大学の口コミや評判をどこまで信じて出願先を選ぶか|進学先の情報源の研究
大学の口コミやSNSの評判が食い違うと、どこまで信じて出願先を選べばよいか迷いが生じます。口コミは気になる点を見つける入口にし、出願の条件は募集要項で、学費や卒業後の進路は大学の公表資料で判断するのが基本です。「授業が充実している」という感想には、その人が期待していた内容や学んだ分野も含まれます。評判のよさだけで、自分が学びたいことや通い続ける条件まで満たされるとは決まりません。
- 募集要項は、総合型選抜や学校推薦型選抜に出願するための条件や手続きを読む資料です。
- Simõesらは、ポルトガルの大学に初めて入学する学生1641人を対象に、大学選びで使った情報源と選んだ理由を調べました。
- Leらは、ベトナムで大学を目指す高校生について、大学選びで重く見る点と、人づての情報を含む情報源の使い方を調べました。
- Lundは、米国の図書館情報学の大学院課程について、よく知られた順位表の作り方の弱点を検討しました。
大学の口コミやSNSの評判が食い違うと、どこまで信じて出願先を選べばよいか迷いが生じます。口コミは気になる点を見つける入口にし、出願の条件は募集要項で、学費や卒業後の進路は大学の公表資料で判断するのが基本です。「授業が充実している」という感想には、その人が期待していた内容や学んだ分野も含まれます。評判のよさだけで、自分が学びたいことや通い続ける条件まで満たされるとは決まりません。
保護者会で耳にした「評判のよい大学」という言葉を考えると、就職の話なのか、授業の話なのかによって意味が変わります。生徒は関心のある授業を思い浮かべ、保護者は卒業後の生活を思い浮かべている場合もあります。同じ評価の言葉を使っていても、判断の材料がそろっているとは限らないのです。
進学先の情報源を扱う研究には、大学のウェブサイトの利用や、親・きょうだいから得る情報を調べたものがあります。一方、ここで扱う研究には、大学選びに使うネットの口コミの信頼性を直接調べたものは含まれていません。情報を誰から得るか、その情報が何を説明しているか、本人が何を大切にするかという順序で考えると、評判を出願の判断に結びつけやすくなります。
大学の口コミを読む前に押さえる公表資料の役割
募集要項は、総合型選抜や学校推薦型選抜に出願するための条件や手続きを読む資料です。入学定員の欄では、大学全体、学部・学科、選抜方式のどの範囲を表している数字かが重要になります。学部の入学定員を、その方式で募集する人数として読むと、募集の規模を取り違えます。表の見出しや注記も数字の意味の一部であり、人数だけを抜き出した評判にはその前提が残っていないことがあります。
学費の欄では、何に対する費用か、どの期間の額かという説明が読み取りの中心です。初年度の納付額と授業料だけの額は、含む項目がそろっていないため、そのまま大小を比べる用途には向きません。卒業後の進路も、就職先の例、分野別の人数、進学した人の人数では示している内容が変わります。「就職がよい」という短い評判に対して、公表資料は対象の年度や学部、集計の範囲を伴う材料になります。
情報源の役割を分けると、感想をすべて退けたり、公表された数字だけで学生生活を説明したりする必要がなくなります。大学の資料は制度や集計の内容を、個人の話はその人の経験や受け止めを伝えるものとして位置づけられます。たとえば「相談しやすい」という経験は相談の仕組みそのものに加え、利用した人の感覚を含むため、表のように読み取る対象を分けると意味が明確になります。
| 情報の種類 | 主に読み取れる内容 | 判断に必要な前提 |
|---|---|---|
| 募集要項の入学定員・募集人員 | 学部や方式ごとの募集の枠組み | 対象年度、学部・学科、方式の範囲 |
| 大学が公表する学費 | 費目と支払いの対象期間 | 初年度か継続年度か、含まれる費目 |
| 大学が公表する卒業後の進路 | 卒業した人の進路の内訳や例 | 対象年度、対象者、集計方法 |
| 在学生などの口コミ | 授業や生活についての個人の経験 | 経験した学部・時期・場面 |
| 順位表 | 作成者が選んだ指標による並び | 指標の内容と重み、比較対象 |
よく使われる情報源と選ぶ理由の関係
Simõesらは、ポルトガルの大学に初めて入学する学生1641人を対象に、大学選びで使った情報源と選んだ理由を調べました。多くの学生が、大学のウェブサイトを最もよく使った3つの情報源の一つに挙げています。一方、進学先を選んだ理由で最も重かったのは地理的な近さでした。[1] 情報を得る場所についての回答と、選択を決めた条件についての回答が、それぞれ示されています。
この結果を読む際には、「よく利用された」という言葉の範囲が大切です。大学のウェブサイトを利用したという回答は、そこで授業、費用、立地などの何を重く見たかまで一つに決めるものではありません。また、この調査は入学した後に振り返って答えたものであり、候補を探している途中の考えをその時々に記録したものではありません。[1] 情報源の利用状況を知る資料として読むと、調査が答えた問いがはっきりします。
近さという条件は、評判の高低だけでは表現しにくい生活上の事情を考える手掛かりになります。たとえば、通学に使える時間が限られる人にとっては、関心のある授業があることに加え、日々そこへ通う計画が成り立つことも選択の条件です。自宅からの通学を前提にする人と、住まいを移すことを考える人では、同じ立地の説明から受け取る意味が変わります。これは研究の結果を個人の条件に照らして考える例であり、「評判が高い」という一語に生活の条件まで含めない読み方です。
身近な人の話は内容と経験の範囲が大切
Leらは、ベトナムで大学を目指す高校生について、大学選びで重く見る点と、人づての情報を含む情報源の使い方を調べました。国内外の進学先のどちらを考える層でも、将来の仕事の見通し、教育の質、教員の専門性、授業の内容が大切な点でした。最も影響力のある情報源は親でした。[2] この結果では、学生が重視する内容と、選択に影響する人の存在がともに示されています。
Cejaは、米国の都市の大きな高校に通うメキシコ系の女子の最上級生20人を対象に、親ときょうだいが進学先選びの情報源として果たす役割を調べました。これは、経験の内容や意味を詳しく扱う質的な研究です。親は教育を大切に考えていても、出願手続きには手を貸せないことが多く、その際にはきょうだいが親に代わる情報源になっていました。[3] 教育への関心があることと、手続きについて答えられることの関係を考えさせる結果です。
身近な人からの話にも、進学を応援する言葉、制度についての説明、本人が経験した授業の話など、いくつかの内容が含まれます。たとえば、学ぶことを応援する人が出願書類の細部まで知っている必要はなく、手続きを経験した人の話にも経験した年度や方式という範囲があります。LeらとCejaの研究が扱ったのも、親やきょうだいが情報源としてどう関わるかという問題です。[2][3] 話し手への信頼と、その人が直接知っている内容の範囲を一緒に考えることが、家族の言葉を丁寧に受け取る土台になります。
順位表では本人が大切にする条件が抜けることもある
Lundは、米国の図書館情報学の大学院課程について、よく知られた順位表の作り方の弱点を検討しました。その順位表には、進学を考える人が大切にする学費や修了後の結果などが十分に反映されていないと論じています。研究は、より客観的な順位づけと公開のデータの必要性を指摘しました。[4] 一つの分野の大学院課程を扱った検討であり、順位の数字の背後に何が採用されているかを問う内容です。
順位は複数の候補を並べるための形ですが、その並びには作成者の選んだ評価項目が入っています。重みとは、各項目を最終的な評価にどの程度反映させるかという配分のことです。本人が授業内容を大切にしていても、順位表が主に別の項目で作られているなら、順位の上下だけではその関心に答えられません。学費を含まない表から家計に合う進学先を選ぼうとする場合も、選択に必要な材料が欠けたままになります。
順位表が自分に向かないのは、順位が低い候補を選びたいときだけではありません。通学、学ぶ分野、必要な費用など、動かしにくい条件がある人には、その条件を満たす範囲がまず大切になります。Lundの批判は、進学を考える側にとって重要な項目が順位に十分入っていないという点に向けられています。[4] したがって、順位をそのまま自分向けの推薦順として扱うよりも、その表が取り上げている評価項目を示す情報として受け取る位置づけが適切です。
大学の学生募集という視点も含まれている
Obermeitは、ドイツと米国の大学選びの研究を、選び方の模型、選ぶ基準、情報源という観点から比較しました。複数の研究を集めて論点を整理するレビューであり、新入生の決め方の複雑さと、ドイツの研究に残る3つの空白を指摘しています。情報源を扱う研究の多くは、大学の学生募集の立場から行われていました。[5] 受験生が何に触れて選択するかは、情報を届ける大学の側にも関心のある問題です。
学生募集の立場では、どの情報源が使われるか、どのような特徴が選ぶ理由になるかが重要な問いになります。それに対して、生徒が知りたいのは、その進学先で希望する学びと生活が成り立つかという問いです。たとえば、目に留まった紹介が選択のきっかけになっても、その紹介に本人の必要な条件がすべて含まれるわけではありません。Obermeitのレビューは、大学選びの知見を読むときに、研究がどちらの立場から問われたものかを意識する理由になります。[5]
この視点は、公表資料の中で事実と紹介の言葉を読み分ける際にも役立ちます。「多彩な進路」という紹介文は広がりを伝えますが、進路の内訳の表には対象者や集計の枠組みがあります。「学びを支援する」という説明でも、利用できる仕組みの名称や対象が示されれば、内容を具体的に捉えられます。表現の印象だけで大学全体を評価するより、何を説明するための文章かが見えることで、入学定員・学費・卒業後の進路を読む際の焦点が定まります。
出願に向けて評判を扱う3つの行動
最初の行動は、口コミで気になった点を、募集要項や大学の公表する数字で確かめられるかどうかに分けて書き出すことです。入学定員、学費、卒業後の進路は、大学が出している範囲の資料が対応する項目になります。たとえば「費用が重い」という感想には、納付額の話と、その人の負担感が混ざっているため、前者を公表額に対応させる欄と、後者を残す欄があると整理しやすくなります。ここで作るのは大学の評点ではなく、情報の内容と確かめ方の対応表です。
次の行動は、公表資料では確かめられない点を、オープンキャンパスや説明会で聞く質問に書き直すことです。「面倒見がよいか」という広い言葉なら、「授業でつまずいたとき、学生はどのような場で質問するのか」という仕組みについての質問に変えられます。「授業が楽しいか」という感想なら、関心のある分野でどんな課題や活動に取り組むのかという内容が質問の中心になります。答える人が説明する対象を絞ることで、好みの評価だけで終わらないやりとりを目指せます。
もう一つの行動は、生徒と保護者が選ぶ理由の上位3つを別々に書き、それから見比べることです。片方が授業内容を、もう片方が通学や費用を重く見るなら、同じ評判を聞いても気になる箇所が変わります。会で聞いた話を前に、まず紙に置くのは、それぞれが大学を選ぶ際に大切にしたい条件です。相手に合わせる前の理由を並べるところから、出願先についての話し合いを始めます。
よくある質問
在学生の口コミは何年前のものまで参考になるか
何年前までという一律の期限より、その人が経験した時期と、書かれている事柄の性質が重要です。過去の授業についての感想は当時の経験を伝えますが、施設の利用方法や授業の担当が変われば、今の学生生活を説明する範囲は狭くなります。投稿された日が新しくても、卒業した人が昔の経験を書いている場合には、投稿日時と経験した時期に隔たりがあります。古い記述は当時の様子を知る材料として、新しい記述も特定の場面の経験として位置づけられます。
大学の公式のSNSと口コミはどちらを信じるか
公式のSNSは大学が発信する案内であり、口コミは個人の経験や受け止めを伝えるものです。たとえば行事の開催案内と、参加した人の感想が並んでいても、前者は実施の情報、後者はその人がどう感じたかという情報になります。また、公式の短い投稿にも、詳細を説明する資料への案内という役割があります。入試の日程や提出条件については、短い投稿だけで判断を完結させず、当該年度の募集要項と大学が示す訂正・変更の発表が基準になります。
順位表の順位は総合型選抜の選考に関係するか
順位表は大学や課程を作成者の指標で並べたもので、受験生の書類や面接を採点する基準を示す資料ではありません。総合型選抜の選考内容を説明するのは、対象となる方式の募集要項や大学が公表する評価の観点です。「上位だから面接ではこの答えが必要」といった推測には、順位の情報から評価の中身へ飛躍があります。志望理由を考える際にも、順位の高さへの評価だけでは、その大学で学びたい内容や本人の関心についての説明は埋まりません。
この記事の限界
比較した研究は、ポルトガルの入学者、ベトナムの高校生、米国の特定の背景を持つ生徒や大学院課程などを扱い、対象と問いがそろった一連の検証ではありません。入学後の振り返りや少人数の経験を詳しく扱う方法を含み、日本の年内入試で、口コミを使った出願先選びの結果を直接確かめた研究はここにはありません。
これらの知見は情報源の役割を考える手掛かりであり、特定の投稿の正しさや、一人ひとりの出願先を決定する根拠を提供するものではありません。募集要項は年度ごとに変わるため、個別の出願判断では最新の要項と大学の発表が優先し、本人の希望や生活上の条件も個別の検討を要します。
参考文献
- Simões ほか. Applying to Higher Education: Information Sources and Choice Factors. Studies in Higher Education. 2010;35(4):371-389.
- Le ほか. Understanding High School Students Use of Choice Factors and Word-of-Mouth Information Sources in University Selection. Studies in Higher Education. 2020;45(4):808-818.
- Ceja. Understanding the Role of Parents and Siblings as Information Sources in the College Choice Process of Chicana Students. Journal of College Student Development. 2006;47(1):87-104.
- Lund. University Program Rankings in the United States: Failures in Assessing Important Factors for Library and Information Science Students. Education for Information. 2019;35(4):419-438.
- Obermeit. Students' Choice of Universities in Germany: Structure, Factors and Information Sources Used. Journal of Marketing for Higher Education. 2012.
要項の一文を、あなたの出願書類の一文に変えるところまで付き合う
- 向く人: 要項を読んでも、自分の評定と英検で出せる方式を絞り切れない高校生
- 向く人: 志望理由書と小論文を、出願の数か月前から一対一で書き直していきたい人
- 向かない人: 志望理由書や活動報告書を代わりに書いてほしい人
- 向かない人: 要項を自分で読まずに、受かるかどうかの見込みだけを知りたい人
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よくある質問
在学生の口コミは何年前のものまで参考になるか
何年前までという一律の期限より、その人が経験した時期と、書かれている事柄の性質が重要です。過去の授業についての感想は当時の経験を伝えますが、施設の利用方法や授業の担当が変われば、今の学生生活を説明する範囲は狭くなります。投稿された日が新しくても、卒業した人が昔の経験を書いている場合には、投稿日時と経験した時期に隔たりがあります。古い記述は当時の様子を知る材料として、新しい記述も特定の場面の経験として位置づけられます。
大学の公式のSNSと口コミはどちらを信じるか
公式のSNSは大学が発信する案内であり、口コミは個人の経験や受け止めを伝えるものです。たとえば行事の開催案内と、参加した人の感想が並んでいても、前者は実施の情報、後者はその人がどう感じたかという情報になります。また、公式の短い投稿にも、詳細を説明する資料への案内という役割があります。入試の日程や提出条件については、短い投稿だけで判断を完結させず、当該年度の募集要項と大学が示す訂正・変更の発表が基準になります。
順位表の順位は総合型選抜の選考に関係するか
順位表は大学や課程を作成者の指標で並べたもので、受験生の書類や面接を採点する基準を示す資料ではありません。総合型選抜の選考内容を説明するのは、対象となる方式の募集要項や大学が公表する評価の観点です。「上位だから面接ではこの答えが必要」といった推測には、順位の情報から評価の中身へ飛躍があります。志望理由を考える際にも、順位の高さへの評価だけでは、その大学で学びたい内容や本人の関心についての説明は埋まりません。