高校での短期留学は大学の出願の前に何を変えるか|留学経験と異文化に向き合う力の研究
短期留学に参加すると異文化への向き合い方が変わり、大学の出願書類にも書ける経験になるのかが気になります。高校での短期留学は異文化に向き合う力を変える機会になり、出願に向けては滞在した事実より、何に向き合い、どう考えが変わったかを言葉にすることが大切です。夏休みの予定を考えるときも、行き先の魅力とともに、現地で誰と何を話し、自分の関心をどう確かめたいかが計画の軸になります。高校段階の生徒を追った研究では、留学後の変化に加えて、出発前の状態や現地の人との交流が関わっていました。[1]
- 募集要項で海外経験に関わる記述を読むときは、その記述が置かれた欄に意味があります。
- 高校段階の生徒を追った研究では、短期留学をした群は、しなかった群より異文化に向き合う力が伸びていました。
- 留学後に意欲が高い学生を見て、留学が意欲を高めたと考える前に、出発前の状態を見る必要があります。
- 大学在学中の留学を扱った大規模な研究には、35の大学の221,981人の記録を使ったものがあります。
短期留学に参加すると異文化への向き合い方が変わり、大学の出願書類にも書ける経験になるのかが気になります。高校での短期留学は異文化に向き合う力を変える機会になり、出願に向けては滞在した事実より、何に向き合い、どう考えが変わったかを言葉にすることが大切です。夏休みの予定を考えるときも、行き先の魅力とともに、現地で誰と何を話し、自分の関心をどう確かめたいかが計画の軸になります。高校段階の生徒を追った研究では、留学後の変化に加えて、出発前の状態や現地の人との交流が関わっていました。[1]
研究を読むと、留学後に成長が見られたという結果と、参加する学生は出発前から特徴が違っていたという結果が並びます。[1][4]そのため、帰国後の感想だけでなく、出発前の自分との比較にも目を向ける必要があります。ここで取り上げる研究は出願書類での読まれ方を直接調べておらず、留学経験に対する入試の点を示すものではありません。高校生を対象にしたものは最初の研究だけで、ほかは大学生の研究として読み、学びの変化を考える材料にします。
総合型選抜で留学経験を書く欄は何を求めているか
募集要項で海外経験に関わる記述を読むときは、その記述が置かれた欄に意味があります。出願資格の「海外での学習歴」は、その選抜に出願する条件を示す箇所です。一方、活動報告書に活動の内容を記す欄があれば、そこで求められるのは何に参加して何をしたかという経験の説明であり、志望理由書で学びたい内容を尋ねられれば、その経験から生じた関心とのつながりが話題になります。留学という同じ言葉があっても、条件の確認、活動の記録、志望の説明では、書く情報の役割が変わります。
高校段階を扱った研究では、留学した生徒と留学しなかった生徒について、出発前から帰国後、その後の時期まで異文化に向き合う力を測っています。[1]研究が見ているのは、海外にいたという経歴だけではなく、時間を通してどんな変化があったかです。活動報告の内容を考える際にも、この視点から、経験した出来事と自分の受け止め方を分けて捉えられます。たとえば話が通じなかった出来事には、言葉を知らなかった場合と、同じ言葉でも前提の捉え方が違った場合があり、振り返る内容も変わります。
異文化への感受性を調べた米国の学生の研究は、他の文化への向き合い方を質問紙で捉え、留学前後に伸びうることを示しました。[2]感受性とは、ここでは自分と違う文化の見方に気づき、それを受け止める姿勢として考えられます。外国語を滑らかに話せたかという感想だけでは、こうした変化を十分に表せません。書類の設問が経験からの学びを尋ねる場合には、相手の説明を受けて見直した思い込みなども、内容を組み立てる手掛かりになります。
高校段階の研究が示した交流の中身
高校段階の生徒を追った研究では、短期留学をした群は、しなかった群より異文化に向き合う力が伸びていました。[1]その変化は帰国直後だけでなく、しばらく後にも見られました。参加した生徒の帰国直後の満足感だけを尋ねたものより、時間の経過と比較する相手の両方がある点で、変化の読み方を深められる研究です。ただし、生徒をくじ引きのように無作為に振り分けた実験ではなく、留学に参加する生徒のもともとの特徴が結果に関わる余地があります。
この研究で力を大きく左右したのは、出発前の状態、滞在の長さ、現地の人との交流の量、現地の言葉をふだん使ったかでした。[1]同じ短期留学という名称でも、現地で接する相手や言葉を使う機会が違えば、経験の中身は変わります。予定表に活動名が並んでいることと、本人がその活動の中でやり取りをすることは、同じ情報ではありません。参加の説明に交流の機会が書かれている場合には、話を聞く時間、質問する時間、一緒に取り組む時間のように中身を読み取る視点が持てます。
米国の学生を対象に、教員が引率する短期留学の前後を質問紙で比べた研究でも、異文化への感受性全体が伸びうるという予備的な結果がありました。[2]ただし、伸び方には個人差がありました。これは同じ企画への参加者でも、帰国後に語る変化が一様ではないことを考える手掛かりです。高校段階の研究が交流や出発前の状態に目を向けた点と合わせると、参加者全員が同じ成長の言葉を借りるより、自分が経験したやり取りを捉える方向が見えてきます。[1][2]
帰国後の変化には出発前の違いも関わる
留学後に意欲が高い学生を見て、留学が意欲を高めたと考える前に、出発前の状態を見る必要があります。留学に行った145人と行かなかった291人を追った研究では、もともと内発的な意欲が高く、心の健康がよい学生ほど留学に行きやすい傾向がありました。[4]内発的な意欲とは、周囲から求められたからではなく、自分が知りたい、やってみたいという気持ちから取り組む意欲です。この研究では意欲や学業、心の健康、振り返りなどを追いましたが、留学によって調べた項目が変わったという証拠は見られませんでした。[4]
この結果と高校段階の研究を並べる際は、何を測ったかを揃えて読むことが大切です。[1][4]異文化に向き合う力が伸びたという結果から、勉強への意欲や心の状態まで一斉に変わると広げると、測定した内容を超えてしまいます。逆に、意欲などに変化が見られなかった結果だけで、現地でのやり取りが持つ意味をすべて打ち消すことにもなりません。比べる対象と測る内容を表に置くと、それぞれの結果が答えている問いを捉えやすくなります。
| 研究で比べたもの | 見られた結果 | 読むときの焦点 |
|---|---|---|
| 高校段階の留学した生徒としなかった生徒 | 異文化に向き合う力が帰国後とその後に伸びた [1] | 出発前の状態や交流の量も関わる |
| 米国の学生の留学前と帰国後 | 異文化への感受性が伸びうる結果だった [2] | 予備的な研究で、伸び方に個人差がある |
| 留学した145人としなかった291人 | 出発前の意欲などに違いがあり、留学による変化の証拠は見られなかった [4] | 参加後の特徴を参加の効果と即断しない |
| 海外経験のある学生とない学生 | 海外に行ったかどうかだけでは差が見られなかった [6] | 滞在の長さを組み合わせると差が見えた |
大学での成績や卒業との結びつきは慎重に読む
大学在学中の留学を扱った大規模な研究には、35の大学の221,981人の記録を使ったものがあります。[3]このうち留学した学生は30,549人で、研究では似た条件の留学しなかった学生と照合し、卒業や成績を比べました。留学した学生は、期限内の卒業と卒業時の成績が高いという結果でした。留学が学業を中断する経験になるのかと考えるうえでは、少なくとも期限どおりの卒業を妨げる結果ではなかった点が参考になります。[3]
照合とは、記録にある条件が似ている人どうしを組み合わせて比較する方法です。人数が多くても、記録に表れていない意欲などの違いまで消えるわけではなく、この研究にもその課題があります。[3]結果を読むときの主語は、大学在学中に留学した学生です。高校での短期留学を経験した人の、その後の大学での成績を追った結果として読むと、留学した時期と調べた対象が入れ替わってしまいます。
二年制の大学の学生を調べた研究では、分析の方法を変えると見え方が変わりました。[5]条件の似た学生どうしを照合する方法では、留学した学生の成績や取った単位がよく見えましたが、留学前後の変化を比べる方法ではその差が消えました。著者は、もともと留学する学生が違うことを、照合だけでは取り除けていなかったと捉えています。留学が学業を損なうようにも見えなかったため、この結果は単純な成功談にも、留学を避ける理由にも置き換えず、比較の方法に左右される結果として読む必要があります。[5]
大きな変化を感じない人は何を捉えるか
海外経験のある学生とない学生の異文化に向き合う力を比べた研究では、海外に行ったかどうかだけでは差が見られませんでした。[6]滞在の長さと組み合わせると差が見え、長く滞在した学生で高い力が見られました。ただし、これは同じ学生の出発前と帰国後を追ったものではなく、ある時点で学生どうしを比べた結果です。長く滞在すれば誰もが同じ変化を得るという読み方より、海外経験の有無だけでは経験の条件を捉えきれないことに目を向けられます。
前後を比べた米国の学生の研究でも、異文化への感受性の伸び方には個人差がありました。[2]帰国しても性格が変わった感じがしない人は、「自分は大きく変わった」と書くより、特定の出来事に対する見方に焦点を絞れます。たとえば、相手の沈黙を最初は拒否と受け取り、事情を聞いて解釈を改めたなら、述べられるのはそのやり取りを通じた理解です。国全体の人柄を知ったと広げるより、どの場面で何を知ったかを限定するほうが、自分が実際に経験した範囲を説明できます。
活動報告書が成果や学んだことを求める場合も、成功した話だけを探す必要はありません。言いたいことを伝えられなかった、相手の意図を読み違えたという出来事から、何が不足していたかを具体化する書き方があります。志望理由書で今後の学びを尋ねられるなら、その不足がどんな関心につながったかまでが説明の対象になります。留学を予定している段階の人は、終了済みの活動を書く欄に、まだ経験していない成果を混ぜず、様式が予定の記載を認めるかを基準に扱います。
出願までにすること
高校段階の研究は出発前の状態と帰国後の変化を追い、交流の量や言葉の使用にも目を向けていました。[1]この見方を自分の準備に生かすなら、参加証明を手元に置くだけでなく、経験の前後をたどれる材料を作ることが役立ちます。以下は研究で効果を試した書類作成法ではなく、募集要項の欄と自分の記録を対応させるための手順です。
- 出願資格の「海外での学習歴」の扱いを確認し、自分の在籍形態や期間が記述に当てはまるかを照らします。判断がわかれる文言は、該当箇所と自分の状況を組にして、大学が示す照会先へ確認します。回答を受けたら、その日付と対象の選抜を控え、活動の魅力とは切り離して資格の確認を終えます。
- 手元のメモや課題から、考えが動いたやり取りを選び、出発前の予想、実際の出来事、帰国後の捉え方を並べます。会話の言葉を正確に覚えていない部分は引用の形にせず、自分の記憶の範囲で要旨を記します。参加前なら最初に予想を残し、帰国後に同じ項目を読み返せる形を作ります。
- 活動報告書と志望理由書の設問を見て、作った記録のどの部分が答えになるかを割り当てます。記入欄の役割に合わせ、活動の説明には担当したことを、志望の説明にはそこから生じた学問への関心を置きます。完成した文と元の記録を照らし、経験した事実に自分の解釈を足しすぎていないかを点検します。
この手順で書類に残すのは、海外に行った印象だけでなく、設問に沿って説明できる本人の経験です。生徒にとっては、留学で気づいたことを大学で考え続けるための足場になります。保護者にとっては、経験の立派さを先に決めず、本人がどこに関心を持ったかを受け止める材料になります。
よくある質問
留学先でもらった証明書は翻訳して添付するのですか
添付する書類の種類、使用言語、翻訳の要否は、提出書類の一覧と注意事項に従います。原本、写し、翻訳者の表示などの指定がある場合は、その形式に合わせて用意する必要があります。英文の証明書ならそのままでよいと自己判断せず、不明な点は証明書の言語と種類を示して大学に確認し、発行元への依頼に必要な時間も見込んで準備します。
帰国が書類の提出後になるときはどうしますか
留学の成果を提出後に追加できるかは、追加資料や書類の差し替えに関する案内で扱いを確かめます。面接が後の日程でも、そこで資料を渡せるとは考えず、持参物と提出方法の指定に従います。証明書の発行が帰国後になる場合は、提出期限と発行予定を大学に伝えて扱いを確かめ、変更や追加を認める回答があった場合にその方法で準備します。
留学中に欠いた授業や単位の扱いは誰に聞きますか
高校の授業への出席や単位、学習の補い方は、在籍する高校の担当教員に相談する内容です。留学の企画に参加できることだけで高校の学習上の扱いまで決まると考えず、出発前に日程と学習内容を示して相談します。調査書の作成時期にかかる場合には、留学中の学習を示す書類が必要か、その書類を誰へいつ渡すかまで学校側と具体的に揃えておくと、帰国後の手続きが見通せます。
この記事の限界
適用範囲は、短期留学と異文化に向き合う力、大学在学中の留学と学業の関係を扱った研究であり、高校生の経験を日本の総合型選抜でどう評価するかを測った結果は含みません。研究によって参加者の教育段階、測る内容、留学前後を追うか一時点で比べるかが違い、同じ「留学の効果」という言葉だけで結果を揃えることには限界があります。特に、参加前の意欲や経験の差が残る比較から、自分にも同じ変化が起きると見積もることは避ける必要があります。出願資格と提出書類の判断には、受験する年度の募集要項と大学の発表を優先し、研究は自分の学びを振り返るための材料として用います。
参考文献
- Heinzmann ほか. The effect of study abroad on intercultural competence: Results from a longitudinal quasi-experimental study. Frontiers: The Interdisciplinary Journal of Study Abroad. 2015;26(1):187-208.
- Anderson ほか. Short-term study abroad and intercultural sensitivity: A pilot study. International Journal of Intercultural Relations. 2006;30(4):457-469.
- Bhatt ほか. Education Abroad and College Completion. Research in Higher Education. 2022;63(6):987-1014.
- Nissen ほか. Selection and socialization effects of studying abroad. Journal of Personality. 2022;90(6):1021-1038.
- Whatley. A Quasi-Experimental Approach to Understanding Study Abroad’s Impact on Academic Success Among Community College Students. The Journal of Higher Education. 2023;94(4):498-525.
- Behrnd ほか. Intercultural competence and training outcomes of students with experiences abroad. International Journal of Intercultural Relations. 2012;36(2):213-223.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
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よくある質問
留学先でもらった証明書は翻訳して添付するのですか
添付する書類の種類、使用言語、翻訳の要否は、提出書類の一覧と注意事項に従います。原本、写し、翻訳者の表示などの指定がある場合は、その形式に合わせて用意する必要があります。英文の証明書ならそのままでよいと自己判断せず、不明な点は証明書の言語と種類を示して大学に確認し、発行元への依頼に必要な時間も見込んで準備します。
帰国が書類の提出後になるときはどうしますか
留学の成果を提出後に追加できるかは、追加資料や書類の差し替えに関する案内で扱いを確かめます。面接が後の日程でも、そこで資料を渡せるとは考えず、持参物と提出方法の指定に従います。証明書の発行が帰国後になる場合は、提出期限と発行予定を大学に伝えて扱いを確かめ、変更や追加を認める回答があった場合にその方法で準備します。
留学中に欠いた授業や単位の扱いは誰に聞きますか
高校の授業への出席や単位、学習の補い方は、在籍する高校の担当教員に相談する内容です。留学の企画に参加できることだけで高校の学習上の扱いまで決まると考えず、出発前に日程と学習内容を示して相談します。調査書の作成時期にかかる場合には、留学中の学習を示す書類が必要か、その書類を誰へいつ渡すかまで学校側と具体的に揃えておくと、帰国後の手続きが見通せます。