成績に見合う大学より上を年内入試で狙うか|学力と進学先の釣り合いの研究
模試の返却日に志望校の判定を見て、年内入試で今の成績より上を狙っても入学後についていけるか、迷う人がいます。上を狙うかは、今の成績だけで決めず、入学までの準備と大学で学び続けるための支援を含めて判断するのがよいでしょう。入れそうな大学を選ぶ気持ちにも、学びたい大学に挑みたい気持ちにも、それぞれ理由があります。そこで考えたいのは、入学の可能性だけでなく、入ってから何を学び、どこで助けを得ながら卒業に向かうかという時間の長い問いです。
- 総合型選抜や学校推薦型選抜の募集要項を読むとき、出願資格の評定の基準は、まず応募の条件を判断するための欄です。
- Kangらは米国の全国追跡調査を使い、学力に見合う大学より選抜度の低い大学に進んだ学生と、見合う大学に進んだ学生を比べました。
- Shamsuddinは米国の全国データを使い、本人の学力の違いを取り除いたうえで、大学の選抜度と学士号取得の関係を調べました。
- Kurlaenderらは、ある大学群で入学を認めるかどうかの境目にいた学生を比べました。
模試の返却日に志望校の判定を見て、年内入試で今の成績より上を狙っても入学後についていけるか、迷う人がいます。上を狙うかは、今の成績だけで決めず、入学までの準備と大学で学び続けるための支援を含めて判断するのがよいでしょう。入れそうな大学を選ぶ気持ちにも、学びたい大学に挑みたい気持ちにも、それぞれ理由があります。そこで考えたいのは、入学の可能性だけでなく、入ってから何を学び、どこで助けを得ながら卒業に向かうかという時間の長い問いです。
学力と進学先の釣り合いを扱う研究には、成績に見合う水準より選抜度の低い大学に進んだ学生ほど、卒業しにくかったという結果があります。[1][3]一方、似た学力の学生を比べると、選抜度そのものの効果が見られなかった研究もあります。[5]「上なら苦労する」「下なら安心」という見方だけでは、この結果の幅を捉えきれません。募集要項の出願資格から始め、卒業、単位、成績という研究の見ている結果をたどると、志望先について何を調べるべきかが具体的になります。
総合型選抜のチャレンジを出願資格と学びから考える
総合型選抜や学校推薦型選抜の募集要項を読むとき、出願資格の評定の基準は、まず応募の条件を判断するための欄です。そこには、対象とする成績の範囲や教科の指定があるかという読みどころがあります。模試の判定を見て抱いた「自分には高すぎる」という感覚と、要項に書かれた条件が、同じ内容を指しているとは限りません。出願資格の文章は、印象から志望を諦めたり決めたりする前に立ち戻る場所になります。
研究でいう選抜度とは、入学時にどれほど学力などによる選考があるかを表す指標です。Shamsuddinの研究では、入学を認められた学生のSATという米国の進学で使われる試験の平均点を使っていました。[2]ここで比べているのは、学生本人の点だけでなく、進学先に入る学生集団の学力の水準です。その指標を見ているとわかれば、研究の「上の大学」を、特定の大学の教育の良さ全体を表す言葉として読むことも避けられます。
学力に見合うかどうかに注目したKangらの研究は、学生の学力に対して進学先の選抜度が低い場合を取り上げています。[1]この関係は「自分には難しそう」という気分だけで決まるものではなく、本人と進学先の情報を対応させた研究上の捉え方です。要項の入学前課題の欄や大学の学修支援の案内は、そこから自分の進路を考えるときの具体的な材料になります。課題の科目や支援の対象が見えれば、出願の段階で想像していた難しさを、学習内容に沿った形で考えられます。
成績に見合う水準より下なら卒業しやすいのか
Kangらは米国の全国追跡調査を使い、学力に見合う大学より選抜度の低い大学に進んだ学生と、見合う大学に進んだ学生を比べました。前者では、4年以内にも6年以内にも、学士号を取る見込みが低くなっていました。[1]学士号とは、大学の所定の課程を修了して得る学位です。入学時の難しさを抑えた選択と、その後の課程を終えやすいことが、単純には重ならない結果でした。
この研究で見られた差は、ヒスパニック系の学生で最も大きいものでした。[1]全体の傾向に加え、どの集団で差が大きかったかを示している点にも意味があります。ただし、この研究は実際の進路を追った観察データによる相関、つまり二つの事柄の結びつきを調べたものです。進学先を選んだ理由そのものが卒業にも響いている可能性が残るため、選抜度を下げた行為が卒業を難しくしたという因果の証明としては扱えません。
Cookらは、異なる時期に入学した米国の学生について、同様の関係が続いているかを全国データで検討しました。どの世代でも、学力より下の大学に進んだ学生は、見合う大学や上の大学に進んだ学生より卒業しにくい傾向でした。[3]学力や属性をそろえた比較でも、この結びつきが見られています。さらに、学力より上の大学に進んだ学生の卒業の見込みは時代とともに高まっており、進学時の釣り合いとその後の結果の関係を、時期も含めて見る必要があるとわかります。
選抜度の効果は比べ方によって変わる
Shamsuddinは米国の全国データを使い、本人の学力の違いを取り除いたうえで、大学の選抜度と学士号取得の関係を調べました。入学者のSAT平均が100点高い大学ほど、卒業の見込みは13ポイント高いという結果でした。[2]ここでのポイントは、割合どうしの差を表す単位です。これは本人の試験の点を上げた効果ではなく、入学者の平均点で表した大学の選抜度についての推定です。
この分析には、操作変数法という、進学先の選ばれ方に関わる別の情報を使い、もともとの学力などによる偏りを取り除こうとする方法が使われています。[2]似て見える学生を単純に比べるだけでなく、選択の偏りに対処しようとした点が特徴です。その反面、使った情報が方法の前提を満たすかどうかで推定の意味が変わります。数字の大きさを読む際には、どんな比較によってその値が得られたかも一緒に押さえる必要があります。
Heilらは、同じ学力の学生が選抜度の高い大学と低い大学に進んだ場合の卒業を調べています。大学ごとのまとまりを考慮する分析や、似た条件で進学先を選びそうな学生どうしを照合する方法を使うと、選抜度自体には卒業への独立した効果が見られませんでした。[5]選抜度の高い大学に進まなかった学生で、卒業の見込みが下がる証拠も見られていません。選抜度と卒業の結びつきが強く表れる分析もあれば、学生の比較方法を変えると効果が表れない分析もあり、研究を読むときはこの幅が大切になります。
単位を取ること、中退すること、後の収入
Kurlaenderらは、ある大学群で入学を認めるかどうかの境目にいた学生を比べました。確かめたのは、学力より上の大学に入ると苦労するという「ミスマッチ仮説」です。求められる水準の低い大学に進んだ学生は、多くの単位を取っていましたが、成績は高くなっていませんでした。[6]また、上の大学に進んだ学生で中退しやすくなることもなく、「苦労する」という言葉に含まれる結果のうち、どれを見るかで評価が変わっています。
単位は授業を修めた量、成績は学習の評価、中退は在籍を途中で終えることを捉えます。Kurlaenderらの結果では、単位取得の面で見えた差が、成績や中退にも同じ向きで並んだわけではありません。[6]入学後を心配している生徒にとっても、「課題が難しい」「単位が進まない」「卒業まで続けられない」のどこが気になるかで、必要な情報が変わります。研究が何を測ったかを並べると、同じ「進学後の結果」という言葉の中身が見えてきます。
| 研究で見た結果 | 比較の対象 | 主な結果 |
|---|---|---|
| 学士号の取得 [1] | 学力より下の大学と見合う大学に進んだ学生 | 下の大学に進んだ学生は期限内に学位を取りにくい傾向 |
| 単位・成績・中退 [6] | 入学を認める境目にいた学生の進学先 | 水準の低い大学では単位が多い一方、成績は高くならず、上の大学で中退も増えない |
| 後の収入 [4] | 似た大学から入学を認められたり断られたりした学生 | 選抜度の高い大学に進んだ学生の収入は高くない |
Daleらは米国の学生を、入学を認められた大学だけでなく、断られた大学の組み合わせも似ている者どうしで比べました。選抜度の高い大学に進んだ学生の収入は、似た選考結果を持ちながら選抜度の低い大学を選んだ学生より高くありませんでした。[4]家庭の条件が恵まれない学生では、選抜度の高い大学に進む利得が大きいようだという結果もありました。この研究の測定対象は収入であり、卒業や授業での学びを測った結果として加えると、比較する目的がずれてしまいます。
上を狙う理由と支援を利用する条件
Kurlaenderらが比べたのは、入学を認める境目の学生です。[6]この範囲を踏まえると、成績の隔たりが大きい生徒も、すでに授業内容に十分な準備がある生徒も、同じ比較の中に含まれていると考えるのは早計です。出願資格を満たしているかという問いの先に、入学後のどの学習に準備が要るかという問いが残ります。入学前課題の案内は、入試で何を示すかだけでは見えなかった学習内容に目を向ける手掛かりです。
Cookらの研究で学力より上の大学に進んだ学生の卒業の見込みが時代とともに高まったことは、学力と進学先の位置関係だけで結果が固定されていないことを示します。[3]志望先を読む側としては、学修支援の案内を、単に「支援あり」という見出しで終わらせない視点が役立ちます。たとえば基礎科目の学び直しを扱うのか、授業の課題について相談するものなのかで、困りごととの対応が変わります。利用の対象、利用できる時期、申し出る方法といった説明が、支援を自分の学習に結びつける材料になります。
出願資格や入学前課題の欄を読むと、志望を維持するために必要な作業が見えてきます。上を狙う理由が大学の名前だけに偏り、学ぶ内容への関心や準備の見通しが持てない場合は、志望を決める材料を増やす段階です。反対に、今の成績で無理なく届きそうな大学にも、学びたい内容や利用しやすい支援があるなら、その具体的な理由を評価できます。「挑む」か「抑える」かという呼び方より、そこで学ぶ生活をどこまで説明できるかが、候補を比べる軸になります。
出願までにすること
募集要項の出願資格、専願か併願かの条件、入学前課題は、同じ出願先でも違う段階の判断に使う情報です。出願資格は応募する時点、進学の条件は選考後の意思決定、入学前課題はその後の学習につながります。これらを一度に「自分に合うか」と判断すると、満たしている条件と、まだ検討が要る内容が混ざります。次の作業では、要項の文章と自分の予定が対応する形の記録を残します。
- 志望先の募集要項で、評定の基準とその対象範囲を抜き出し、自分の成績のどの部分と照らすかを高校の先生と確かめます。専願か併願かも同じ用紙に記し、その条件を受け入れて出願する意思があるかを書き添えます。条件の読み違いがある箇所は、該当するページと文章を示せる状態にして、判断を持ち越す理由を明らかにします。
- 入学前課題の有無と内容を、要項や入学手続の案内から探し、関連する高校の学習内容に印を付けます。課題が示されている場合は、今の自分が取り組める部分と、復習が必要な部分を短いメモにします。そのメモを普段の学習予定に置き、出願準備と並行して進める内容を決めます。
- 大学が公表する学修支援の欄から、自分が困りそうな学習に対応する支援を選び、利用の条件を記録します。たとえば課題の文章を組み立てる相談を求めているなら、その内容が対象かを確かめるための質問を用意します。名称だけで判断せず、自分が利用する場面を説明できるところまで情報をそろえます。
KangらやCookらの研究が示したのは、学力に見合う水準より下を選んだ学生に、卒業しにくい傾向があったという結果です。[1][3]この傾向を踏まえると、返された成績表の横に置くべきものは、志望を下げる理由だけではありません。準備する内容と学び続ける条件を書いた記録が加わることで、判定を見たときの迷いは、具体的な進路の検討に変わります。
よくある質問
出願資格の評定の扱いが曖昧なときは誰に聞けばよいですか
大学が求める条件の解釈は大学の入試担当部署へ、自分の調査書にどう記載されるかは高校の担当の先生へ尋ねると、質問の行き先を絞れます。たとえば成績を算出する時期について迷うなら、要項の該当箇所と、現在どの時期の成績まで出ているかを伝えます。返答を記録するときは、受けた説明がどの年度、どの選抜方式についてのものかも残すと、後で読み直す際に役立ちます。
入学前課題の詳細が出願前に出ていない場合はどうしますか
案内に詳細の発表時期が書かれていれば、その時期を予定に入れます。出願を決めるために科目や取り組み方を知る必要がある場合は、大学の担当部署に、現時点で案内している範囲を尋ねます。過年度の課題を見つけた際は年度を明記して参考用に保管し、今年度の課題として予定を埋めてしまわず、正式な案内を受け取ってから内容を更新します。
保護者と本人で挑戦への考えが合わないときはどう話せばよいですか
「高すぎる」「行きたい」という言葉の理由を、学ぶ内容、卒業までの負担、入学後の生活などの項目にして持ち寄る方法があります。相手の希望をすぐ評価せず、何が心配で、何が魅力なのかを同じ項目の下に書くと、話し合っている対象が明確になります。意見が残った箇所は、その場で結論を急がず、高校の先生に両方の理由を伝えて相談する議題にできます。
この記事の限界
比較に使われた学力の指標や学生の選び方は研究ごとに違い、米国の進学と卒業を扱う研究を中心とした結果から、日本の年内入試の方式ごとの効果や、個人が授業についていけるかを直接判断することはできません。とくに入学の境目にいた学生の結果と、学生全体の傾向では、読み取る範囲に幅があります。大学の支援の充実度や本人の準備を同じ尺度でそろえた比較でもないため、志望先を選ぶ際には具体的な学習条件を補って考える必要があります。出願資格や入学前課題は年度ごとに変わるため、出願する年度の募集要項と大学の発表を優先し、研究は進路を検討するための材料として使います。
参考文献
- Kang ほか. College undermatching, bachelor’s degree attainment, and minority students. Journal of Diversity in Higher Education. 2021;14(2):264-277.
- Shamsuddin. Berkeley or Bust? Estimating the Causal Effect of College Selectivity on Bachelor’s Degree Completion. Research in Higher Education. 2016;57(7):795-822.
- Cook ほか. Margins that Matter: Exploring the Association Between Academic Match and Bachelor’s Degree Completion Over Time. Research in Higher Education. 2022;63(4):672-712.
- Dale ほか. Estimating the Payoff to Attending a More Selective College: An Application of Selection on Observables and Unobservables. The Quarterly Journal of Economics. 2002;117(4):1491-1527.
- Heil ほか. College Selectivity and Degree Completion. American Educational Research Journal. 2014;51(5):913-935.
- Kurlaender ほか. Mismatch and the Paternalistic Justification for Selective College Admissions. Sociology of Education. 2013;86(4):294-310.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
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よくある質問
出願資格の評定の扱いが曖昧なときは誰に聞けばよいですか
大学が求める条件の解釈は大学の入試担当部署へ、自分の調査書にどう記載されるかは高校の担当の先生へ尋ねると、質問の行き先を絞れます。たとえば成績を算出する時期について迷うなら、要項の該当箇所と、現在どの時期の成績まで出ているかを伝えます。返答を記録するときは、受けた説明がどの年度、どの選抜方式についてのものかも残すと、後で読み直す際に役立ちます。
入学前課題の詳細が出願前に出ていない場合はどうしますか
案内に詳細の発表時期が書かれていれば、その時期を予定に入れます。出願を決めるために科目や取り組み方を知る必要がある場合は、大学の担当部署に、現時点で案内している範囲を尋ねます。過年度の課題を見つけた際は年度を明記して参考用に保管し、今年度の課題として予定を埋めてしまわず、正式な案内を受け取ってから内容を更新します。
保護者と本人で挑戦への考えが合わないときはどう話せばよいですか
「高すぎる」「行きたい」という言葉の理由を、学ぶ内容、卒業までの負担、入学後の生活などの項目にして持ち寄る方法があります。相手の希望をすぐ評価せず、何が心配で、何が魅力なのかを同じ項目の下に書くと、話し合っている対象が明確になります。意見が残った箇所は、その場で結論を急がず、高校の先生に両方の理由を伝えて相談する議題にできます。