総合型選抜のポートフォリオは何を見せる書類か|作品集による評価の研究
募集要項の提出資料に「ポートフォリオ」とあると、完成した作品を並べるのか、活動の途中の記録まで入れるのか迷います。量や見栄えを競うより、作品や活動を選んだ理由と、そこから何を学んだかが伝わる書類にすることが大切です。ポートフォリオは、作品や活動の記録を束ね、取り組みの内容を読み手に示す書類です。文化祭で制作した展示を例にすると、完成写真は仕上がりを伝えますが、材料を選び直した理由や表現を変えた経緯は写真だけでは伝わりにくい部分です。提出の条件に沿って、成果とその意味を結びつける必要があります。
- 募集要項では、ポートフォリオという名称だけでなく、「提出資料」の欄に書かれた対象と形式を読む必要があります。
- Driessenらの研究は、通常つけられた評価の点がポートフォリオのどんな質と結びつくかを調べています。
- アイルランドの美術大学を扱ったO'Donoghueの研究は、入学時の作品集の点と高校卒業試験の成績を、その後の成績と照らし合わせました。
- Reesらの研究は、基準を使った評価が一定程度そろうことを示す一方、総点の一致と項目ごとの一致に差があることも示しました。
募集要項の提出資料に「ポートフォリオ」とあると、完成した作品を並べるのか、活動の途中の記録まで入れるのか迷います。量や見栄えを競うより、作品や活動を選んだ理由と、そこから何を学んだかが伝わる書類にすることが大切です。ポートフォリオは、作品や活動の記録を束ね、取り組みの内容を読み手に示す書類です。文化祭で制作した展示を例にすると、完成写真は仕上がりを伝えますが、材料を選び直した理由や表現を変えた経緯は写真だけでは伝わりにくい部分です。提出の条件に沿って、成果とその意味を結びつける必要があります。
研究には、作品集を使うことで学びの内容を評価できた例と、読み手による点のぶれが大きかった例があります。医学教育のポートフォリオでは振り返りの質が評価と強く結びつき、美術の入学選考では作品集の点と入学後の成績に関係が見られました。[1][3]一方、評価基準を用意しても判断が十分そろわない研究があり、書類の厚さから評価の確かさを判断することはできません。[5]準備では、どんな資料を求められているかと、その資料で何を伝えたいかを対応させることが出発点になります。
総合型選抜のポートフォリオは提出条件から読む
募集要項では、ポートフォリオという名称だけでなく、「提出資料」の欄に書かれた対象と形式を読む必要があります。作品の完成形を求める指示と、制作過程や活動の振り返りも求める指示では、載せる情報の組み合わせが変わります。紙か電子か、枚数や作品の点数に上限があるか、振り返りの文章を添えるかは、それぞれ確かめる項目です。表紙や説明のページが枚数に含まれるかという記載も、手元の資料が指定された範囲に収まるかを考える材料になります。名称が同じでも、提出先の指示に沿って中身を組む書類として捉えると、必要な作業を絞れます。
医学部生の意思疎通の技能を扱ったReesらの研究では、基準に沿って複数の読み手がポートフォリオを独立に評価しました。総点での評価者どうしの一致を表す値は0.771でしたが、項目ごとの一致にはばらつきがありました。[2]ここでいう一致は、読み手が同じ作品集にどの程度そろった評価をつけるかという意味です。書類を束ねただけで自動的に評価が定まるのではなく、何を評価する基準なのかが点の読み方に関わります。[2]
Driessenらが調べたのは、医学部生が自分の成長を振り返るために作ったポートフォリオでした。そこで評価と最も強く結びついたのは振り返りの質で、文体や見た目の配置の影響はわずかでした。[1]この結果を出願準備の手掛かりにするなら、まず提出資料の説明に「学んだこと」「制作意図」などの要求があるかを読むことになります。装飾の完成度に目を奪われる前に、文章が担う役割を指定から捉える、という読み方です。
| 要項で読む項目 | 書類づくりに関わる内容 |
|---|---|
| 提出する資料の種類 | 完成作品、過程の記録、活動の説明のどれを求めるか |
| 紙・電子などの形式 | 印刷して読む資料か、画面で開く資料か |
| 枚数・点数の上限 | 説明文と作品のために使える範囲 |
| 振り返りの文の要否 | 選んだ理由や学びを文章で示す必要があるか |
| 返却の有無 | 原物を提出した後に手元へ戻る扱いか |
振り返りは作品に添える感想だけではない
Driessenらの研究は、通常つけられた評価の点がポートフォリオのどんな質と結びつくかを調べています。最もよく説明したのは振り返りの質で、評価のばらつきについて説明できた割合は66%でした。[1]ばらつきとは、作品集ごとに点が高かったり低かったりする広がりのことです。この数値は、その評価の違いと振り返りの質がどれほど対応したかを表し、振り返りを長く書いた人がその割合で選ばれるという意味ではありません。研究が捉えたのは、文章の量ではなく、成長を振り返った内容の質でした。[1]
同じ研究では、文体や見た目の配置のような、中身と関係のない要素が評価に与える影響はわずかでした。[1]読みやすい配置には資料を探しやすくする役割がありますが、この結果から注目したいのは、ページを飾ることが評価の中心になっていなかった点です。対象は成長の振り返りを目的とした医学教育の書類であり、作品そのものの表現を審査する美術の作品集とは評価対象が違います。どこまで説明を添えるかは、提出資料に求められる内容と合わせて考える必要があります。
振り返りの文章を組む際は、「苦労した」「成長した」という感想に対応する出来事があるかを見ます。たとえば展示の文字が読みにくかったため配置を変えたなら、当初の意図、気づいた問題、変更した箇所、その後に考えたことをつなげて書けます。変更前後の記録を載せられる形式なら、文章がどの画像を説明するかも示せます。想像した観客の反応を結果として書くのではなく、実際に残っている記録と自分の解釈を対応させる作業です。要項に振り返りの欄があるとき、その欄は作品の説明と学びの説明を結ぶ場所になります。
作品集は入学後の成績をどこまで見通せるか
アイルランドの美術大学を扱ったO'Donoghueの研究は、入学時の作品集の点と高校卒業試験の成績を、その後の成績と照らし合わせました。どちらも入学後の最初の学年の成績を予測しましたが、その強さは大きくありませんでした。[3]作品集の点と高校卒業試験の成績を合わせて説明した成績のばらつきは15.5%で、多くの部分が説明されずに残りました。[3]作品集だけでこの割合を説明したのではなく、学業の成績と組み合わせた結果であることが読みどころです。
この研究の「予測」は、入学前の情報が入学後の成績とどの程度結びついていたかを調べたものです。作品集の点を上げれば、その分だけ入学後の成績が上がるという因果関係を測った実験ではありません。[3]作品集を読むことに手掛かりはあっても、それで将来の学びの全体を見通せるわけではないという、予測の範囲を示しています。書類を作る生徒にとっては、過去の成果を示す資料を、将来の自分の全能力を証明する資料として背負いすぎないための結果でもあります。
Kackovicらは、大学院レベルの美術の課程への応募者8,557人について、選考とその後の芸術面・経済面の実績を照らしました。対象には、入学を認められた人と認められなかった人の両方が含まれています。[6]後の実績を最もよく見分けたのは最初の大まかな一次選考で、面接を重ねる最終選考の上積みは、くじ引きなどの簡単な決め方と比べてわずかでした。[6]細かく審査する段階を増やすことと、後の実績を見分ける力を増やすことが、同じようには進まなかった結果です。作品集の準備で将来性を完璧に示そうとするより、求められた資料が示す現在までの取り組みを明瞭にする、という範囲を考える手掛かりになります。
評価基準があっても読み手の判断はぶれる
Reesらの研究は、基準を使った評価が一定程度そろうことを示す一方、総点の一致と項目ごとの一致に差があることも示しました。[2]信頼性とは、同じものを評価し直したときに同じ結果が得られる度合いです。総点が近くても、どの部分を高く見たかまでそろっているとは限りません。著者らは、評価者が話し合うことで基準の信頼性を高められると述べており、基準の言葉を置くだけでなく、その読み方を共有することにも目を向けています。[2]
Pittsらは、一般診療の指導医を目指す講座の参加者のポートフォリオに、振り返りの書き方の枠組みを与えて評価の信頼性を高めようとしました。しかし、複数の評価者の一致は、合否のような最終判断を安全に下せる水準に届きませんでした。[5]作る側と読む側の関心の違いや、書類の構成と中身のばらつきが影響した可能性が挙げられています。[5]振り返りの欄を埋めれば十分というより、欄に書かれた内容をどう判断するかにも難しさが残る結果です。
米国のある州の数学のポートフォリオを調べたKleinらの研究では、読み手の一致が中くらいにとどまり、同じ生徒の作品集の中でも作品の質が大きくばらついていました。生徒ごとの点として報告するのに十分な信頼性はなく、読み手や作品を増やす対策も運用上は現実的でないとされました。[4]これは、作品を集めることで豊かな情報を得ても、それを安定した点へ変える際には別の作業が必要になることを示します。資料の量、作品間のばらつき、読む人の判断が重なるため、提出物を厚くするだけでは評価の難しさは解けません。[4]
作品そのものが対象なら振り返りだけに寄せない
美術の入学選考を扱った研究では、作品集の点が後の成績の一部を予測していました。[3]これに対して、振り返りの質が評価と強く結びついた研究は、医学部生が成長を振り返るための書類を対象としています。[1]したがって、要項が完成作品の表現や技法を評価対象としているときに、説明文を増やして作品を小さく扱う構成は、求められる材料を見えにくくします。振り返りが役立つという結果は、どの提出形式でも文章を中心にすべきだという意味にはなりません。
学びのために書くことと、最終的な選考の材料として使うことの目的も考える必要があります。Pittsらは、ポートフォリオに学習の資源としての価値がありうる一方、評価の道具としては問題を抱えると結論づけています。[5]本人が何を考え直したかを言葉にする作業には使い道があっても、その文章から読み手が同じ点をつけられるかという課題は残ります。準備のためのノートをそのまま提出用にするのではなく、提出資料の欄で求められる内容を選ぶ場面が生まれるのは、この目的の違いからです。
手元に作品らしい物が少ない場合も、まず要項が求める資料の種類に戻ります。活動の記録も認める記載なら、報告書や制作の途中の記録などが対象に入るかを、その説明に照らして考えられます。作品の種類を指定する記載なら、活動の説明だけで条件を満たすと決めず、指定された資料を用意する必要があります。反対に振り返りを求める欄があるのに完成画像だけを置くと、学びを説明する部分が空いたままになります。得意な見せ方に書類全体を寄せる前に、各欄が要求する情報を過不足なく扱うことが大切です。
出願までにすること
基準に沿って読むことで評価がそろった研究がある一方、書き方の枠組みを与えても最終判断に必要な一致に届かない研究もありました。[2][5]出願準備で扱えるのは、読む側の点のつけ方そのものではなく、指定された条件の下で判断の材料を明確に示す部分です。作品を選ぶ、説明を整える、提出するという作業を、次の順に実物で点検すると進めやすくなります。
- 提出条件を点検用の紙に転記し、完成予定の資料と照合します。紙・電子の形式、ファイルの大きさ、枚数と点数の上限、振り返りの文の要否、返却の扱いをそれぞれ書き出します。条件ごとに募集要項の該当ページも控え、複数の説明がある箇所は関係する記述を一緒に残します。
- 採用する資料ごとに、読み手へ伝えたいことと、それを示す箇所を対応させます。選んだ理由に見合う作品や記録が載っているか、振り返りで挙げた変化を資料のどこから読めるかを指でたどります。共同で作った物を扱うなら、自分が担当した部分と説明の範囲も一致させ、作品全体の紹介に自分の作業が埋もれない形にします。
- 提出する状態の見本を作り、資料の欠落と読めない箇所を点検します。電子なら実際に送るファイルを開き、紙なら印刷した物で、画像、説明文、ページの並びが意図どおりかを見ます。提出後も同じ内容を参照できるよう手元用の控えを残し、原物を送る場合は返却についての記載に沿って保管の段取りを決めます。読む側には、作品の価値だけでなく、作り手が何を選び、どう捉え直したかを判断する材料が届きます。
よくある質問
作品がまだ完成していない段階でも準備を始めてよいですか
制作中の記録を手元に残す作業は、完成を待たずに進められます。途中で選んだ案や変更した理由をその時点で書いておくと、後から完成形だけを見て経緯を思い出す負担を減らせます。ただし、未完成の物を提出対象に含められるかは要項の指定によるため、準備用に保存する記録と提出候補は分けて管理します。結果が出ていない部分には、その時点の状況を記しておきます。
以前の年度の案内を使って作り始めてもよいですか
以前の案内は、どのような準備が必要になりそうか見通すための材料にはなります。まだ当該年度の案内が出ていない間は、元の画像や文章を編集し直せる状態で残しておくと、指定の変更に対応しやすくなります。以前の様式へすべてを固定してしまうより、内容の整理を進めてから当該年度の指示に合わせて配置を決める進め方です。出願に使う様式は、当該年度の案内で確かめます。
提出方法の説明を読んでも判断に迷う場合は誰に聞きますか
提出の扱いについては、募集要項が案内する入試の担当窓口に尋ねるのが基本です。その際は、読んだ資料の名称と該当箇所、迷っている条件を示すと、どの記述についての質問かが伝わります。「この作品で評価されるか」という審査結果の予想ではなく、「この形式は提出対象に含まれるか」という手続き上の点を尋ねます。回答は後で参照できるよう、日時と内容を控えておきます。
この記事の限界
対象は医学教育と小中学校の評価が中心で、入学選考に関する研究は美術の大学と大学院レベルの課程を扱ったものに限られ、日本の総合型選抜のポートフォリオを直接評価した結果ではありません。振り返りの質、評価者の一致、入学後の成績、その後の芸術面・経済面の実績というように測っている内容も異なり、各研究の数値を同じ物差しで比べることには限界があります。これらは書類が評価の材料になる条件を考えるための知見で、個別の作品を提出すべきかという判断の代わりにはなりません。実際の提出では、当該年度の募集要項と大学が示す訂正・補足の案内が優先します。
参考文献
- Driessen ほか. Validity of portfolio assessment: which qualities determine ratings? Medical Education. 2006;40(9):862-866.
- Rees ほか. The reliability of assessment criteria for undergraduate medical students' communication skills portfolios: the Nottingham experience. Medical Education. 2004;38(2):138-144.
- O'Donoghue. Predicting Performance in Art College: How Useful are the Entry Portfolio and Other Variables in Explaining Variance in First Year Marks? International Journal of Art & Design Education. 2009;28(1):82-106.
- Klein ほか. The Realiability of Mathematics Portfolio Scores: Lessons From the Vermont Experience. Applied Measurement in Education. 1995;8(3):243-260.
- Pitts ほか. Enhancing reliability in portfolio assessment: 'shaping' the portfolio. Medical Teacher. 2001;23(4):351-356.
- Kackovic ほか. The promise of potential: A study on the effectiveness of jury selection to a prestigious visual arts program. Kyklos. 2022;75(3):410-435.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
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よくある質問
作品がまだ完成していない段階でも準備を始めてよいですか
制作中の記録を手元に残す作業は、完成を待たずに進められます。途中で選んだ案や変更した理由をその時点で書いておくと、後から完成形だけを見て経緯を思い出す負担を減らせます。ただし、未完成の物を提出対象に含められるかは要項の指定によるため、準備用に保存する記録と提出候補は分けて管理します。結果が出ていない部分には、その時点の状況を記しておきます。
以前の年度の案内を使って作り始めてもよいですか
以前の案内は、どのような準備が必要になりそうか見通すための材料にはなります。まだ当該年度の案内が出ていない間は、元の画像や文章を編集し直せる状態で残しておくと、指定の変更に対応しやすくなります。以前の様式へすべてを固定してしまうより、内容の整理を進めてから当該年度の指示に合わせて配置を決める進め方です。出願に使う様式は、当該年度の案内で確かめます。
提出方法の説明を読んでも判断に迷う場合は誰に聞きますか
提出の扱いについては、募集要項が案内する入試の担当窓口に尋ねるのが基本です。その際は、読んだ資料の名称と該当箇所、迷っている条件を示すと、どの記述についての質問かが伝わります。「この作品で評価されるか」という審査結果の予想ではなく、「この形式は提出対象に含まれるか」という手続き上の点を尋ねます。回答は後で参照できるよう、日時と内容を控えておきます。