想定問答を丸暗記して臨むと面接はどうなるか|面接の準備と指導の研究
想定問答を丸暗記しておけば、年内入試の面接で役に立つのか、それとも準備した感じが強く出るのかと迷うことがあります。準備と面接の成績には結びつきが見られますが、丸暗記の効き目を示す結果とは別であり、準備の中心は話の骨組みに置くのが妥当です。答えを覚えていることと、聞かれた内容に合う説明ができることは、重なる部分があっても同じではありません。総合型選抜や学校推薦型選抜に向けた準備でも、この違いが出発点になります。
- 想定問答は、聞かれそうな質問と答えを組にしたものです。
- Maurerらの研究では、準備と成績をつなぐ部分として答えの整理に目が向けられています。
- 指導に参加すれば、どの面接でも点が高くなるという結果がそろっているわけではありません。
- 丸暗記への心配には、答えの中身よりも、覚えてきたことを聞き手に見抜かれるのではないかという面があります。
想定問答を丸暗記しておけば、年内入試の面接で役に立つのか、それとも準備した感じが強く出るのかと迷うことがあります。準備と面接の成績には結びつきが見られますが、丸暗記の効き目を示す結果とは別であり、準備の中心は話の骨組みに置くのが妥当です。答えを覚えていることと、聞かれた内容に合う説明ができることは、重なる部分があっても同じではありません。総合型選抜や学校推薦型選抜に向けた準備でも、この違いが出発点になります。
冬の朝、想定問答の紙を前にして、昨日と同じ言い回しが出てくるかを確かめる場面を考えてみます。そこで点検しているのは、主に文章を再現できるかどうかです。聞き手が理由を理解できるか、挙げた出来事が結論とつながるかという説明の問題は、別に残ります。
面接指導を受けた人の成績、似た課題を経験した人の成績、準備した発話を聞いた採点者の判断は、それぞれ異なる結果です。それらをすべて暗記の効果として数えると、どの準備を選ぶかが曖昧になります。以下では研究の比較対象を分けながら、要項の評価の観点と準備の内容の関係を考えます。
面接の準備で区別したい文言と骨組み
想定問答は、聞かれそうな質問と答えを組にしたものです。その答えの文章を順番どおりに再現するのが文言の暗記で、結論と理由、具体例の関係を整理するのが骨組みの準備です。前者では、覚えた文章と同じ言葉を出せたかが達成の目印になります。後者では、何を伝え、その根拠としてどの経験を使うかが目印になります。
募集要項の「評価の観点」は、面接で何について判断するかを示す言葉です。「出願書類にもとづいて質問する」という記載は、質問の材料に関する説明です。評価の対象と質問の材料は役割が違い、書類に書いた文章をそのまま話すことが求められているとは限りません。たとえば活動についての記述が材料になる場合でも、その活動を通じた考えを説明することと、記述した文を再現することには違いがあります。
準備という言葉には、指導を受けることから課題を経験することまで含まれます。研究の結果を読む際には、何を準備と呼んでいるかが重要です。以下の表では、比較の違いが見えるように、準備の中身と結果の見方を並べています。
| 準備の中身 | 準備中に扱うもの | 結果を読むときの焦点 |
|---|---|---|
| 文言を覚える | 完成した回答の文章 | 同じ表現を再現すること |
| 話を組み立てる | 結論と理由、経験のつながり | 答えが整理されていること |
| 指導を受ける | 助言や説明、応答の方法 | 参加した人としなかった人の違い |
| 似た課題を経験する | 問いの内容や課題の進み方 | 経験した課題との近さ |
指導と成績を結びつけたのは答えの組み立て
Maurerらの研究では、準備と成績をつなぐ部分として答えの整理に目が向けられています。結論には「この組み立ては面接の成績と正の関係にあった」とあります。[2] これは、組み立てが整っているほど成績も高い傾向だったという意味です。準備した答えを覚えた量が多いほど点が高かった、という結果ではありません。
先行するMaurerらの研究は、警察・消防の昇進選考における状況面接を扱っています。状況面接は、提示された状況にどう対応するかを尋ねる面接です。4職種のうち3職種で、任意の面接指導に参加したことと、面接の成績の高さが結びついていました。分析では、指導前の職務知識と、選考でよい結果を出そうとする意欲の指標を考慮しています。[1]
続く研究の対象は、大都市の警察・消防で昇進を志願した213人でした。面接指導への参加に加え、勉強会や役割演技などの準備も面接の成績と正の関係にありました。役割演技は、面接などの場面の役を演じて応答する準備です。指導と準備は、答えを整理して話す傾向とも結びつき、その整理と成績にも正の関係が見られました。[2]
ここで関係していたのは、参加、準備、答えの組み立て、成績という異なる項目です。相関とは、ある特徴と別の特徴が一緒に変わる関係で、それだけで原因と結果が確定するわけではありません。任意参加の研究では、指導を選ぶ人ともともと選ばない人の違いも関わります。知識と意欲を分析で考慮していても、それ以外の自己選択による偏りが残るため、成績差を指導だけの効果として扱うことはできません。[1][2]
医学部の複数面接では指導と慣れの結果が違った
指導に参加すれば、どの面接でも点が高くなるという結果がそろっているわけではありません。Griffinらは、オーストラリアの医学部志願者について、面接指導と選考の成績を調べました。面接を受けた人の51.4%が指導に参加していましたが、指導は複数面接の点を上げず、一部の課題では参加者の点が低い結果でした。ここでいう複数面接は、異なる課題の短い面接を回るMMIという形式です。[3]
一方で、前年と同じか似た課題では、再受験者の点が少し上がっていました。つまり、指導を受けたという経験と、似た問いに接したという経験では、成績との結びつき方が違いました。著者は類似の課題への練習が点に影響することを踏まえ、課題を毎年入れ替える必要に言及しています。これは受験者の努力だけでなく、試験で何を測るかという作り手側の問題でもあります。[3]
この結果を読むときには、「指導」と「慣れ」を分ける必要があります。指導を受けた人が全員同じ答えを覚えたことを表す結果ではなく、指導への参加を調べた結果です。同じ課題を知っている人の成績が上がる場合も、その課題に答えるための見通しと、別の課題に対応する力は区別されます。似た問いでの変化を、面接全般に通じる準備の優劣へ広げると、比較の範囲が変わってしまいます。
Griffinらの研究は、志願者の自己申告にもとづく観察研究です。観察研究は、研究者が準備の方法を割り当てる実験とは違い、実際にどのような準備をした人がどのような結果だったかを調べます。対象は特定の医学部で、課題や選考の仕組みもその場のものです。職業の昇進面接で見られた関係とは対象も面接形式も違うため、両者の結果は準備という言葉の下で単純に足し合わせるものではありません。[1][3]
準備した話し方を見分けることと低評価は別
丸暗記への心配には、答えの中身よりも、覚えてきたことを聞き手に見抜かれるのではないかという面があります。Burtonの研究は、語学の話す試験で、この心配に近い部分を扱っています。1週間前に問いを知って準備した受験者の発話と、事前に問いを知らなかった受験者の発話を、58人の採点者が評価しました。採点者は両者の発話について、準備された話し方の違いを見分けられました。[4]
この研究で扱ったのは8本の発話で、少数の材料から特徴を探る探索的研究でした。準備していたことを感じ取る判断と、大学の面接でどのような点を付けるかは異なる判断です。語学の試験で見る話し方の特徴と、志望する学びへの考えを聞く場面の評価の観点も、同じものとしては扱えません。準備を感じさせたことを、そのまま選考での失点と読むには隔たりがあります。[4]
準備された説明にも、本人が経験と考えの関係を理解している場合と、文章だけを再現している場合があります。どちらも聞き慣れた表現や整った文を含みうるので、表面が滑らかかどうかだけでは区別がつきません。また、経験の内容が同じであっても、活動の経緯を説明する文章と、そこから生まれた関心を説明する文章では、中心に置く部分が変わります。覚えた文の完成度と、その場で求められた説明の適切さは、別々の問題です。
そのため、骨組みを作る場合には、結論・理由・具体例を短いメモに分け、互いのつながりを説明する準備を勧めます。たとえば学びたいテーマが結論なら、関心を持った理由と、その理由を裏づける出来事が具体例になります。出来事の紹介だけで終わる文章と、出来事が学びたい内容につながる文章では、聞き手に渡る情報が違います。これは特定の文型を正解として固定する方法ではなく、説明に使う材料の役割を整理する方法です。
準備の機会の差と向かない準備の見方
面接の準備は、本人の工夫だけで完結するとは限りません。Moorjaniらは英国の医学部で、出身校の種類と複数面接の成績の関係を調べています。非選抜の公立校出身者と比べて、私立校出身者は2.4点、選抜制の公立校出身者は1.3点高い結果でした。著者はこの小さな差を踏まえ、指導や面接形式への慣れの影響を今後調べる課題に挙げています。[5]
この研究は横断研究で、ある時点での特徴どうしの関係を調べています。測ったのは出身校の種類などと面接の成績の関係であり、指導の有無そのものは測っていません。したがって、学校の差を指導の効果と呼ぶことは、測っていない途中の関係を補うことになります。著者が今後の課題とした部分は、結果として示された差と区別する必要があります。[5]
受験者にとっては、準備に使える機会と、話す内容の整理を同じ物差しで考えないことが大切です。周囲に指導を受けた人がいるという事実だけでは、自分の説明のどこが不足しているかはわかりません。他人が用意した文章を多く覚えることと、自分の経験の意味を説明できることにも違いがあります。前者の量を増やすだけの準備は、経験と考えのつながりがまだ曖昧な人には、課題とのずれが大きい方法です。
反対に、すでに文章を作っていること自体が、整理の妨げになるわけでもありません。書いたものの中に本人の結論や根拠が含まれていれば、それらは説明の材料です。問題となるのは、文章を持っているかどうかよりも、何を伝えるための文なのかが本人に見えているかです。準備をした人としなかった人という大きな区分だけでは、この中身の違いまで表せません。
出願前は評価の観点と書類との関係を照合する
出願前の確認は、募集要項に書かれた面接の「評価の観点」と、「出願書類にもとづいて質問する」という記載の有無に絞ると具体的になります。前者は、用意した説明のどの部分が評価に関係するかを読むための欄です。後者は、本人が提出した情報と面接でのやり取りとの接点を読むための記載です。質問を予想することと、評価対象を理解することの違いが、ここでも現れます。
確認の作業としては、この記載と、自分が用意した答えの内容を横に並べて照合します。たとえば評価の観点に学びへの関心がある場合、活動の経歴を長く述べるだけの答えと、その活動が関心につながった理由を含む答えでは、説明しているものが違います。書類にもとづく質問という記載があれば、書類は話の材料として位置づきます。書類の文章を覚えて再現することは、その材料について説明することの一部にすぎません。
評価の観点に書かれた語が抽象的であれば、その語と答えの対応にも幅があります。たとえば意欲という言葉を含む場合でも、強い言葉を繰り返すことと、学びたい内容を具体的に説明することは同じ行為ではありません。また、書類にもとづく質問という説明だけで、質問の全文や順番まで定まるわけではありません。公表された説明が示す範囲と、自分で予想して補った部分との区別が、準備の前提になります。
面接を評価する側にとっても、整った発話が何を表しているのかは重要です。事前に知っていた課題への慣れが点と結びついた研究と、答えの組み立てが成績と結びついた研究は、同じ見かけの準備から異なるものを測りうることを示しています。[2][3] 採点する側が捉えたいのは、用意した文を再現する巧みさと、評価の観点に沿って説明できることの違いです。流れるような発話を聞いた後にも、その説明が質問に応じて組み立てられたものかという評価上の論点が残ります。
よくある質問
受験後に実際の質問を友人に伝えてもよいですか
質問内容の共有については、試験を実施する側の取り扱いが判断の基準になります。準備の効果を調べた研究は、受験者が試験内容を他者へ伝える許可を与えるものではありません。似た課題への慣れが成績と結びつくことは、試験問題の取り扱いが受験者間の条件に関わる理由にもなります。[3] 共有の可否に迷う場合の相談先は、その試験を実施する大学の入試担当部署です。
保護者が本人の話を聞くことも研究の指導に含まれますか
研究で扱う指導という言葉と、家庭で話を聞くことは、名前が近くても内容まで同じとは限りません。指導への参加や勉強会、役割演技を扱った研究はありますが、ここで挙げた結果は保護者の聞き方を比較した結果ではありません。[2] 家庭で話す機会を持つことと、その場でどのような助言をするかも分けられます。研究の指導という呼び方だけで、家庭での関わりの良し悪しは決まりません。
指導を受けたことを出願書類に書く必要がありますか
準備の研究で参加歴を尋ねるのは、成績との関係を分析するためです。研究者が尋ねた項目と、出願者が大学に申告する項目は別のものです。今回扱った研究の結果そのものから、準備の経歴を申告する義務は生じません。出願書類に何を書くかは、その書類の設問に沿って決まり、準備を扱う研究に登場した項目が自動的に出願時の記載事項になるわけではありません。
この記事の限界
適用範囲は、職業の昇進面接、海外の医学部選考、語学の話す試験で得られた結果を手掛かりに準備を考えるところまでで、日本の年内入試における丸暗記の影響を直接測ったものではありません。古い昇進面接の研究や、特定の医学部を対象にした観察研究、少数の発話を使った研究を含み、対象と測定の条件に偏りがあります。
指導への参加、類似課題の経験、準備した発話への評価は測定対象が異なり、暗記と骨組みの準備を直接比べた結論にはなりません。要項は年度ごとに変わり、最新の要項と大学の発表が優先するため、ここで扱った知見の用途は準備を考える手掛かりまでで、個別の出願判断は別の課題です。
参考文献
- Maurer ほか. Relationship of coaching with performance in situational employment interviews. Journal of Applied Psychology. 1998;83(1):128-136.
- Maurer ほか. Interviewee coaching, preparation strategies, and response strategies in relation to performance in situational employment interviews: an extension of Maurer, Solamon, and Troxtel (1998). Journal of Applied Psychology. 2001;86(4):709-717.
- Griffin ほか. Does practice make perfect? The effect of coaching and retesting on selection tests used for admission to an Australian medical school. Medical Journal of Australia. 2008;189(5):270-273.
- Burton. "How Scripted Is This Going to Be?" Raters' Views of Authenticity in Speaking-Performance Tests. Language Assessment Quarterly. 2020;17(3):244-261.
- Moorjani ほか. Equity in medical school interviews: a cross-sectional analysis of school type, gender, and widening participation status. BMC Medical Education. 2026;26(1):1391.
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よくある質問
受験後に実際の質問を友人に伝えてもよいですか
質問内容の共有については、試験を実施する側の取り扱いが判断の基準になります。準備の効果を調べた研究は、受験者が試験内容を他者へ伝える許可を与えるものではありません。似た課題への慣れが成績と結びつくことは、試験問題の取り扱いが受験者間の条件に関わる理由にもなります。[3] 共有の可否に迷う場合の相談先は、その試験を実施する大学の入試担当部署です。
保護者が本人の話を聞くことも研究の指導に含まれますか
研究で扱う指導という言葉と、家庭で話を聞くことは、名前が近くても内容まで同じとは限りません。指導への参加や勉強会、役割演技を扱った研究はありますが、ここで挙げた結果は保護者の聞き方を比較した結果ではありません。[2] 家庭で話す機会を持つことと、その場でどのような助言をするかも分けられます。研究の指導という呼び方だけで、家庭での関わりの良し悪しは決まりません。
指導を受けたことを出願書類に書く必要がありますか
準備の研究で参加歴を尋ねるのは、成績との関係を分析するためです。研究者が尋ねた項目と、出願者が大学に申告する項目は別のものです。今回扱った研究の結果そのものから、準備の経歴を申告する義務は生じません。出願書類に何を書くかは、その書類の設問に沿って決まり、準備を扱う研究に登場した項目が自動的に出願時の記載事項になるわけではありません。