけ動くかを知るには、集団間に差があるという結果より詳しい情報が必要になります。
表情を変えた動画の研究はAIで受験者を採点したのですか
Renier らの研究でAIを使ったのは、評価される動画に表情を加える段階です。好ましさなどを評価したのは人の観察者であり、機械が受験者の成績を決める方法を調べたものとは異なります。[2] 表情を作る道具と、人物を評価する役割を分けると、研究の仕組みを理解しやすくなります。この結果が扱うのは加工した表情に対する人の反応で、AIによる入試判定の精度とは別の問題です。
古い採用面接の研究を読む意味はありますか
古い研究には、その時代の選考場面で何が評価と結びついていたかを知る意味があります。Hollandsworth らの分析は、答えの適切さや落ち着きが採用判断と結びついていた例として位置づけられます。[4] 新しい映像実験と並べる際には、古いか新しいかだけで順位を付けるより、実際の面接を分析したのか、条件を変えた映像を見せたのかという方法の違いも、結果を読むうえで重要です。
この記事の限界
比較した研究は、視線の向きを変えた小規模な模擬面接から、採用判断の分析や医学部面接官への質問紙まで幅があり、好ましさ、真正さ、ふるまいの解釈という異なる結果を扱っています。古い採用場面の分析も含むため、日本の年内入試における視線の配点や、目を合わせる適切な時間をこれらから決めることはできません。
面接の実施方法は年度ごとに変わるため、最新の募集要項と大学の発表がこの記事の説明に優先します。視線や表情を扱う比較だけでは、個々の出願先や受験上の対応までは決められず、その判断には本人の事情と実際の受験条件が欠かせません。
参考文献
- Shinya ほか. Off-camera gaze decreases evaluation scores in a simulated online job interview. Scientific Reports. 2024;14(1):12056.
- Renier ほか. A deepfake-based study on facial expressiveness and social outcomes. Scientific Reports. 2024;14(1):3642.
- LeVasseur ほか. Speech Delivery versus Speech Content: How Do Non-Expert Audiences Assess Public Speeches? Basic Communication Course Annual. 2025.
- Hollandsworth ほか. Relative Contributions of Verbal, Articulative, and Nonverbal Communication to Employment Decisions in the Job Interview Setting. Personnel Psychology. 1979;32(2):359-367.
- Liou ほか. Comparing behavioral cues of self- versus other-assessed authenticity using automated video interviews. Scientific Reports. 2026;16(1):28847.
- Huang ほか. Medical student selection interviews: insights into nonverbal observable communications: a cross-sectional study. Korean Journal of Medical Education. 2025;37(2):153-161.
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よくある質問
有意な差があれば全員の評価が同じように変わったのですか
有意な差は、比べた条件の間に統計上の差があったという意味で、全員に同じ変化があったという意味ではありません。集団としての評価の違いと、個々の話し手が受けた評価の動きは、別の単位の情報です。また、有意かどうかという判断と、差が実際にどれほど大きいかも異なる問題です。個人の点がどれだけ動くかを知るには、集団間に差があるという結果より詳しい情報が必要になります。
表情を変えた動画の研究はAIで受験者を採点したのですか
Renier らの研究でAIを使ったのは、評価される動画に表情を加える段階です。好ましさなどを評価したのは人の観察者であり、機械が受験者の成績を決める方法を調べたものとは異なります。[2] 表情を作る道具と、人物を評価する役割を分けると、研究の仕組みを理解しやすくなります。この結果が扱うのは加工した表情に対する人の反応で、AIによる入試判定の精度とは別の問題です。
古い採用面接の研究を読む意味はありますか
古い研究には、その時代の選考場面で何が評価と結びついていたかを知る意味があります。Hollandsworth らの分析は、答えの適切さや落ち着きが採用判断と結びついていた例として位置づけられます。[4] 新しい映像実験と並べる際には、古いか新しいかだけで順位を付けるより、実際の面接を分析したのか、条件を変えた映像を見せたのかという方法の違いも、結果を読むうえで重要です。