将来の夢が決まっていなくても大学の志望理由は書けるか|進路の未決定の研究
将来の職業を言えないまま、大学の志望理由書を書き始めてよいのか迷う人がいます。職業名が決まっていなくても、その大学で何を学びたいかと、その理由を示す志望理由は書けます。ただし、設問が将来の目標を求めている場合には、現在の関心がどのような方向へ向かっているのかにも答える必要があります。
- 志望理由書という書類名だけでは、求められる答えの範囲は定まりません。
- Duchesne らは、中等学校の半ばから大学 2 年までを追い、進路の迷いの変化を調べました。
- Creed らの研究は、同じ生徒を時間をおいて調べる縦断研究で、8 年生と 10 年生の時点を比べています。
- Baker の研究は、全国を代表する高校生の標本で、適性検査と組み合わせた職業探索のプログラムを評価しています。
将来の職業を言えないまま、大学の志望理由書を書き始めてよいのか迷う人がいます。職業名が決まっていなくても、その大学で何を学びたいかと、その理由を示す志望理由は書けます。ただし、設問が将来の目標を求めている場合には、現在の関心がどのような方向へ向かっているのかにも答える必要があります。
213 人を 5 年間追った研究では、進路の迷いは中程度から始まり、時間とともにわずかに減っていました。[1]進路を決める過程は、ある日を境に迷いがすべてなくなるという形だけでは捉えられません。書類の提出日が近づくと、周りの人が口にする職業名が、完成した将来像に見えることもあります。それでも、本人の関心や学ぶ理由を飛ばして、聞こえのよい職業名を置く必要はありません。
志望理由の材料には、将来の仕事だけでなく、いま気になっている現象や、授業を通してもっと知りたくなった問題も含まれます。たとえば、人の行動に関心があることと、特定の職に就くと決めることの間には、学問を通して考える余地があります。進路の未決定を扱った研究を読みながら、書類の設問が求める内容と、探している途中の自分をどう表すかを考えます。
将来の夢がないときの志望理由書は、設問から読む
志望理由書という書類名だけでは、求められる答えの範囲は定まりません。「本学で学びたいこと」とあれば、学びの内容とその大学を選ぶ理由が中心です。「将来の目標と関連づけて」とあれば、入学後の学びをその先でどう生かしたいかまでが問いに含まれます。同じ文章をどの設問にも当てはめると、関心の説明は詳しくても、肝心の問いに答えていない状態になります。
「将来の目標」は、職業名だけを意味するとは限りません。どのような問題に関わりたいか、どのような知識や方法を身につけたいかという方向も、目標を説明する材料になります。一方、設問が具体的な職業や資格への志望を明示している場合は、その要求を学問への関心だけで置き換えることはできません。募集要項の設問文と記入欄の対応、アドミッション・ポリシーという入学者を受け入れる方針が、文章の範囲を決める手掛かりです。
| 設問にある言葉 | 答えの中心になる内容 | 職業が未定の場合の焦点 |
|---|---|---|
| 本学で学びたいこと | 学ぶ対象や方法と、その理由 | いま関心が向いている問題 |
| 本学を志望する理由 | 本人の関心と教育内容のつながり | なぜその学びの場が必要なのか |
| 将来の目標と関連づけて | 学びをその先で生かす方向 | 関わりたい課題や目指す役割 |
| 特定の職業を志す理由 | その職業を選ぶ理由 | 職業への志望についての現在の考え |
設問に複数の要求があるときは、それぞれに答えが必要です。「学びたいこと」と「志望する理由」が並んでいれば、学問の紹介だけでも、大学への好印象だけでも説明が足りません。大学の方針にある言葉は、本人の考えとの接点を示すための手掛かりであり、そのまま並べれば志望理由になるわけではありません。書類を読む側に必要なのは、大学の案内を知っているという事実に加えて、その内容を選ぶ本人の理由です。
進路の迷いは、時間の中で変わるものとして捉える
Duchesne らは、中等学校の半ばから大学 2 年までを追い、進路の迷いの変化を調べました。対象は 213 人で、追跡期間は 5 年間でした。迷いは中程度から始まってわずかに減少し、その変化は、自分で納得した動機より外から求められた動機のほうがよく予測しました。[1]ここでいう予測とは、測った動機と後の変化の間に関係が見られたという意味です。
この結果で注目したいのは、迷いを一時点の有無だけでなく、時間に沿って測っている点です。高校生の段階で職業が決まっていない状態を、ずっと何も決められない状態と同一視する必要はありません。また、外から求められた動機との関係があったという結果は、周囲が職業を決めてあげればよいという助言にはなりません。研究で扱ったのは迷いの変化であり、本人に代わって志望理由を書く方法ではないからです。[1]
Harper らは、全国の 243 の 4 年制大学に入った 257,813 人について、入学時に専攻を未定と答えることに関係する特徴を調べました。専攻や職業の選択に迷っていると本人が認めることが強い予測要因で、人間関係や環境の特徴も関係していました。[2]この人数は未定の学生だけの人数ではなく、分析の対象全体の人数です。多数の大学で入学時の未定が研究の対象になることからも、職業や専攻の決定が入学前に一律に完了するとは捉えにくく、本人の背景を含めた理解が必要だと読めます。
決まる途中の迷いと、続いている迷いを研究はどう見たか
Creed らの研究は、同じ生徒を時間をおいて調べる縦断研究で、8 年生と 10 年生の時点を比べています。調べた内容には、進路を考える準備の度合い、進路を妨げると感じるもの、迷い、自分なら取り組めるという感覚、自尊心、生活の満足、成績などが含まれます。どちらの時点でも、進路を決めていない生徒は決めている生徒より結果が思わしくありませんでした。[3]未定という言葉だけで安心するのでなく、どのような状態が続いているかにも目を向ける研究です。
一方、両時点の状態を組み合わせると、途中で決まった生徒には問題が目立ちませんでした。2 回とも決めていない生徒の結果は、2 回とも決めている生徒や、途中で決まった生徒より思わしくなかったと報告されています。[3]この比較では、最初の時点の未定をひとまとめにすると見えない経過が表れます。出願時の文章に置き換えて考える際も、現在の結論だけでなく、関心がどこから生まれ、何を考えるようになったのかという経過に意味があります。
たとえば、仕事の名前はまだ選べなくても、当初は商品の見た目に興味があり、いまは人が商品を選ぶ理由に関心が移っている、という説明は成り立ちます。この文章にあるのは、迷っていた時間の長さを正当化する主張ではなく、本人の関心が動いた内容です。逆に、「いろいろ考えたがまだ未定」という記述だけでは、何を考えたかが読み手に届きません。進路を決めたふりをすることなく、自分の理解が変わった部分を文章の材料にするという位置づけです。
探索の取り組みには成果があるが、未定を放置する根拠にはしない
Baker の研究は、全国を代表する高校生の標本で、適性検査と組み合わせた職業探索のプログラムを評価しています。参加によって職業を探す知識が増え、進路の迷いのいくつかの形が減りました。[4]探索とは、仕事や自分の関心について調べ、選択肢を考える取り組みを指します。何も決まっていないという状態にも、選ぶための知識を増やすという取り組み方があります。
ただし、この研究は軍の適性検査を使ったプログラムを扱っており、自由に職業について考えた場合すべての効果を示すものではありません。[4]迷いの一部が減ったという結果を、参加者全員が職業を決めたという意味に広げることも避ける必要があります。文章に書けるのは実際に取り組んだ内容と、そこから生じた自分の考えです。探している姿勢を示すために、まだ行っていない活動を済ませた経験として記すのは、本人の経過を伝えるという目的に反します。
St. John らは、中西部の一つの州の公立大学の学生について、専攻分野と在籍を続けることの関係を調べました。白人の 1 年生では社会科学の専攻と専攻未定の学生が在籍を続ける見込みは低い一方、アフリカ系の 1 年生には分野による有意な差、つまり偶然の変動だけでは説明しにくい差はありませんでした。[5]古いデータによる観察研究で、条件を操作せず実際の学生の状態を調べた結果です。未定であること自体が在籍の中断を引き起こすと読むのではなく、未定の学生についても、学びを続ける見通しを考える必要があるという注意として受け止められます。
関心を学部での学びにつなげる行動は3つ
最初の行動は、職業名の代わりに、関心を持った問いを 1 文で書くことです。「なぜ同じ情報でも人によって受け取り方が変わるのか」のように、知りたい対象が見える形が出発点になります。大きな社会問題を解決すると言い切る必要はなく、身近な疑問にも学びの入口があります。「人に役立ちたい」という願いだけでは対象が広いのに対し、問いがあると、どの部分を知りたいのかを他の人と共有できます。
次の行動は、その問いを扱う授業やゼミが志望学部の公開情報にあるかを確かめて書くことです。授業の内容や進め方を説明するシラバスは、科目名だけでは見えない学びを知る手掛かりになります。同じ「人の行動」でも、実験、聞き取り、歴史的な資料の読み取りなど、扱い方には幅があります。授業名を文章に添えるだけでなく、どの学び方が自分の問いに必要なのかというつながりがあって、学部を選ぶ理由が具体的になります。
最後の行動は、オープンキャンパスで在学生か教員に、その問いを学部でどう学べるかを 1 つ聞くことです。「この問いは、どのような授業や研究の方法で扱いますか」という聞き方なら、仕事の決定を急がずに学びの中身へ進めます。在学生の答えはその人が経験した授業の話として、教員の答えは説明された教育内容として、それぞれ受け取ることになります。期待した内容がその学部には少ないという返答も、進学先との接点を考えるための材料です。
職業名よりも、学ぶ理由の筋道を文章に置く
志望理由の文章には、本人の関心、学部で学ぶ内容、そのつながりが必要です。たとえば「情報の伝わり方が気になる」という関心に対し、「発信する人と受け取る人の考えを調べる方法を学びたい」と続けば、知りたいことと学ぶことの関係が表れます。ここで特定の職業を付け足さなくても、学問を必要とする理由は説明できます。関心を持ったきっかけが本人の経験に結びついていれば、その経験は話を飾るためでなく、なぜその問題を選んだかを伝える役割を持ちます。
職業がすでに決まっている人にとっても、職業名だけで志望理由が完成するわけではありません。目標の仕事に必要だと思う学びと、志望学部の内容との接点が文章の中心になります。一方、関心が複数の領域にまたがる場合は、その間にどのような共通の問題があるかという説明が、単なる分野名の列挙よりも学びたい内容を伝えます。専門用語を多く使うことより、本人の言葉で対象と理由がつながっていることが大切です。
保護者にとって、職業名は将来を思い描くためのわかりやすい手掛かりですが、書類が扱うのは本人の現在の志望です。職業を言えるかだけを基準にすると、すでに具体的になっている学問への関心を見落とすことがあります。研究では、進路の迷いが時間の中で変化することや、職業探索の取り組みによって迷いの一部が減ることが示されています。[1][4]一方、職業未定の志望理由書が日本の年内入試でどう評価されるかは、ここで扱った研究からはわかりません。
よくある質問
「まだ決まっていない」と正直に書いてよいか
未定であることは、その時点の自分の考えとして書けます。ただし、「まだ決まっていない」という表現が、職業を指すのか、学ぶ分野まで指すのかで、文章の意味は大きく変わります。「将来の職業は検討中です」という記述なら、未定の範囲を限定して伝えられます。書類の設問に対する答えが必要な欄なので、未定という言葉だけで説明を終えず、求められた内容を満たすことが前提です。
面接で将来の夢を聞かれたらどう答えるか
提出した書類の時点から考えが変わったなら、その変化を含めて現在の考えを答える形になります。「書類を出した時点ではこう考えていましたが、いまはこの点も考えています」と時点を示すと、変化の経緯が伝わります。仕事について尋ねられた場面では、決定したことと検討していることの確かさをそろえる必要はありません。書類と一字一句同じ言葉を使うことより、本人が現在どこまで考えているかを説明することが中心です。
入学後に専攻を変えられる大学かどうかはどこでわかるか
大学が公表する学則や、学部の履修案内、転学部・転学科の制度の案内が主な手掛かりです。同じ学部内でコースを選ぶ場合と、所属する学部そのものを変える場合では、対象になる制度や手続きの範囲が変わります。制度の記載があっても、変更の時期や条件まで含めて読む必要があります。募集案内に詳しい説明がない場合の窓口は、大学の入試担当や学務を扱う部署です。
この記事の限界
測定されたのは進路の迷い、専攻未定の状態、職業を探す知識、在籍の継続などで、志望理由書の評価そのものではありません。対象は中等学校段階の生徒から大学生に及び、州の公立大学に限った古い観察研究や、特定の適性検査を用いたプログラムも含まれ、日本の年内入試を直接扱った研究は含まれていません。
研究は未定という状態の捉え方を考える材料であり、個別の志望先に出願するかどうかの判断に代わるものではありません。設問や出願条件は年度によって変わるため、書類作成では出願年度の最新の募集要項と大学の発表が、研究よりも優先する根拠になります。
参考文献
- Duchesne ほか. From Secondary School to College: Evolution of Vocational Indecision and Contributions of Motivations in Vocational Decision-Making. International Journal for Educational and Vocational Guidance. 2026;26(2):985-1004.
- Harper ほか. Demographics, Purpose, and Dreams: Predicting Entering College as an Undecided Major Student. NACADA Journal. 2023;43(2):136-145.
- Creed ほか. Antecedents and Consequences of Career Decisional States in Adolescence. Journal of Vocational Behavior. 2005;67(3):397-412.
- Baker. Reducing Adolescent Career Indecision: The ASVAB Career Exploration Program. Career Development Quarterly. 2002;50(4):359-370.
- St. John ほか. What Difference Does a Major Make? The Influence of College Major Field on Persistence by African American and White Students. Research in Higher Education. 2004;45(3):209-232.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒の完全1対1で、総合型選抜は代表の宮川が専任で担当し、ほかの科目は大学教員や東京大学などの大学院生が教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
「まだ決まっていない」と正直に書いてよいか
未定であることは、その時点の自分の考えとして書けます。ただし、「まだ決まっていない」という表現が、職業を指すのか、学ぶ分野まで指すのかで、文章の意味は大きく変わります。「将来の職業は検討中です」という記述なら、未定の範囲を限定して伝えられます。書類の設問に対する答えが必要な欄なので、未定という言葉だけで説明を終えず、求められた内容を満たすことが前提です。
面接で将来の夢を聞かれたらどう答えるか
提出した書類の時点から考えが変わったなら、その変化を含めて現在の考えを答える形になります。「書類を出した時点ではこう考えていましたが、いまはこの点も考えています」と時点を示すと、変化の経緯が伝わります。仕事について尋ねられた場面では、決定したことと検討していることの確かさをそろえる必要はありません。書類と一字一句同じ言葉を使うことより、本人が現在どこまで考えているかを説明することが中心です。
入学後に専攻を変えられる大学かどうかはどこでわかるか
大学が公表する学則や、学部の履修案内、転学部・転学科の制度の案内が主な手掛かりです。同じ学部内でコースを選ぶ場合と、所属する学部そのものを変える場合では、対象になる制度や手続きの範囲が変わります。制度の記載があっても、変更の時期や条件まで含めて読む必要があります。募集案内に詳しい説明がない場合の窓口は、大学の入試担当や学務を扱う部署です。